魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Eipic26-A聖王のゆりかご攻略戦~The Saintest~
前書き
どちくしょー! カールの販売中止エリアに三重県が入ってるじゃないか! なんだそら!
ルシルVSフォルセティ戦イメージBGM
TALES OF XILLIA 2「互いの証の為に」
https://youtu.be/hBpxZ16v2F0
†††Sideルシリオン†††
VS・―・―・―・―・―・―・―・・―・
其は聖王女を守護せし幼騎士フォルセティ
・―・―・―・―・―・―・―・・―・VS
俺の遺伝子を用いて生み出されたクローン、フォルセティ。クローンだというのに俺の魔術をそっくりそのまま扱えるという反則っぷり。いくらプロジェクトF.A.T.E.でも、基となった魔導師の魔法まではコピー出来ないはず。かつてのヴィヴィオもなのはとフェイトの魔法をコピーしていたし、ドクターが行ったナンバーズ開発における、オリジナルとなった人物の特殊スキルを狙った一芸特化型のクローン培養でも無理な話だ。
(しかもこの次元世界に降臨してから使用した覚えのない術式までも扱えている)
俺の固有魔術を知る誰かが手を貸している。レーゼフェアかフィヨルツェンと考えられる。術式を知らずともこういう魔術だと教えれば、その魔術を発動できるように術式を組み直せばいい。しかし、それにしては完成度が高すぎる。
(六課襲撃時とは違って神秘を感じられないが・・・。どちらにせよ、脅威であることには変わらない・・・!)
「このぉぉーーーー!」
――復讐神の必滅Type F――
フォルセティより放たれるのは俺と同じサファイアブルーの魔力光に輝く砲撃1発。空戦形態ヘルモーズの高機動力を以って急上昇することで、その砲撃を回避しようと考えたんだが・・・。
(追って来るか。追跡砲ヴァールだな)
――戦滅神の破槍――
左手に持つ“エヴェストルム”の穂先を足元から迫る砲撃へ向け、雷撃系砲撃を発射。ヴァールとヴィズルが真っ向から激突し、強大な魔力爆発を起こす。その衝撃波に僅かばかり体勢を崩される。
「早く墜ちてよ!」
――舞い振るは、汝の獄火Type F――
100本の炎槍を自身の前方に展開したフォルセティ。その穂先は全て俺に向かられている。フォルセティよ。敵である俺が体勢を崩していたのだからそこを狙うべきで、発動するのは発射から着弾までが早い術式にするべきだった。もしくは槍群をこういう風に展開するべきだった。さぁこれが手本だ。
――舞い降るは、汝の煌閃――
光槍100本で棒立ちのフォルセティを球状に完全包囲。あの子はハッとして自らに向けられる穂先を見回し、それでも「アングリフ!」と号令を下して、炎槍100本を上空に居る俺へと向けて一斉発射。俺も「ジャッジメント!」号令を下し、光槍60本を一斉発射。
「こんなもの!」
――曙光神の降臨Type F――
フォルセティを中心に魔力が球状に爆ぜ、俺の光槍を一瞬で消滅させた。さらに・・・
――凶鳥の殺翼Type F――
直径10mほどのデリングを突き破って扇状に放たれて来たのは、空間をも歪めるほどの斬れ味を有する風の刃、その数は確認できない。空間の歪みは視認できるが、個別の歪みを観測できるほどの隙間が無い所為だ。だがこの術式は前方150度という範囲にしか効果が及ばないため、俺はさらに高度を上げて回避。
『マイスター。アイリ、何か手伝うことある?』
『ん? 今のところは特には・・・』
『アイリだって、フォルセティを助けたいんだよね。な~んか無いかな~?』
俺とユニゾンしてくれているアイリ。彼女が居てくれるおかげで多少の無茶は通せる。それに相手がフォルセティということもあって張り切っている。2人はまるで姉弟のように過ごしていたからな。
