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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第3章:再会、繋がる絆
  第84話「今度こそは」

 
前書き
司の使い魔なのだから、何とかしてリニスを目立たせたい。
...というか、原作キャラに見せ場をやりたい。(ただの技量不足)
 

 






       =out side=





「モニターが...!」

 アースラから結界内の様子を見ていたアリシア達だが、突然モニターが乱れる。

「...魔力が、ジャミングの効果を持っているみたい...。」

「ダメです艦長!これでは...!」

 元々、通信状況は良くはなく、音声は届いていなかったモニターだが、ここに来て画面がノイズに塗れ、見る事ができなくなってしまった。

「...最深部まで辿り着いたのは見えたわ。後は、無事に回収してくるのを信じなさい。」

「...はい!」

 リンディは、見えなくなったモニターの先を見つめるように、全員にそう告げた。

「(...クロノ、頼んだわ...!)」

 リンディ自身、そう願いながら、ただ皆の帰りを待った。







「なんだ...これは...!」

 一方、最深部に入った優輝達は、その部屋の雰囲気に戦慄していた。

「....心が壊された聖司の部屋...それと酷似しているよ。」

 それは、まるで“心の闇”を表しているかのようで...。

『―――!!』

「っ、ぁ....!?」

 部屋に入った事で、司の姿をした暴走体は、金切り声のような悲鳴を発する。
 その瞬間、重圧のようなプレッシャーにクロノ達は見舞われる。

「皆!気をしっかり持って!」

「っ....!」

 無事だった優輝、椿、葵が全員に呼びかけ、何とか復帰させる。

「“扇技・護法障壁”!」

     ギィイイン!!

 追い払うためだろうか。暴走体から一筋の閃光が迸る。
 それを、優輝は霊力で障壁を張り、防ぐ。

「優輝...なんだ、これは...!」

「...これは、司さんが...聖司が、ずっと心の内で溜め続けていた“苦しさ”だ。...助けたいのならば、これくらいは耐えて見せろ...。」

 その言葉に、まずリニスが立ち上がる。
 それを追うように他の皆も立ち上がった。

「...そうですね...この程度...!...あぁ、覚えていませんが、感覚には既視感があります...。私は、こんな感情を、使い魔として感じた事があります...!」

 瞬間、リニスは魔力弾を放つ。
 その魔力弾は、全員に飛来していた暴走体の魔力弾を次々と相殺する。

「...だからこそ、ここで立ち止まれません...!!」

「....!来るぞ...!」

 全員が完全に立ち直った瞬間、暴走体から高エネルギーが発せられる。
 そのエネルギーは、一つ一つが閃光や魔力弾となり、全員を襲う。

「っ、各自で凌げ!先手を打たれた以上、闇雲に突っ込まないように!」

「了解!」

 クロノが指示を出し、各々自力で閃光と魔力弾を凌ぐ。
 優輝、椿、葵、奏は大体を躱し、時たま弾いて逸らす。
 クロノとリニスは、空中を飛んで大きく旋回するように立ち回って躱した。
 優香と光輝は互いに庇いあうように立ち、全てを防ぎきる。

「...ふっ!」

「“ソニックエッジ”!」

 回避の合間に、椿が矢を、光輝が魔力の刃を暴走体に放つ。
 防御行動を一切取らない暴走体だったが、二つの攻撃が当たりそうになった瞬間...。

     キィイイン!!

