提督はBarにいる。
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提督と艦娘達の夏休み~夏の新メニュー開発編・1~
さて、秋雲に付き合ってたらふくTKGを食べたのでスタミナも満タンだ。これまであまりチャレンジしてこなかった『蕎麦メニュー開発』に着手していこう。そもそもウチの店は蕎麦はほとんど出してこなかった。うどんは俺が手打ちで打てるので気が向いたら出してはいたが、蕎麦打ちは難易度が違いすぎる。なので出して来なかったが、鳳翔や間宮の店から蕎麦を回して貰える事になった。前々から常連からも蕎麦を所望する意見が強かったので、これは有り難い。
「考えられるバリエーションのパターンとしては、奇抜なつけ汁のつけ麺、調理法を変えた物、後は……トッピング位か」
間宮達に用意してもらったのは蕎麦殻も一緒に挽き込んで、黒っぽい麺に仕上がった田舎蕎麦。蕎麦の香りも風味も上品な更科蕎麦に比べると強烈で、どんな調理をしても蕎麦が負けない力強さがある。
「さて、まずはつけ麺からいってみますかね」
蕎麦と言えばアッサリとした食べ心地で夏のバテている時には消化にゃいいが、いかんせんスタミナ回復には向かないように感じる。何かこう、ガッツリとした食べ応えが欲しい。
「まずはその方面で攻めてみっか……」
誰に言うでもなくそう呟くと、俺は調理に移った。
何通りかの調味料と具材の組み合わせを試し、納得のいく物が出来た。それを見計らったかのように、コンコンと扉がノックされた。
「開いてるぞ、入れ」
ぶっきらぼうに俺がそう応えると、ドアがガチャリと開いて3人の艦娘が入ってきた。
「やっほー提督、腹減ったから何か食わしてくんない?」
先頭で入ってきたのは江風。新人の頃は多少跳ねっ返りな所もあったが、最近は大分マシになった。夜戦を得意としており、川内に弟子入りして今は警備班の一員でもある。つい先日改二になり、イケメン度が増したと噂されている。
「私も~……あら?何かいい匂い」
次に入ってきたのは夕張。我が鎮守府でも一、二を争う蕎麦好きだ。試食させるにはもってこいの人選だな。早速つけ汁の匂いに気付いたのか、鼻をヒクヒクとさせている。
「夕張は動いて無いでしょ!?」
そんなツッコミを入れながら最後に入ってきたのは川内。警備班の班長であり、鎮守府の安全を担う重要な役割の艦娘だ。しかし日中は起きている事は稀で、専ら夜間警備が専門のハズだ。
「まぁまぁ、そんな堅い事言わずに……」
苦笑いしながら夕張がカウンターに腰掛ける。それにしても珍しい組み合わせだ。
「珍しいなぁ、この3人の組み合わせってのも。何より川内がこの時間に起きてるのが珍しいがな」
「ちょっと提督、人を夜行性の猫とか蝙蝠みたいに言うの止めてよね?失礼しちゃうなぁ」
いや実際夜行性じゃねぇか、というツッコミは飲み込んでおく。
「今日は川内さんが夕張さんに専用の装備頼んでて、それが出来たってんでアタシと試してたんだ」
ほぅ?川内用の装備ねぇ。ある程度の個人用装備は個人の裁量に任せてはあるが、やはり気になる。
「因みにどんな物を作ったんだ?」
「えぇっとねぇ、クナイに、手裏剣、煙玉に……あと忍者刀とか」
完全に忍者じゃねぇか。
「だってさぁ、夜戦は隠密性が重要なんだよ?デカい音がする主砲とか魚雷はナンセンスだよ」
川内の言い分も分からないでもないが。駆逐艦や軽巡洋艦の夜戦の戦い方としては闇に紛れての奇襲か、彼女の妹である神通が行ったように探照灯などで敵の目を惹き付け、囮となって他の艦に叩かせるか。そのどちらかになってくる。それにしても、姉妹で正反対の戦法を選ぶ辺りが中々面白い。
