機動戦士ガンダム・インフィニットG
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第四話「IS学園」
前書き
カミーユの修正には十分にご注意を……
「やれやれ……」
今僕らは高度1000メートルの中を、輸送機ミディアで飛行中だ。コンテナには僕のガンダム、カミーユのゼータガンダム。そしてジュドーのガンダムでゼータガンダムの強襲用タイプとして開発されたダブルゼータが積まれてある。そして他には一夏のユニコーンと、隼人と該の機体でMSガンキャノン2機が格納されている。
また、乗員はマット先生とルース先生にフォルド先生、あとユーグ先生かな?当初はユウ先生も招待される予定だったらしいけど、その先生が着るMSには何やら特殊機能が搭載されているらしく、極秘としてユウ先生は欠席であった。そして、男性職員だけではなく、女性職員のオペレーター科のノエル先生とミユ先生、ちょっと厳格なマオ先生が来ている。
また、女子生徒は男子生徒が到着した二日後に来るそうだ。それもリストには明砂の名前も入っていた……はぁ、明後日来るのか、アイツ……
「はぁ……」
僕はため息をした。これで何度目になるだろうか?
「どうしたよ?アムロ、さっきからため息ばっかりでよ」
隣に座る該はそんな僕に尋ねる。
「どうしたもこうしたもないよ?IS学園にこれから行くんだぞ? 嫌な事がいっぱい待ち構えているにきまっているじゃないか? そもそも、どうして僕なんかがノミネートされたんだろう?」
「ああ、それなら俺も同じような事をジュドーから聞いたぜ?」
「ジュドーから?」
今となっては、ジュドーは学園一の情報屋である。だから、気になることや極秘的な情報は大方購買のパンか学食をおごれば、ジュドーか彼の知り合いらが教えてくれるらしい。
「IS学園へのツアー参加はレビル学園長が独断で指名したことらしい……」
「いい加減すぎるよ? だって、IS学園だぞ? 俺たちみたいな素人が行って恥でもかいたらそれこそMS学園の名に……」
そりゃそうだ。どうせ派遣されるのならカミーユやジュドーといった凄腕のMS乗りならともかく、僕達のようにな素人はちょっと……なにかにしくじってしまったら恥さらしもいいところだ。しかし該はこういう。
「そこだよ? 学園長様はド素人同士の共演を望んでいらっしゃるんだよ? ド素人はド素人で、ISに乗る奴と、MSに乗る奴、双方を比較すりゃあどうなるかってこと? 当然、凄腕は凄腕同士でやりあわせるらしいけどね」
「そこ! 私語は慎め……」
そこで、マオ先生がジュドーの情報網に警戒して注意を放った。僕らはビクッときて大人しく黙った。全く、ユーグ先生は物静かそうで親しみが持てるのに、福担任のマヤ先生だけは厳格ゆえに油断の隙もない人だ……でも、根はとても優しい人だけどね。
このまえ、まだ寒さの残る帰り道にバッタリ行き会ったとき、首に巻いていたマフラーをそっと僕にかけてかしてくれたことがあった。
本来の僕だったら、何かの好感度アップかと思ったけど、なんだかとても優しく温かなオーラがマオ先生から伝わってきたのである。
ここ最近、なんだか人の気配が敏感になったり、先ほどのように人の放つオーラもクッキリと感じとる体質になってしまった……性質的に鈍感なのは相変わらずだけど。
*
その後、IS学園の制空権へ入った途端、教員の乗った数機のISが出迎えに来た。しかし、出迎えと言う割には十分な武装を手にしてだ。
「まるで僕らが包囲された気分だ……」
そう呟く僕。ミディアのパイロットがISへと通信を取り、彼女たちに誘導されてミディアはIS学園の上空へと招かれた。
「ISか……」
窓から見る一夏は教員が装着する機体を目にそう呟いた。本来、MSの仮想敵機はISなのだ。よってISの種類と性能を十分理解するよう対IS講義が良く授業で行われていた。
その授業の一部を思い出したのだ。
「こちらMS学園のミディアだ。貴殿らの出迎えに感謝する」
(こちらこそ、我々IS学園は貴校の入校を心より歓迎する)
無線でのやり取りを済ませ、ミディアはそのままホバーで学園の敷地へと着陸した。
