FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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前書き
二月に入ったのに雪が降る量が多くて大変な今日この頃。車が途中で止まりかけて大分焦りました(笑)
シェリアside
「腕一本・・・だと?」
あまりのとんでも発言に顔中から血管が浮かび上がっているエーメ。こんな体中ケガしている少年と戦うだけでも相当なハンデがあると思うところなのに、その人物からそんなことを言われたらこう反応してもおかしくはない。
「お前、本気で言ってんのか?」
「ん?」
もしかしたら自分たちを動揺させるための作戦かもしれないとカラスが確認してみるけど、当の本人にそんな様子は一切なく、目を回しているラウルをあたしに手渡しており、ますます苛立ちを増幅させている。
「面白ぇ・・・エーメ!!」
「なんだ?」
巨大なヌンチャクを持つ手に力が入りまくっており、ブルブルと小刻みに震えてさせている青年は後ろの女性にある許可を取ろうとしていた。
「こいつは俺が一人で倒させてもらうぜ!!」
「いいだろう」
彼の挑発に乗っかってなのか、プライドを守るためなのか、もしかしたらその両方なのかもしれないけど彼の相手を買って出たカラス。ポニーテールの剣士も彼のこの判断には賛同らしく、黙って戦うのを見守ることにしていた。
「その舐めた口を二度と利けなくしてやるよ!!」
高い跳躍力を生かしレオンの真上へと飛び上がる男性。彼を視界に捉えようと少年も顔を上げようとしたけど・・・
「アイタッ」
ケガのダメージで上を見ることができない・・・って!!
「「「「「えぇ!?」」」」」
首を傾けることすらできないのに戦おうって無理ありすぎなんじゃないの!?それによく考えたらレオンって右腕一本で十分って言うより右腕しか動かせる場所がないの間違いだよね!?
「もらったぁ!!」
「「「「「レオン(さん)!!」」」」」
どう考えたってヤバイとしかいいようがないこの状況。呑気に首を押さえていた少年に無情にも大きな一撃が降り下ろされた。
「危ね」
無防備な頭上目掛けて降り下ろされた一撃。しかし、それは彼の脳天には届かない。ギリギリのところで少年の手によって受け止められ、キャッチされていたからだ。
「お前には魔力があって助かったよ。それを頼れば姿を確認できなくとも動きを予測することは可能だからね」
カラスは一応魔導士であるらしく、わずかながらに体内に魔力を宿している。それを頼りに敵の居場所、動きを感じることはできる。でもそれだけをヒントにするのはもちろん難しい。普段は目で敵の動きを追っているわけだから、慣れていないだけにうまく行くことは難しいと思う。それができる大きな要因はなんといっても・・・
「実力に差があるから、だよね」
「そう思うよ」
力に大きな開きがあればある程度の予測で動いてもわずかなら修整するだけの余裕を持つことができる。この二人の場合開きが大きいから、もしかしたらかなり余裕を持って受け止める位置を調整できたのかもしれない。
「くっ・・・だが・・・」
少年のバカ力で武器を取り戻すことができない青年は顔を歪める。しかし、なぜかそこから不敵な笑みを浮かべた。
「まだこっちにも秘策はある」
その瞬間自身が掴んでいる方の棒を強く握り締めるカラス。その瞬間、レオンが苦痛の表情を浮かべた。
「っ!!うあ・・・」
さっきまでは意識して敵の武器を掴んでいたのに、今彼はそれを離そうと必死になっている。それなのに武器が手から離れない。その理由はすぐに判明しました。
「まさか、武器から電流を流してるの?」
おそらく魔力を武器を通して敵へと流すことで電気へと変換してるんだと思う。電気が流れれば筋肉は硬直し、動きが封じられる。その間に攻められたらどうしようもないよ!!