――戦狼の砲咬Type F――
姿を見せたフォルセティより扇状に放たれるのは、二列横隊を組んだ12発の尖状砲撃。上6発は上方に向かって、下6発は下方に向かって伸び、俺へと向かう中で曲線を描きつつ狭まって来る。砲撃は狼の牙を表し、その軌道は狼の咬みつきと言ったところだ。
『じゃあアイリ。ステガノグラフィアからの連絡の応答を任せる』
真横――右方へ向かって全力回避。ヒルドールヴはその威圧感で敵を怯ませることで防御か回避かの判断を鈍らせ、回避されたらそれまでの数瞬にスタンバイした術式で追撃、味方が居れば追撃を任せても良い。本命の一撃というよりは連携開始の初撃だな。
――女神の疾翔Type F――
案の定、回避したばかりの俺へ突っ込んで来るフォルセティ。全身を魔力でコーティングして槍のように対象に突進するグナーだな。
――女神の陽光――
その対策としてフォルセティと俺の間に、上下左右からの火炎砲の十字挟撃を行う。グナーは直進突撃であるため、ある程度のカウンターを狙うことが出来る。フォルセティもカウンターの餌食となり、4発の火炎砲による十字挟撃をもろに受けた。
『うええ!? この戦いに関係ない仕事を任された!? しかもあのうるさい4人組の相手とか! マイスターひどい!』
今現在、プライソンのアジトに襲撃を仕掛けているのはクラリスの率いる騎士隊だけじゃない。外部からウーノとクアットロが電子戦を仕掛けていると、すずかから聴いている。少しでも手助けになればと、ステガノグラフィアを出撃前に発動しておいた。
「おおおおおおおッ!」
それにこれはある種のリベンジだ。かつて騎士ゼスト、クイントさん、メガーヌさん達の部隊と共に別のアジトに侵入した際、アジトのセキュリティに負けたことがあるからな。ウーノやクアットロとの共闘であれば負けはしないだろう。ステガノグラフィアもリベンジ出来ると喜んでいたし。
『すまないが俺もフォルセティとの闘いに集中したいんだ。頼まれてくれ』
『むぅ。・・・ヤー。その代わり、フォルセティを助けてあげてね』
『ああ!』
――削り抉れ、汝の裂風Type F――
アイリにそう応え、フォルセティの放つ攻撃――ドリル状の竜巻砲撃13発へ・・・
――食い散らせ、汝の嵐顎――
暴風の龍13頭を創り出し、真っ向から迎撃する。大きく口を開けた龍は砲撃を噛み砕き、そのままフォルセティへと殺到して行く。あの子は迎撃でも防御でもなく、回避を選択して急降下。フォルセティはビル群に紛れ込むように縦横無尽に飛び回る。
「其は時に天の使徒にして魔の従僕。畏敬・畏怖をその身に受け、地に救済を施し、絶望を与える。其は我の魂命という宝物を護るがため我を抱擁し汝を喰殺する。死の恐れを知らぬ名声を求めし勇ましき者よ、宝物が欲しくばいざ挑めよ」
ルヒエルを解除し、各属性の龍を3頭ずつ、計24頭の龍を対象に向けて解き放つ上級術式ファフニールの発動に必要な呪文を詠唱。いつでも発動できるようスタンバイし、フォルセティを追翔するために俺も降下する。地上に近付くにつれ、戦車や装甲車、ガジェット群と交戦している陸士部隊や騎士団の様子を視認できるようになる。
――天壌よ哭け、汝の剛雷Type F――
フォルセティの足の裏を確認できた直後、俺たちの間に40近い放電する魔力球が展開された。あの子の「墜ちろ!」という叫びに反応してか一斉に炸裂し、行く手が蒼い雷光で満たされる。両腕を前方に伸ばして“エヴェストルム”を突き出し、「コード・マグニ!」を発動して防御力を強化。
――集い纏え、汝の雷撃槍――
さらに穂に雷撃系魔力を付加した状態で、目の前の雷光空間に突撃した直後、『ルシル! フォルセティから砲撃3連射! 注意!』念話が届いた。この声は「ルミナ!」だ。俺は上方へと軌道修正して、雷光空間より脱出。
――女神の陽光Type F――
