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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのはStrikerS ~失ったもの、取り戻すとき~


なのはと蒔風


二人が訓練場上空で立つように存在する。
その二人の表情は、フェイト達のいる屋上からでは図りきれない。



「ヴィ、ヴィータ・・・・・大変だよ・・・止めないと!!!」

「ば、バカ言え!!あんな二人の中に飛び込んで行って止めろってのか!?」



その周囲の空気は黒々とした感情で渦巻いており、とてもじゃないが入り込むなんてことはできない。
入ったら最後、どうなってしまうのか。


エリオとキャロはお互いを抱き合ってガタガタと震えて居るし、気絶したティアナの傍らにいるスバルはいまだに腕を抱えて寒そうに震えていた。



「と、とにかくはやてとシグナムに連絡を・・・・・・シャマルも呼んで、それで・・・・」

「間に合うかよ!!!舜がキレちまったんだ・・・しかもなのはとかのためじゃないみてぇな事言ってたから多分手加減ないぞ・・・・!!!!」














蒔風が構え、なのはがレイジングハートを起動させ、両手で握って蒔風に向ける。

「出張の時やるっつったけどよ、よくよく考えてみりゃ、こんだけの付き合いでお前とはやり合ったことはなかったなぁ」

「ッッ!!!!!レイジングハート!!!!!!」


なのはがレイジングハートに叫びかけ、アクセルシュートを打ち出す。
しかし、今やS+ランクに戻されたなのは。そのスフィアの数は尋常ではなく、数百発を軽く超える。

だが、蒔風はそれをその場から全く動かずして、腕に握った「天地陰陽」を振るってそのすべてを弾く。

それを見たなのはが瞬時に後退、砲撃の構えをとる。
レイジングハートの先端に魔法光が集まり、なのはの足元には魔法陣が展開される。





「なんで・・・・なんで!!!!私の教導が、間違ってたって言うの!?どうして!?」



ドォウ!!!



なのはの叫びと共に放たれたディバインバスターを蒔風が旋回してかわし、なのはに蹴りを放つ。

それになのはは、身体を回転させて回り込んで避ける。
そしてそのまま背後からレイジングハートを殴りつけるように振るう。




しかし




ギィン!!!!!




蒔風の背に帯刀状態の獅子天麟が現れ、その攻撃を防ぐ。
そして後ろ蹴り。なのはの身体が若干浮き、さらになのはの髪を掴んで額に膝をぶちかます。

バリアジャケットは見た目こそ服だが実際には魔力バリアが全身を覆ってるものだ。
だから頭から落ちても、額を打ってもある程度の衝撃は防がれる。


しかし、この男がこの期に及んでそんな手加減をするはずもなく、なのはの脳は頭蓋骨内で激しく揺れ、額からは血が流れている。


が、そこは空のエース。管理局最強と名高い「エースオブエース」
そう簡単には落ちず、最後に蒔風がいた位置に落ちながらも、レイジングハートの補助もあってスフィアを打ち出して攻撃する。





蒔風がそれを腕で顔を覆ってとっさにガードするが、足や胸、肩にそれが被弾し、爆発する。
その間に地上になんとか着地したなのはが、額から流れる血を拭いながら上空を見上げる。

蒔風にスフィアをぶち当てた地点。そこの爆煙が晴れるも、そこに蒔風の姿はない。
それを知った瞬間、真横のビルを一気に突き抜けて来た蒔風がなのはに突っ込んできた。





ドゴン!!ガゴゴゴゴゴン!!!!!

ドォン!!!!


蒔風がなのはの腹部に拳をめり込ませ、腕を振り切る。
その威力になのはの身体がくの字に折れて吹き飛んでいった。

その動作は一瞬だった。ビルが倒壊するよりも速い。
蒔風が突進して貫いてきたビルは今になって一気に根本から崩壊し、吹き飛ばされたなのははその勢いで五つほどのビルをぶち抜いていった。






なのはががれきの中で腰をつき、寄りかかりながら前を見る。

もうもうと上がる砂煙。
ガラガラと崩れ落ちるビルだった瓦礫。

そこに鳴る、断続的なガラスを踏んだり、石の上を歩く音。



崩壊の中、蒔風が真っ直ぐになのはに向かってコツコツと歩いてき、それを見下す。



「どうしたよ。S+ならまだそんなにダメージはないだろ?」

「く・・・・・・」

「どうしたよって聞いてんだ・・・・・・・・・答えろ!!高町なのは一等空尉!!!とっとと立って踊れってんだ!!!楽しい楽しい「お話」タイムだろォが!!!!呑気に寝てんじゃねえよコラァ!!!」




ビュッ・・・ゴゴン!!!!!!


