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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第3章:再会、繋がる絆
  第82話「修理と“帰るべき場所”」

 
前書き
来るべき戦いに備えて...的な話です。
 

 






       =優輝side=





「....ジュエルシードの修理...だと?」

「ああ。簡単に言えば、ジュエルシードが願いを歪めて叶えるのは壊れているからなんだ。...ユーノからある程度は報告されているだろう?」

 休憩していたクロノを見つけ、少し訳を話す。
 僕がやろうとしているのは、ジュエルシード回収前にシュラインに行っていたジュエルシードを本来の状態に直す修理だ。

「確かに本来天巫女が所持していた時の効果と違う事は知っているが...。」

「...あぁ、直せるかどうかか?それなら大丈夫。既に一度直したからな。」

「確かにそうだが...。しかしな...。」

 僕の言葉にクロノは渋る。...まぁ、当然だ。

「本来の状態がわかれば後は簡単だ。...で、貸してくれるか?」

「いや、普通に僕個人で貸せる程の権限は持ち合わせてないんだが。」

「...だよな。」

 ダメで元々だったけど、やっぱりか。
 回収したジュエルシードは全部預けてしまったしなぁ...。

「一応、艦長に聞いてみるが...普通は無理だからな?シュラインの場合は、本当に特別だったからな。」

「分かってるさ。」

 厄介ごとが増えるかもしれないのに、普通はそんな許可は出さない。
 一応という訳で、クロノは少し通信するために席を外した。

「...んー、やっぱりそう上手くはいかない...か。危険性をなくす意味で見たら、これ以上ない程いい手段だと思うんだがな...。」

〈...まさか、今あるジュエルシードを全て直すおつもりで...?〉

 スリープモードから切り替え、話を聞いていたのか、僕の呟きにシュラインが反応する。

「まぁ、ね。時間があればなんだけど。」

〈...確かに、本来の状態であるジュエルシードがここにありますから、それを元に修理できれば可能ですが...。〉

 そこまで言って、シュラインの言葉は途切れる。危険性もあるからだ。
 シュラインが乗り移っているシリアルⅠと違い、他は封印されているだけだ。
 何かの弾みで封印が解け、暴走する可能性もある。
 そうでなければ、危険性の高いロストロギアとして扱われない。

「....何か安全に直す方法はあるか?」

〈あるにはあります。一度優輝様のリンカーコアの治療を中断し、直すジュエルシードの制御に集中すれば、いきなり暴走するという事はありません。〉

「異変が生じれば周りの人が再封印すればいい...って事か。」

 妥当な所だろう。むしろ、そこまで確実に近い方法があるだけ儲け物だ。

「でも、結局許可が降りない限り、修理はできないわよ?」

「そうだよな...。そこは仕方ない。」

 椿の言葉に、僕は諦めるように返す。
 まぁ、普通に考えれば許可など降りずに一蹴されるだろう。

「戻ったぞ。」

「あ、クロノ。」

 そこに、クロノが戻ってきた。

「時間がないが...一度、話をしてから判断するとの事だ。ついてきてくれ。」

「分かった。」

 話をしてから...か。結構、信頼されてるんだな。
 多分、去年辺りだったら一蹴されていただろう。





「ジュエルシードの修理...という事だけど、危険性がなくなるのは管理局としても助かるわ。だけど、その過程が安全とは限らないの。だから、易々と許可は出せないのだけど...。」

「それは分かっています。」

 むしろ易々と許可出されたら管理局を疑うレベルだ。

「できれば、具体的な方法を教えてほしいのだけど...。」

「分かりました。」

 まず、シュラインを取り出す。シュラインの事はリンディさんも知っているから説明の必要はないと考え、すぐに説明に移る。

「シリアルⅠ....シュライン・メイデンが宿っているジュエルシードね。」

「はい。そして、このジュエルシードは本来の状態に直っています。」

「...そうね。」

 既に一つ直っている事に、リンディさんも知っているため頷く。

「シュラインが宿っているからこそ、暴走の心配もなく、安全に直せました。」

〈直接宿っているからこそできた事です。また、優輝様程の魔力操作に長けた人物でなければ、修理はできませんでした。〉

 前提としてシュラインが直っている事を言い、手段を解説する。

「ジュエルシードは、番号こそ振られてありますが、その内部構造は一切同じです。つまり、このジュエルシードの内部構造を解析すれば、不要な所に接触することなくジュエルシードを修理する事ができます。」

