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Three Roses

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第二十九話 食事その二

「それはわかっていました」
「そうですか」
「しかしです」
「お顔の色が優れないですね」
 料理人も言うことだった。
「やはり」
「はい、だからです」
「これからもですね」
「滋養にいいものをです」
「料理に入れるべきですね」
「マイラ様は確かに質素を好まれる方です」
「ですがお身体も大事ですね」 
 料理人はまた言った。
「だからこそ」
「滋養にいいものを出して下さい」
「大蒜や生姜、チーズ等を」
「そして果実も」
 こちらもというのだ。
「林檎や葡萄、無花果といったものを」
「食卓にですか」
「出して下さい」
「果物ならば」
 料理人も言う。
「贅沢かといいますと」
「種類にもよりますね」
「おおむね。民百姓が植えていて」
「贅沢ではないですね」
「はい、ですから」
 それ故にというのだ。
「マイラ様にお出ししても」
「問題ないですね」
「そうかと、ですから」
「ではお願いします」
 果物もとだ、典医も言った。
「その様に」
「それでは」
 典医も応えてだ、そしてだった。
 料理人はマイラの食卓に果物も出す様になった。そうしたものを食べてもらい滋養に気をつけてもらった。
 このことは太子も典医から聞いたが彼はこう言った。
「当然のことだ」
「滋養のことは」
「それに務めることはだ」
 まさにというのだ。
「王家の者ならばだ」
「まさにですか」
「当然のことだ」
 こう言うのだった。
「むしろ妃はだ」
「その滋養にですか」
「疎い」
 眉を曇らせての言葉だった。
「私から見てもな」
「そうですか」
「食事からだ」
「滋養はですね」
「睡眠も大事だがな」
「滋養によいものを口にされて」
「それこそだ、思うとだ」
 太子はさらに言った。
「妃は質素というよりはだ」
「何か意固地な」
「信仰に対するそれだ」 
 まさにというのだ。
「極端に過ぎる、美食も駄目だが」
「それでもですね」
「質素に過ぎてもだ」
「お身体によくないですね」
「その通りだ、だからだ」
 太子はさらに言った。 
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