「っ、防がれた...!」

「超高密度の魔力障壁...。それだけじゃない。何か特殊効果が付加されている...!」

 攻撃は、水面に波紋を広げるように、六角形の透明な障壁に阻まれる。
 それを見た優輝は、その障壁が並大抵の攻撃では貫けないと悟る。

「っ...!避けろ!!」

「っ!くっ...!」

 優輝の咄嗟の叫びに、椿はそこから飛び退く。
 その瞬間、寸前まで立っていた場所が、何かに圧し潰されたようにひしゃげる。

「...あの障壁、あんな使い方もできるのか...!」

「来るわよ!皆あの攻撃をまともに受けないで!」

 椿に放たれたのは、暴走体を守っていた障壁。
 それを圧縮し、放出するように撃ちだす事で、対象を圧し潰すようだ。

『―――!―――!!』

「っ....!」

 暴走体の攻撃を凌ぎ続ける優輝達に、再び金切り声が響く。
 まるで、優輝達を拒絶するかのように放たれた声は、再び優輝達の心を蝕む。

「(...あぁ、司さんの悲しみが伝わってくる..。)」

 その叫びには、司の心を表すように、悲痛に満ちていた。
 “ごめんなさい”と懺悔のように優輝達の頭の中を暴走体が発する思念が反復する。

「.....っ。」

 所謂精神攻撃。それを受けた優輝達。
 本来なら、少しは動きが鈍くなるが...顔を上げた優輝は違った。

「...もう、繰り返したくはない。」

 その言葉を皮切りに、優輝は駆けだした。









       =優輝side=





「っ、ぉおっ!!」

     ギィイイン!

 振るった剣が、障壁に阻まれる。
 どうやら障壁はただ堅いだけでなく、衝撃も吸収するようで、刃がめり込んだ。

「まだ、まだぁ!!」

 振るった剣から手を放し、新しく創造する。
 ...リヒトは今はグローブ形態だ。武器は創造魔法で補っている。

「はぁあっ!!」

     ギィイイン!!

 回り込み、再び剣を振るう。

「っ...!」

 刹那、僕はそこから飛び退く。
 すると、寸前までいた場所が陥没する。障壁による圧殺攻撃だ。

「くっ....!」

     ギギギギギギィイン!!

 放たれた魔力弾と閃光を弾き...振るわれた魔力の触手を跳んで躱す。
 最深部の部屋は、最初は普通の広さだったが、いつの間にか拡張したように広くなっており、行動するのに狭さを感じる事はなかった。

「ふっ!」

 攻撃を躱した所で、剣を投擲する。
 それが障壁に突き刺さり、僕はすぐに武器を創造しておく。

「......!」

 またもや振るわれた触手を躱し、反撃に武器を投擲。すぐさま創造する。

 ...嗚呼、皮肉なものだな。
 僕は、四度も大事な存在を助けられなかった。
 シュネー、聖司、緋雪...そして()....。
 助けたいと、死なせたくないと思っておきながら...僕の手から滑り落ちて行った。
 何も掴めず、何も守れなかった。

 ...そうして、空っぽになった手だからだろうか...。

「(...こうして、また剣を握れるのは...。)」

 だとすれば、本当に皮肉だな。
 ...そう思考を巡らしながら、さらに剣を投擲する。

「...ぁあっ!!」

 それをいくらか繰り返し、最後に頭上から突き刺す。
 そして...。

「....弾けろ。」

     キィイイイイン!!

 僕がそう呟いた瞬間、障壁に刺さっていた全ての剣が、膨張する。
 ただの剣から、まるで大剣のように大きくなった剣は障壁をさらに突き進む。

「椿!葵!」

「ええ!」

「了解!」

   ―――“弓技・閃矢”
   ―――“呪黒剣”

 すぐさま飛び退き、そこへ矢と黒い剣が殺到する。

「....爆ぜろ。」

   ―――“Zerstörung(ツェアシュテールング)

 最後に、剣に込められた魔力を基に、大爆発を起こさせる。

「....凄い...。」

「優輝さん...。」

 母さんと奏の驚いた声が聞こえる。
 先程の一連の動きの間に、全員が精神攻撃から復活したようだった。

「やったのか...?」

「...いや、よくて障壁を破った所だ。」

 クロノの言葉に、僕はそう答える。

『―――――!!!』

「っ....!」

   ―――“霊魔多重障壁”

 咆哮のような金切り声に、僕は咄嗟に障壁をいくつも展開する。
 椿や葵も、皆を庇うように霊力で障壁を張っていた。

「ぐっ....!」

 そして、衝撃波が僕らを襲う。
 障壁で衝撃そのものは防いだものの、余波だけで僕らは吹き飛ばされそうになる。

「クロノ、指示を頼む...!暴走体の障壁は単発だと効果は薄いけど、一点集中すれば一人でも破れる事がさっきのでわかった!」

「よし...!各自二人以上になって互いをフォローし合ってくれ!砲撃魔法と魔力弾はともかく、障壁による圧殺攻撃だけは躱すように!」

 衝撃波が止んだ瞬間、僕らはクロノの指示通りに動く。
 僕は奏と、椿は葵と、母さんは父さんと、クロノはリニスさんと組む。
 そして、展開される魔力弾といくつもの閃光。それらに向かって駆け出す。

「(これは...暴走した司さんの完全下位互換のようなものか。なら...!)」

     ギギギギギィイン!!