〈ちなみに、既に内部構造は解析済みです。〉

 正常な状態のジュエルシードのデータがあれば、それを参考にどこが歪んでいるかすぐにわかるようになる。

「...けど、それでも暴走する可能性はあるわ。」

「はい。ですから...。」

〈私が暴走しないように制御し、念のために異変が生じればすぐに封印できるようにすればいいのです。〉

 僕が...というより、シュラインが説明する。

「なるほど...ね。」

 説明を一通り聞き終わって、リンディさんは少し考え込む。

「...直す事によるメリットとデメリットは?」

「メリットは、他のジュエルシードに対する対抗策になります。また、司さんを救出する際の大きな助けになるかと。...偽物が言っていましたから。ジュエルシード達も、主である司さんを助けたいと。」

「....そうね。」

 他にも魔力を供給できたり、パスを繋ぐことで治療もできる。

「デメリットは...“危険性”がなくなる分、安易に利用されやすいという所でしょうか。ただ、これはシュライン曰く、天巫女が正式に“所有”する事になれば解消されるらしいです。」

「そう...。」

 なんでも、天巫女以外は簡単に干渉できなくなるらしい。
 しかも、所有者の天巫女は干渉される事に気づけるようで、阻止も簡単だ。

「....優輝君の事だし、悪用はないと信じるわ。....今回は特別よ。」

「母さ...艦長!?」

 許可が出た事に、クロノが驚く。
 ...正直、僕も随分あっさり出された事に驚いている。

「ただし、私とクロノの監視を付けるわ。...いいわね?」

「...それだけでいいのなら。」

 リンディさんは、もしかしたら司さんとの戦いを危惧しているのかもしれない。
 ジュエルシード二個分であの偽物の強さだ。いくら神降しという切り札があっても、確実に勝てるとは言い難い。
 だから、少しでも戦力を増やしたいのだろう。

「ではクロノ、ジュエルシードを。」

「...分かりました。」

 リンディさんはクロノに指示を出して、出してあったお茶を飲んだ。
 ....本当に、信頼されているな。なら、それに応えないと。

「長丁場になるだろうけど、付き合ってくれよ?」

「分かってるわ。」

「異常事態での封印は任せて。」

 一緒に来てくれていた椿と葵に声を掛け、僕らはジュエルシードの修理に臨んだ。











       =奏side=





「ふぅ...。」

 昼食に食堂で麻婆豆腐(激辛)を食べながら一息つく。

「(やっぱり、全体的になんだか軽くなった感じ...。)」

 夢の中で魅了が解け、優輝さんとも本当の意味で再会した。
 魅了が枷になっていたのか、解けてから少し体が軽く感じる。
 だからこそ、偽物との戦いでも上手く動く事ができた。
 ...さっきの葵さんとの模擬戦ではあまり上手く動けなかったけど。

「...ごちそうさま。」

 食べ終わり、食器を返しながら私は思考を巡らす。
 ...考えるのは、“聖奈司”さんの事。

「(まるで、“記憶が改竄されていた”という事がなかったかのように思い出した...。)」

 そう、私は司さんの事を思い出していた。
 タイミングは、おそらく魅了が解けた時。
 多分、魅了のついでに記憶改竄も解けたのだろう。

「(...と言っても、思い出した所で何も変わらないのだけど...。)」

 私が思い出した所で、司さんを救う事に変わりはなく、またプラスにもならない。
 ...私は、司さんの過去を知らないから。
 だから、言う必要もないと優輝さん達にも思い出した事は知らせていない。

「(でも...。)」

 それとは別に、一つ引っかかる事があった。
 それは、司さんに対する優輝さんの様子。
 “絶対に助ける”という、強い意志が感じられた。

「(司さんは、優輝さんやアリシア曰く、“心を閉ざした”ような状態。だから、その原因となる事を知って説得しないとまず拒絶されてしまう。)」

 実際、プリエールの時に助けようとした優輝さんは拒絶されてしまった。

「(...司さんの過去は、誰も知らない。知り合ったのは、ジュエルシード事件の時からだから。)」

 それなのに、優輝さんは確固たる意志を以って助けようとしている。
 まるで、過去を...事情を知っているかのように。

「...あの目、どこかで見た事が...。」

 合流して司さんの事を説明していた時の優輝さんの目。あれを私は見た覚えがある。
 確か....。

「(...前世の時....。)」

 一度、前世で優輝さんから“親友”の話を聞いたことがある。
 助けれなかった事を悔しがり、もう二度と同じ事を起こしたくないという意志。
 それが込められたあの瞳と、同じだったのだ。