「残念!!そのケガにこれは響くだろう?」
明らかに大打撃を受けているはずの少年。それなのに彼は、苦痛の表情から一転、イヤらしい笑みを浮かべます。
「お前・・・アホだろ?」
「はっ?」
何を言っているのかわからない。ふざけた物を見る目で少年を睨み付けた青年だったが、彼の言葉の意味をすぐに知ることになる。
「っ!?うわあああああ!!」
突然棒から目に見えるほど強力な電気が流れたかと思うと、それは本来向かうべき方向ではなく武器の持ち主である青年へと向かっていき、彼の体に雷が落ちたような衝撃を与える。
「こっちからも魔力を流してやれば、電気を押し返せるってことだろ?」
「な・・・なるほど・・・」
少年の説明に納得すると、彼は真っ黒焦げになり地面へと落ち、そのまま意識を失う。
「さて、残りはあんただけか」
持っていた敵の武器を放り投げ、最後の敵へと向かい合う。
「思い出した。貴様、氷の神と呼ばれている奴だな?」
「そんな呼び名あったな」
レオンの二つ名はかなり知名度が高い。ただ、その二つ名とは裏腹に彼自身はパッと見ではわからないのかも。第一印象はどこにでもいる子供だもんね。
「貴様はカグラとやらに負けたと聞いている。はっきり言おう」
剣の先端を敵へと向け、いつでも突進していける用意が整っている剣士。対するレオンは、何もせずその場で敵の言葉を黙って聞いている。
「私はそいつよりも強いぞ」
シリルはマーガレット祭でカグラに完勝した。そんな彼をものの数分で・・・しかも無傷で倒したんだもん。この人の実力は相当なもののはず。
「とてもそうは見えないけど?」
「人は見た目で判断すると、痛い目を見るぞ」
その直後、あたしたちの視界から彼女が消えた。ううん。正確にはレオンの目の前に韋駄天の如く移動しており、すぐにでも斬りかかる格好が出来上がっていた。
「終わりだ」
またしても目では捉えきれないほどの動き。音から判断すると七、八回の斬撃があったと思う。それを終えた彼女はレオンの後ろへと移動しており、勝利を確信し、敵へと振り向いた。
「貴様程度、私にかかれば容易く倒せる」
おそらく彼女のイメージの中ではレオンがこのまま地面に伏す様が浮かんでいるのだろう。けど、少年は何事もなかったかのように振り向き、敵を見据える。
「その言葉、そっくりそのまま返すよ」
「何?」
女剣士は意味がわからず目を細める。しかし、その直後、衝撃的なことが起こってしまった。
ハラリ
何かが斬れる音と共にあるものが地面へと落ちる。それを間近で見ていたあたしたちは、女性のその姿に思わず目を奪われてしまった。
「なっ・・・/////」
彼女もそれに違和感を覚えたらしく視線を下げると、あまりのことに赤面した。自分の体を覆っていたはずの衣服のすべてが切り刻まれ地面に落ち、自らのふくよかな胸やらを露出した、生まれたままの姿になっていたからだ。
「きゃあああああああ!!」
さっきまでの強い女性の姿はどこに行ったのやら、可愛らしく悲鳴を上げて上と下の大事な場所を隠す。それを見ていたウェンディはいつものようにシリルの目を隠そうとしていたけど、そもそも彼は今意識を失っているのでその必要がないことに気付くと、自分にはない大きな胸を見て頬を赤らめていた。
「な!!なんてことするんだこの変態!!」
「思春期なもんで」
「そんな返し初めて聞いたぞ!!」
平然とした表情で一糸纏わぬ姿になった女性を見ていたレオンが何ともそれらしい返しをするので思わず苦笑い。でも、それなら少しくらいあたしに興味を持ってもいいんじゃないかな!?
「安心しろ、次の一撃でトドメを刺してやるから」
「これで終わりじゃないのか!?」
右手をグッパーと準備運動をすると、魔力を高めていく。それでも普段の彼のものには遠く及ばないけど、今の敵を仕留めるには十分なのかな?