その後、僕らはIS学園の敷地へ足を踏み入れた。見渡す限り、先端技術で周辺は埋め尽くされていた。例えば、校舎にはホログラムで何時間目かを知らせる数字のホログラム。さらにその校舎の前に設置されている噴水は吹き上げる水の上にもオブジェ状のホログラム、またさらに各施設内の路地にも地面に目印案内のホログラムと……最低限以上の施しがされている……僕らから言わせれば税金の無駄遣いとしか言いようがない。
「うわぁ……まるでディズニーランドに来ているみたいだ」
僕はこの広大なスケールに目のやりどころがなかった。
「こいつぁ凄ぇぜ?」
土産話として該は気付かれないよう写真を取っている。
「僕もこんな所には始めて来た」
隼人は地面を行きかうホログラムに釘付けだ。
「凄い!ここならいらなくなったジャンクパーツが腐るほど埋まっていそう……」
鼻の下を伸ばすジュドー。コイツは本当に機械フェチのようだ……
「けど、凄いな! いくらかけて建設したんだろう?」
カミーユも僕同様に目の付けどころがないらしいが、そんな僕らとは違い、一夏と、そしてユーグ先生の二人だけは暗い表情であった。
「IS学園か……姉貴がいるんだよな? ここに……」
一夏は拳を握りしめた。
「……!」
そして、過去の因縁を抱えるかのようにユーグ先生は校舎と、ISが行き交う上空を睨んだ。
「大尉……」
そんなユーグ先生を背後からマオ先生が心配そうな顔をする。やっぱり、二人は過去にIS関連で何かあったのだろうか?
「よくお越しくださいました。私がIS学園の代表としてあなた方を案内することになった織斑千冬です」
すると、目の前に黒いスーツを着た一人の教員がそう名乗り出た。見た目はマオ先生のように見えるが……何だろう? マオ先生のように根は優しいという心を持ち合わせていないような気がする。それに……
(……この人から敵意を感じる?)
僕はそう思った。この千冬と言う人は僕らを歓迎していないように思える。
(何だ? この敵意は……それにこの人は優しい心を持ち合わせていない?)
そして、カミーユさえもそう思った。いや、彼だけではない。
(この感じ……寂しさと孤独に満ちた冷たい感情?)
ジュドーさえもそう感じていたのである。
「……?」
すると、千冬さんは僕の隣に立つ一夏と、端に居るユーグ先生を見た。
「……!?」
一瞬千冬さんは驚いた顔をしてが、しばらくするといつもの無表情に戻り、僕らを校内へ案内した。
「MS学園よりも凄いな?」
IS学園の校内はMS学園の内部と比べて充実しすぎた設備でいっぱいだった。例えば、学食とかは食券の販売気がやけに大きかったり……教室や廊下には外のようにホログラムが天井や床を行きかう。ジュドーいわく、そこら中ピカピカチカチカである。
更に、教室に居る生徒や教員が物珍しい目や怪訝な目で僕らを監視するかのように睨んだり、見つめたりしてくる……
「こんな所来るんじゃなかった……」
僕はぶつぶつとそう呟いた。同じく他の皆も……一部の教師たちもそう呟き始めるのだ。
「何だか見世物にされている気分だ……」隼人
「そんなに男が珍しいのかね?」該
「何だ? コイツら……変な目で見やがって」カミーユ
「留守番役のビーチャ達が羨ましいぜ……」ジュドー
「そこら中女ばっかかよ?気にいらねぇ女ばっかりで、何だか気色わりぃな~」フォルド
「確かに、第一印象は不愉快だ」ルース
「ルース先生も、私語は慎むよう……」マオ
「しかし、これだけ女性が多いとは想像以上だな……?」マット
「ムスッ……」ノエル
ノエル先生は焼もちを焼くような目でマット先生を見つめている。マット先生は鈍感だから気付かないだろうな……?
「でも、皆……?」
僕はふと気付いた。それは、行き交う生徒達が来ている制服のデザインが妙に違ったりする。はいているソックスが長かったり短かったり、柄が違ったり。肩を露出したり、スカートを短くしたり、その逆にワンピースのように丈を長くしたりしている。僕らの学園では軍が関係しているから服装には厳しい。襟のホックが外れているというだけでマヤ先生に怒られてしまう。前何、教員なのにフォルド先生が汚れたネクタイをして出勤してきたので、そこを見られてマヤ先生にガミガミ言われていたところを見たな……?
「あの、織斑先生? ご質問、宜しいですか?」
移動中、マット先生が千冬さんへ質問する。
「何でしょう?」
そう不愛想に彼女は、こちらへ振り向かずにマット先生に背を向けたまま質問を受ける。何だか失礼な気がするな?