「もしかして...司さんは...。」

 ...そこまで考えて、頭を少し振る。
 私がそれを考えても意味がない。優輝さんじゃないと、多分解決できないのだから。

「...始まりの場所にして、帰るべき場所....。」

 ふと、司さんの事で、優輝さんの偽物が言っていたキーワードが頭に浮かぶ。
 意味深な言葉で、最後のジュエルシードの在り処を示しているため、リンディさん達がどういう事か調べている。

「もしかして、これって...。」

 複雑なように思えて、結構単純な事かもしれない。
 “帰る場所”...それで思いつくのは、居場所となる場所...例えば家。
 家であれば、“始まりの場所”にも当てはまる。
 なにせ、ほとんどの人は“家”で育ち、成長して人生を歩んでいくのだから。

「(私は違ったけど、ね。)」

 ちょっと自分に皮肉りながらも、それで納得がいく。
 ...と思ったけど、さすがにそんなに単純じゃないよね...?

「偽物とはいえ、優輝さんが遺した言葉だから....。」

 でも、それ以外に思いつかないので、今は考えないようにしよう。

「....奏...?」

「え...?」

 名前を呼ばれて、振り返る。
 そこには...。

「....神夜...。」

「今、あいつの名前を呼ばなかったか?」

 私に魅了を掛けた張本人が、そこにいた。
 あの時の自分が自分じゃないような感覚を思い出し、つい後ずさる。
 それに構わず、彼はさっき私が呟いた事を問い詰めてくる。

「あいつに何かされたのか!?」

「...別に。偽物が言っていた事を考えてただけ。」

 魅了されていた時の記憶を思い返すだけでも、彼は思い込みが激しい。
 優輝さんを目の敵にしている事から、つい対応を冷たくしてしまう。

「嘘つけ!奏は今まであいつの事を名前で呼ばなかっただろう!?」

「.......。」

 ...言われてみて、気づいた。
 記憶を思い返してみても、魅了されている私は優輝さんの名前を呼んだ事がなかった。

「(いくらなんでも、それはひどい...。)」

 恩人である優輝さんと、魅了されていたとはいえ一切名前を呼ばずに接していた事に、私は罪悪感を感じてしまう。
 罪悪感を感じて少し落ち込んだ事に気づいたのか、神夜は過剰に反応する。

「まさか、あいつに何かされたのか!?」

「っ....!」

 ...それも、完全に思い違いをして。
 思わずこちらも過剰に反応してしまう所だった。

「(....落ち着いて。どうせ、どんなに優輝さんを擁護しても意味がない。)」

 彼に対して渦巻く、言いようのない怒りや憎しみを抑え込んで冷静になる。
 多分、魅了されていたから嫌悪感があるのだろう。
 ...それに、何を言っても彼は優輝さんを“悪”と見ている。
 魅了されていた時の時点で、彼はそうだった。

