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Three Roses

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第三十五話 臨終の床でその十一

「四国との交流は続けていこう」
「はい、それでは」
「そうしていきましょう」
「この国を離れても」
「この国とは親しくしていきましょう」
「是非な、だからこそ思うのだ」 
 マリー、彼女についてというのだ。
「あの王女が敵でなくてよかった、この国を手に入れたかったが」
 ロートリンゲン家、彼の家のものにだ。
「それが適わないならばだ」
「仕方ないですね」
「去るしかない」
「そしてそのうえで、ですね」
「この国とはいつも通りですね」
「交流を深める」
「そうしていきますね」
「その通りだ、何もかもを進めていく」
 まさにとだ、こう言ってだった。
 太子はこの国から去る用意を進めさせていった、彼は既に去ってからのことを考えていた。そこには冷静な割り切りがあった。
 だがマイラのことはだ、こう言った。
「明日にも世を去る、マリー王女達の前に会ったが」
「それでもですね」
「そのことはですね」
「どうにもですね」
「残念だ、妃のことは忘れない」 
 無念が言葉にも出ていた。
「決してな、冥福を祈る」 
「では我々も」
「その様にさせて頂きます」
「太子と共に」
「そうさせて頂きます」
「そのことを有り難く思う、妃の為に祈ってくれることもな」
 こう言うのだった、マイラのことについて。そして実際にだった。
 マイラはマリー達と会った次の日にだ、この世を去った。その顔はあくまで穏やかで憂いのないものだった。
 その臨終の顔を見てだ、マリーは共にいるセーラとマリアに言った。
「いいお顔ですね」
「はい、本当に」
「そうね」
 二人もこう答えた。
「何も思い残すことのない」
「満ち足りたお顔ね」
「私は忘れません」
 決してとだ、マリーはまた言った。
「お姉様のことは」
「私もです」
「私も」
 セーラとマリアも言う。
「何があろうとも」
「それはないわ」
「ですから今も」
「絶対に忘れないわ」
「そうするわ、では」
「今も」
 今現在もというのだ。 
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