足元を通過して行くのは火炎砲3発で、今し方まで居た雷光空間を消し飛ばして行った。あのまま突っ込んで行っていれば最後の3発目でダメージを受けていたな。初めから引き離されまいと突撃せずに、引き離されることを受け入れて回避行動に入っていれば良かった。
「(まぁとにかく・・・)ありがとう、ルミナ。助かったよ」
スクラップと化した戦車の上に立って、俺に向かって手を振るルミナに礼を伝える。戦車や装甲車などルミナの敵じゃないよな。
「さて。フォルセティはどこへ行った・・・?」
魔力探査を行い、あの子の居所を探してすぐ「あそこか!」発見する。この辺りで一番高いビルの屋上。上空からの迎撃に備え、先ほど詠唱したままスタンバイしていたファフニールをいつでも放てるようにする。
――昼神の閃爆Type F――
上空に展開された12個のオベリスク。見逃していた間に詠唱を終えていたか。俺はすかさず「ジャッジメント!」ファフニールを放つ。各属性の龍をそれぞれ3頭ずつ、計24頭を落下して来るオベリスクへと放つ。噛みつかれたオベリスクは次々と爆発を起こし、首都クラナガンの空を魔力爆発という花火で照らし出した。そして俺は魔力爆発の隙間を縫ってビルの屋上へ移動。
「バルドルだと・・・!」
フォルセティの佇むビルの屋上の直上、球体状に組まれた7つの円環が回転し、その中央に魔力が集束して行く。あの子は「――を受けし者。その御名の下、其に刃突き立てし者へ輝ける聖栽を与えよ」詠唱を続けていた。
(詠唱から始める儀式魔術として発動したバルドルは、一度発動されたらもう止まらない。ならば・・・!)
「哀れな者らは泣き叫ぶだろう。しかし許しは乞わぬだろう。自らの罪と過ちを認めることを赦さず恥とするゆえに」
集束して行く魔力球へと向かう。フォルセティは「無駄だよ! もうどんな術式でも止められない!」と言うが、今の俺には止める術が1つだけある。お前は使えるかどうかは知らないがな。
「これならどうだ!」
――女神の救済――
回転する円環の隙間を縫って内側に突入。そして空いている右手で魔力球に触れ、その膨大な魔力を吸収し始める。フォルセティからの攻撃に備えて、念のために「アイリ、すまん! 防御を頼む!」とお願いする。
『ヤー! リンの発動コードを借りるよ!』
――女神の護楯――
「汝よ。迷うことなかれ、憐れむことなかれ、悔やむことなかれ。汝は希望を司り、光の王。厳粛たれ、堂々たれ、そして公平たれ」
フォルセティの魔力を進行形で吸収しているため、魔力過消費に陥ることもないから記憶消失を危惧する必要も無い。アイリもそれが判っているからこそ、俺の周囲に女神の祈る姿が描かれたシールド・リンを6枚と展開。魔力球のサイズが徐々に小さくなっていく。
「汝は左手に希望を携え、右手には閃光を携える。全ての者に、その御名を轟かせ」
――光神の調停Type F――
フォルセティは詠唱を終え、そしてバルドルは発射されたが、すでに遅かった。全方位へ無差別に放たれる多弾砲撃であるバルドルだが、そのほとんどの魔力を吸収してやったからな。放たれる砲撃も惨めで、10mと進んだところで霧散した。
「ありがとう、フォルセティ。この魔石はありがたく使わせてもらうよ」
俺の目の前に浮かぶ1個の蒼い結晶体。魔力炉に吸収しきれなかった余剰魔力を固形化した物だ。“ジュエルシード”には当然遠く及ばないが、それでも使い方を間違わなければ、その力を存分に発揮させられるだろう。結晶体をコート下の長衣の胸ポケットにしまい込み・・・
「なんでぇぇぇーーーー!」
悲痛な叫び声を上げるフォルセティを見下ろしつつ降下、側に降り立つ。
「フォルセティ。お前では俺には勝てんよ。同じ魔術を使うなら、そこは経験の差になってくる」
「・・・!」
「覚えてから・・・そうだな、1、2年くらいの術式が、約2万年の術式に届くことはない」