蒔風の脚がうねり、なのはを狙って蹴りあげた。
とっさにそれを横に転がって避け、なのはが崩壊するビルから一気に上空へと飛び出していく。



上空に着き、下を見下ろすと蒔風がビルを蹴り上げていた。
ビルの屋上部分をけり上げ、それがなのはに向かって飛んできたのだ。

それを砲撃一発で粉砕するなのは。
だがその間に、蒔風がなのはと同じ高さにまでやってきていた。






「・・・・てめえはどうして否定するかっていったな?別に、お前の教導にはケチつけねえよ。だがてめえの甘えが今回のティアナの暴走を生んだと思え!!!」

「甘え・・・・・・?私は・・・・・甘えてなんかない!!!あの子たちが、いつか一人立ちしても、絶対に落ちないように、そんな風にしてあげたかった!!!!それが甘いって言うの!?」


そんななのはの言葉に、蒔風がゆっくりと首を振り、哀れなモノを見る目でいった。



「わかってない・・・・・・わかってないよ、高町なのは。お前・・・・・・」



そこまで言って、蒔風がなのはを指さす。
そして、決定的な一言を述べた。


「お前、昔より劣ったな」


その言葉に、なのはの双眸が見開かれる。




自分がここまで強くなったのは、そう、守るためだ。

最初はただ手伝いだった。
困ってる人を、自分の持ってる力で助けられる。
そんな単純な理由だった。

そしてそれはいつかの事件で傷つく人を守りたいという決意にかわり、ますます魔法の力を上げていった。


程なくして後の親友と出会った。
その子とわかり合いたくて、その子を助けてあげたくて

そのためにまた、強くなった。



そしてまた事件があった。
次は自分が狙われた。大きな敗北だった。

もう負けたくない、という意地と、相手の話を聞く、という願い。


そのために、相手を戦い、勝つことも必要だと、また強くなった。


その強さはまた一人の親友を救い、なのはの胸で、まだまだ助けを求める人がいるはずだ、と言う思いが大きくなってきた。


助けがなく、泣いている人がいる。
その人も助けたい、そして自分にその力があるのなら、自分はそのために働きたい。




その想いから管理局にも入った。




そして、あの事件。
八年前の、事件。



あのとき誓ったんだ。
私の教え子たちにはあんな思いはさせたくない。

だから、絶対に落ちない、そんな訓練を。
自分は無茶ばかりしてああなったから、絶対に無茶はさせないんだ。

落とさせちゃいけないんだ。



そう思ってから、教導隊では必死になった。
絶対に基礎から固め、見極めるまでそれより上の魔法には行かせない。

訓練メニューも吟味する。

絶対に自分みたいな無茶を、他人にさせちゃいけない。








そう、これも、誰かのために、誰かを助けたいがためにだ。






そしてそれは、ひとりの男への憧れでもあった。






「世界最強」と豪語して、すべてを救って見せると叫び、救えなければすべてを背負う、その姿に、なのははひたすらに憧れた。

子どもの頃はそうでもなかった。
ただ凄い人、という認識止まりだった。

しかし、管理局に入って思い知った。


世界には救いがなさすぎる。


そんな中でも、彼は世界に救いはあると言っていた。


彼の話を聞くに、どうやらどんな状況になっても世界は彼に戦わせることを強要したらしい。
しかし、それでも彼は世界を信じていた。

そんな強さを、ここ数年でやっと理解し、その人を目指してきた。





全部を救うことなどできない。

だったら、自分の遺志を継いでくれそうな、そんな子たちをたくさん育てて、みんなで一緒に守っていこう。



それは、彼女の夢だった。
皆を救いたかった。



そして、いつの日か、あの人と並んで立ち、一緒に助けて、いつかはあの人も助けて見せる。






それなのに





あなたを目指して強くなって、できる限りのことをしてここまで来たのに





なんで






それを







よりにもよって








「どうして・・・・・・あなたに否定されなきゃいけないのッ!?」





ドォン!!!!