「奏!」

「アタックスキル...“Forte(フォルテ)”!」

 閃光を創造した剣で逸らし、魔力弾は手に持つ剣で切り裂いて活路を開く。
 そこへ、奏が砲撃魔法を放ち、暴走体へと迫る。

「っ!」

 砲撃魔法が迫る瞬間、暴走体の目の前に魔力の揺らぎを感じ、咄嗟に僕は動く。
 いくつもの剣を創造して射出し、盾を創造して奏を連れて横に飛び退く。

「がっ...!?」

 その瞬間、砲撃魔法を突き破るように障壁が圧縮されて撃ち出され、苦し紛れに創造した剣を破壊しながら、僕を掠めて行った。
 僕が盾を構えていなければ、片腕は持っていかれただろう。

「(立ち止まるのは危険...!)クロノ!」

「っ、全員、立ち止まるな!攻撃の際も、防御の際も動き回るんだ!」

 僕の声に、すぐに理解したクロノは指示をもう一度飛ばす。
 その時、クロノ達に向けて魔力弾が飛ばされていたが、それはリニスさんが相殺する。

「(...圧殺以外が防げない訳でも、躱しきれない訳でもない。だけど、攻め手に欠ける...な。誰かが突破口を開かないと...。)」

 そう考え、僕は奏に目で合図を送り、椿や葵にも合図を送る。

「『父さん、母さん。僕らが突貫した後、フォローを頼むよ。』」

「『優輝?何を...。』」

 一気に剣を創造し、射出する。
 それを合図に、展開される弾幕を駆け抜けようと、僕らは走った。

「撃ち落としなさい...!“弓技・矢の雨”!」

「当てさせはしないよ。“呪黒剣”!!」

 魔力弾は矢の雨に相殺され、閃光は黒い剣に阻まれる。
 その合間を抜けるように、僕と奏は一気に暴走体との間合いを詰める。

「“アォフブリッツェン”!!」

     ギィイイン!!

 魔力を込め、渾身の一撃を放つ。だが、それは障壁に阻まれる。
 ...でも、別にそれでもいい。

「...徹す...!“Forzando(フォルツァンド)”!」

     パギィイイン!!

 間髪入れずに、奏が斬撃を障壁へと放つ。
 その強力な一撃は、僕の一閃でダメージの入っていた障壁を砕く。

「縛れ...!“鋼の(くびき)”!!」

 奏の攻撃に巻き込まれないように跳んでいおいた僕が、暴走体の真上を取ってザフィーラさんの扱う拘束魔法を放つ。
 魔力の棘のようなものが、暴走体を囲み、身動きを取れないようにする。
 ...どうでもいいが、どう見てもこれ、縛ってないと思うんだが。

「貫け...!“弓技・螺旋”!!」

 さらに僕らはそこから飛び退き、拘束された暴走体に向けて椿が矢を放つ。
 螺旋状に霊力を迸らせる矢が、暴走体に迫り...。

「(...やはり、そこで使ってくるか...!)」

 再展開された障壁の魔力が圧縮されるのを確認する。
 あのままだと、椿の攻撃は打ち消されるどころか同時に反撃になってしまうだろう。

「(だけど...。)」

「させないよっ!!」

 しかし、その背後から葵が斬りかかる。
 一瞬、人格があるかはわからないが、暴走体の意識が椿から逸れる。

『―――!』

     ドンッ!

 だが、葵の攻撃はあっさり障壁に阻まれ、無防備になった葵は障壁で圧殺される。
 さらには、椿にも圧縮障壁が放たれたが、それは何とか躱す。
 ...同時展開も可能だったのか...。

     ポン!

「残念、そっちは...偽物だよ!」

     ギィイイン!!

