世界をめぐる、銀白の翼
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第二章 Lost Heros
銀白VS純白&謳者
ギギィ!!!ドンッ!!!
森の中で、剣を撃ちあう音、そして砲撃が放たれたかのような轟音が響く。
蒔風が木々の間を走り、脇の茂みからオボロやカルラ、クロウが攻撃を仕掛け、どこから放っているのか矢も飛んで来ている。
今までの音は、蒔風が攻撃を防ぎ、砲撃で反撃したものだ。
しかし、彼らは攻撃してきたと思ったらすぐに茂みに隠れ、ヒット&アウェイの戦法を崩してこない。
もちろん、蒔風とて最強を名乗っているだけあって、絶対に命中するというタイミングで砲撃を放っているのだが、そこを観鈴が逸らしてしまい、まったくこちらの攻撃が入らない。
その観鈴を狙おうにも、往人が常にそばにいるために攻撃の手を向けられない。
確かに、往人自身の力はそんなに高くない。
人形を操る「法術」を扱えると言っても、その程度では蒔風を防ぐことはできない。
だが、間に一人入るだけでそれは大きく異なる。
そのために手間が、一つ増えるのだから。
もちろん、蒔風がこの山ごと吹き飛ばすような攻撃をすれば意味はないのだが、なぜか彼はそれをしない。
とにかく、彼はその手間の間に観鈴に一撃入れられることを恐れていた。
彼女は翼人の中では非力な方だ。しかしそれでも、一撃をまともに食らえば蒔風もただでは済まない。
ゆえに、今のようなチマチマした攻撃に対してチマチマと返していくしかないのだ。
だが
「クッ・・・・ソ!!!当たんねぇ上にあっちからはやりたい放題かよ!!!」
「お前相手に、真っ向からは無理だからな」
「少し納得いかんが・・・・搦め手で行かせてもらう!!!」
攻撃を繰り出し、そして去っていくオボロとトウカが蒔風に言い放ち、だんだんとその攻撃を入れられるようになっていく。
それに対して蒔風が顔をゆがめ、ついにその脚を止める。
「痛っつ!!」
「もらいましたわ!!」
その蒔風に、カルラの鉄塊のような大剣が降り降ろされる。
それを蒔風が前転でかわし、衝撃に地面が吹き飛び、その岩石に顔を覆う。
更に追撃でオボロとクロウが剣を振るい、逆立ちのように避けてから、そのまま足を広げて反撃する。
と、そこに
「オオオオオオオオオオオ!!!」
「!? グアぁあああ!?」
巨大なウィツァルネミテアの姿が頭上に現れ、蒔風を巨椀で押しつぶす。
空にその腕を上げ、地面を抉りながらけち飛ばし、蒔風の身体が軽く吹き飛んで行って岩に激突。ガラガラと砕きながら、その中に埋もれていった。
「ハクオロさん!!」
『四人は安全な所に連れて行った!!べナウィが一緒だ。安心していい』
「よかった・・・・・」
『それと、仲間も来てくれたぞ』
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「がっ・・・・ぁ・・・・効くなぁ・・・・さすがに・・・・」
砕けた岩を押しのけ、蒔風が這い出てくる。
二百メートルほど先には巨大なウィツァルネミテアが見え、その足元には観鈴や往人、オボロ達が集まってきているのも見える。
それを確認して、蒔風が指をゴキゴキと鳴らして溜まった血を唾と一緒に地面に吐き捨てた。
「よし・・・気合入れてくぞ・・・・はやく潰さんと多分エルルゥに・・・・・」
ザッ、オォ・・・ン・・・・・・
そこまで言って、蒔風の背後から、足音と何かが展開されるような音が聞こえた。
首だけひねり、その方向を睨みつけるかのように見る蒔風。
その額に、汗がにじむ。
「青年、覚悟!!」
「なっ!?」
「音撃打!!爆裂強打ッ!!!!」
ドドォン!!!