なのはの砲撃が激昂と共に放たれ、それを蒔風が回避する。
だが、なのはは止まらない。そして更に言うならば、十年経ったなのはの力は、蒔風の想像を超えていた。




ドンッ!!・・・・ギュンギュンギュン!!!!


なのはのディバインバスターをかわした蒔風だが、その周囲をアクセルシュートが渦を巻きながら迫ってくる。
二つの魔法の同時砲撃。

蒔風が上空に向かって一気に上昇し、旋回を持ってそれをかわす。

だがそうしているうちにもなのはが次々とスフィアや砲撃を放ち、蒔風を追い詰めていく。


その攻撃をすべてかわしながらも、攻めに転じる事のできない蒔風が叫んで放った。




「・・・しゃぁ!!!!!!」

バォオウ!!!

蒔風が獅子天麟で全力をもって薙ぎ、その風圧にアクセルシュートのスフィアが真っ直ぐなのはに向かって押し返されていく。
それはまるで桜色の雨であり、砲撃に集中していたなのはに襲いかかった。




「ッ、きゃああああああああああああ!!!!!!!」

その雨に顔を腕で覆い、全身バリアで防御するなのは。
だが、それが蒔風に好機を与えてしまった。



ドゴウ!!!!


蒔風の獄炎砲がなのはに向かって真上から真っ直ぐに放たれた。
それを魔法陣で防ぐなのはだが、立て続けに二発目、三発目と来られ、ついに四発目でバリアが弾け消え、地面に向かって落下していった。


それを空中で体勢を整え蒔風の方向を見るなのは。
その瞬間、すでに蒔風はなのはの眼前に迫っていた。



「ダアアアアアアアアアアアアアアッシャアアアアアアアアアア!!!!!!!」



ドゴッ、ゴバン!!!!バァン!!!!



蒔風の拳がなのはに命中し、訓練場のプレートをついに突き破って、なのはを海中に沈めた。
その後を追って蒔風も海中に潜り、地上は一瞬だけ、静かになった。









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蒔風となのはが激突している訓練場を一望できる海辺のフェンス。
いつもフォワードたちが訓練前に集合する場所だ。

フェイトの考えで、そちらに移動していたのだ。



「やべぇよ・・・・・訓練場がなくなっちまう!!!!」

「やっぱり・・・・移動しといて正解だったね・・・・・・」

「なあフェイト、どーすりゃいいんだよ!?フェイト!!」

「・・・・・・・」


困り果てるヴィータと考え込むフェイト。
どうすればいいのか、なんて答えなど出ない。

相手はあのエースオブエースと世界最強だ。
対してこっちはリミット付きの魔導師二人。


止める術など、在りはしない。



だからフェイトは先にスバルに言って、フォワードたちを医務室や自室に帰らせた。



この戦いは、あの子たちに見せるようなものじゃない。
そう、判断したからだ。





「あれを止めるなんて、できないよ。舜がああなった以上は、なのはと話をつけるか、舜が怒りをぶちまけ切るしか・・・・・・」

「・・・・・あ、あたしシグナム呼んでくる!!」



そう言ってヴィータがシグナムを呼ぼうと走りだそうとする。
しかし、フェイトがそれを止める。


「ここにいて、ヴィータ。もしどちらかが大怪我をしそうになったら、ひとりじゃ止められない」

「う・・・・じゃあこの事だけでも伝えとく。それならなんとかいいだろ?」

「うん、お願い」



その内にフェイトが訓練所にフィールドで非殺傷設定をかける。
プレートは破壊されても、これなら効くはずだ。


なのは達の魔法には相手を傷つけないために非殺傷設定が用いられている。
しかし、蒔風の力にはそれがないし、今のなのはも手加減してるとは思えない。

さらにはいくら非殺傷でも、いきすぎた衝撃などは身体に深刻なダメージを与え、下手をするとショック死させてしまう可能性もあるのだ。




ヴィータが連絡をとり、フェイトがプレートのど真ん中を突き破って海に沈んだ二人に目をやる。






そして、海が盛り上がっていった。






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海が盛り上がる。
山の様に海面が盛り上がっていって、ついにそれを突き破って桜色の砲撃が海から突き出してきた。