「くっ・・・/////」
危険に晒されている女性は胸や股間を隠しながら手首を返し剣を体を守るように構える。あの剣はいかなる魔法も弾くことができると言っていたけど、相手がレオンじゃ意味がないと思う。すぐに粉々に砕けてやられるのが関の山だ。
「氷神・永久凍土!!」
大地を蹴り一直線に敵へと飛んでいく。辺りを凍てつかせるその様は、まさしく氷の神。
ドゴォンッ
そして彼の一撃が敵のリーダーへと突き刺さり、周囲に爆風を起こした。これで村を支配していた全員を撃破したのかと安堵していると、爆風が晴れた中から予想できなかったことが起き、大きく目を見開いた。
「誰だ?お前」
エーメの剣目掛けて振り抜かれた拳。それが彼女に直撃する寸前で、一人の男性がその攻撃を片手で受け止めていた。
「そのケガでこのパワー。もし万全の状態だったら、私でも防ぐことは不可能だったな」
「人の話聞いてた?」
少年の問いに答えることはせず、自分が受けた感想を呑気に語っている黄緑の髪をした男性。その人から感じる魔力のあまりの高さに、全身が震える。
「ホッパー様!!」
「エーメ、この場は捨てることにした」
「え!?」
突然の増援に笑みを溢した全裸の女性だったが、彼の一言でその表情が一変した。
「今、かなりの場所が魔導士たちにより奪い返されている。ゆえに場所を四ヶ所に限定し、幹部たちを集めることにした」
敵が目の前にいるのにこの余裕。絶対にただ者ではない。でもそれは、敵がレオンじゃなければの話。彼に比べれば、その魔力は明らかに見劣りする。
「ねぇ、無視しないでくれない?」
「ここからは誰を?」
「かなり欠員が出ているからできれば全員に・・・と言いたいが、この様子ではお前一人で限界だろう」
「ねぇってば!!」
ただ、それでもお構いなしに会話を進めていく二人。今レオンが攻撃すれば間違いなくやっつけられると思うけど、あの子いい子だからそんな不意打ちみたいなのはあまりやらないんだよね。
「あぁ、すまない。だが私は君たちと戦うために来たのではない。この村も返還しよう。もちろん、損害としてそれなりのものも置いていく」
そう言うと彼は別空間へと繋がる扉を生成すると、中から小さめの金の延べ棒を二本取り出した。
「これぐらいで十分だろう。私たちは退散させてもらうがいいかな?」
「待てよ」
早々にここから立ち去りたいらしく、話の途中で切ろうとするホッパーと呼ばれていた男の額に自分の額をぶつけて威嚇するレオン。
「仲間がやられてるわけだから、逃がすつもりは更々ない。全員仕留めるまではな」
いつになく怒りの感情を露にしているレオンに背筋が凍る。それを聞いた男性は小さく笑いを堪えたように息を漏らす。
「どう見てもこちらの方が被害は大きいが、非があるのもこちら。それを問うのは愚問というところか」
レオンの胸を押し引き剥がすと、男性は彼の手に何かを握らせる。
「なんだこれ?」
「それは不死の薬。いかなるケガや病気も直すことができる究極の薬」
それはどこからどう見てもその辺にありそうな普通の錠剤。レオンも信じられないらしく、それをじっと眺めている。
「その少年にすぐに飲ませるといい。もし何か異変が起きたら、君が私を貫いて怒りを納めることもできる」
「ホッパー様!!」
確実に治ると自信があるからなのか、それとも逃げることができるからなのかわからないけどそんな提案をしてくるホッパー。それに対しエーメはかなり慌ててたけど、彼が制すると言葉を飲み込む。
「・・・水はあるか?」
「そんなものはいらない。そのまま飲み込めるように作られてある」
これ以上問答しても仕方がない。そう悟った彼は半信半疑で倒れている少年の口にそれを入れようとする。
「やっぱウェンディに任せる」
「え!?」
「水なしじゃ入りそうな気がしないや」
しかし、気絶している人物に飲ませるのは困難と判断したのか、彼の恋人であるウェンディへと手渡す。まさかこれは・・・
「もう/////あんまり見ないでよ?」
恥ずかしそうに頬を赤らめた後、自分の口に薬を入れるとそのまま彼の口へと口移しする。
「あら?」
「愛/////」
「はわわわわ/////」
女の子同士のキスと勘違いしているエーメはいいものを見たといった顔をし、あたしとサクラは恋人が恋人を助けるその光景に見惚れている。
ゴクッ
口移しに成功したらしく、シリルの喉が上下に揺れる。すると、それと同時に彼の体中にあった傷が、みるみるうちに消えていく。