背後に現れた響鬼に対し身体を返そうとした蒔風だが、その途中で音撃が叩きこまれる。
結果として身体の左から強烈な二連撃をくらい、ソレが統合されて音撃鼓が炸裂、爆発して破壊的な一撃を以って蒔風を元いたところにまで吹き飛ばす。
「ご・・・バはッ・・・・(な・・・内臓をやられた・・・・長くは戦えん!!!)」
蒔風が地面に倒れ伏せ、顔を上げるとそこには見えていたハクオロや観鈴たちがおり、蒔風を見下ろしていた。
「・・・・・・・・」
「もう・・・・話すことはないんだな?」
「理樹からの報告を・・・・聞いてない見てぇだな?え?」
その言葉に、ハクオロの目が見開かれ、巨大な足が蒔風を踏みつぶそうと下ろされた。
だが、蒔風はそれを転がって避け、そのまま立ち上がってハクオロの足を螺旋状に駆けあがる。
その走った後に切れ込みができ、中から血が噴き出して、ハクオロがひるむ。
腰のあたりまで走り、そこからひるんだクロウ、カルラ、トウカ、オボロらへと真上から突っ込む蒔風。
おそらく、このままならば彼ら四人のうち、どう見積もっても二人はやられるだろう。
しかし
「これで・・・・・っ!? アぐっ!?」
真上から彼らを狙う蒔風に、矢が飛んできてその脇腹を掠めていった。
その攻撃に、蒔風が宙できりもみ回転し、地面に向かって無様に堕ちた。
「ッ・・・・ドリィ、グラァか・・・・たいした腕だ・・・・・」
「カミュとウルトリィが強化してんだ。当然だろ」
「どーりで・・・・」
地面に倒れる蒔風に、オボロ達が取り囲んで元の姿に戻ったハクオロ、走ってきた響鬼もそこに加わる。
その一同が、蒔風に向かって剣や武器を向ける。
「切断まではせずとも、腱は切らせてもらう。悪く思うな」
「因果応報・・・か?はは!!だが・・・・」
「動くな!!!」
オォっ!!!
蒔風の背から、銀白の翼が現れてそれが一気に光り出す。
その光に一瞬目を奪われるが、それでもオボロが蒔風の元いた位置を感覚のみで切りつけた。
が、光が収まり、目を開けた頃には蒔風はおらず、その場に血だまりが残っていた。
「どこだ!?」
「剣は当たった・・・・感触からして・・・・真上だ!!!」
オボロがその手に残った剣で切った感覚から、蒔風の逃走経路を推察、そちらを見る。
はたして、蒔風は確かにそこにいた。
だが、上空だからどうという事はない。
観鈴が真っ先に飛び出していって、そこから逃がさないように衝撃波を撒き散らして突っ込む。
今の蒔風は満身創痍だ。
それに対し、観鈴は万全の状態。
彼女の攻撃は衝撃波たった一つだが、その威力は猛烈だ。
かつて彼女の先祖であった者が、取り囲んだ僧兵数百人をその地形ごとまとめて吹き飛ばしたのだから。
だが、頭から血を流し、脇からは出血し、喉の奥から血がいまだにこみあげてくる蒔風は、苦しそうな顔をしながらもそれに向かって幾分も臆することはなかった。
後ろの腰辺りから何かを取り出し、それを起動させて握りしめると、それが体内の中に入って行った。
「!?」
「これを使うのはもっと後だと思ってたけどな・・・・・」
瞬間、無数の剣が上空に現れ、彼女たちを一斉に襲った。
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「こんな・・・・もんかな・・・・・は・・・はは・・・・・」
血だまりの中に、蒔風が立つ。手にはハクオロを始め、オボロ、クロウ、トウカ、カルラ、ドリィ、グラァ、ウルトリィ、響鬼のカードがあった。
しかしながら、この血は彼らのものではなく蒔風一人のものだ。
周囲の木々は幾本か倒れ、突き刺さっている数十本の剣は次々に砕けて消えていった。
「アアアアアアアアアアア!!!!」
ゴォン!!!!
その蒔風の右から、暴走したカミュ、かつてはムツミと呼ばれた状態になって殴りかかった。
しかし、その様子はかつての落ち着きはらったものとは違い、黒眼はなく、その表情が激怒のものへと豹変してしまっていた。
そのムツミを、蒔風が両手でその衝撃を受け止めながら、苦しそうにではあるが呟く。
「これは・・・・なるほど・・・・「その人格」の人物には・・・翼人の素質があったようだな・・・・だが・・・・」
バァン!!!