「...気が付いただけ。」

「なに...?」

「あの人に向けていた感情も、想いも、印象も、全部中身のない、ただの“嘘”だったと気づいただけ。...“偽物”の感情だったから、名前も呼んでいなかった。」

 誤魔化す。意味深な感じな事を言っておけば、大体は誤魔化せる。
 ...実際、言った事は事実なんだけどね。魅了のせいで偽の感情を持っていたし。

「それは...どういう...。」

「...私が優輝さんの事を名前で呼んで、何か問題でも?」

 理解が追いつく前に、話を逸らしていく。
 どうせ勘違いするのだから、煙に巻いてしまう方がいいだろう。

「っ、そ、それは...。」

「私は神夜の何?神夜に私の事を縛れる理由はない。」

 そういって立ち去る。...長居しても意味ないだろう。
 それにここ、食堂だし。

「...まだ事件は終わってない。余計な事で反応しないで。」





 ...さて、立ち去ったのはいいけど、どうしようかな...。

「もっと上手く動けるように....はダメ。せっかく休んでいるのに、魔力を消費したら意味がないもの。だったら...。」

 どうしようか、と思考を巡らせていると、エンジェルハートが口を開いた。

〈それでは、シミュレーション内で試してみてはいかがでしょうか?〉

「シミュレーション?」

〈はい。念話のような要領で、脳内で戦闘のシミュレーションを行います。魔力も消費しませんので、動きに不安があるならば是非。〉

 ...確かに、それならちょうどいいかもしれない。

「なら、部屋に戻らないと...。」

〈はい。〉

 少し早歩き気味に、私は自室へと足を向ける。
 ...次の戦いで足を引っ張る訳にはいかないから...ね。











       =out side=







「........。」

〈....完了です。正常に戻りました。〉

 シュラインの声が響き、優輝が手を翳していたジュエルシードから淡い光が消える。

〈さすがですね。残り三つです。〉

「...さすがに、慣れてきたからな。」

 今、アースラにあるジュエルシードは、シュラインを除いて九つ。
 その内、既に六つは優輝の手によって正常な状態へと戻されていた。

「凄いな....。」

「....シュラインを直した時は手探りだったけど、今は“元”があるからね。精密な魔力操作ができれば、ほとんど作業だよ。」

「その精密な魔力操作が鬼門なんだが...。」

 相変わらず普通ではできない事をやってのける優輝に、クロノは呆れる。

「残り三つ...慣れてきたし、もう少しスピードを上げるか。」

「まだ上がるのか...。」

 優輝は次のジュエルシードに手を翳し、ペースを上げていった。





「....よし。」

〈完了です。これで今あるジュエルシードは全て正常になりました。〉

 優輝の周りを漂うように九つのジュエルシードが浮かぶ。
 封印魔法が解けてあるジュエルシードだが、暴走する気配はなかった。

「...結局、ロストロギアなのが嘘なほどあっさり終わったな...。」

「簡単のように言うけど...クロノ、優輝君がやっていた事...。」

「分かっています...。」

 クロノは、監視の際にデバイスで優輝が行っていた事を解析していた。
 そして、その解析データを見て、クロノは戦慄する。

「...エラーの嵐...。システム外の“ナニカ”で直してある...。」

「まるで、地球のアニメにあるファンタジーのようね...。」

 本来、ミッドチルダやベルカ式の魔法は、科学的な側面があり、術式がまるでシステムのプログラムのようになっている節がある。
 アースラなど、どこかSFチックなのもそれが原因だ。

 しかし、優輝が行っている事は、それに当て嵌らなかった。
 それどころか、地球の“魔法”や、霊術の術式ともどこか違っていた。
 まるで“そうするためだけにある魔力”のように、術式を必要としていなかったのだ。

「...概念的な側面からの干渉です。...こればかりは、“感覚”で魔力を扱わないと上手く行きませんからね。」

「概念的...つまり、形を為さないのか...?」

「そういう事。ジュエルシードの本質は“祈りの結晶”だからね。術式というより、思念の塊なんだ。...だから、こちらも思念を使って干渉するしかない。」

 思念に魔法のようなシステムを用いて干渉するというのは、煙などに直接殴り掛かるようなものだと優輝は説明する。

「...理解も納得も追いつかないな。」

「無理に理解をする必要もないけどな。理屈で成り立ってる訳じゃないし。」

 頭を悩ませるクロノに優輝はそういう。

「言霊...言葉に力を持たせるというものが、日本にはあるわ。似たようなものなら、他にもあるかもしれないけど...。」

「所謂概念を扱う術...って感じかな?日本じゃ、神々がよく扱ってたよ。あたしは実際に見た事ないし、かやちゃんの記憶からの話だけど。」

 椿と葵の補足も付け足され、クロノは“優輝だから仕方ない”と考えるのを放棄した。

「....さて、と。これで今あるジュエルシードは全て直しましたけど、どうしますか?」

「そうね...優輝君は扱えるのかしら?」

「一応は...ですね。シュラインを介せば、ある程度のコントロールが利きます。」

 優輝の言葉を聞き、リンディは少し考え込み...。

「...じゃあ、戦闘になるまではこちらで預かるわ。戦闘時は全て優輝君に一任するつもりだから、きっちり責任を持つようにね?」

「艦長!?」

「分かってますよ。」

 明らかに優輝を贔屓するような発言に、クロノは驚く。
 しかし、クロノも管理局員として驚いているだけで、優輝に預けるというのは理解しているみたいだった。

「さて、私たちも少し休憩したら仕事に戻るわ。優輝君もまだ時間はかかりそうだし、ゆっくりして頂戴。」

「...休憩したらって言いますけど、僕がジュエルシードを直している時、途中から少しくつろぎながら見ていましたよね?」

「........。」

 そう指摘されて、リンディは目を逸らし、クロノは苦笑いする。
 そう。リンディは途中からお茶を飲みながら優輝を監視していたのだ。
 ...一応、これは信頼から来る行動である。監視としては不適切だが。

