Three Roses
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第三十一話 論戦その十三
「こうした時も」
「せめてと思いますが」
「どうしても他の方とはですね」
「ご一緒になれない」
「そうした方ですね」
「はい、そのことがどうしても」
マリーは憂いに満ちた顔で言った。
「気になりました」
「ですがこれで論戦は終わりました」
「その全てが」
「結果は引き分けとなり」
「それで終わりました」
「目的を達成しました」
マリーはこのことには満足していた、彼女の望み通り論戦は引き分けに終わった。そのこと自体はよしであった。
だからだ、このことには素直にこう言えた。
「これで次につなげられます」
「儀礼のことですね」
「そちらの改訂ですね」
「それに進められますね」
「新教を優位としますが」
ここが太子とは違った、太子は旧教を優位にではなく第一、即ち当然のこととし新教はその立場から信仰を寛容さを以て認めるというものだからだ。最初から国家の秩序として新教を優位としつつも新旧の併存を考えているマリーとは違うのだ。
「新旧のです」
「折衷ですね」
「それを行いますね」
「次は」
「そちらにしますね」
「そうします、ただこの時も」
マリーはこれからのことも考えつつ述べた。
「注意が必要です」
「太子ですね」
「あの方の動向が」
「そうです、やはりです」
どうしてもというのだ。
「あの方の動向です」
「それが大きいですね」
「あの方、即ちロートリンゲン家ですね」
「あの方がどうされるか」
「それが儀礼にも関わってきますね」
「そうです、そしてさらに先のことですが」
マリーはさらに言った。
「あの方がお姉様との間にお子をなせば」
「そのお子を、ですね」
「次の王にされようとする」
「その時にどうするのか」
「そのことも大きなことですね」
「私はまだ夫もいません」
従って子をなすことも出来ない、人は男だけでは女だけでは子をなすことが出来ない。それこそ聖母でもない限りだ。
だからだ、マリーはこうも言った。
「今まであえて考えてきませんでしたが」
「はい、マリー様もですね」
「伴侶を得られますか」
「そうしますか」
「王にもお妃様を娶って頂き」
こうも言った。
「そしてです」
「そのうえで」
「さらにですね」
「マリー様も王もお子をもうけられる」
「そうされていかれますか」
「エヴァンズ家の血を絶やさない為にも」
王家としての至上の命、それを果たす為にというのだ。
「私も考えさせて頂きます」
「ではです」
「そのこともこれから真剣に考えていきましょう」
「そしてそのうえで」
「政を進めていきましょう」
ロドネイ公達も応えた、そうしたことを話してだった。マリーはまずは論戦が終わったこと、引き分けられたことに安堵していた。しかし喜んでおらずすぐにこれからのことを考えていた。
第三十一話 完
2016・11・11
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