場所は、フェイトから見て訓練所プレートの右に十メートルと言ったところか。
真上に向かって延びたその砲撃が、まるで逃げる敵を追うかのように横に薙がれていく。


そしてプレートに当たり、下からそれを吹き飛ばし、真っ二つに割りながらその光はプレートを横断していった。

更に円状にグルリッ!!と炎の砲撃がプレートの周りを切るように薙ぐ。
するとリング状にプレートの周りの海水が一瞬で蒸発、爆発して、海の水が上空に吹き飛んでいった。



雨のように海水が降る中、更に海面下で桜色の光が大きく光り、何本もの砲撃を同時に海上に突き出して、更に海全体を覆うような雷撃が浸透する。



もはやプレートなど原形をとどめていない。

所々、まだ何とかビルを残している場所もあるが、それでもほとんどあるのはただ浮いてる板にすぎない。



海が渦を巻き、その渦がそのまま上空に抜きだされ、その中からなのはが放り出されてくる。
その上空のなのはの投げ出された方向に蒔風が海中から飛び出し、その脳天に踵落としを振りおろす。


だがそれよりも早くなのはが蒔風の顔面に向けて砲撃を放ち、蒔風の身体がのけ反って吹き飛んだ。

地面に落ちた蒔風。そこに向かってここぞとばかりに何十発のスフィアを叩き込むなのは。



そこで蒔風は周囲を見渡し、今だかろうじて生き残っているプレートの上にあるビルに向かって白虎釵の片方を投げ、突き立てた。
すると蒔風の手にあるもう一方の白虎釵とそれが白い光の糸で結ばれ、手にある白虎釵を引いて蒔風の身体がそれによって一気に旋回、ビルを回ってなのはの背後にまわる。



その勢いのまま、蒔風がひねりを効かせたキックを、なのはがバリアを張り、衝突してぶつかり合う。

そしてそのまま、拮抗するかに思えたそれは、あっさりと覆される。


一瞬だけ火花が散ってぶつかる両者。
だが蒔風がその瞬間に足を曲げ、衝撃を緩和してからバリアの上を飛び越えるように回りこんだ。

そんな機動を見たこともされたこともないなのはは何とか振り返るので精一杯だった。
しかし、それも叶わない。




蒔風が後ろ襟をひっつかんで、なのはを海に向けて投げ放つ。


海に再びダイブさせられたなのはに、蒔風が突っ込んでいく。
その蒔風に向かって海中からカウンター気味に砲撃が放たれてきた。

その砲撃をらせん状に周囲を回って回避する蒔風。
だが海面に到達した瞬間、海面が爆発して水しぶきに思わず蒔風が目を瞑る。

そしてその蒔風に、なのはの鉄拳が飛んできた。



なのはが殴る。
そんなことは今までもありはしなかった。


もちろん、教導官をやっている以上ある程度の護身術や動きは教わったし、知っている。

だが彼女は砲撃魔導師なのだ。
そんなものは本分ではない。



つまりは、そこまでやらねばならぬ状況なのだという事。


蒔風が上空に後退し、なのはが少し高いところに停滞する。
蒔風は口元を指でさすり、ニヤリと笑ってなのはを見た。




「なかなかに強くなったな、なのは。だが、まだ駄目だ。お前は劣った。十年前から、格段にな」




また言われた。劣ったと。



一体何が劣ったというのか。
強くなった、守ってきた、その道を貫いてきた。



目標となったあなたを見て、すべてを救えそうなあなたを見て
助け出せない絶望や、帰るところも先もない絶望も、すべてを飲み込み、背負う姿に



ただひたすらに憧れてきた十年間。


その結果が劣っただなんて、なのははもう何が何だかわからなかった。






「何が劣ったっていうの!?わたしは・・・・・・私の十年を、無駄にしたことなんてない!!!」









ガキィ!!!!!!!