「翼人が転生したところで、翼人になれるわけではない!!!」
ムツミの拳と、蒔風の両手の間で生じていた衝撃が破裂するように吹き飛び、両者を吹き飛ばす。
大きな木に背中を打ちつけるムツミ。
だが、その脇腹にドッ、と短剣が突き刺さって、身体がぐらりと揺れ、カードへと変わってしまった。
その反対側では蒔風が息を切らしながら膝立ちになり、短剣を投げたままの姿になっていた。
観鈴はすでに吹き飛ばされていってしまっている。
あの無数の剣の雨から皆を守ろうとしたのだが、その物量の多さに押し負け、弾き飛ばされていってしまった。
往人はその彼女を守ろうとして飛び付き抱きしめたが、その勢いの強さに一緒になって飛んで行ってしまったのだ。
「ハァ・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・・やっ・・・・た・・・・・」
そこまで言って、ドサリと倒れ込む蒔風。
意識が遠のく。そうして、最後に見たのは一人の少女の姿だった。
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「ッッ!!!??」
それからいくら貸して、蒔風が目を覚ます。
飛び跳ねるように上体を起こし、痛みにすぐに蹲る。
「目を・・・・覚ましましたか」
「!!!!!・・・・・・エルルゥ・・・・」
声に振り返ると、そこにはエルルゥがいた。
蒔風が自分の体をよく見ると、簡単にではあるものの包帯が巻かれている。
そのエルルゥに、蒔風が膝立ちになって剣を向けた。
「お前・・・・オレが何だかわかってんのか?」
「はい」
「敵だぞ!!!」
「ですが、怪我人です」
「な・・・・・・!?」
エルルゥは言う。
確かに、あなたは敵だ。自分の大切な人を消したし、今までだって何人も。
でも、それでも自分は薬師なのだ。
怪我人を治すのが自分の役目だ。
それは敵であろうと、変わらない。
「ダメだ・・・・ダメなんだよ!!!!オレは・・・・・」
そのエルルゥに、蒔風が首を振り、剣が揺れる。
「私は、あなたを許しません」
「え?」
「確かに、私はあなたを少しだけ診ました。しかし、それは薬師としてだけです。私個人は、あなたの敵です」
その瞳には、確かな決意があった。
私は私の誇りにかけて、目の前で傷ついた人を治す。いくらそれが敵であっても。
それでいて、この少女は蒔風に対する敵意を持ったままだった。
一体、どれだけ強い思いなのだろう。
相反する思いを抱きながら、その使命と誇りを全うしきる、その心は。
その想いに、蒔風が驚いたように目を見開く。
そして俯き、短く言った。
「オレは、敵だ」
「はい」
「オレを許せるか」
「現在では、何を言われてもあなたを許すことはできません」
「そうか」
エルルゥは思っていた。
いくら弱っているとは言っても、蒔風を自分が倒すことは不可能だ。
それに、誰かを倒すなんてことが、自分にできるはずがない。
相手は蒔風舜。
世界最強。そして、一級品の暗殺者なのだから。
「それでも、憎むことはできます。私はあなたを許さない」
「そうか・・・ならば安心だ」
俯いたまま、蒔風が剣を収める。
そして
「すまない」
そう一言言って、彼女の後頭部に手刀を当てて倒す。
エルルゥは、痛みすらも感じなかった。
だが、その瞬間の彼は、いつもの彼が悲劇に泣いているかのように、エルルゥには見えた。
「は・・・は・・・・・・なんだよ・・・こんなんで崩れんなよ・・・・・・」
エルルゥのカードを手に、蒔風が慟哭するように呟く。
その顔は今にもグシャグシャに崩れてしまいそうで、それでいて悪役の一片を残していた。
「せっかくここまで悪役やってんだぞ・・・・・もう賽は振っちまったんだ!!最後までやるしかないんだよ・・・・・!!!」
そうして、カードを閉まって、心を練る。
呼吸を取り戻して、飛び立っていく。
揺るがない。
揺るぐわけにはいかないんだ。
一人たりとも逃さない。
これが、オレの正義だから・・・・・・
オレは、こうしないと貫けないから・・・・・・・
to be continued
後書き
エルルゥ
「蒔風さん、なんだか悲しそうでした・・・・」
ハクオロ
「どういう事だ?やはり何が思惑があるという事か?」
オボロ
「それはまあエルルゥにしかわからないな」
トウカ
「それよりもあの力はなんだったのか、だ」
響鬼
「一体何したんだろうねぇ?」
カルラ
「ああもう!!一撃入ればどうにでもなると言うのに!!!」
クロウ
「あ~あ、やられてしまいましたか。大将は逃げられたみたいですけどね」
皆さん御疲れですたー
全員
「ですたー」
マーク
ハクオロ達・・・ハクオロの仮面を正面から見たシルエット(オリジナルで考えました)
響鬼・・・従来のものと同じ
あと忘れていたので
レナ・・・鉈
圭一・・・バット
沙都子・・・紐とタライ
詩音・・・スタンガン
魅音・・・モデルガン
鈴、来ケ谷、葉留佳・・・リトルバスターズのロゴ
今回、何かをちらつかせてみました。
早かったかな?とも思いますけど、これからはまたどんどんやられていってしまうと思います。
ハクオロ
「次回、蒔風を知る者」
ではまた次回
リスト残り
キョン
朝比奈みくる
長門有希
古泉一樹
べナウィ
泉戸裕理
泉戸ましろ
城戸真司
秋山連
吉井明久
姫路瑞樹
島田美波
木下秀吉
土屋康太
津上翔一
芦原涼
氷川誠
上条当麻
インデックス
御坂美琴
クラウド・ストライフ
古手梨花
古手羽入
国崎往人
神尾美鈴
小野寺ユウスケ
海東大樹
野上良太郎
モモタロス
ウラタロス
キンタロス
リュウタロス
ジーク
デネブ
直枝理樹
井ノ原真人
宮沢謙吾
乾巧
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セイバー
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