オリジナルとしても、仮とは言え父親としても、魔術師としても、魔導師としても、俺がフォルセティに負けることは許されない。
「フォルセティ。俺たちは、ヴィヴィオを傷つけるつもりなんてない。それどころか助けたいんだ。当然、お前の事も。お前たちはプライソンという悪者に操られているんだよ。本当は無理やり戦わされているんだ、お前の望みじゃないんだよ」
ヴィヴィオの事を本当に大事に思っているフォルセティだ。おそらく、この程度の言葉では・・・
「そんなの知るもんか! 僕は陛下を護る騎士だ! プライソン? そんな奴知らない! 操られてる? 無理やり? ちがう! これは僕の意志、思い、考え、望み! だから・・・うあああああああ!」
――レリックリミッター・リリース――
止まらないよな。フォルセティの足元に展開されるのは、二重円の中に正五角形と逆五角形を重ねた十角形、その中に円、また中に六角形というデザイン。それはスヴァルトアールヴヘイム魔法陣だ。となれば、「レーゼフェア!」が絡んでいる。あの子の術式体系は闇黒系に特化したスヴァルト式だからだ。
「この感じ・・・! やはりレリックを埋め込まれているのか!」
フォルセティの全身から放たれる強大な魔力波。かつてのヴィヴィオの大人化を思い出せる。実際、目の前のフォルセティの姿が徐々に大きく成長していっている。そしてあの子を覆っていた魔力も抑えられ、俺の本来の身長である180cmちょいという青年に成長した姿を俺に見せつけてきた。
「僕は陛下を、ヴィヴィオを守護する騎士、プフェルトナー・フォルセティ。僕の前に立ちはだかり、ヴィヴィオに指1本でも触れようとする敵には・・・一片の情けも容赦も無い!」
「っ!?」
フォルセティが急速上昇。目指すは「ゆりかご!」だった。俺も急いで追い翔ける。
――舞い降るは、汝の煌閃Type F――
上空から俺に向けて放たれて来る光槍80本。槍の雨の隙間を縫うように翔け抜け、俺も「お返しだ!」光槍80本を一斉射出。フォルセティも最低限の動きで避け切り・・・
「其は天と大気を司りし偉大にして至高の女帝。鷹の羽衣の纏いて空を翔け、遥かなる世界の空に煌幕を張り揺らめかせる」
呪文を詠唱し始めた。また厄介な術式を発動しようとしているな、まったく。さすがにフリッグの発動を止めないと、局や騎士団といった航空戦力どころか最悪「ゆりかごやアンドレアルフスまで・・・」墜としかねないぞ。
「かの女帝が従えしは12柱のいと美しき従士。其は巫女、其は医者、其は後見人、其は使者、其は従者、其は鋤、其は恋愛、其は縁結び、其は誓い、其は詮索、其は扉、其は礼儀」
「フォルセティ! フリッグは使うな! それは広域対空術式だ! お前の護りたいヴィヴィオの乗るゆりかごにも危険が及ぶぞ!」
「っ・・・!」
フォルセティが詠唱を中断する。怒りに任せて、俺を倒すことだけを考えての手段だったな。冷や冷やしたが、これで無茶な魔術も発動しないだろう。なんていうのが甘い考えだったと思い知ることになる。フォルセティは一切の攻撃を仕掛けて来なくなり、戦闘空域となっている空を縦横無尽に翔け回る。
「一体なにをしようと・・・?」
武装隊とガジェットの戦闘のど真ん中を突っ切るような真似もする。突然の乱入に驚く武装隊員たちに俺は「すまない!」謝りつつ、せめてもの償いとして“エヴェストルム”でガジェットⅢ型4機をバラバラに斬り裂いてやった。フォルセティとの距離が僅かに開く。ふと、「まさか・・・!」フォルセティの手の動きを見て判ってしまった。何も無いところに軽くタッチするかのようなあの仕草・・・。
「最古神の貴き世界か・・・!」
アルフォズルと並ぶもう1つの元真技・ブーリ。“神槍グングニル”から所有者と認められていなかった、まだまだ若輩だった頃の・・・。
(フォルセティはどれだけ中継点を作った?)