「むぅ……!」
案の定、その態度を見たノエル先生がムッとした。彼女だって十七歳という年齢でも、ちゃんと人と話すときの態度と常識はわかっているのだ。
(なによ!マット隊長が質問してきているのに……この人、隊長に失礼よ!?)
そうノエルは思いながら、マットの質問を聞く千冬の背を見た。
「その……こちらに男性職員はいらっしゃるんでしょうか?」
「いません。何せ、ここは女子高というものですゆえ……」
「そ、そうですか……?」
非常識な態度だと苦笑いするマット先生。そのほかの先生も皆苦笑いだよ……
そのあと僕らは一通りの見学を済まし、遼へと招かれた。遼はまるで高級ホテル並みの施設で、部屋には豪勢なベッドが二つとその隣にはオシャレなランプが、そしてシャワールームまで設置されているではないか?僕の学園では遼にシャワー何て付いていなかったし、下の大浴場か外へ行って銭湯とかを利用する。なんとまぁ……ハッキリ言って贅沢な場所で、税金の無駄使いであった。
「うわぁ……!」
僕はあんぐりと口を開けて驚いた。しかし、これは凄いという意味で驚いたのではなく、呆れた意味での驚きであった。
「こりゃあまるで高級ホテルじゃねぇか?」
該も僕と同じ様な事を呟き、そのほかの仲間達も同じように視線で辺りを見渡した。
「しばらくこの三カ月はこの部屋で寝泊まりするんだからありがたく使わせてもらわないとな……」
贅沢だと言っておきながらも、一様自分たちもしばらくの間使わせてもらうのだからこれはこれで有りがたいとカミーユは言った。
僕らは与えられたそれぞれの部屋に向かい、荷物をおろしてようやく寛ぐことが出来た。夕飯までは自由に見学しもいいと言われたが、流石にこの広大な施設を歩きまわると迷子になってしまうし、女ばかりの間を男数人が歩きまわるのも精神的に辛い。まぁ、一人よりかはマシだけど。ちなみに俺相部屋の相手は一夏だ。コイツは遼のベッドに横たわったっきり何も話してこない。何だか気まずそうだから黙っておこう……
「一夏!」
「!?」
僕は突然部屋から入って来た見知らぬ女子生徒の声に驚いて振り向いた。
「な、何だ……?」
一夏は振り向くと、そこにはポニーテールの少女が竹刀を片手に押し掛けて来たのだ。
「ほ、箒……?」
一夏はわずかに忘れかけていた幼い頃の記憶を引っ張り出して幼馴染の名を呟いた。
「……箒?」
僕は掃除道具と勘違いしてたが、どうやら箒と言うのはこの少女の名前らしい……
「い、一夏! どうしてお前がここに居る!?」
怒っているのか? 彼女と一夏は仲が悪いのだろうか? そう思いながら僕は空気となって状況を見ていた。
「は……?」
しかし、一夏は首をかしげている。
「どうしてここに居ると聞いてる!?」
「派遣されたんだ。それに俺がここに居ちゃあ悪いのかよ?」
仏頂面で一夏が答え、それを見て箒が少しビクッとした。
「べ、別にどうしてと聞いたことで……」
「誤解させんなよ……で、何の用だ? もうすぐ飯時だから手短に話せ」
そう言って一夏はベッドから起き上がって食堂へ向かう支度を取る。
「そ、それは……」
しかし、箒は顔を赤くして答えようとしない? 何か用があって来たのにどうしてためらっているんだろう?
「用がないなら俺は行くぞ? おいアムロ、行こうぜ……」
「あ、うん……」
ためらってばかりいる箒に一夏は苛立ったのか、僕を連れて部屋を後にする。
「ま、待て!」
すると、箒は一夏の片手を後ろからガシっと掴んだのだ。一夏は嫌な顔をして振り払う。
「離せよ! 行き成り何するんだ!?」
「よ、喜ばないのか……?」
悲しげな顔で箒が言うが、一夏は何の事だかさっぱりわからないでいる。
「せっかく会えたのだぞ? 喜んでくれないのか?」
「行き成り竹刀片手に怒鳴りながら押しかけて来るようじゃ気分も壊すって……」
そう言うと一夏は再び歩き出し、僕もそのあとに続く……が。
「お、おい!お前……!?」
すると、今度は僕の片腕を後ろからガシっと掴んだのだ。い、行き成り何するんだよ!?
