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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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最後の一人

 
前書き
今日ポケマガでウェンディ・ベルセリオンを無料で読み返したけど、扉絵のアイリーンの格好したウェンディ見て、みんなスリット高すぎじゃね?なんて思ってみた。うちの子も穿いたけどね、変装でだけど。 

 
「ねぇ、まだ~?」
「落ち着こう!!セシリー!!」
「もうすぐ着くと思うわよ」

乗っている船から身を乗り出すのではないかというほど顔を出しているセシリーを引っ張って落ちないようにしているサクラ。そしてどこかのセレブでも気取っているのか、大きなサングラスをかけてテラスで寝ているシャルルが到着するのを今か今かと待ち望んでいる少女に一言そう告げる。

「今頃レオン、悔しがってるだろうなぁ」
「シリル、悪い顔になってるよ」

そんな彼女たちを遠くで眺めながら自宅に残された少年のことを思い出す。俺たちは今、しばしの休息と銘打って色々とお出掛けしているのだが、レオンはそれに同行することが出来なかった。理由はもちろんあの大ケガ。あの状態の彼をつれ回す訳には行かないので、置いてきた次第だ。
ただ、彼は今から行くカラコール島という場所に非常に関心を示していた。その理由は、その島の名産品であるスターマンゴーというものらしい。どんな味なのかまでは知らなかったようだけど、非常においしい果実だそうだから、是が非でも食べたかったらしいのだ。

「お見上げにいっぱい買っていってあげよ」
「頼まれてたしね」

俺たちと一緒にその場にいた少年の幼馴染みがそう言う。彼は彼女の足にしがみついてスターマンゴーを買ってきてもらえるように懇願していたのが脳裏を過る。あいつは食べ物のことになれば、プライドも何もかも捨てて子供のようになることができるのだと今日初めて知ったよ。
それだけ食べることが好きなんだろうけど、なんで太らないんだろう。もしかして魔力が高くて代謝が高いとか?それだとあの体にも大食いなことにも納得できる。

「ね~!!あれがカラコール島~!?」

この場にいない人物のことで盛り上がっていると、ずっと身を乗り出していた少女が船の進行方向に目的の島を見つけたらしく、満面の笑みでそちらを指差す。

「そうみたいね」
「すごい!!私初めてフィオーレから出ました!!」

サングラスを上げて彼女の見つめる先を見るシャルルとセシリー同様にはしゃいでいるサクラ。実を言うと俺とウェンディも初めてフィオーレから出たんだよね。カラコール島ってところは観光地でフィオーレ領土じゃないらしいから、外国というものになるらしい。楽しみだなぁ、どんなところなんだろう。



















それから島へと上陸した俺たちは島の中心へと歩を進めていく。その際外国に入る訳だから、何かしらの手続きでもするのかと思っていたら、何事もなく入れたのでちょっとびっくり。観光地だから開放的ってことなのかな?なんだか他の国に来たって印象を受けないなぁ。その方が気が楽だけど。

「早速スターマンゴーを探してみよう!!」
「「「「オォー!!」」」」

この街の特産品であるスターマンゴーがどこに売っているのかをみんなで回ってみることにする。ついでにどんなものがあるのか見て回ってみるか。



















「ここにベンチがあるよ!!」
「みんな座ろっ!!」

簡単に街の中を見回ってきた俺たちは頼まれたものとそれに纏わるあるものを購入し、ベンチへと腰かける。そして買ったあるものへと手をつけた。

「スターマンゴーのジェラートだって」
「こんなのあるなんて知らなかったなぁ」

俺たちが見つけたのは特産品であるスターマンゴーで作ったジェラート。そんなものがあるなんて知らなかったから、これは試してみないとと全員で買うことにしたのだ。

パクッ

溶ける前にと早速一口スプーンで掬い口へと運ぶ。

「「「「「おいしい!!」」」」」

そのあまりの美味しさに思わず声をあげる。冷たくて甘くて、なんだかいくらでも食べられちゃいそうだよ。

「レオンに言ったらショック受けちゃうね」
「さすがに持ち帰るわけにはいかないわね」

スターマンゴーを非常に楽しみにしていたレオンにこんなのもあったんだと伝えたら、きっと悲しくて放心状態になるだろう。でも、ジェラートを持ち帰るには距離がありすぎる。レオンなら彼の氷の魔法で溶かさないこともできるけど、肝心の本人がいないんじゃお話にならないよね。