俺の魔術を使い、アルフォズルを発動できた時点でブーリも使って来るかも知れないと考えられただろうに。自分の迂闊さ、間抜けっぷりにホトホト呆れ果てる。とにかく、どれだけ中継点をバラ撒かれたのかは判らないが、発動される前にフォルセティを叩くしかないだろう。“エヴェストルム”を指環に戻し・・・
「弓神の狩猟!」
創り出した魔力弓に番えた魔力矢・ウル3本を同時に射る。3本で3000発の閃光となり、フォルセティを全方位から襲撃する。特に上方に数を置き、あの子に無茶な回避軌道を取らせることで上昇を鈍らせてやる。さらに運が良いことに数発が剣翼と蒼翼をそれぞれ2枚ずつの計4枚を撃ち抜き、ガシャーン!と粉砕。目に見えてあの子の飛行速度と機動力が落ちた。まぁそこからは血も涙も無い、と言われてしまいそうな程にウルが着弾していく。
「このまま終わらせる!」
魔力爆発の続く閃光の直下からフォルセティが落ちて来た。背中に展開されていたヘルモーズもガタガタに崩れてしまっているが、宙でくるっと体勢を立て直した。その目に灯る強い光から戦意は失っていないと判る。だから今は容赦なくお前を墜とす。“エヴェストルム”を二剣一対のゲブラーフォルムで再起動。
――女神の宝閃Type F――
フォルセティの周囲に展開された魔力スフィア4つが砲撃となって発射される。ブーリの事もあるため・・・
「させるか!」
――女神の宝閃――
同じく4発の砲撃を発射して迎撃。俺を思い切り睨みつけてくるフォルセティに、「させんよ」再度言い放つ。そこからはゆりかごの前方で砲撃合戦だ。フォルセティが砲撃を放てば、俺はわざわざ砲撃で迎撃する。不可視の中継点に魔力攻撃を加えられるとブーリが発動される。街中と戦場を飛び回っていた以上、その周囲に被害が出るのは必至。出来れば発動される前にフォルセティを止めたい。
「いい加減に・・・!」
――女神の迅雷Type F――
「してほしいのは、俺の方なんだがな!」
ロキやベルヴェルクと同じ、装備型の術式を発動したフォルセティ。スルーズは雷撃系で、1m半の腕や脚、背中からは雷マークのようなジグザグな羽が4対8枚と展開される。その術式の効果はロキなどと同じように中級・下級の術式を魔力消費無しで発動できるが、装備中の術式の展開時間が減少する。さらにスルーズにはもう1つの効果が付与される。
「邪魔だぁぁぁぁーーーーッ!」
「っと・・・!」
一瞬にして俺の目の前へと移動し、放電している左手による貫手を繰り出して来た。これがスルーズの固有効果・瞬間移動。当時の俺は接近戦が下手くそ過ぎて、だからほぼ間合いを開けるのに使っていた。
――集い纏え、汝の閃光槍――
――力神の化身――
二剣一対形態ゲブラーフォルムで再起動した“エヴェストルム”の穂に閃光系魔力を付加。さらに身体能力や魔力を強化するマグニを発動。
――豊穣神の宝剣――
最後に、俺の肉体の限界を無視してでもオートで最良の斬撃を振るえるフレイを発動。両手に持つ“エヴェストルム”が俺の意思を無視して動き、まずフォルセティの貫手を迎撃。放電する魔力の左腕を一瞬にして斬り落とし、即座に右腕を貫いて“エヴェストルム”の穂に付加した閃光系魔力を爆破させる。
「くぅ・・・!」
慌てて後退するフォルセティに追い縋ろうとするが、スルーズの瞬間移動効果であっと言う間に距離を取られる。そしてあの子は背に展開していた翼を8枚を切り離し、その先端から中級雷撃砲「バラキエル!」を発射。
「させないと言っているだろう!」
――崇め讃えよ、汝の其の御名を――
剣翼アンピエル12枚だけを離し、剣先より砲撃12発を発射して雷撃砲8発を迎撃。そして残り4発でフォルセティを狙う。まぁどれもその高機動性を活かして回避されるが。