「な、何ですか!?」
僕は振り払おうとするも、彼女が睨んでくるから怖くて片腕が動かない。
「お前! 一夏の友人か!?」
「え、あ……うん」
「なら聞くが一夏はどうなって……」
「いい加減にしろ!!」
一夏が怒号に僕までも度肝を抜かしてしまった。
「い、一夏……」
一夏は僕の手を引いてどうにか助けてくれた。
「コイツは俺のダチだけど、俺のことをそこまで詳しく知らねぇよ?」
そう言って一夏は最後にこう言い残す。
「……頼むから、もう俺に構うなよ?」
「一夏……」
そう言って一夏は僕を連れて食堂へと向かった。何だろう……背後から強い嫉妬と共に恐ろしい殺気が感じるんだけど……?
ハイテク過ぎる校内を見学し終えると、次に僕らは今後の期間お世話になる教室へ向かった。ちなみに僕達の向かった教室は1年1組だ。
僕らは、与えられた席へ、先生たちは一番奥でパイプ椅子に座って見学中だ。
僕らは皆やる気ゼロな顔で授業を受けている。僕らMSパイロットは、仮想敵機がISのため、そのISに基づく基礎知識を学ぶためにこうしてIS学園の生徒達と授業を受けているのだ……
「それじゃあ、皆さんお互いに自己紹介をお願いしますね?」
教卓に座る眼鏡の服担任の山田先生がそう豊かな胸を張る。ちなみに、そんな彼女を教室の後ろで見学しているルース先生が鼻の下を伸ばして見つめていた。
「うひょう♪ あんな巨乳女がこの学園に居たのかよ? マオみたいに肩っ苦しい奴か男を見下すアホで低能なクソビッチ共ばかりかと思っていたけど、来て損は無かったぜ!」
「フォルド、それ以上は寄せ……」
隣で共に見学しているルース先生が注意する。
そのあと、僕たちは次々と自己紹介を始めて、それが終わると次は一組の女子たちの紹介が始まった。しかし、彼女らは時折僕らに対してわざとか知らないが失礼なことを次々に連発してはジュドーのセクハラの言い返しでところどころ口論になった。
そんな中、一人のポニーテールの可愛い女子が席から立つと、僕たちに名を名乗った。
「……篠ノ之箒だ」
「篠ノ之?」
僕は首をかしげるが、しかし僕以外のMS勢の生徒らは何かとざわついている。すると、それを見て耐えかねたのか、箒という少女は勢いよく机をバンと叩いてこう叫んだ。
「違う! 私とあの人は違う、断じて違うんだ!!」
その勢いに僕はびくっとして、周囲も静まり返った。しかし、それから沈黙が続くも時期にそれも薄まって、次に行うISの講習授業が始まった。
「……はい、質問いいですか?」
山田先生の呼びかけに一人、僕らの中で一夏が手を上げる。
「はい! 何ですか? えぇっと……」
「あ、織斑っていいます」
「織斑……え! 織斑君ってあの織斑先生の!?」
山田先生の驚く声に周囲の生徒達もざわめき始めた。
「あの、言っておきますけど姉貴とは全然関係ないんで?」
そうスマイルで恐ろしい表情を向けると、山田先生は震え上がって謝罪する。
「ご、ごめんなさい! そ、それで……どういう質問ですか?」
「ISって何処を狙えば落ちます?」
「へ……?」
スタイリッシュに尋ねる一夏に山田先生は目が点になった。
「だから、ISってどこを狙えば倒せるんですか? 弱点的なところとか……」
「そ、その……ISはシールドで防御されておりますのでシールドを削るかエネルギーが消費するのを待つしか……?」
「何だ、MSと違って半永久的じゃないんだ?」
と、一夏。MSは核エンジンで可動するため、ISと違ってエネルギーを一々補充することはない。しかし、ISのように防御シールドは持ち合わせておらず、装甲の耐久性か片手に持つ盾に頼るしかない。
だが、武器の威力ではMSの方が上回っており、現在投入されているMSのビーム兵器は一発の威力によってISの防御シールドを貫通してしまうのだ。実弾さえもIS側の実弾兵器と違って連射性と威力も半端ない。防御と機動力ではISであるが、汎用性と攻撃力、可動時間ならMSの方が上である。
「一夏の奴、とんだ地雷を踏んだようだぜ?」
該は呆れてそう呟いた。なぜなら、後ろの席に座る金髪の少女が一夏を睨んできているからだ。案の定、事態は休憩中に起こったのである。
「ふあぁ……暇だな? ここの授業って」