「言った通りだっただろ?」
「マジか」
信じていなかっただけにいつでも殴れるようにホッパーの胸ぐらを掴んでいたレオンは驚き手を離す。掴まれたことによって衣服が乱れた彼はそれを直すと、自身の上着をエーメへとかけ引き寄せる。
「君のケガは我々の責任ではないようだし、これで引かせてもらうよ」
「そういう約束だったしな」
シリルが助かったならそれでいい、そういった感じで敵を一瞥する少年だったが、そんな彼に一言言わなければいかない人物がいた。
「氷の神・・・」
「何?」
その人物とは彼の手によって肌を大きく露出させてしまった女性。彼女は仲間の腕の中で震えながら、怒りの眼差しを少年に向ける。
「この辱しめは絶対に忘れない!!必ず貴様をこの手で葬ってやる!!」
「はいはい、わかったわかった」
適当にあしらうレオンだったが、言いたいことは言ったのでひとまず満足したのか、二人はその場から瞬間移動したらしく姿が見えなくなった。
レオンside
「では!!村の奪還とその英雄たちへの感謝を込めて!!」
「「「「「カンパーイ!!」」」」」
ビールやらジュースやらが並々に注がれた木製のグラスをぶつけ合い祝杯を上げる。俺も乾杯には参加したが、それよりも食事の方が優先なのですぐにグラスを置いて前にあるものを頬張り始める。
「いやぁ!!皆さん本当にありがとうございました!!」
「いえ」
「当然の結果よね」
次から次にお礼を言いに来る村の人たちに遠慮気味に挨拶するウェンディと鼻高々な様子のシャルル。この二人は相棒だけあってなかなかにバランスがいいよな。力があって小心者と、態度がでかくて非力な存在って感じで。
「・・・」
和気藹々とした雰囲気の中、その少女たちの隣に腰かけていた少年だけは元気がない。彼は暗い表情のまま立ち上がると、席から離れて行ってしまう。
「どうしたのかな?シリル」
「さ~?」
「どうせレオンに見せ場を取られて落ち込んでるんでしょ」
「ライバルなんですもんね!!かっこいいです!!」
「サクラはいつも楽しそうだね」
「いいことだと思うけどね」
トボトボと離れていく少年の背中を見ながらそれぞれの感想を述べる少女と猫。ただ、そんなことであいつがいちいち落ち込むとは思えないので、いささか気になる。
「あ、手が汚れてたから洗ってくる」
「一人で大丈夫?」
「全然余裕」
松葉杖に手をかけて立ち上がりその場から離れていく。さっき走ったのでまたケガが悪化したかも・・・しばらくは安静にしてないとヤバイな。
「こっちに行ったと・・・お?」
手は食事前に洗っていたので汚れたりはしてない。シリルが気になったからウソをついて後を付けただけだ。
「何してんだ、そんなところで」
「レオン・・・」
彼は大きな岩の上に腰かけ、わずかにかけている月を見上げて黄昏ていた。彼は俺の声に気付き一度こちらに視線を向けたが、すぐに背を向けたので仕方なく痛む体にムチを打ち、彼の隣へと腰かける。
「どうしたの?なんか怒ってる?」
「別に怒ってはいないけど・・・」
体育座りであからさまに落ち込んでますよ感を出している少年。こうしているとマジで女にしか見えないし、こういうちょっとメンタルが弱いところはガキそのまんまだと思う。
「今日さ」
「ん?」
どうしようか悩んでいると、意外にも彼の方から落ち込んでいる理由を話始める。これには少し驚いたけど、そのまま黙って耳を傾けることにする。
「カグラさんを倒したあれあったじゃん」
「あぁ、なんかパワーアップできる奴か」
シリルにはパワーアップできるものがいくつもある。そのうちの一つでおそらく彼の力を最も引き出すのはカグラさんとの戦いで見せたあれだろう。
「今日あれをやってる最中に、いきなり胸が苦しくなったんだ」
「なんで?」
ないむ・・・苦しさを感じたとされる胸をグッと掴み、シリルは小さく体を震わせる。何がそんなに怖いのか、わからずにただ次の言葉を待つことにする。
「あの剣士に『滅竜と滅悪じゃ組み合わせが悪い』って言われて、あの時本当に苦しくて死んじゃうんじゃないかって思ったから・・・どうすればいいのかわからなくて・・・」
何度も死に直面したであろう彼でさえ、そうなった時の恐怖は感じるものなのか。俺は一度死んでもいいから一か八かの旅に出たことがあるだけに、その感情がイマイチわからない。本当に死にそうな場面がなかったからまだわからないだけかもしれないけど。