「(唯一、助かっているのは、フォルセティが今の真技を使わないこと。まぁEXランクの魔力があって初めて発動できる術式だ、当たり前か・・・)大人しく投降してくれ、フォルセティ。俺だってお前を追い詰めたくは、傷つけたくはない」
――殲滅せよ、汝の軍勢――
とか言いながら、俺は2000本の複数属性の槍群カマエルと多弾砲撃ミカエルで、フォルセティを徐々に追い詰めていく。いくら瞬間移動とは言え、“界律の守護神テスタメント”の、実数世界と虚数世界の狭間・位相空間を行き来する空間転移とは違って、対象はこの世界に留まっている。100%当たらないということはない。
「これは・・・檻・・・!」
剣翼の柄頭より伸びる魔力の尾が実体化し、俺とフォルセティを閉じ込めるように徐々に直径100mという球体状の檻を形成していく。
「このぉぉーーー!」
今さら気付いたフォルセティは、残る雷光の脚甲を纏う両脚による蹴りを檻へと打ち込む。だが、その魔力を檻に吸収され、「うぁ・・・!?」その効果を完全に失った。ミカエルの効果、知らないわけじゃないだろう。ミカエルによって作られた檻への魔力攻撃は、その魔力を吸収され無力化されるどころか強化される。俺のとっておきだ。
「さぁ、お互いに逃げ場無しだ、フォルセティ」
「うるさい・・・」
「ヴィヴィオも必ず救いだす。もう大人しく諦めろ」
「黙れ・・・」
「大丈夫。お前やヴィヴィオを操っているプライソンも、フェイトによって撃破される」
「うるさいよ、黙れよ! ヴィヴィオォォォーーーーッ!」
――我を運べ、汝の蒼翼Type F――
背中に剣翼12枚を展開したフォルセティは反転して魔力の檻へと突進。そして素手で檻を殴りつけたが、「うぐ!」苦悶の声を漏らした。物理攻撃もまた通用しない。それが判っていながら、あの子は大切なヴィヴィオの元へ馳せ参じようとしている。
「フォルセティ・・・」
――女神の救済――
右手で檻の魔力を吸収しつつ、徐々に解除していく。檻の隙間から内側に差し込んで来る日の光に、「っ!?」フォルセティは顔を背けた。いきなり顔に光が当たったからだろう。そして檻は完全に消失し、俺たちは再び遥かなる青空の下へと戻って来た。あの子は真っ直ぐゆりかごを目指そうとするが、ヘルモーズの速度を以って俺は行く手に回り込む。
「退けぇぇぇぇーーーーッ!」
そのまま突っ込んで来るフォルセティの真横から閃光砲撃「ゲルセミ・・・」を撃ち込み、あの子は「うがぁ!?」大きく横に吹き飛ばされた。続けて火炎砲「ソール」で真正面から直撃させた。
「少し痛いが・・・耐えてくれ」
黒煙に塗れながら墜落するフォルセティを「リングバインド!」で宙に拘束し、右手の平に作り出した魔力球を投げる。あの子の胸の前に到達した魔力球は・・・
――曙光神の降臨――
直径20mにまで爆ぜ、フォルセティを呑み込んだ。埋め込まれた“レリック”をどうにかするための一撃だ。先の次元世界における、ヴィヴィオに埋め込まれた“レリック”も同様のやり方で破壊した。蒼い光の中に“レリック”の赤い光がうっすらと見え、砕け散ったのが見てとれた。
「・・・」
魔力爆発が治まり、ビルの屋上で仰向けに倒れているフォルセティの姿を視認。その姿は元の6~7歳ほどの子供のもの。“レリック”も先ほど見えた通り反応が消えているし、恐らくはもう大丈夫だろう。
「すまなかった・・・。痛かっただろう? 不甲斐ない父親を許してくれ・・・」
