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Three Roses

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第二十九話 食事その三

「これからも頼む」
「はい、料理人ともお話をして」
「妃の滋養に努めてくれ」
「それでは」
「只でさえ身体が弱いのだ」
 このことも言うのだった。
「それならばだ」
「余計に滋養にですね」
「務めないとならないのだ」
「だからこそ」
「質素に過ぎてはな」
 それもまた、というのだ。
「かえってよくはない」
「質素に過ぎますと」
「滋養のあるものも口に出来ない」
「だからです」
「そうだ、やはりな」
「だからこそです」
「妃の質素さはな」
 マイラのそれはというと。
「実はだ」
「お命にも」
「影響を与えかねないな」
「はい、ですから私もです」
「出来る限りだな」
「あの方にはこれからも」
「そうしたものを出してくれ」
「そうしてもらう」
「それでは」
「うむ、それでだが」
 ここでまた言った太子だった。
「妃にはこれからも滋養にいいものの他にだ」
「その他にもですか」
「薬もだ」
 それもというのだ。
「気付けのものもな」
「そうしたものもですね」
「飲ませてやってくれ」
「夜の為に」
「そうだ、子はどうしても必要だ」
 絶対にとだ、太子は典医に言った。
「それは何故かわかるな」
「はい、それは」
「子は跡を継ぐ」
「この国の」
「それが為にだ」
「お子をですね」
「何としても手に入れたい」
 必ず、というのだった。
「だからいいな」
「はい、そうしたお薬もですね」
「妃に飲ませてやってくれ」
「わかりました、しかし」
「妃は贅沢を好まないからな」
「そうしたお薬もです」
 典医は太子に言った。
「おそらくですが」
「飲まないな」
「はい、そう思われます」
「そうか、しかしそうした薬も必要だ」
「お子をなす為には」
「薬は私が知っている」
 こうしたことはロートリンゲン家の者だからこそ知っていることだ、子をなすことから栄えてきた家だからこそ。
「この国に持って来させる」
「そしてお妃様に」
「そなたから渡してもらう」
「わかりました」
「そうしてくれ、いいな」
「太子からお渡しすることは」
「私が命じて持って来させるが」
 しかしというのだった。
「典医はそなただ」
「だからですか」
「こうしたことは専門の者がするべきだ」
 こうした考えからのことだった。 
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