サトシ「25歳」〜理想と現実の先にあるもの〜
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サトシ達が広間で片付けをしている頃、
ヒカリは、、、
ヒカリの部屋にて
ヒカリ:「、、、ふぅ」
ヒカリはベッドに座り、
不安げな表情で携帯画面を見つめていた。
ヒカリ(、、、まだ、起きてるかな)
部屋の中を時計の針の音が刻む中、
その場を動かないヒカリ。
ヒカリ:(、、、でも、
何から話せばいいんだろう、、、)
ヒカリは誰かに電話をかけようとしていた。
ヒカリ(サトシと電話する時だって、
こんな緊張した事無かったのに、、)(緊張)
不安から緊張に変わった時、
ヒカリの手は少しずつ震えていった。
ヒカリ(あーもう!あたしったら
今まで何やってたんだろう、、。
こんな事になるくらいなら、、、)
ヒカリは下を向き手で顔を抑えた。
そしてヒカリの横には、
本日”イーブイの石探し”のついでに買ってきた
雑誌が読みかけのまま置いており、
開いているページには”肉食系女子の習性”
という内容が記されていた。
ヒカリ(、、、迷ってても仕方ないわっ!
、、、よし!)
ヒカリは思い切って電話をかけた。
prrrrprrrr prrrrprrrr
ヒカリ(お願い!繋がって!)
呼び出しコールが鳴るに連れ、
ヒカリの心にも緊張感も高鳴る。
prrrrprrrr prrrrprrrr
ヒカリ:「、、、」
prrrrprrrr prrrrprrrr
そして、、、
prrrrprrrr prrrrprrrr
ヒカリ(はぁ、、、繋がらない、、)
しばらくかけても出ない電話に、
ヒカリは諦める事にした。
ヒカリ:「やっぱ出ないわよね、、」
ヒカリは携帯を耳から離し、
電話を切ろうとした。
しかし、、、
ヒカリ:「、、、はっ!」
電話を切ろうとし画面を確認すると
画面には通話中と表記されており、
留守番電話のアナウンスも聞こえない事を
確認したヒカリはすぐさま携帯を
耳に当てた。
ヒカリ:「、、、もっ、もしもし!?」
慌てて話すヒカリ。すると、、、
???:「、、、もしもし?」
相手もヒカリに返答してきた。
ヒカリ:「もしもし?急にかけてごめん。
あたしよっ、、ヒカリ、、、」
???:「ヒカリ、、、」
ヒカリの電話相手、それは、ヒカリにとって
一生忘れる事の出来ない特別な人だった。
ヒカリ:「いままでごめんね、、、ママ!」
電話相手は、ヒカリが18の時に
疎遠になった実の母、アヤコだった。
ヒカリ:「ずっと連絡しようと
思ってたんだけど、中々出来なくて、、、。
ママ、あたしの事覚えてるよね!?
忘れたとか言わないよね!?」
ヒカリの目には涙が浮かんでいた。
その涙は、久しぶりに聞く母の声、
そして緊張や不安等が絡みあったヒカリの心を
表していた。
アヤコ:「ヒカリ、、、」
ヒカリ:「ママッ!」
自分の名前を呼ぶ母の声に、
ヒカリの涙はさらに溢れる。
しかし、その涙の雨は一瞬にしてヒカリを
嵐に巻き混んだ。
アヤコ:「全くあなたって子は!!!」
ヒカリ:「ひっ!」
アヤコ:「連絡するのが遅い!!
遅すぎるわよ!!こっちから電話かけても
あなたずっと無視してたし、
そんな子に育てた覚えもないのに
どうしてあなたって子は!、、、はぁ」
約7年ぶりの会話にもかかわらず、
ヒカリとは裏腹にアヤコは大激怒だった。
ヒカリ:「ご、ごめんなさいっ。あたしねっ、
こっちにきてからねっ、、」
ヒカリがいままでの経緯を
説明しようとすると、、、
アヤコ:「、、、全部知ってるわよ」
ヒカリ:「うん、、、え?」
アヤコの、予想もしていなかった返事に
驚くヒカリ、、、。
ヒカリ:「知ってるって、、、何を、、」
アヤコ:「全部よ全部、、、。
あなたがそっち(カントー)に行ってから
デザイナーになろうとしていたり、
介護施設で働いていたり、、、
今やろうとしている事もね、、」
アヤコはヒカリの全てを知っていた。
ヒカリ:「えっ、、、どうしてそれを、、、」
アヤコ:「サトシ君よっ」
ヒカリ:「え?、、、サトシ?」
アヤコ:「そうっ。、、、あなたの友達の、
サトシ君、、、。彼が全部教えてくれたわ」
ヒカリ:「うそっ、、、」
アヤコ:「一カ月前にね、サトシ君から
連絡があったの。
ヒカリから連絡きましたか?って」
ヒカリ:「一カ月前?」
アヤコ:「そう、、一カ月前よっ。
サトシ君ったらタウンページから
ひたすら、フタバタウンの民家に
電話をかけてこの家を探してたみたいよ?