 なお、圧殺されたのは葵が用意しておいた偽物だ。当然僕らもそれを理解していた。
 そのまま、葵は暴走体の真上からレイピアを振り下ろし、障壁と拮抗する。

「行くぞ、全員身構えろ!!」

 そして、最後に僕が肉迫し、術式を暴走体の障壁に押し当てる。

「...爆ぜろ。そして、撃ち貫け!!」

〈“Zerstörung Schlag(ツェアシュテールング・シュラーク)”〉

 そして術式が収束し...大爆発を起こした。

「っ....ぐ....!」

 爆発は障壁を貫いた先で炸裂したが、当然至近距離にいた僕と葵は巻き込まれる。
 葵は蝙蝠になる事で回避したが、僕は防御魔法で後ろに吹き飛ぶように下がった。
 ...ダメージは浅い...が、確実に体力は減った。

「(まだ、終わっていない...!)父さん、母さん!!」

「螺旋を描け...!」

「相乗せよ...!」

「「“トワイライトバスター”!!」」

 父さんと母さんが同時に砲撃魔法を放つ。
 二つの閃光は、螺旋状に絡まり、掛け算のように威力が増幅される。

「(さぁ、どうだ...!)」

 砲撃魔法が炸裂し、その間に僕は体勢を立て直す。
 倒した...などと、過信はしない。でも、少なくともダメージは負っただろう。

「っ....!」

「優輝!」

 飛来する魔力弾と閃光。
 それを咄嗟に創造した剣で撃ち落とす。

「(量が減っている...?弱っているのか?...いや、これは...!)」

 母さんや父さんも僕をフォローしようと魔力弾で相殺していく。
 しかし、その量が明らかに少ない。弱っているようにも思えたが、それは違った。

「『クロノ!!』」

「『全員、間合いを取れ!広範囲魔法が来る!!』」

 クロノに声を掛けると同時に、足元から魔力を感じる。
 見れば術式が張り巡らされていた。
 それを確認した瞬間、僕は御札に霊力を徹し、それを用いて敏捷性を上げる。
 傍にいた奏にも御札を当て、母さんと父さんの下へ駆け出す。

「父さん、母さん!手を!」

「っ...!」

 手を伸ばし、二人の手が触れる。
 その瞬間に、用意しておいた短距離転移魔法を発動させ、間合いを取る。

   ―――“Evaporation Sanctuary(イヴァポレイション・サンクチュアリ)

「っ.....!!」

 そして、光が視界を埋め尽くした。
 ...クロノとリニスさんは十分に距離を取っていた。
 椿と葵は自分たちで何とかしているだろう。
 全員が無事で済んだからこそ、目の前に広がる光に戦慄した。

「(...神降しでもしていなければ、絶対に防げなかったぞ...!)」

 ジュエルシードの魔力だから...なのだろう。それほどまでの威力だった。
 余波でさえ咄嗟に防御魔法を張っておかなければただでは済まなかっただろう。

「(防御が固すぎる。一点突破しようにもあの圧縮障壁が厄介...。)」

 広範囲に立ち上る光が治まるまでに、再び暴走体は行動を起こすだろう。
 それまでに、如何に暴走体を打倒するのか思考を巡らす。

「(...やはり、霊力での打倒が有効。でも、ただ霊術をぶつけるだけじゃ、圧縮障壁には勝てない。だから...。)」

 考えがまとまった時、クロノの近くにリニスさんがいない事に気づく。
 魔力反応を調べてみても、クロノの近くにはない。...が、見つける事はできた。
 しかし、その場所は...。

「リニスさん...!?」

「っ....!」

 リニスさんの位置は、ギリギリ魔法の射程外の暴走体の真上。
 そこから、魔法陣を構えながら自由落下していた。

「まずは...一撃!」

   ―――“サンダーレイジ”

 複数に重ねられた魔法陣から、雷光が迸る。
 雷光は光に穴を開け、暴走体までの道を作る。

「そして、二撃!」

   ―――“サンダーレイジ”

 その穴に突っ込み、さらに魔法を放つ。
 肉眼ではわからないが、どうやら障壁と拮抗しているようだ。

「しかしなお、届かぬが故に....!」

   ―――“プラズマセイバー”

 光が治まった瞬間、圧縮障壁の一撃と、リニスさんの渾身の魔法がぶつかる。
 圧縮障壁に対抗するためか、リニスさんの魔法も極限まで収束されていた。
 ...そして、それは相殺に終わる。

