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提督はBarにいる。

作者:ごません
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山風のお悩み相談・その3

 さて、五十鈴をはじめ先輩の艦娘達に子供扱いされるのがイヤだと俺に相談を持ちかけて来た山風。そんな連中を見返す為に料理を食べながら教わっていた所に、問題の五十鈴がやって来た。……何というかもう、謀られてるんじゃないかと勘繰りたくなる位にタイミングが悪い。そして当の山風はといえば。

「ん~♪やっぱ山風は可愛いわぁ~♪」

「い、五十鈴さん……息、苦し」

 真正面から五十鈴に抱き締められ、顔面が五十鈴山脈に埋まってしまっている。バインバインにコンバインしている。男としては羨まけしからん光景だが、当の山風にとっては命の危機である。

「おい、五十鈴さんや」

「……なによ?」

「絞まってる絞まってる」

 え、と五十鈴が山風に目を向ければ、山風は抵抗を諦めたのか出来なくなったのかぐったりした様子で為すがままである。

「ご、ごめんね山風!大丈夫!?」

「大丈夫、です……少し苦しかったけど」

 ケホケホと噎せる山風の顔は、酸欠のせいか軽く青ざめている。さてと、とりあえずの危機は脱したようだし?俺は注文の品を作るとしますかね。



《チゲ鍋風!タコのキムチ煮込み》

・茹でタコ:300g

・キムチ:100g

・にんにく:1片

・生姜:1片

・酒:大さじ3

・ごま油:小さじ1

・豆腐:1丁

・長ねぎ:少々


 まずは材料を刻んでいく。にんにくと生姜はそれぞれみじん切りに。タコは一口大にぶつ切りにして、豆腐と長ねぎは鍋の具材を準備する感じで。

 土鍋にごま油を熱し、にんにくを入れてこんがりとするまで炒める。そこに生姜も加えて炒め、香りが立ってきたらタコを投入。大体強火で2~3分程炒めればOKだ。

 ここで酒とキムチを汁ごと、鍋に入れる。汁気が足りなそうなら水も少し加えて中火にし、3分程煮る。3分経ったら味見をして、濃ければ酒、薄ければキムチを足して調整。味が決まったら弱火にして20分煮る。この間に事情聴取といこうか。

「五十鈴よぉ、幾ら何でも山風に対して過保護過ぎやしねぇか?」

「何でよ?こんなに可愛い山風が潜水艦に怯えてるのよ?護ってあげなきゃいけないじゃない!」

「潜水艦にトラウマある連中なんざ、ウチの鎮守府にゃゴマンといるだろが。かくいう俺の嫁さんだって、潜水艦に苦手意識は拭い去れてねぇしな」

 あんだけバカみたいに明るくて太陽のような金剛でも、潜水艦と聞くと陰りを見せる。大規模作戦の際にも対潜掃討作戦をやる、と聞けば皆の前では励ます為に明るく振る舞ってはいても、俺と2人っきりになると小刻みに震えながら無事を祈ってたりする。まぁ、前世での沈没の原因が潜水艦の発射した2発の魚雷だし、自分は潜水艦に手出しが出来ないのだから恐れるのも無理はないとは思うのだが。

「そ、それはそうだけど……」

「それにな、山風だってウチの戦力として立派に稼いでるんだ。つまりはあのキツい訓練を確りとこなしてるんだぞ?」

 五十鈴は最古参のメンバーであり、俺が直接指導した数少ない(本当の)地獄を見た面子である。その厳しさは身体が覚えている。

「あんだけ厳しい訓練を積んだ奴を、過保護に心配し過ぎるのは相手への侮辱になるとは思わねぇか?」

「…………そうね、確かにそうだわ」

 五十鈴は真剣な眼差しになって、山風の顔を見据える。

「ごめんね、山風。あんたが他の娘よりも小柄で頼り無さげに見えたから……護ってあげなきゃって勝手に思ってた。でも、それはあんたにとっては大きなお世話だったのね」

「いえ、私も……小さいのは解ってましたし、それに、鎮守府の皆に優しくして、貰えるのは、イヤじゃ、ない、です」

 どうにか和解は成立したらしいな。

「ま、何事もやり過ぎはイカンってこったな!」

「あら?じゃあ訓練の内容も軽くした方が良いんじゃない?」

 馬鹿言え、アレは必要最低限の事しかやってねぇんだぞ?本当ならもっと仕込みたい事は沢山あるのだ。そんな会話をしていたら、いつの間にやら20分経っていた。豆腐とネギを加えて強火にして、一煮立ちして豆腐とネギにも火が通ったら出来上がりだ。

「ハイよ、『特製タコのキムチ煮込み』。熱いから気を付けてな?」

 そう言いながら煮込みを2人前盛り付け、マッコリの瓶を出してやる。ロックアイスの入ったグラスを2つ。注ぎつ注がれつ、仲良く味わって貰おう。レンゲでタコを掬い、同時に口に運ぶ。