「じゃあレオンの分も食べてあげようかな?」
「それじゃあ太っちゃうよ~」
「そんなシリル先輩見てみたいです(笑)」

冗談を交えながらスターマンゴーのジェラートをどんどん食べ進めていく。本当に美味しくて何個でも食べたくなっちゃうなぁ、もう一個買っちゃおうかな?
そんなことを思いながらお店の方を見ると、思わず固まってしまった。

「どうしたの?シリル」
「何かした?」

俺が急に動かなくなったので不思議に感じたウェンディとシェリアもそちらを見る。すると、彼女たちも同様に固まった。続けてサクラたちとそちらを見るが、その反応はやはり俺たちと同じもの。でも、それも無理ないような気がする。なぜなら、俺たちの目の前を見たことがないような美女が通っていったのだから。

「すごい・・・」
「キレイ・・・」

思わず感嘆の言葉が漏れる天空の竜と神。前を優雅に歩いていく黒髪のロングヘアの女性に見惚れていると、彼女は先程俺たちがジェラートを購入した屋台のようなお店のカウンターの前に立つ。

「髪キレイですね・・・」
「あんなのもいるのね」
「どこの人なのかな~?」

エルザさんやカグラさんといったキレイな女性は見たことはあることはあるが、彼女のそれらの美女たちを遥かに上回る美しさを備えている。髪を耳にかける動作からお店の人を呼ぶ動きまで、すべてが優雅に見えてしまうから不思議だ。

「スターマンゴーのジェラート十個ください」

ドテッ

だが、彼女の注文が聞こえた瞬間、すべてのイメージが崩れ去った。

「え?そんなに食べるの?」
「一人・・・だよね?」
「連れが居ても十個は多いと思うけど・・・」

美しい見た目とは裏腹によく食べるということなのだろうか?それでも十個は多いだろうけど。

「一人で食べるのかい?」
「ううん、お土産。だからこれに入れて」

不思議に感じた店主が声をかけると、彼女は氷でできたようなクーラーボックスを取り出し、それに入れるように指示をする。

「なんだ、そういうことか」
「ビックリしちゃったね」

それを聞いて俺たちも思わず安堵する。まさか一人で今すぐ食べるんじゃと心配していたから、お土産で、しかも事前に持ち帰る準備までしていたのだから。

「はい、これ特別に一個サービス」
「本当!?ありがとう!!」

たくさん買ってくれたからなのか、はたまた彼女が美人だからなのかはわからないが、店主がクーラーボックスに入れたのとは別に一個ジェラートをサービスしてくれた。

「じゃあ早速食べちゃおっかな?」

そう言って彼女はベンチがいくつかある場所・・・つまり、俺たちの方へとやって来る。

「あら?こんにちは」
「「「こんにちは」」」

何気なく目が合ったのでニコッと微笑みかけてくる女性。それに対し俺たちもペコッと頭を下げて返す。

「みんな可愛いね、女子会?」
「違います」

隣のベンチに腰掛けながらサラッとそんなことを言ってくるので即座に否定する。これは単なるお出掛けであって、決して女子会などではありません。

「どこから来たの?」
「フィオーレから来ました」

観光だとわかっているようで出身地を聞かれた俺たち。なので、ウェンディがそう言うと女性は何やら嬉しそうな顔をする。

「えぇ!!私もフィオーレ出身なんだよ!!」
「「「「「えぇ!?」」」」」

これには思わず驚愕してしまう。でもさっきの観光船には居なかったなと思い尋ねると、今はフィオーレとは別の大陸に住んでいるらしく、今日はたまたま俺たちに出会った次第らしい。