田舎だからすぐ噂になったわ。
でもそのおかげで、次に連絡を取った人に、
この家の番号を教えて欲しいって
あたしが近所のみんなに頼んだから
無事に連絡先を知る事が出来たけど、、」
ヒカリ:「、、、」
アヤコ:「それから週1回くらい、
電話をくれるのよ?
ヒカリから連絡きましたか?って」
ヒカリ(そっか、、だからあの時)
ヒカリはきのみ園でサトシに
言われた事を思い出した。
アヤコ:「全く、、、サトシ君ったら
立派ねっ。あなたの事だけじゃなくて
あたしの事まで気にかけてくれたなんて。
ほんと、いい友達に恵まれたわねあなた」
ヒカリ:「、、、」
思いにも寄らなかった事に、
ヒカリは再び涙を浮かべた。
アヤコ:「サトシ君が居なかったら、
あなたはいつ連絡くれたんだがっ」
ヒカリ:「、、、ごめんなさい、、」
アヤコ:「?」
ヒカリ:「、、、あたし、やっぱダメだなっ。
ママにもみんなにも甘えてばっかで、、」
アヤコ:「、、、」
ヒカリ:「大人になってもこんなんじゃ、
ママもがっかりだったよね、、、
本当にごめんなさい、、」
アヤコ:「、、、」
ヒカリの声を聞いたアヤコは、、、
アヤコ:「、、、ほんと、、良かったわ」
ヒカリ:「え?」
アヤコ:「あなたがちゃんと元気に
やってて、、本当に良かった」
ヒカリ:「、、、ママ、、」
アヤコ:「ずっと探してたんだからねっ。
あなたが18の時に家を飛び出していった、
この7年間、、」
ヒカリ:「、、、」
アヤコ:「がっかりなんてする訳ないでしょ?
あなたが今どこに居ようと、
どんな大人になっていようと、
しっかり生きてくれているなら、
あたしはそれでいい、、、。
あなたは、、ヒカリは、私の大事な娘。
いままでもこれからも、それはだけは
変わりないわよっ」
アヤコは優しくヒカリに言葉をかけた。
ヒカリ:「ママ、、ッ、、ッ」
アヤコ:「ほらっ、泣くのはおしまい!」
ヒカリ:「ッ、、、グスッ、、だって、、」
アヤコ:「あなたには今、やるべき事が
あるんでしょ?」
ヒカリ:「!」
アヤコ:「消えたポケモン達が
見つかるかどうかはあなたに、いや、
あなた達にかかってるんだからね!」
ヒカリ:「、、、ママは反対しないの?
、、あたし、ママの反対を押し切って
家を出て、仕事しないでまた
自分のしたい事ばかりやってるんだよ?」
アヤコ:「今更反対なんてしないわよ。
それが、あなたの見つけた答えなんでしょ?」
ヒカリ:「えっ?」
アヤコ:「あたしが何を言ったって、
結局はあなたの人生。ヒカリが悩みに悩んで
生きてきた答えがそれなら、
あたしは最後まで見守るわ。それに、
サトシ君や他の仲間が居るなら安心だものっ」
ヒカリ:「、、ママっ、、、」
アヤコ:「本当は聞きたい事が
テンガンザンほどあるけど、、、。
いい?次に連絡するのは
あなたがこの世界を変えた後!!
それまではあたしに連絡してくるんじゃなくて、
サトシ君達と協力して、助け合っていく事!
あなたには、最高な仲間がいるんだから!」
ヒカリ:「あっ、、うんっ」
アヤコ:「そう言えば、あなたが旅を
していた頃にも、似たような事言ったわねっ」
電話越しにアヤコの笑っている姿が
ヒカリの頭に浮かび、ヒカリの心を
安心感が包んだ。
ヒカリ:「ははっ、、、そうだよね!
あたし、頑張る!!」
アヤコ:「うん!それでこそ、
あたしの子よ!、、ヒカリなら大丈夫!
あたしの大丈夫は本当だからね!」
ヒカリ:「ママ、、、(笑顔)」
アヤコ:「あなたの無事を祈ってるわ、、、。
いい?必ず帰ってくるのよ?それだけは約束ねっ」
ヒカリ:「うん!必ず帰るっ。
絶対に必ず帰るから!」
アヤコ:「ふぅっ、、、それじゃあ、
気をつけてねっ」
ヒカリ:「うんっ、、、わかった!」
ピッ
ヒカリはアヤコと約束を交わし、
電話を終えた。
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