蒔風の身体を、バインドが止める。
両手両足首、そして首に胴体と、桜色のリングが巻きついて、ギリギリと強く締め付けてきた。






「皆を助けるために、強くなった!!!もっと助けるために、そんなことができるような子たちも育ててきた!!!それなのに・・・・今ままでの十年を、劣ってきただなんて、言わないで!!!!そんな目で、私を見ないで!!!」




レイジングハートに巻きつくように環状魔法陣が現れ、足元にも円状、更にレイジングハートの先端にも同じく円状の魔法陣が展開される。









「なのはッ!!!それは!!!」

「やり過ぎだ!!!!!」


その魔法をよく知るフェイトとヴィータが叫ぶ。
しかし、フェイト達側からは訓練場に声は届かない。







その間にも、レイジングハートの先端に、魔力が集束されていく。







「私はみんなを救いたかった!!!そのために、あなたに憧れて、ここまで来た!!あなたに認めてもらいたかった!!皆を救う、なにもなくさない。そのために強くなったのに!!!なのに、なんでそれをあなたが否定するのッ!?何が劣っているっていうの!?」





蒔風の目が俯いて見えなくなる。
なにも言わないその姿に、なのはがついに限界を迎えた。




「あああああああああああああああああああ!!!!!スターライト・・・・・・・・・!!!!」





なのはがレイジングハートを振りあげて叫ぶ。
しかし、そこで蒔風がボソッ、と呟いた。




「俺が言ってんのは強さだとかそこじゃねえ。そんなとこが劣ってるなんて、俺が気にすると思うか?違うんだよ、なのは。お前が劣ったのは・・・・・・」




そう言いながら蒔風が力を入れる。
するとバキン、となのはのバインドが破壊され、身体が自由になる。

その手首や首からは薄皮でも向けたのか、赤くなってうっすらと血が流れていた。



そして人差し指をなのはに向け、その先端に白い光が集結する。
その大きさはビーズ程度と言う超極小。

その光が高音を発してさらに圧縮され、蒔風の指先の前に光の球としてチャージされる。




なのははそれにも気付かないのか、慟哭しながら、それを叫び、蒔風もそれに応じて、一発撃った。






「ブレイカァァァァアアアアアアアアあああああああああああああ!!!!!!!!!」

「絶光尖・極」







その瞬間、なのはのスターライトブレイカーと、蒔風の極小砲、絶光尖・極が放たれる。

エリアを覆う桜色の砲撃と、一瞬を以ってレーザーのように真っ直ぐ突き抜けた白い光が、それを見ていたフェイトの目に焼きついていた。









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エリア全体を包むような砲撃が蒔風を飲み込み、そして消えた頃




そこには二人の人間が宙に立っていた。





一人は蒔風



その全身の服はボロボロになり、上体からは軽く血も流れている。
唇は切れ、髪も乱れ、肩も上下している。


ゲホゲホと咳をして、上半身がぐらりと揺れるがなんとか上体を起き上がらせる。
そして、まるで仁王立ちのように宙に浮いてなのはを見下ろす。




そしてもう一方はなのは

なのはのバリアジャケットは砲撃を撃つ前と大して変わりない。
だが、なのはは右肩を庇う様に抱え、その右腕はレイジングハートを握りながらもダラリと下がっている。





蒔風の「絶光尖」は貫通に特化したものだ。
腕の細さ程度に練り上げた光が、そのスピード、その細さで敵を貫く、まさに絶なる光の尖。

更にそれをビーズ程度にまで圧縮し、打ち出したのが今回の「極」だ。
その貫通力は、相手の砲撃すらも貫き通す。

だが貫通力にすべてを注いだ結果、相手の砲撃や攻撃を貫きはするが打ち消すことができず、こうして「痛み分け」のような結果となるのだ。



そしてそれがなのはの右肩に命中していた。
あらかじめこの空間に非殺傷が働いていたため実際に肩に穴が開いたわけではないが、それでもダメージは深刻で、とてもではないが魔法を撃てるコンディションではない。






