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【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)

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26 決戦 その二

 戦いが一日で終るという事は基本的にまず無い。
 接敵からの遭遇戦から戦いに移り、余力があれば次の日へと戦いが繰り返されるのだ。
 ちょうど、今、目の前に広がる光景のように。

「死者はまとめてロシュフォル教会に運べ!
 蘇生はそっちでまとめて行う!
 陸路は帝国軍が見張っているから、船で運ぶぞ!!」

「魔術師は今のうちに休んでおけ!
 警戒はニンジャ部隊が行う!」

「食事の配給はこっちよ♪
 酒も少しだけどあるわよ♪
 明日がんばれるならば、女の手配もしているわよ♪」

 神聖都市アルカション防衛部隊の士気は崩壊していない。
 人は、食べ物と酒と女が途切れないならば、結構がんばれるのだ。
 そんな事を思いながら、かぼちゃパイをスープに浸しながら口を開いた。

「みんな今日一日ご苦労様。
 という訳で報告して頂戴」

 兵や休めても将は休めないのがつらい所である。
 城壁防衛部隊のミツイエが最初に報告する。

「守りきったが、城壁はぼろぼろだ。
 ゴーレムに修復を命じているが、どこまで直るかわからん」

 兵が少ないこちら側は城壁は生命線だ。
 これが破れると、住民は避難させたとはいえ、市街戦になる。
 魔法部隊を率いるオデットが次に口を開く。

「こっちは疲れているけど、マジックリーフがあるからなんとか持つと思う。
 だけど、直接攻撃は弱いから、市街戦にもつれ込んだら対処できないわよ」

「私達も同じです。
 街の中で組織的に回復できるのが強みですから、これが崩された我々も疲弊して使い物にならないでしょう」

 オデットに続いて回復部隊を率いるエリナも口を揃える。
 私は確認の為に頷いて皆に尋ねた。

「で、明日までこの城壁は持つと思う?」

「無理だな」

 即答で答えたのは城壁守備の将の一人であるカゲイエだった。
 それに外で後方撹乱をしていたコリが話を引き取る。

「地図を見てくれ。
 ソミュールを攻める為には帝国軍は橋を渡らないといけないんだ。
 今日の戦いで、ソミュールが落ちなかったのは、北の橋をこちらの後詰部隊が遮断しようとしたからだ。
 帝国軍のやつらはそれを見越して、西の橋から撤退していきやがった」

 コリ達ニンジャを戦場に使わなかったのはこのためにある。
 敵の情報が欲しかったのだ。
 制空権は帝国軍にある以上、情報を確実に集めるには彼らニンジャ部隊の偵察と後方撹乱にかかっていた。

「川がある以上、うちの水上部隊が邪魔になる。
 かといって、ソミュールを落とさないと先へ進めない」

 私は地図のある一点を指差す。
 つまり、私達の居るアルカションを。

「この街、唯一帝国軍側から見て、川が邪魔していないのよね。
 で、ここを落とせばソミュールへの水上部隊の後詰も遮断できるわ」

 ため息をついて一同を見渡す。
 私が言いたい事が分かったらしく、みな私と同じような顔をしていた。

「明日の帝国軍の攻勢正面は、ここアルカションよ」

 帝国軍の戦力は30000。
 初日の攻勢で一割の損害が出たとしても、27000の戦力が残っている。
 なお、これには天宮シャングリラの黒騎士ガレスの10000は除外しているのが頭の痛い所だ。

「戦力は集中させてこそ効力を発揮するわ。
 敵の攻勢正面がここならば、本陣5000は置いといて、15000はここに出してくるでしょうね。
 残り7000はソミュールとラロシェルの警戒に置いておくって所かしら」

「姫様の戦力配置なら、リモージュの兵が転用できるのでは?」

 オルシーナが私に質問するが、私は首を横に振った。

「リモージュにもいやがらせの兵ぐらい用意するでしょう。
 勝負は西よ」

「西?」

 ラロシェルとソミュールが打通できるかが勝負となる。
 ここが連絡すれば、合計の兵力は9000。
 今日の戦いで消耗したとしても8000の部隊運用が可能になる。
 それが、横から帝国軍主力を殴れば戦いは一気にこちらの有利になる。

「問題は、どこから兵力をかき集めるかなのよね……」

 アジャンを警護していたデュランの1000をこっちに呼んでも、ケートーの水上部隊が抜けた穴が開いている。
 デボネア将軍の部隊からの支援が期待できるとは言え、ロシュフォル教会と北の橋の守りで手一杯だろう。