「提督~、話はいいからとっとと何か食わしてくれよぉ。俺腹ペコで死にそうだよぉ」
江風にせっつかれてしまったのでさっさと支度しよう。
「ちょうど良かった、今新メニューの開発やっててな。試食して感想聞かせてくれ」
そう言いながら俺は3人分の蕎麦をざるに載せ、つけ汁と一緒に出してやる。
「まずは『スタミナつけ蕎麦』だ。多少辛めに作ってあるから、噎せないように気を付けてな」
《ガッツリ中華風!スタミナつけ蕎麦》
・蕎麦(乾麺):200g
・豚バラ肉(ブロック):100g
・ニラ:1/2束
・長ネギ:1/2本
・にんにく:1片
・生姜:20g
・赤唐辛子:ひとつまみ
・白ごま:適量
・めんつゆ(濃縮タイプ):100cc
・水:500cc
・ごま油:大さじ2
・鶏ガラスープの素:大さじ2
・砂糖:小さじ1
・酒:小さじ1
豚バラは1cmの厚さでスティック状にカット。にんにく、生姜、長ネギはみじん切りにし、赤唐辛子は細かい輪切りにする。ニラは1cmの長さに切り揃える。
鍋にごま油をひいて熱し、にんにくと生姜、豚バラ、赤唐辛子を加えて弱火で炒める。肉に火が通ったら水で薄めためんつゆと酒、砂糖、ガラスープを加えて煮る。
乾麺の蕎麦を袋に書いてある通りの茹で時間で茹で、茹で上がったら流水で〆てよく水気を切り、ザルなどに盛り付け。
つけ汁をひと煮立ちさせ、アク取りをしたら椀に盛る。仕上げにニラ、長ネギ、白ごまを散らせば完成。最後にニラを入れたのはシャキシャキ感を楽しむ為だが、少しクタッとしたニラが良いなら煮立たせている時にニラを加えよう。
「やった、お蕎麦!いただきま~す♪」
蕎麦好きの夕張は大喜びで、つけ汁をたっぷりと絡ませてズルズルと啜っている。
「ブフッ!?唐辛子が鼻の奥に……!」
江風も啜っていたのだが、入っていた赤唐辛子が変な所に入ったらしく、盛大に噎せていた。だから気を付けろと言っただろうに。
「う~ん……確かに美味しいけど、私的にはちょっと刺激が足らないかな」
「なら、酢とラー油を適量足してみな。酸辣湯麺風に変わるぞ」
川内は俺の言葉を聞いて早速、酢を少量とラー油をたっぷりとかけている。そして再び豚バラと付け汁をたっぷりと絡ませて、ズルズル啜っている。
「ん、美味し!いいじゃんコレ!」
気にいって貰えたようで何よりだよ。
「ってか川内さん接近戦が強すぎっスよ~、完全に背後から奇襲かけて『獲った!』と思ったのに、投げた魚雷掴んで投げ返して来るとか……」
「江風はまだ殺気が殺せて無いからねぇ。あんだけ気配があったら、アタシだけじゃなく神通とか那珂にもバレちゃうよ?」
「え、那珂さんもそんな強いんスか!?」
「腐ってもアタシ達の妹だからねぇ、今はあんなオッペケペーだけど」
オッペケペーって……言い方もひでぇな。
「ハイよ、お次は『豆乳つけ蕎麦』だ」
《簡単マイルド!豆乳つけ蕎麦》
・市販のめんつゆ:適量
・豆乳:適量
・蕎麦:食べたいだけ
※後はお好みの薬味などを準備しましょう。
作り方は超簡単。いつも使っているめんつゆを割る時に、水の代わりに豆乳使うだけ。後は蕎麦を茹でて水で〆て、好みの薬味を添えれば完成だ。今回は青ネギにおろし生姜、刻み海苔、天かす、白ごまを準備した。
「ん~♪これもマイルドで美味しいわぁ……」
よっぽど蕎麦が好きなんだな、夕張。そして味を変える一工夫、食べるラー油をちょいと垂らす。すると……
「あ、担々麺!」
「確かに!」
そう、担々麺っぽい味になる。豆乳じゃなく牛乳で割ってもいいんだが、やっぱりちょっと抵抗がな。2品とも中華風な味付けになったのはご愛嬌だ。さぁて、お次はどんなのを作るかな。
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