「へぇ、いくつくらいなの?」
「あたしは15!!」
「俺は13です」
「私は12歳です」
「私は10ですよ!!」

レオンがいるとシェリアからウェンディまでの年齢が連なるんだけど、今日に限って彼がいない。まぁ、連なってるからなんだって話ではあるんだけど。

「いいなぁ、可愛い盛りだね!!」
「いえ、あなたの方が美人ですよ」

一番年下のサクラの頭を撫でつつ頬を緩ませる女性。彼女にウェンディがそう言うと、嬉しそうに笑みを浮かべる。

「ちなみにいくつくらいなの~?」
「あ、バカ」

年齢の話になって彼女の年が気になったセシリーが女性には答えにくい質問をぶつけてくる。

「ん?21だよ」

シャルルは友の質問に呆れ返っていたが、彼女はまるで気にした様子もなく回答する。21か、それならまだまだ若いから気にならないのかも・・・ん?

「あの・・・ちなみにお名前は?」

21という数字が引っ掛り、彼女の名前を聞いてみることにした。なんだろう、誰か21歳の人で知ってる人がいたような・・・

「私はリュシーっていうんだ。イシュガルだとそれなりに有名だと思うけど、みんなはまだ小さいからわからないかな?」

おまけでもらったジェラートを食べながら笑顔でそう語るリュシーさん。リュシー・・・リュシー?

「「「「あぁ!!」」」」

名前を聞いてそれに覚えのある四人が顔を見合わせ声をあげる。何も知らないシェリアとサクラ、リュシーさんは面を喰らっていたけど。

「リュシーさんって、エルザさんが言ってた・・・」
「聖十大魔導のBIG3の~!?」
「「えぇ!?」」

イシュガルの中でもっとも優れた十人だけが選ばれる聖十大魔導の中でもイシュガルの四天王に次ぐ実力を保有していたとされる三人。俺が知っているところだとカミューニさんとノーランがそれなんだけど、最後の一人・・・名前と女性ということだけはエルザさんから聞いていたけど、この人だったなんて・・・

「エルザって、エルポヨのこと?みんなはあの子の知り合いなの?」
「同じギルドだったんです」
「あの子って・・・」

確かエルザさんの方が年上だったはずだけど、まるで年下の子を指すような話ぶりに苦笑い。なんか緩そうな人だし、気にしたら負けか。

「懐かしいなぁ、エルポヨは元気?」
「た・・・たぶん」
「元気なんじゃないですかね?」

しばらく会ってないもんだから元気かどうかなんてわかりやしない。歯切れの悪さに何か事情があると察したリュシーさんは、何も聞かずに別の質問を振ってくる。

「私も名乗ったんだし、みんなの名前も教えてよ」

ニコッとキレイだけどどこかあどけなさが残る笑顔。それに親近感を覚えつつ、全員が名前を答えていく。

「私はウェンディです」
「シリルと言います」
「シェリアです」
「サクラで~す!!」
「シャルルよ」
「セシリーだよ~」

それぞれが名前を答えると、彼女はなるほどと言った後、何か引っ掛かったようで首をかしげる。

「あれ?シルルンって男の子の名前じゃなかったっけ?」
「「ぶふっ!!」」

妙なニックネームに思わずセシリーとサクラが吹き出してしまった。エルザさんをエルポヨと呼ぶだけでもすごいのに、ここまでパッとあだ名が出てくるとは・・・すごいんだか変な人なんだか判断がしづらい。