机に伏せて一夏はあくびを一つ。そんな彼の元へ僕とカミーユ、隼人が歩み寄って来た。
「さっきの質問、あれでお前に向けて睨んでいた女子が結構いたぜ?」
と、隼人。
「そうそう、もっと考えてから質問しないと後からヤバいよ?」
と、僕も隼人と同じようなことを言うが、
「フンッ! こんな不愉快な場所とっとと出ていきたいものだな?」
カミーユは別の意味でここを嫌っていた。
「少しよろしくて?」
「はい?」
僕が代わりに振り向くと、そこにはワンピース状の改造した制服を着た欧州系統の金髪少女がこちらへ歩み寄って来た。
「あなたではありません!わたくしは、その席に伏せている方に用がありますの!!」
僕はイラッときたが、ここは抑えろと隼人に肩を叩かれ、僕は黙った。
「……俺? 何か用なの?」
「先ほど、あなたの質問が不適切だったので来ましたの!」
「は?」
「あなた! そう簡単にISを倒せると思って!? MSの方がよっぽど軟弱にみえそうですけど?」
「な、何だと!?」
こんどは、カミーユがキレるが、彼も隼人に肩を叩かれてどうにか抑えた。
「……そうやって今に見下していると、いつか痛い目に会うぜ?」
そう一夏は苛立つ僕やカミーユの代わりに言い返してくれた。
「な、何ですって……!?」
すると、彼女は一夏の席をドン! と叩いてさらに興奮する。
「わたくしは代表候補生なのですよ!? それなら、それ相応の敬意を払ってもらわないといけませんわ!?」
「……代表候補生? 何だそれ?」
その時、一夏の一言で周囲の生徒達が滑った。しかし、僕らは滑らなかった。なぜなら、僕らは「代表生」しか知らないのだから。
「知っているか?カミーユ」
一夏は代表生の一人でもあるカミーユに尋ねると、
「ああ……あまり聞いたことは無いけど、ひょっとして代表生になるための候補になった人達の事を言うんじゃないかな? 候補生ってつくんだからそうだと思うけど?」
「へぇ? じゃあエリートの分類に入るのか?」
そう隼人が答えると、少女はそれを聞いて堂々と胸を張る。
「そう! エリートなのですわよ? あなた達とは違って私は国家の中で選び抜かれた数少ない代表候補生ですの!!」
「へ~……で、誰なの君?」
今度は僕が問う。すると、今度は彼女だけが滑り、少女は信じられない顔で僕らに名を名乗った。
「わたくしを知らない!? イギリス代表候補生のセシリア・オルコットを!?」
「別に、俺達の中でイギリス出身者は居ないから知るはずがないよ?代表生だったら新聞やニュースで知っているかもしれないけど……」
と、僕。本来候補生になることさえもかなりの苦労と努力が必要とされるのだが、国を代表する代表生よりかは下なのだ。
「ふぅん……」
カミーユはつまらなそうな顔をしてセシリアを宥め、それが彼女をおおいに徴発させた。
「いい加減になさい! 代表候補生を知らないなんて非常識もいいところですわ!?」
「俺達はMS学園の生徒だからそっちのことなんて知らないよ?」
隼人に言い返され、セシリアは返す言葉がなかった。
「くぅ……!」
彼女が悔しがる中、チャイムが鳴り一同は席に戻った。
「また来ますわ!それまで逃げない事ね!?」
そう一夏に指をさしてセシリアは席へ戻った。
「何だか面倒な奴に目を付けられたな……」
ため息をつく一夏は次の授業に備えて机から教科書を取りだす。
だが次の授業を始める前に、来週行われるISとMSとの模擬戦闘訓練を行うので、それぞれ双方の代表者を決めるための話し合いが開かれた。ジュドー達の情報通りだ。
「我こそはと思う者は名乗り出てこい? 代表者だから双方とも慎重に選べ?」
教卓で千冬先生が言い、僕らは話しあった。ここは代表生としてジュドーかカミーユをベストに選んだ。もちろん代表生の二人は自信満々である。
そして、双方の代表は決まった。僕らの代表はジュドーだ。カミーユも捨てがたいが、ここはジュドーの実力も見て見たいという皆の意見によって決められた。そして、対するISの代表生は……クラスの代表生でもある先ほどのセシリアという子であった。
「うわぁ……あの子か?」
僕はつい嫌な顔をしてしまった。まぁ、僕が戦うんじゃないし、観戦役だから関係ないか?
