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初詣

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第十章

「書いてる勢い凄かったわ」
「そうね、確かにね」
「あれがプロの書道家さんなのね」
「大きな筆を何なく動かして」
「それで書いちゃうなんてね」
「あんな筆私だととても」
 瑠璃は自分の小柄な身体を頭に入れて話した。
「持っても動かせないけれど」
「あの人もそんなに大きくないのに」
「それでもね」
「何なく使ってね」
「奇麗な字書いちゃったわね」
「うん、凄いわ」
 瑠璃はまたこう言った。
「書道家の人って違うね」
「そうね、じゃあね」
「私達は私達の出来ることしましょう」
「巫女さんのお仕事ね」
「頑張りましょう」
「そうよね、折角やらせてもらってるから」
 自分が着ている巫女服を見てだ、瑠璃は応えた。
「頑張らないと」
「お参りの人どんどん来てるし」
「絵馬もお守りも破魔矢も売れてるし」
「おみくじもね」
「どんどんだから」
「そうよね、噂には聞いてたけれど」
 それでもとも言うのだった。
「これは凄いわ」
「じゃあ皆でね」
「頑張って働いて」
「やっていきましょう」
「そうよね、甘酒も飲んで」
 実際にだ、瑠璃は甘酒も飲んで立ち上がった。
「やろうね」
「そうしましょう」
「とにかく忙しいから、今日は」
「もう身を粉にしてって感じで」
「やりましょう」
 友人達も瑠璃に言う、そして瑠璃は彼女達と共にこの日は巫女として働くのだった。
 彩加は住吉大社から帰ってだ、家でテレビを観ていた兄の耕太に問うた。
「ずっとテレビ観てたの」
「うん、ゲームしたりね」 
 耕太は家に帰った彩加にこう答えた。
「そうしてたよ」
「それだけ?」
「駄目かな」
「後はお餅とか蜜柑食べて」
「それだけだよ」
「そうなのね」
 そう聞いてだ、彩加はまずは兄がいるコタツの中に入ってだった。そのうえであらためて言ったのだった。
「お酒は飲んでないの」
「どうしようかなって思ったけれど」 
 それでもというのだ。
「まあいいかなって思って」
「それでなのね」
「まだ飲んでないよ」
「お外にも出ないで」
「ずっとテレビだよ」
「初詣行けばいいのに」
「寒いからね」
 実に的確な理由をだ、耕太は妹に話した。
「だからいいよ」
「全く、寒がりなんだから」
「寒いのは苦手なんだよ」
「暑いのもでしょ」
「そうだけれどね」
「全く、出不精だとね」
 それはとだ、彩加は口を尖らせて言った。 
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