「俺、男なんですけど・・・」
「え!?そうなの!?」

この上ないほどに驚愕の表情を見せた後、間違えてごめんと謝罪をしてくるリュシーさん。いいんだけどさ、もうお決まりのパターンだからさ・・・

「いやぁ、なんかみんなを見てると妹を思い出すんだよねぇ」
「妹・・・ですか?」

気まずくなったからか強引に話題を変えようとしてくるのはいいんだけど、ここで妹の話する?ますます女の子扱いされてるみたいでテンション下がるんだけど・・・

「うん。たぶん生きてれば15になるはずだから、アンアンと同じくらいかな?」
「生きてれば?」

妙な単語に嫌な予感が脳裏を過る。ちょっと嫌な汗を額に感じていると、リュシーさんは平然とした表情で話し出す。

「ずっと前にね、死んじゃったんだ」

その言葉に思わず押し黙る一同。予想してはいたけど、改めて言われるとかける言葉がなくなってしまう。

「あ!!ごめんね、変な話しちゃって」
「いえ・・・」
「私たちこそすみません・・・」

重たくなった雰囲気。しかし、リュシーさんはそれを変えようと会話を進める。

「あ~あ、みんなが妹になって・・・あ、一人男の子か」
「俺がいじられるのか!?」

ポンポンと頭を叩きながら大笑いしている彼女とそれに釣られる俺たち。でも俺は心穏やかじゃないぞ?結構ダメージ受けてるぞ?

「あ、もう私行かないと」
「え?もうですか?」

大笑いしていたかと思ったら、リュシーさんは突然立ち上がって立ち去ろうとする。さっき来たばっかりなのに、もう帰っちゃうの?

「ここにはちょっと立ち寄っただけだからね、もう船が出ちゃうから行かないと」

どうやら観光ではなく単なる寄り道で来ただけらしい。もう少しお話ししていたいけど、船が出ちゃうなら仕方ないか。

「今日はありがとね、おかげでリフレッシュできちゃった」
「あたしたちも目の保養になったね・・・」
「キレイだもんね・・・」
「羨ましいです」

彼女に聞こえないほどの声でゴニョゴニョとお話ししているシェリアたち。そんな彼女たちを尻目に、リュシーさんは手を振って立ち去っていった

「リュシーさんの妹か~」
「なかなかキレイな子になりそうよね」

もしその子が生きていたら、一体どんな女性になっていたのだろうか。きっと彼女に似た黒髪のキレイな女性になっていたんだろうなぁ。

「シリル!!」
「は!!はい!!」

妄想に入り浸っていると、後ろから殺気の混じった声が聞こえ背筋が伸びる。その声の主の方へと振り返った俺は、冷や汗が止まらず体が震える。

「あんまり変なこと考えないようにしようね?」
「も・・・もちろんですよ・・・」

笑顔のはずなのにものすごい恐怖を感じる。ウェンディって俺に対してだけ時々ものすごく攻撃的になるよね!?てかウェンディも見惚れてたんだから、ちょっとくらい許してよ・・・



















第三者side

「お待たせぇ!!」
「リュシー様!!」

シリルがウェンディに怒られていた頃、彼女たちとお別れをした女性は港にある巨大な船の前で辺りを見回す男たちに手を振る。

「勝手に出歩かないでください」
「探したんですよ」
「いいじゃん少しくらい」

彼女の持つクーラーボックスを奪うように預かり兵隊たちが前を歩いて誘導する。注意された女性は不機嫌そうに頬を膨らませていた。

「何日くらいでつく予定なの?」
「三日ほどで到着すると思われます」

船に乗り込みながら今後の予定等の確認を行いつつ、歩いてきた道の先を見据える。

「は~あ、またいつか会いたいなぁ」

頭の中に浮かんでくる六人の少女たち。そして、その後に出てきたのはずっと前の記憶なのに、いまだに鮮明に覚えている小さな少女。

「あんな風になったのか、あの子は」

はぁ、とため息をつくと、後ろから兵隊たちに急かされ重たい足を前へと運ぶ。彼女は船に乗った後も、しばらく出会った少女とある時で止まる妹とを重ね合わせていたのであった。





 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
オチが予想と違くなりましたが、まぁよしとしましょう。
リュシーの妹は皆さんおおよそ検討がつくんじゃないかな?そんな気がしてならない。
次はちょうど季節なのでバレンタインネタでもやってみようかと思います。バレンタインに間に合うかは甚だ疑問ですが。 
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