「「あっつ!」」

「そりゃあ出来立ての鍋物だぞ?熱くない訳ねぇだろが」

 タコにキムチの酸味と辛味が絡み付いて、これまた絶妙な味になる。そして口直しの豆腐も頬張り、ロックで冷えたマッコリで流す。

「ふぅ……美味しいわね」

「はい、美味しいです」

 2人は顔を見合わせ、にこやかに微笑んでいる。




 さて、前菜、メインと来たらお次は主食。

「お前ら、タコ飯とパスタならどっちにする?」

 タコ飯といってもそこは俺、普通の和食のタコ飯は出すつもりはない。パスタも期待して貰おう。

「う~ん……悩むわねぇ」

「なら、2人で違う物を頼んで、半分ずつ交換……でどうです、か?」

「良いわねそれ!そうしましょう!」

「あいよ、タコ飯とタコパスタ。どっちも1人前ずつね」


 さて、ちゃっちゃと作ろうか。

《タコの新たな魅力!エスニックタコ飯》

・米:2合

・茹でタコ:150g

・レモンの輪切り(出来れば国産):8枚

・セロリ:小1本(約50g)

・カシューナッツ:50g

・ナンプラー:大さじ1

・酒:小さじ2

・砂糖:小さじ1/3

・塩、胡椒:適量



 まずはタコ飯から。米を研ぎ、ザルにあけて15分程水を切る。レモンは米と一緒に炊き上げるから出来れば国産の物を選んで使おう。外国産のは皮の表面に農薬や防腐剤が付着してる可能性が高いからな。レモンの輪切りは8等分にし、タコは薄切りにしておく。

 炊飯器に米、ナンプラー、酒、砂糖を入れ、水を320ml入れてよく混ぜ、タコ、レモン、カシューナッツを散らして炊飯スタート。……あ、カシューナッツは出来れば食塩不使用の物を選んだ方が良いぞ。

 米を炊いている間に仕上げに使うセロリを下拵えする。茎と葉に切り分け、茎は皮を剥いてごく薄切りに、葉は粗く刻む。

 米が炊けたら味見をして塩、胡椒で味を整えたらセロリを加えてザッと混ぜる。器に盛り、お好みでカットレモンを添えて。



《タコを挽き肉代わりに!タコのラグーソースパスタ》

・カットトマト缶:1缶

・茹でタコ:200g

・オリーブオイル:大さじ2

・にんにく:1片

・アンチョビ:大さじ1/2

・乾燥バジル:少々

・乾燥オレガノ:少々

・玉ねぎ:1/4個分

・唐辛子:1本(好みで増減)

・白ワイン:50cc

・塩:小さじ1/2

・胡椒:少々

・クリームチーズ:15g

・パスタ(スパゲッティーニがオススメ):200g



 ラグーソースってのは、前にも説明した事がある気がするが、材料を細かく刻んで煮込んだパスタソースの事だ。有名な所だとミートソースもラグーソースだな。今回は挽き肉ではなく、タコを使ってラグーソースを作る。まずは材料を刻む。茹でタコ、玉ねぎ、にんにくはそれぞれみじん切り。唐辛子は種を取り除いて小口に刻む。アンチョビは刻むか潰すかしておき、ペースト状にしておく。

 深めのフライパンにオリーブオイル、にんにく、乾燥バジルとオレガノ、アンチョビペーストを入れて弱火で火にかける。熱されてチリチリと言い始めたら玉ねぎを入れ、火を強くして炒める。透き通ってきたら唐辛子、タコを入れて更に炒める。

 ある程度炒まったら白ワインを振り、アルコールを飛ばす。更にトマト缶、塩、胡椒を加えて20分程煮込む。火を止めたら熱い内にクリームチーズを加えてかき混ぜ、溶かす。クリームチーズを加える事で、まろやかさとチーズのコクがプラスされるので生クリームよりもオススメだぞ。

 ソースと並行でパスタも茹でる。鍋に2リットルの湯を沸かし、塩を20g(分量外)入れる。パスタを入れ、アルデンテに茹で上げる。大体袋の表示時間よりもマイナス1分位が目安かな。

 茹で上げたパスタの湯をよく切り、フライパンに投入してソースとよく絡める。器に盛り、お好みでパルメザンチーズをかければ完成だ。

「『エスニックタコ飯』と『タコのラグーソース』お待ち。タコ飯の方はお好みでレモンを搾っても美味いぞ」

「「頂きます」」

「ん!このタコ飯サッパリしてて美味しいわね!」

 と五十鈴が言えば、

「こっちのパスタも美味しい……です!」

 と山風が口の周りを真っ赤にしながら笑う。

「あぁ、ほらほら。口の周りがトマトだらけじゃない!もう……」

 五十鈴の世話焼き癖は治りそうも無いらしい……が、山風も満更ではない顔をしているから、まぁ良いことにするか。

「早霜、お前もパスタ食うか?」

 実は多めに作ってあって、賄い用に残しておいたのだ。マリネサラダ味見させて貰ったしな、その代わりだ。

「えぇ、喜んで頂きます」

 早霜ははにかんだような笑みを浮かべて手を差し伸べてきた。その日は何だか、店内がほっこりとした空気に包まれていた気がするぜ。 
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