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提督はBarにいる。

作者:ごません
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お節もいいけどカレーもね?・その5

「さぁお次は海風ちゃんの作ったカレーですが!何を作ったんでしょう?」

「はい、私が今回作ったのは……カレーパンです!」

「ほう!確かにカレーを使った料理としては定番ですね」

「でも、私の作るカレーパンはちょっと違ってて、食パンで作るんです」

 ほぅ、それはまた中々珍しい。大概のカレーパンはドーナツの生地に近い物を作り、その中にカレーを入れて揚げるのが一般的だが……食パンを使ったカレーパンとは初耳である。どういった物か俺も興味が湧いてきた。

「それでは調理の模様をどうぞ!」

《海風:食パンで作る手作りカレーパン》※分量8個分

・サンドイッチ用食パン(無ければ普通の食パン):8枚

・合挽き肉:100g

・ピーマン:1個

・玉ねぎ:1/4個

・カレー粉:大さじ1/2

・みりん:大さじ1/2

・醤油:小さじ1

・オイスターソース:小さじ1

・砂糖:1~2つまみ

・薄力粉:大さじ1.5

・水:大さじ1

・塩、胡椒:適量

・揚げ油:適量



 海風が調理を開始した訳だが……ホントに食パン使ってるよ。しかも、耳無しのサンドイッチ用の奴。これでどんなカレーパンを作るのかが見物だな。まずは野菜を刻むようで、ピーマンのヘタとワタを取り除いて1cm角に、玉ねぎも同様に1cm角に刻む。フライパンを熱してサラダ油を引き、玉ねぎを炒めていく。強火で透明になるまで炒めたら合挽き肉を入れてほぐしながら強火で更に炒める。肉の色が変わる前にピーマンを加えて炒める。

 ピーマンに油が回ったら、カレー粉、みりん、醤油、砂糖、オイスターソース等で味付け。ルーではなくカレー粉で味付けしてるのは水分少な目のカレーに仕上げる為か。それに味付けを見る限り、和の調味料を使ってまろやかにしているな。味見をして塩気が足りなかったのか、塩、胡椒で調整した所で皿に移し、冷ますようだ。

 お次はパンを加工するらしい。薄力粉に水を加えて混ぜている。

「海風さん、アレは何を?」

「アレはですね、パンをくっ付ける時の糊代わりです!」

 成る程、何となく解ってきたぞ。要するに食パンを餃子の皮みたいに見立てて、中にカレーを入れて包んで揚げるワケか。そして俺の予想が正しいかのように、画面内の海風は食パンを麺棒で軽く延ばしている。

 冷ましておいたカレーを、延ばしたパンの中心に載せ、縁を囲むように作っておいた小麦粉の糊を塗る。半分に折って、閉じ口をピッタリくっ付けるようにしっかりと抑える。海風曰く、

「しっかりとくっ付いてないと、揚げてる時に破裂しちゃったりするので……」

 と言っていたので、過去にやらかしているんだろう。ワタワタと慌てている様子が目に浮かんで、少しクスッと来た。しかしこれならカレーだけじゃなく色んな物を包めそうだな?ピザソースとチーズとか、ピロシキの中身なんかも良いかもな。

 カレーを作るのに使ったフライパンを洗って水気を飛ばしたら、揚げ油を深さ2cm位になるように入れる。温度は中温……大体170℃位が良いだろう。カレーを包んだ食パンをフライパン一杯に敷き詰めて、中火でこんがりと揚げていく。時々引っくり返しながらパンが狐色になったら完成だ。



「ど……どうぞ!召し上がって下さい!」

 見た目にもスティック状になっているから食べやすそうだ。どれどれ、味の方は……うん。肉がジューシーな状態でカレーを引き立ててるな。周りのパンもサクサクで歯応えがいい。軽い軽食とか、夜食なんかにも良さそうだ……揚げ物だからカロリーを気にしなければ、だが。





「さてさて、最後は白露型の新顔!山風ちゃんのカレーです!」

「ど、どうも……」

 山風は恥ずかしいのか、お盆で顔を隠したままオドオドしている。おいおい大丈夫か?

「あぁ……山風かわいいprprしたいハァハァ」

 ……隣にもっとダメなのがいた。しかし何と言うか、小動物的と言うか、捨てられた仔犬みたいな雰囲気があるよな山風。

「それで、山風ちゃんのカレーはどんなカレーでしょう?」

「えっと……牛スジと、根菜のカレー…です……」

 小さい声だったがしっかりと聞こえたぞ。牛スジってのは下拵えでも手間だからな、ちゃんとした料理の腕がないと中々扱いづらい食材でもある。これは期待しておこう。



《山風:牛スジと根菜の和風カレー》

・牛スジ:250g

・人参:1本(100g位)

・玉ねぎ:大1個(200g位)

・ゴボウ:1本(40g位)

・蓮根:1個(100g位)

・大根:150g

・ほんだし:小さじ3

・めんつゆ:大さじ3

・カレー粉:30g

※とろみが足りなかったら水溶き片栗粉適量



 さぁ、まずは牛スジの下拵えからだな。一口大に切った牛スジを沸騰したお湯に潜らせて軽く湯がく。これは臭みを取る為の作業だな。お次は……圧力鍋に湯がいた牛スジと酒(分量外)と水を入れて、圧を掛けながら柔らかくなるまで煮込んでいくワケか。大体20~25分くらいか?