「...以上を以って、“三雷必殺”と...したかったのですが、やはり足りませんか。」

 相殺で弾かれ、くるりと一回転してリニスさんは着地し、そういう。

「...ならば、もう一度見せてあげましょう...!」

 だが、それでリニスさんの攻撃は終わりではなかった。
 もう一度リニスさんは三重の魔法陣を展開し、構える。

「...通りで僕に防御を任せる訳だ...。」

「クロノ?...そういう事か...。」

 先ほどでの僕らの一連の攻撃の時、クロノ達は一切行動を起こしていなかった。
 だが、実際はクロノが流れ弾を防ぎ、その間にリニスさんは術式を組んでいたのだ。

「(あれほどの術式の維持、普通はできないはず...だけど...。)」

 それをリニスさんは使いこなしている。

「未だに私の記憶は戻っていません。...ですが、ただの再現に負けると思わないことです!」

「.....!」

 リニスさんは暴走体に向けて駆け出す。

 ...リニスさんはずっと司さんに関して考えていた。
 僕らがリニスさんは司さんの使い魔だという事を教えると、リニスさんは記憶がないものの、自身が司さんの使い魔である事を自覚していた。
 だから、なのだろう。ああして、“助ける”という強い意志を持った目をしているのは。

「っ、リニスさんだけに戦わせられない!皆!」

「分かったわ!」

 僕が皆に声を掛けたと同時に、リニスさんは再び暴走体に仕掛ける。

「っ...!」

 しかし、リニスさんの進行を邪魔するように魔力弾や閃光が繰り出される。

「させないわよ!」

「....行け!」

   ―――“弓技・矢の雨”
   ―――“Stinger Blade Execution Shift(スティンガーブレイド・エクスキューションシフト)

 だが、それらは矢と魔力刃の雨が相殺し、打ち消す。
 さらに、閃光は二筋の砲撃魔法に打ち消さる。...父さんと母さんだ。

「葵!奏!」

「了解!」

「任せて...!」

 移動魔法で加速し、僕らは三方向から同時に暴走体に斬りかかる。

     ギィイイン!!

「“創造開始(シェプフング・アンファング)”!」

「突き立て...!“呪黒剣”!」

「舞い散れ...!“エンジェルフェザー”!」

 障壁に阻まれると、一斉に飛び退き包囲するようにそれぞれ技を放つ。
 創造した剣が囲むように刺さり、黒い剣が包囲するように突き出し、天使の羽が舞い散るように魔力弾が暴走体を囲む。
 そして、それらが一斉に爆発を起こす。

「(これで障壁を使わせた...!少なくともいきなり圧縮障壁は来ない!)」

 爆発により、障壁を崩す。ダメージは通らなかったが、それで充分だ。
 ...後は、リニスさんが決める。

「...ありがとうございます。皆さん。」

   ―――“サンダーレイジ”

 雷が、迸る。
 ギリギリ再展開が間に合ったのか、リニスさんの魔法と暴走体の障壁が拮抗する。

「一撃では届かぬ故に、二撃。」

   ―――“サンダーレイジ”

 追撃にさらに雷が迸る。
 拮抗していた障壁を打ち破り、暴走体は無防備となる。これで...。

「しかしてなお足らぬが故に―――っ...!?」

 最後の一撃。それを叩き込もうとしたリニスさんの頭上に魔力が収束する。
 ...圧縮された障壁。それがリニスさんに放たれようとしていた。

「させるか!!リヒト!」

〈“Numero Kanone(ヌメロカノーネ)”〉

 そこで、僕が霊力による“砲撃魔法”を放ち、リニスさんへの攻撃を阻止する。

「(いくら圧縮障壁が脅威でも、所詮は魔力!霊力による砲撃を受ければ...!)」

 僕の読み通り、圧縮障壁は霊力の砲撃で打ち消される。
 ...これで、“道”はできた。

「っ...!以上を以って、“三雷必殺”!!()()...返してもらいます!!」

   ―――“Plasma saber Overlimit(プラズマセイバー・オーバーリミット)