右肩一点にダメージを集中されそこを痛めたなのはの元に、全身を平均的に攻撃された蒔風が、ゆっくりと、なのはに近づいていった。


蒔風が近づいてきて、もうその手が届きそうにもなってくる。
それになのはが震え、左手にレイジングハートを持って



「あ・・・・・・あぁ・・・・・・うああ!!!!」




その蒔風を殴りつけた。
蒔風は受けることもせず、かわすこともせず、それを黙って受ける。





「え・・・・・?あ・・・・・・アぐっ!!!!」



蒔風がそのままなのはの襟首を両手で掴み、捻り上げる。
そして、言った。





「俺が言ってんのはお前の強さの事じゃねえ・・・・・・そんなことじゃねえ。オレが劣ってるって言ったのはよ、お前のそのスタンスだ!!!!」


蒔風がなのはに叫ぶ。
それはなおも続いた。



「お前はどんな状況であっても、まず相手と「話をする」とこに対して真摯だった!!!!そのために相手と戦うことも必要と解れば、そのために強くなった!!!思い出してみろ。お前は最初に会った相手に、なんて言ってきたんだ!!!!お前が一番「話しあう」事が大事だって言ってきたんじゃねえか!!!!それがなんだ、このざまは。ティアナはお前の意志を無視し、お前もティアナが抱えているモノを知りながら、それを無視した。お前もあいつも同罪だよ・・・・・強くなれれば許してくれるという甘えと、あの子ならわかってくれるという甘えだ!!!!その双方の甘えが今回の暴走を引き起こしたんだ。それがわかってんのか!?なんで話さないんだよ・・・なんで相談しないんだよ!!!話し合うのはお前の領分だったじゃねえか!!なんで忘れたんだよ!!どんな状況に持って行ってでも、とにかく話し合おうとした奴だったじゃねえかよ!!!」



その言葉に、なのはが気付く。




たしかに

私はティアナとあれからちゃんと話しをしていない。
どうしてだろう?いつから忘れちゃったんだろう?

あの子ならわかってくれると、信頼という名の甘えにおぼれたせいだ。



沢山の人を相手にしてきて、一人一人とのつながりを忘れてしまっていた少女が、ここで気づいた。
話しあう、という、かつての自分の姿に


蒔風がなのはを放し、肩を掴む。
そして真っ直ぐに目を見て、しっかりと言った。



「それじゃ伝わらねえよ・・・・・・確かに、言わないで伝わり合う関係は理想的だ。でもな、言わなきゃ伝わんないことだって、あるんだよ!!!!」

「あ・・・・あ・・・・・・」

「だから、ちゃんと話せ。いいか?必ずだぞ!!そしてしっかり仲直りしろ。言っとくがな、拒否権はないぞ。それをするまで、許さねえからな!!!」

「うん、うん・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・ごめんなさい・・・・・」



なのはが蒔風の胸で泣き始めてしまった。
それに蒔風が「しょーがねーなぁ、お前は」と言って頭を撫でてから「山」で切ってその怪我を軽く治す。







そして二人で一緒にフェイトたちの元に戻っていった。

そこにはすでにシャマルがおり、シグナムが息を切らして走ってきていた。
しかし、何とかことなきを得たので一安心、と言ったところだ。

なのはがフェイトやヴィータに「心配掛けてごめんね?」と涙ながらに謝る。
その場についてきたリィンが先日の出張時に行っていた模擬戦による被害を想定していたおかげで、ここの修理は問題ないそうだ。




それを見て満足したのか、蒔風が戻ろうか、と提案する。




こうして、一連の出来事は終わった。




だが彼は知らない。


なのはの過去が、この後明かされ、それが彼にとってどれだけ過酷なことかを








to be continued
 
 

 
後書き

アリス
「さて、なのはさんとのやり取り、終わりましたね」

作者として、アニメを見たとき何やってんのこいつら?とマジで思いましたからね。
ティアナはなのはの教導、意志を無視し、なのははティアナの覚悟、想いを無視しました。

そりゃあーなって当然だと。


アリス
「あれ?でもティアナさんはまだ納得してないですよね?」

まあそこは次回ですね。


アリス
「なるほど。次回、力を得る、その代償」

ではまた次回










駄々をこねるだけの馬鹿はなまじ付き合ってやるからつけあがる 
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