 その間に野菜を刻むらしいな。玉ねぎはざく切りに、人参、蓮根、ゴボウは乱切り、大根は銀杏切り……と手際が良いじゃないか。

 煮込んだ後で自然と圧を抜き、柔らかくなった牛スジの鍋からアクを取り除く。圧力鍋は短時間で柔らかくなって良いんだが、途中でアクを取り除いてやれないってのが弱点だよなぁやっぱ。ま、蓋を開けた時にしっかりと取れば良いだけなんだが。

 お次は玉ねぎとほんだしを加え、蓋を取った状態で煮込んでいく。玉ねぎが柔らかくなった所で人参、蓮根、ゴボウを加えて更に煮込む。ある程度柔らかくなった所でめんつゆを加えて更に煮る。途中で煮汁が足りなくなりそうなら適宜水を足すのを忘れないようにな。

 後から入れた人参やゴボウにも火が通ったら、大根を加えて混ぜている。一煮立ち。カレー粉を加えて全体をかき混ぜながら煮込んでいき、全ての材料に火が通ったら完成。




「ど、どうぞ……」

 まず感じたのはその甘い香りだ。根菜ってのは内部に糖を蓄えてる物が多く、火を通すと甘くなる物が殆どだ。そのじっくり煮込まれた香りがこのカレーからも漂ってくる。スプーンで一口掬って、パクリ。

 しっかりと火が通りつつもシャキシャキと歯応えの残る蓮根、ゴボウ。おでんのようにトロリとするまで煮込まれた大根。ほっくりとした人参。その全てが牛スジから出た旨味を吸って美味しさを数段UPさせている。さらにトロトロに煮込まれた牛スジがアクセントとなり、カレーに深みをだしている。和風の味付けも、いい。刺激的な辛さは無いがホッとする味わいだ。

「ハムッ、ハフッ!ハフハフッ、ハフッ!」

 よっぽど美味いのかがっついてるなぁ長門……と思ったら、比叡だった。軽く目に涙が浮かんでるのは気のせいだろうか。



 全てのカレーを食べ終えてから10分。俺を含めた4人の審査員は侃々諤々、優勝を選ぶべく議論を交わした。

「さて、優勝の発表は審査員長である提督にお願いしたいと思います!」

「あ~……正直どれも美味かった。ただ、敢えて一番を挙げるなら……審査員との協議の結果、時雨のバターチキンカレーを優勝としたいと思う」

 ワッと歓声の上がる会場内。嬉しそうに頬を染めながらこちらに寄ってくる時雨。

「ではでは、優勝した時雨さんにインタビューしてみましょう!」

「……ホントに僕が一番なの?嘘じゃないよね?」

「あぁ、どれも美味かったがお前のが一番美味いと感じた。紛れもない事実だよ」

 そう言って頭を軽く撫でてやる。

「……ねぇ提督?」

「何だ?」

「僕、今日の演習で錬度が99になったんだ」

「そうか、なら明日にでも執務室に来てくれ。指輪を準備しておく」

 あれだけ俺に好意を向けていた時雨だ、今更指輪を受け取らないという事もあるまい。

「だから……えいっ!」

 その瞬間、時雨が背伸びして俺の唇に自分の唇を触れさせてきた。

「えへへ……ケッコンの前払い、だよ?」

 自分からしてきたクセに、真っ赤になって俯く時雨。何だこの可愛い生き物。

「あ゛~っ!時雨ばっかりズルいっぽい!夕立も提督さんのお嫁さんだから、チューするっぽい!」

 猪突猛進、という言葉がピッタリの勢いで飛び込んで来た夕立。唇が触れる前にそのおでこが俺の側頭部を捉える。

「ぬごぉっ!」

 あまりの痛みに変な声が出た。おー痛て。こめかみの辺りを擦りながら足下を見ると、

「きゅう~……」

 KOされた……というより自爆した夕立が転がっている。

「うぉ~い、誰か夕立をドックにぶちこんで来い。その後は俺の『特製スープカレー』も交えてカレーパーティすんぞ!」

 先程とは違う歓声に包まれながら、明日の金剛のじと目が目に浮かんで少し寒気がした。まぁ、なるようにならぁな。 
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