しかし、再びセシリアが興奮しだし、机から立ち上がった。
「お待ちください!私は織斑一夏と対戦したいのです!!」
「織斑と……?」
千冬先生は一夏の方を見たが、一夏は窓辺へと顔を向けて目をそらす。
「そうです! 先ほど代表候補生であるわたくしに向けて失礼極まりない行為を集団で行ってきました。これでは私の機嫌が収まりませんわ!? 織斑一夏! この私、セシリア・オルコットと勝負なさい!?」
「え、俺……?」
一夏はキョトンとして指で自分の顔を差した。
「どうしました!? 怖気づいたのですか!?」
「べ、別に……俺話し聞いていなかったから」
「き、聞いていなかったですって!?」
セシリアは益々顔を真っ赤にして怒り狂う。彼女は堪忍袋の緒が切れ、人差し指をビシッと彼に差してこう言い渡す。
「決闘ですわ! この私を侮辱した以上この勝負を受けなさい!?」
「は、はぁ?」
どうしてそんなことに繋がるんだ?と、僕は呆れ、一夏も首を傾げた。
「あら、此処まで来て引き下がるのですか? やはり、日本の男性は臆病者そろいですわね? こんなちっぽけな極東の島国へ遥々来たというのに、男たちは汚らわしい猿ばかり……」
「……!」
すると、一夏はキレて机から立ち上がった。
「イギリスだって島国じゃないか! まずい料理で何年の覇者だよ?」
「わ、私の国を侮辱しましたわね!?」
「お前だって相手の国を侮辱しただろう?」
そして、一夏はセシリアに指をさしてこう宣言する。
「いいぜ! その勝負乗った!!」
その言葉に、僕たちは手を額に当てた。
「あっちゃ~……俺は知らねーぞ?」
ジュドーは、そう一夏の言葉に呆れてしまう。
「……ところで、ハンデはどんぐらいつけるんだ?」
次に一夏はそう言いだした。つまり、セシリアに対してこちらはどれくらいの手加減をすればいいのかということだ。
しかし、その一言が周囲の生徒たちのツボに入り、一斉にドッと笑い出したのだ。
「あはは! 何言ってるの? 織斑君?」
「そうだよ? 男が強かったのって、もうずいぶん昔の話だよ~?」
「大体、織斑君は代表候補性を舐めすぎだよ?」
そう、嘲笑するかのように、生徒たちは一夏を見て笑った。
「何がおかしい……!」
しかし、その笑いを打ち破ったのがカミーユである。
その一言で周囲は沈黙に包まれ、その空間でカミーユは静かに席から立ち上がった。
「お前たちから、『IS』を取ったらほかに何の『力』が残るんだよ?」
その、カミーユの静かにも力のある口調に対し、周囲の女子たちは何も返そうとはしなかった。返そうにも、カミーユの気迫によって周囲の生徒たちは完全にそのオーラに押されてしまっているのかもしれない。
「答えろッ!!」
彼のその怒号に、周囲の中には固まったり、震えたり、または半泣きする女子まで続出した。
「お前たちは、ISが無かったら何もできないのかよッ!?」
それがトドメとなり、ついに失禁してしまう生徒まで現れたのだ。
だが、そんな彼の発言を認めずと勢いよく席から立ち上がった生徒がいた。当然とは思われるが、セシリアである。
彼女は先ほどから言いたい放題に怒鳴りまくるカミーユに対し、顔を真っ赤にして怒りだした。
「お黙りなさい! あなたには関係ない事よ!?」
「関係ないわけないだろ! そんなに女が最強だっていうなら、一度俺と素手で勝負して勝って見せろよ!!」
「野蛮な……! そもそも、あなたの名前からして女性かと思ったから、仲良くして差し上げようと思ったのに……実際は『男』でしたのね?」
そう気高く笑う彼女に対し、カミーユのスイッチが入った……
ゴゴゴゴッ……
やばい、嵐が来る……カミーユが邪神になる! 僕は知らないから……もうセシリアの死亡フラグは絶ったね? 本当に僕らは知らないから……
僕達は、くわばらと手を合わせて念仏を唱え始めた。
「今何て言ったっ……!?」
カミーユは席から立ち上がり、セシリアを見る。
「何度でも言って差し上げますわ? 女性のような名前だから……」
「カミーユが男の名前で何が悪いっ!?」
ボゴォ!
すると、セシリアの顔面にカミーユの鉄拳が襲いかかった。ああ……僕知ーらないっと。
僕達は一斉に目をそらす。
「俺は男だよ! 俺は男だよ!! 俺は男だよ!?」
ボキッ! バキッ! ドカッ! ゲスッ!!