フォルセティの側に降り立ち、両膝立ちして酷い怪我を与えてしまっていないかを確認。擦り傷くらいはあるが、命に関わるようなレベルのダメージは確認できず、「ほっ」とした。空戦形態を解除し、フォルセティを抱え上げようとした時・・・
――凱旋――
「待ってた、この時を!」
――豊穣神の宝剣――
「ぐぅぅ・・・!?」
突如として起き上がったフォルセティの振るう魔力剣に、右肩から左脇、そこから右脇という、∠字に斬られてしまった。しかもこれまでには感じられなかった神秘が魔力に付加され、術式が魔法から魔術へと昇華している。
「いづ・・・!」
魔力剣を持っているフォルセティの右腕が折れた。
「ごはっ・・・!」
膝元に傷口から溢れ出る出血で血だまりが出来始め、口から吐いた血が飛沫をあげて混ざり合った。まずい、完全に致命傷だ。内臓ごとバッサリやられた・・・。
『マイスター!? そんな! エイルを発動するから、じっとしてて!』
――女神の祝福――
涙声なアイリが俺の代わりに治癒術式を発動してくれたが、今の俺は魔導師で、使うのも魔法だから、魔術によりダメージをほとんど回復できていない。だからすぐに魔力の稼働率を上げ、魔術師化する。
『も、もう一度、発動するね!』
アイリが再びエイルを魔術として発動してくれて、そのおかげで傷口が閉じ、出血が収まりつつある中・・・
――瞬神の飛翔Type F――
フォルセティが空戦形態を展開し、その幼い左手で「うぐ・・・!」俺の首を絞めた。そしてふわりと浮遊感を得、「これで・・・」そう言って空へと急上昇。かなりの出血だった所為で意識が朦朧とするが、ここで俺が墜ちるとフォルセティが何を仕出かすか判ったものじゃない。
「陛下は、・・・ヴィヴィオはだれよりも強い。僕が居なくたって・・・、きっと大丈夫」
「な・・・にを・・・」
「誰がゆりかごに侵入して、ヴィヴィオに挑むか判らないけど・・・。どんな相手が来たって、絶対に負けない」
「考えて・・・いる・・・!」
「でもアンタだけは、ヴィヴィオを倒せる力を持ってる。だからアンタだけは確実に仕留めないといけない!」
ゆりかごよりさらに高い、およそ2万m付近。フォルセティはそこで上昇を止めた。ここで俺の傷もほぼ治りかけたが、致命傷だったこともあって魔力を馬鹿みたいに消費し、失血の所為でぼうっとする。
「うああああああああああああッ!」
――汝の飛翔は、汝の荼毘Type F――
フォルセティの22枚の蒼翼が魔力を放出し、蝶のような翼と化す。その形態に血の気が引く。このカフジエルは「特攻・・・!」術式なのだから。今にして思えば馬鹿な術式を組んだと思う。自爆技なんて・・・。
「よせ・・・フォルセティ・・・!」
「僕はヴィヴィオが大事なんだ。命を懸けてでも守り抜く!」
フォルセティの全身から迸る魔力の奔流。カフジエルは、術者が魔力を限界以上まで引き出した状態で、対象に激突して魔力爆発させて自分もろとも対象を消し飛ばすというものだ。
「(あの時は若かったんだ!)やめろ・・・! それが・・・ヴィヴィオの為になると・・・いうのか・・・!」
「なるよ。アンタが消えれば、ヴィヴィオを傷つけられるだけの敵はこの世から居なくなると同義・・・。僕は、ヴィヴィオを生かすための存在なんだ!」
「馬鹿なことを言うな・・・!」
フォルセティがゆっくりと体勢を変え、俺を真下にした。そしてゆっくりと降下を始め、徐々に速度を上げ始めた。地面に激突するまで1分も無い。早々に決着をつけないと。
「ヴィヴィオの為だと? 大切な人の為というのなら・・・死を選ぶな!」
俺の首を鷲掴むフォルセティの左手に、「いいか? フォルセティ」俺は両手を添えた。
「お前とヴィヴィオは兄妹のように生まれ、育ってきたんだろ。お互いが大切な人なんだ」