「前に俺が扉を壊した時に使った状態覚えてる?」
「エクリプスのこと?」
400年前からやって来たドラゴンたちを元の時代に帰すために、時間を繋ぐ扉エクリプスを破壊する時に使用した“神の領域”。一度しか見せたことのないあれも、シリルの記憶には深く刻み込まれていたようだ。
「あれにも副作用があって、あんまり長時間できないんだ」
「そうなの?」
あの時はたった一撃のためだったから使ったけど、ドラゴンを倒すために使うのは厳しかった。一頭ならものの数秒だけど、何頭もいたから使うことはできなかった。
「強い力には必ずデメリットがある。メリットしかない力はいずれ破られるただの張りぼてと一緒だ」
「そうなんだろうけど・・・」
ただ、そのデメリットが死に関わるとなると話は変わってくるか。俺のも最悪死ぬリスクはあるけど、使う気はないから気にしたことはない。
でもこいつは違う。勝ちたいなら、仲間を守りたいなら最善の方法を選んでしまう。俺みたいに負けてもいいやと割り切る粗雑さが一切ない。よく言えば真面目、悪く言えば身の程知らず。
「じゃあこうしよう」
「え?」
解決策はあるだろうけど、一番彼にとって乗りやすいのは一つしかない。それを提案すれば、彼の悩みも吹き飛ばせるはず。
「あの二つの魔法を合わせた状態を使わなくていいくらい強くなればいい。俺もこんなケガ二度としたくないし、協力して強くなればそれが一番いいんじゃない?」
彼にとっても俺にとっても力はあった方がいい。お互いに守りたいものはあるだろうし。
「それだ!!それで行こう!!」
そして単純な頭の彼はこの申し出に即座に乗ってくる。現状の力だけに頼ろうとするから行き詰まるのであって、幅を広げる方法はいくらでもあるからね。
「よし!!そうとなれば早速!!」
「いや、せめて治るまで待ってよ」
このケガはシェリアたちでも治すことができないくらい重症らしく、しばらく動けそうにない。だから今にも戦いを挑んで来そうな少年を制止する。
「シリル!!」
「レオン!!」
シリルが元気になったところでそれぞれの幼馴染みが心配して迎えに来てくれた。なので、俺たちは何事もなかったかのように岩から降りて二人の元へ行く。
「何してたの!?」
「何か余興してくれるらしいから早く行こ!!」
「あ!!待ってよウェンディ!!」
少年の手を引いて宴会場へと駆けていく天空の巫女。仲良さげに走る二人の姿は、お似合いという言葉がピッタリだった。
「ねぇ、何話してたの?」
「今後のことについて」
そして俺の隣には、走れないことを考慮してゆっくりと歩を合わせてくれる幼馴染み。彼女は俺の答えに「ふ~ん」とどうでもいいような返事をした後、なぜか前を遮るように立ち止まる。
「そういえば!!言わなきゃいけないことがあるんだけど!?」
「え?何?」
なんだろう、お礼でも言われるんだろうか?そう言えばこいつ助けた時にそういうのを言われたことってあんまりないような・・・
「あの女の人の服破るくらい興味があるならあたしに興味持ってくれてもいいんじゃないの!?」
「ひたたた!!いっはらなひで!!」
何やら激怒している少女に頬を引っ張られる。しばらく伸ばされたかと思うと、満足した彼女は手を離し、再度となりに並ぶ。
「なんでこいつはこんなに鈍感なのかな」ブツブツ
何やら本気でお怒りモードのシェリアに恐怖を感じる。そんなにあの行動がイヤだったのか。敵の剣筋が丸見えで普通に返すのは面白味がなかったからやってみたんだけど、同じ女としては許せない暴挙だったのかな?もう二度とやらないようにしよっと。
後書き
いかがだったでしょうか。
今回はレオシェリがメインのお話になっちゃったかな?なんか最近シリウェンが思い付かなくてラブストーリー要素を盛り込めないんですよね。困ったものだ。
今回でカノッコ村編は無事に終了です。初めての完全オリジナルストーリーでしたがどうだったでしょうか?個人的には満足なんですがね(笑)
次からは再三日常編を行っていきたいと思います。その次にもう一度オリジナルストーリーを入れて、また日常編をやって本編に戻りたいと構想しておりますのでもうしばらくお付き合いのほどよろしくお願いします。
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