「まぁ、なんでしたら手伝いますよ。じっとしてるのは性に合わないし、休息なら既に十分取ったので。」

「...邪魔にさえならなければいいが...。艦長?」

「ええ、いいわよ。クロノの言う通り、邪魔にはならないようにね?」

 許可ができたことで、優輝達もクロノ達を手伝う事になる。
 尤も、今やる事は戦いに備える事と、偽物が遺したキーワードから最後のジュエルシードを割り出すだけだが...。

「それはそうと、休息を十分に取ったというけど、さっきの修理でそれなりに体力使ったわよね...?」

「そうだよ優ちゃん!それにリンカーコアも回復しきってないでしょ!?」

「だ、大丈夫だって二人とも...。」

 詰め寄る椿と葵に、優輝はたじろぐ。

「...はぁ、戦闘系じゃないから、別にいいんだけどね...。ちゃんと万全は保っておきなさいよ。」

「分かってるって。」

 本気で心配していると分かっているので、優輝も素直に頷く。

「とにかく、昼食がまだだから食堂に行くよ。二人とも。」

「もうあたしお腹ペコペコだよー。」

 優輝の呼びかけに、二人はついて行く。





「ごちそうさま...と。」

「何気のここの和食、腕を上げてきてるわね...。」

 昼食を食べ終わり、三人は一息つく。
 ちなみに、クロノとリンディも違う席で同じく昼食を取っていた。

「ジュエルシードはOK、体力も万全だし、リンカーコアは...まぁ、仕方ないか。」

「クロノから聞いておいたけど、やる事と言っても態勢を立て直すのが主みたいだよ?ジュエルシードの場所の割り出しは片手間でもできるらしいし。」

「そうか...。」

 “それではどうしようか”と優輝は少し悩む。
 実際、忙しい人はそこまで多くないのだ。正しくは、忙し“かった”と言うべきか。

「....始まりの場所にして、帰るべき場所....ね...。」

「偽物が言っていた事?」

「ええ。どうせやる事も少ないし、これについて考えましょう。」

 椿の提案に、二人も賛成する。

「...と言っても、その言葉で思い当たる場所なんて...。」

「...あたし、一つだけすぐに思い浮かんだんだけど。」

「僕を基にしてたからか、僕も一つ思い当たったよ。」

 そして、すぐに三人とも一つ思い当たり、口にする。

「始まりの場所...それは、生まれ、育った場所の事。」

「帰るべき場所は、“居場所”であり、安らぎを得られる場所の事。」

「それが当て嵌ると言えば....司さんの家に他ならないよな。」

 それらしく言ってみるが、ちょっと考えればすぐにわかる事だった。

「なまじ僕の偽物が言っていたから、皆深読みしすぎたんだろうなぁ...。」

「司の記憶がないのも原因じゃないかしら?」

「ああ、なるほど。」

 優輝達は既に思い出したから影響がないが、他の皆には司の事を思い出せないように認識阻害が掛かっている。
 それによって思考が惑わされ、“司の家”という答えが導けなくなっていたのだ。

「影響がなくなったせいで忘れていたよ。僕らも滅茶苦茶惑わされてたのに。」

「うーん、あの思考が上手く纏まらない感覚、思い出したくもないなぁ...。」

「同感。なんというか、徹夜を何度もして、さらに途轍もなく眠くなって思考能力が落ちてるような感覚だった。」

 何とも言えない感覚を思い出し、三人は苦笑いする。

「とりあえず、クロノ達に伝える?」

「そうするよ。」

 そういって優輝達は立ち上がり、クロノとリンディのいる席へ歩いて行った。









 余談だが、そのすぐ後に優輝達にキーワードの事を言われ、なぜ気づかなかったと頭を抱えるクロノがいたらしい。









 
 

 
後書き
つい最近の戦闘回との文字数の差が2000...さすがに長すぎたと思っていましたけど、短くなりすぎた感が否めません。

何気にクロノ達は優輝達にだいぶ信頼を置いています。
そして、奏が神夜に一言物申しました。まぁ、魅了が解けたキャラはどんどん織崎から離れていきますからね。

次回は最後のジュエルシードです。 
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