さらに、カミーユの容赦ない攻撃がセシリアを襲い、彼女は泣きながら詫びようとするも、今のカミーユには聞き届かないだろう。
「ご、ごめんな……」
「修正してやる! 修正してやる!!」
今のカミーユには目標を修正することしか頭にない鬼となっている。
「カミーユ!!」
慌てて千冬先生が止めようとしたところを、後から来たフォルド先生にカミーユは両脇を鷲掴まれ、教室から退場していく。
「ほらカミーユ、大人しくこっちへこようね?」
「離せ!! 離せよ!? こんな人の気持ちをわからないで言葉の暴力を振るう女なんかと授業が出来るか!?」
「はいはい……」
フォルド先生がガシっと掴んでジタバタ暴れるカミーユを廊下へと引っ張りだす。
「は、ははは……どうも、お騒がせしました!」
苦笑いしながらフォルド先生はカミーユを廊下へと連れて行き、しばらくしてボカン! と殴る音と共にカミーユの叫びは一瞬にして途絶えた。
「先生、授業を再開してください。カミーユはこれからフォルド先生による体罰を与えられますので」
そうジュドーが言うと、千冬先生は納得のいかないような頷きをして、授業を再開した。
また、セシリアはその後医務室へ連れて行かれたらしい。顔面を殴られたり蹴られたりしたせいで、下膨れになってしまったようだ。女性の顔を殴るのはどうかと思うがやはりカミーユを怒らせてしまったことについては「自業自得」としか言いようがなかった。
しかし……カミーユが暴れてしまったせいで、僕らの評判もガタ落ちになってしまったのである……
「やれやれ……」
昼休憩、僕は机に伏せてため息をつく。このまま学食へ行ったら凄く気まずい。仲間と一緒に行きたいのに運悪く置いてかれた。
僕は父さんの所からくすねて来た携帯食を持って来たので、鞄からその一つを取り出して屋上へ向かった。
「……?」
屋上へ行ったはいいものの……そこには先客が居た。一夏と箒だ……
「あの二人……」
僕は少し隠れて二人の状況を再び空気となって聞いていた。何やら箒のほうが積極的に一夏へ話しかけているようだけど?
「その……久しぶりだな?」
「そうだな……」
「どうしてお前がМS学園に入ったんだ?」
「なり行きとしか言いようがない……」
「……」
「……」
(ま、益々気まずくなっているぞ……!?)
僕は半分顔を出してそう思った。すると、先に口を開いたのは一夏のほうだった。
「……そういや、剣道の全国大会で優勝したんだな?」
「な、何故知っている!?」
急に赤くなった彼女は一夏へ怒鳴るかのように聞く。何だか……口調がおっかないな?
「新聞で読んだけど?」
「な、何で新聞を読むんだ!?」
「不理屈だな……読んじゃいけねぇのかよ?」
一夏は少し苛立ち、強めに言い返した。
「べ、別に……」
なるほど、一夏は箒との会話にそうとう苛立っているように見える。だって、箒の喋り方が本当に怒っているかのように聞こえるんだ。
「お、アムロか?」
一夏は、振り返って入り口付近で盗み聞きしていた僕を見つけると、駈け寄って来た。
「ちょうどよかった、これから一緒に飯でも食いに行こうぜ?」
「あ、うん……いいよ? でも、篠ノ之さんは?」
「もう、用は済んだからさ!」
「そ、そうなの?」
僕は一夏に肩を添えられて学食へと向かった。ああ……どうして後ろから何らかの殺気を感じるんだろう。いい加減怖いよ……!