「そうだよ! だからヴィヴィオを傷つける奴は許さない!」
「それは、ヴィヴィオにとっても同じ思いのはずだ! なら解るはずだ!」
「何を!」
「お前は、お前の為にヴィヴィオが傷つくのが、苦しむのが嫌だろう!」
「当たり前だ!」
「ヴィヴィオもそうなんだと、何故思い至らない!」
「っ!」
「自分の為に、お前が傷つき、苦しんで、死んだと知れば・・・ヴィヴィオがどれだけ悲しむか!」
「それは・・・」
「大切な人を守りたい。ああ、いいさ! けどな! それで命を投げ出すな! その人を理由に死を選ぶな! 守りたい人がいるなら、意地汚なくてもいい、無様でもいい、罵られてもいい、不名誉でもいい、生きろ! それが本当に守ることなんだよ! 大切な人を置いて先に逝く事ほど、罪な事はないのだからな!」
「だったら・・・アンタが死んでくれればいい! そうしたら僕はヴィヴィオの元に帰還して、ヴィヴィオに槍を向ける敵を倒すことが出来る!」
「あー・・・、そうはいかないよ。俺にも守りたい人がいる。生きなければならない理由がある。それに何より、息子であるお前に人殺しをさせるわけにはいかないし、心中させるわけにもいかないからな!」
「じゃあ、どうすればい――っ!?」
そう叫ぶフォルセティをギュッと抱きしめ、「今はゆっくり眠ってくれ」そう耳元で囁いた。
「アイリ・・・」
『うん・・・。アイリは大丈夫。全力全開でゴー♪』
「ありがとう」
――女神の救済――
アイリの魔力も一緒に消費しつつ、フォルセティの放つ魔力を吸収して消費しきった魔力を回復させ、「また僕の魔力を・・・!?」もがくあの子を離さないように抱きしめる力を強め、余剰魔力を結晶化させる。そして回復したばかりの魔力を使用して・・・
「曙光神の降臨!!」
俺を中心に閃光系魔力を球状に爆ぜさせた。俺とフォルセティは「ぐぅぅ・・・!」苦悶の声を漏らす。さらに魔力を増やし、デリングの威力を強化。渦巻く蒼い魔力の中で、反り返るフォルセティの額にスヴァルト魔法陣が浮かび上がる。レーゼフェアの洗脳術式だな。
「ぐぁぁ・・・あああ・・・ああああ・・・!」
「もう・・・少し・・・頑張れ・・・フォルセティ・・・!」
そして魔法陣が破壊されたところでデリングを解除。意識を失ったフォルセティと一緒に戦場となっていない戦域へと降り立った。
『地面まであと30m・・・。ぺしゃんこにならずに済んだね、マイスター』
「ああ。アイリも付き合ってくれてありがとう。助かったよ」
『どういたしまして♪』
――傷つきし者に、汝の癒しを――
俺とフォルセティに中級の治癒術式を掛け、負ったダメージをゆっくりと回復していく。その最中、こちらの世界でのヴィヴィオの戦闘能力を考察する。クローンであるにも拘らず俺の術式を完全コピーしているフォルセティ。
(精神世界でゼフィ姉様から、俺の複製能力が無断で使用されていると注意を受けた・・・。ヴィヴィオが最悪、オリヴィエの魔法を使うとなれば厄介だな)
とにかく今は、レーゼフェア戦に備えて回復だ。ヴィヴィオについてはなのはと、そして先とは違い共に突入しているフェイトに任せるしかないだろう。
後書き
久々の2Pキャラ対戦となった今話。ルシルと、そのクローンであるフォルセティの強制親子ケンカ。本来、ここでルシルの上級固有魔術を使い切る予定だったんですが、いくつか不発ア~ンド未登場で決着。中級や下級にもまだ出せていない術式もありますし、ルシルに残された戦闘は残り2戦。なんとか本エピソードで出し切りたいです。
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