 あの時見た久遠の雷を上回る程の威力が、暴走体を襲った。

「はぁ....はぁ.....っ...。」

 最後の一撃が決まり、リニスさんは膝をつく。
 ...当然だ。明らかに限界を超えたような魔力行使だった。

「(封印は...まだか...!)奏!」

「うん...!」

 封印の術式は付与していなかったらしく、暴走体は消し飛んだものの、ジュエルシード本体は未だに封印されずに残っていた。
 すぐに奏に頼み、封印を任せる。

「リニスさん!」

「...優輝さん、ありがとうございます。貴方の魔力結晶のおかげで、私はあそこまで戦う事ができました...。」

 ...なるほど。そういう事だったのか...。
 リニスさんが限界を超えた魔力を使えたのは単純な仕組みだった。
 ただ、外部から持ってくればよかったのだ。今回の場合は、僕の魔力結晶だ。
 司さんがいなくなった半年間の間に、僕は皆に魔力結晶を配ってあった。リニスさんはそれを使ったのだろう。

「これでジュエルシードは揃いました。...司を助けに行きましょう。」

「....リニスさん、もしかして...。」

 間違いない。今のリニスさんの目は、明らかに司さんを知っていた。
 つまり、司さんの事を思い出したのだ。

「私は司の使い魔です。...主の事を忘れるなど、いつまでもしてられません。」

「はは...自力で解くなんて、さすがだな...。」

 リニスさんも記憶がない状態では、色々と葛藤があったのだろう。
 そこに司さんの“悲しさ”を表現した暴走体が現れた。
 それが良くも悪くもリニスさんの精神に影響を与え...結果的に、認識阻害を自力で打ち破るという荒業を成し遂げた。

「結界が崩れるぞ!」

「了解!皆!念のために一か所に!」

 クロノの言葉に、僕らは一か所に集まる。
 そして、崩壊していく結界内を見送り、僕らはアースラへと帰還した。











   ―――ジュエルシードは集まった。...待ってろよ、司さん!











 
 

 
後書き
霊魔多重障壁…名前そのままの防御技。霊力や魔力の障壁を多重に展開する。

Forte(フォルテ)…アタックスキルの一つ。なのはのディバインバスターみたいなもので、お手軽な速射系の砲撃魔法。威力は全力ではディバインバスターに劣る。

弓技・螺旋…かくりよの門では筋力による防御無視の突属性の技。
 本編では、霊力が螺旋状に纏った矢を放っている。単発の威力は閃矢などを上回る。

圧縮障壁…A.〇フィールド的な障壁を圧縮し、撃ち出す攻撃。名前はない。
 拒絶する事で、心の壁が攻撃的になったため、こんな攻撃になっている。

Zerstörung Schlag(ツェアシュテールング・シュラーク)…緋雪の破壊の瞳による一撃を模した魔法を、さらにアレンジしたもの。爆発のエネルギーを砲撃のように放つ事で、威力を集中させる。...しかし、着弾時に爆発を起こすので、至近距離での使用は諸刃の剣となる。

Evaporation Sanctuary(イヴァポレイション・サンクチュアリ)…“蒸発の聖域”。対象の領域に魔法陣もしくは魔力を流し込み、光で蒸発させに行く光属性最上級魔法みたいな感じの魔法。まともに食らえばただでは済まない。

三雷必殺…三重に術式を用意し、連続で雷系の大魔法を放つ事を表す。準備に時間がかかるが、効果は絶大で、余程堅い相手でなければ、押し切れる程である。

エンジェルフェザー…奏の扱う特殊な魔力弾による攻撃。一枚の天使の羽を模した魔力弾をいくつも舞い散らせ、それらを連鎖的に炸裂させる魔法。

Plasma saber Overlimit(プラズマセイバー・オーバーリミット)…文字通り限界を超えたプラズマセイバー。
 リニスの現状最強の魔法。

Numero Kanone(ヌメロカノーネ)…霊力を大砲のように放つ砲撃魔法。霊力を用いた魔法なので、魔力の術式を削り取る。シンプルなため、汎用性も高い。

暴走体の障壁が完全にA.〇フィールドですが、気にしないでください。
“心の壁”をイメージしたらこうなったので...。
そしてリニスさん覚醒回。優輝の傍にいるだけでステータスにバフが掛かります。
GODでのなのは曰く、リニスさんは“戦い方が上手い”らしいので、大魔法の術式を三重に展開し、三連発という荒業をさせました。
ちなみに、リニスさんの三雷必殺はノゲノラのジブリールをモチーフにしています。...まぁ、セリフでモロ分かりですね。 
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