「嶺アムロ……!」
箒は、これまで一夏に振り向いてもらえない事を理由にアムロの背を怖い目で睨みつけた。
*
時を同じく、MS学園から派遣された教員の一人、ユーグ・クーロは職員室にて、与えられた机で代表となった生徒たちの出席簿の整理をしていた。
「……」
口を閉ざし、ただひたすらノートパソコンのキーボードを打ちこんで行く。周囲のIS学園の教師らは耳打ちし合ってユーグを蔑む言葉を背後からぼやき合っているが、彼としては眼中になく、気にせずにキーボードを黙々と打ち続けた。
「お久しぶりです、ユーグ隊長……」
「……?」
ユーグはその声に顔を見上げる。すると、目の前には出席簿を小脇に抱えた千冬がいた。
「今の俺は、隊長ではない……」
そう一言で済ませると、ユーグは再びパソコンの画面へ戻る。
「もし、よろしければこの後お話をしたいのですが……」
「すまないが、君と話す理由は無い……」
「……な、何故です?」
千冬はなぜそこまでユーグが自分を拒むのかわからなかった。
「自分の胸に聞いてみるのだな……」
「ユーグ先生? 御話し中申し訳ありませんが、こちらの書類もお願いできますか?」
そんな、中からマオが二人の間に割り込んだ。ユーグは彼女が助けてくれたと悟り、ホッとする。
「ああ、マオ先生? わかった……」
「それと、ここの学園長が先生にお話があると仰っておりました……」
「そうか、なら今から行こう?」
親しげに会話を交わす二人を目に、千冬はユーグと話すマオを妬ましく思った。
「では……」
「ああ……」
マオと共にユーグは席を立った。
「ユーグ隊長……何故?」
「申し訳ないが、あまり近寄ってこないでくれますか? パソコンのデータを覗かれたら、たまったものではありません」
ユーグはIS学園で生活を続けているアムロ達の出席のデータをただ単にパソコンへ打ち込んでデータを作っているのだが、これでも個人情報のため覗かれては困るのだ。
「隊長……」
「その名で言うなと言ったはずだ……」
ユーグは気分を害し、パソコンを閉じるとそれを小脇に抱えてマオと共に職員室を出て言ってしまった。
彼と千冬との過去に何が起こったのかはまた次の機会にでも話そう……
*
「……で、結局どうなったんだ?」
昼休憩の最中、学食にて集まった僕は頬と額にタンコブをこしらえたカミーユにセシリアを殴った後の経路を聞いていた。
「困ったもんだよ……そのあとフォルド先生に袋にされて保健室で手当てを受けていると、隣で治療を受けているセシリアとばったり会ってしまったんだ。喧嘩を売られるかと思ったけど、俺の殴られた顔を見て鼻で笑いやがったんだ」
「お、お前! まさかまた……!?」
挑発されて再びセシリアを殴ったのか!? と、一夏が聞くがカミーユは慌てて否定した。
「ち、違う! 俺だってもうこりたさ? フォルド先生のアッパーを二発も食らったんだ。下手すれば顎に罅が入っていたかもしれないし……」
「で、そのあとはどうなのよ?」
該が問い、カミーユは続きを話した。
「……ああ、セシリアは俺の顔を見て鼻で笑ったけど、俺はそんな彼女の殴られた顔を見ると、俺は彼女以上に腹を抱えて笑ってしまったんだ。ハッハッハ~」
「……」
こうして思いだして吹き出し、笑うカミーユを見て僕らは返す言葉がなかった。自分で殴っておいて、終いには腹を抱えて笑うとは……カミーユは天然なドSなり!
「そ、それで?」
と、隼人。
「ああ、そのあとセシリアったら泣いてさ? 『こうなったら貴方達の内一人と決闘して、血祭りにして差し上げますわ! 仲間が目の前で尽きるところを怯えながら見届ける事ね!?』とか、言いだしちゃってさ? 困ったものだよ」
「それって一夏やカミーユ関係なしに俺達の内一人をボコりたいってことかよ?」
そうジュドーが言うと、カミーユは頷いて、
「早い話、そうなる」
「じゃあカミーユが行けばいい」
僕は真っ先にそう言った。
「お前だ、カミーユ」一夏
「そうだ、ここは加害者であるお前が行け? カミーユ」ジュドー
「まいた種はお前なんだからな? カミーユ」隼人
「ま、せいぜい頑張んなさい? カミーユ」該
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!? 俺はそのあとフォルド先生にボコられた身だぞ? それに最初喧嘩を売られたのは一夏じゃないか? そういう一夏が喧嘩を買ってやれよ!?」
「え!? 何で俺なんだよ!?」
「お前がイギリスのことで、ああたらこうたら言ったからだろ!?」
「だって人の国をバカにしたんだぜ? 言い返して何が悪いんだよ!?」
「じゃあ、どうするんだ? 俺達の内一人と戦わないとアイツは納得してくれないぞ? 拒否ったら拒否ったで、俺たちが腰抜け扱い受けるし……」
僕らは頭を抱えた。ジュドーとカミーユならともかく、僕や一夏、隼人に該はド素人ゆえ、苦戦を強いられるだろう?
兎に角も、僕らはIS学園に来て早々「アクシデント」を発生させてしまった。これが、単なる暴力事件だけで収まればいいのだが……
後書き
次回
「MS対IS」
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