「ご心配いりませぬぞ。
 エリー殿」

 声の方に振り向くと、宮廷魔術師のウォーレンが立っていた。
 デネブに頼んでテレポートでも使ったのかもしれないなんて思っていたら、彼が書状を私に手渡す。

「大将軍の提案でございます」

 書状を読む手がわなわなと震えて、私は叫ばすにはいられなかった。
 それを見る皆の顔がにやけているが知ったことではない。


「ば……ば……馬鹿デスティンっ!!!」


 翌日。
 帝国軍の攻勢は予想どおり私達の居るアルカションに戦力を集中させてきた。

「帝国軍来ました!
 ワイバーン二匹!ワイアーム四匹!!
 ホークマン達も周囲に展開しています!!!」

「地上軍ヘルハウンド八匹!サラマンダー三匹!ディアマッド三匹!確認!!」

「弓兵射撃開始!
 魔法兵法撃開始!!
 ウィッチはチャームをかけて同士討ちを狙いなさい!!」

「敵ドラゴンのブレス直撃!
 城壁が持ちません!!」

 私は大声で叫ぶ。
 それが士気をあげると知っているからだ。

「援軍が来るわ!
 それまでなんとしても持ちこたえなさい!!」

 私の声にコリが即座に続く。
 サクラって大事である。

「味方が来たぞ!
 西の橋を見ろ!!
 持ちこたえられるぞ!!!」

 アジャンを警護していたデュランの1000である。
 確実に来る援軍だから、士気高揚に使わせてもらう。
 とはいえ、1000しかないから帝国軍は西の橋に部隊を配置してそこから先に進ませない。

「こっちも味方が来たぞ!!
 デボネア将軍の騎士団が北の橋を突破したぞ!!!」

 カゲイエの叫び声に歓声があがる。
 とはいえ帝国軍は強大だ。
 制空権も向こうが握っている以上、常に衝撃を与え続けないと最後は押しつぶされる。
 だからこそ、衝撃のトドメは意外性にとんだものでなければならない。

「ちょっと嘘でしょ!
 あれ国王旗じゃないの!!
 じゃあ、あの対岸に居るの近衛騎士団!?」

 ヴェルディナの叫び声に兵たちがざわめく。
 もちろん知っているけど士気高揚の一芝居だ。
 ミツイエも同じく続く。

「冗談だろう!?
 リヒトフロス王国の旗と女王旗もあるぞ!!
 国王陛下だけでなく女王陛下まで出撃してきやがった!!!」 

 足りない兵をどこから持ってくるか?
 その答えがこれだ。
 総予備である近衛騎士団の出陣である。


「嵐雲から出し雷獣よ!その鉤爪で土地を引き裂かん!!サンダーフレア!!!」


 敵航空部隊をサンダーフレアで焼いているフレイアがえらく目立つ。
 あれ、ラウニィーか。

「オデット!
 ウィッチ達はコールストームをかけ続けなさい!!!
 嵐を起こしてあのフレイアの支援を!」

「了解!
 天を乱し雷豪を呼べ、風神の怒りを我らに示せ!コールストーム!!」

 北の橋の対岸に陣取る近衛騎士団。
 デボネア将軍の騎士団の北の橋突破は彼ら近衛騎士団が展開するスペースを作るためだ。
 敵は大軍ではあるが、総大将が二人居てその二人が後方に居るのが裏目に出た。

「こちらは大軍だ!
 全部潰せばいいだろうが!!」

「さっさと目の前の街を落としてしまえばどうにでもなるだろうが!
 周りの雑魚は無視しろ!!」

「雑魚だと!?
 敵は国王と近衛騎士団を出しているのに無視しろと言ったか!?」

「とにかく将軍の指示を仰いで……」
「ガレス様がいらっしゃるのに何で将軍の指示を優先させるんだ!」

 衝撃の困惑が混乱に変わるのにはさして時間はかからなかった。
 近衛騎士団という餌につられて帝国軍は攻撃方向を北の橋とアルカションに分けてしまう。
 嵐が本格化してサンダーフレアが派手に乱舞しだすと制空権どころではなくなる。
 雨が将兵の体力と気力を奪う。
 そして、最後の衝撃が来た。

「見て!
 アッシュ将軍よ!
 アッシュ将軍が帝国軍の背後を叩いてる!!」

 リモージュを守っていたアッシュ将軍の部隊が帝国軍の背後から襲っている。
 遠目だが、あの兵力はリモージュ守備隊の全力に近いように見えるが、どうやって牽制しているだろう部隊を排除した……あ!?
 余裕ができたので、ポケットに入れていたパンプキンパイを口に入れる。
 その材料であるパンプキンヘッドは最高の囮になる。
 ゼノビア攻略戦で私がやった手だったのに綺麗に忘れていた。 

「近衛騎士団も突撃しだした!
 私達も打って出るわよ!!」

 私が大声を出して城門めがけて駆ける。
 周囲の護衛だけでなく、まだ動ける将兵達が私の周囲に集まる。

「敵が崩れた!
 北西方向に敗走中!!」

「西の橋の援軍も突破したぞ!」

「門を開けなさい!
 追撃するわよ!!」 

 城門が開く僅かの間に私は現実にかえる。
 ここで追撃しても潰せるのは五千から一万という所だろう。
 という事は、その気になれば今日と同程度の兵を繰り出すことができる。
 フィガロ将軍は無能ではないし、こちらは完全に気力体力が消耗し尽くしてしまっている。
 コールストームによる嵐は諸刃の剣なのだ。
 また明日も帝国軍はやってくるに違いない。
 その時が、じっと待機しているデスティンの天宮シャングリラ急襲の時。
 城門が開いたので私は昨日と同じように戦場に身を投じた。

 まだ、この決戦の勝者は決まっていない……
 
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