提督はBarにいる。

　夏休み3日目・早朝ーー…

　休みの時にこそ、趣味に没頭したい。惰眠を貪るのもいいが、限りある貴重な休日だからこそ有意義に過ごしたい。そこで俺は予てより要望のあった『蕎麦の新メニュー開発』にチャレンジしてみようと支度をしていた。そこに響く、控え目なノックの音。こんな早くに執務室に訪問者？それも夏休み期間中に。

「誰だ！？」

　少し警戒して威圧するように叫ぶ。

「アタシだよぉ、提督ぅ」

　ふらふらと部屋の中に入ってきたのは、今にも死にそうな顔をした秋雲だった。成る程、有明のイベントに出す原稿書いてやがったな。

「ふへえぇ～……流石に今回は死ぬかと思ったわ」

　そう言いながらカウンターに突っ伏す秋雲。どうやら修羅場を抜けて原稿は落とさずに済んだらしい。

「今回は何徹だ？」

　弱々しく指で3と示し、崩れ落ちる秋雲。恐らく栄養ドリンクやら何やらで意識と身体を繋ぎ止めていたのだろう。精魂尽き果てた、という感じだ。

「仕方ねぇなぁ。簡単な物しか作れんが、朝飯奢ってやるよ」

「マジ！？提督太っ腹ぁ！」

　復活早いなオイ。まぁいい、

「何かリクエストは？」

「TKG！一種類じゃなくて、何種類か食べたいな。それと味噌汁！」

　TKG……あぁ、卵かけご飯か。

「了解、んじゃ一杯ずつの盛りを少なくして出してやるよ」

　さて、何にするかな。作り置きのアサリの味噌汁をよそってやりながら、どんな卵かけご飯にするか、俺は思案を巡らせる。




　じゃあまずは醤油をかけずに、具材で卵に味を付ける感じの卵かけご飯で。

《かいわれ昆布TKG》

・胡麻昆布(市販のでOK):適量

・かいわれ大根:適量

・卵:1個

　市販の胡麻の入った昆布の佃煮に、食感でかいわれ大根をプラス。かいわれ大根は意外と水気があるから少な目にして和える。ご飯に卵を割って載せ、そこにかいわれと合わせた昆布を載せて混ぜる。

「お～、昆布の塩気とかいわれがシャキシャキで良いねぇ」

「だろ？シンプルだけど美味いんだよ」

胡麻昆布はクリームチーズと青じそを合わせてTKGにしても美味いぞ。



《カルボナーラ風TKG》

・ベーコン(厚切りでも薄切りでも):適量

・黒胡椒:少々

・粉チーズ:少々

・卵:1個

　お次はちょっと豪勢に。ベーコンを細切りにして、フライパンでカリカリになるまで焼いて、黒胡椒をガリガリと。

　ご飯に卵を先に落として混ぜておき、カリカリベーコンと粉チーズを上からかける。

「うんまっ！イタリアンのリゾットみたい！」

「ベーコンの塩気で十分だが、お好みで醤油垂らしても美味いぞ」


《ネギノリTKG》

・味海苔(小分けパック):1袋

・青ネギ:2本

・卵:1個

　材料さえあればすぐできる奴。青ネギを小口切りにしてご飯に敷き詰め、その上に卵、砕いた味海苔。その上に醤油をひと垂らし。後はグチャグチャに混ぜて掻っ込もう。

「これまたシンプルでいいねぇ、ネギもちょっとピリッとして」

「味海苔の代わりにごはんで〇よでもイケるなこれ」



《アボバタTKG》

・アボカド:1/2

・バター:10g

・黒胡椒:少々

・卵:1個

・青ネギ、刻み海苔:少々


　お次はアボカド。食べやすい一口サイズに刻んだら、バターで炒める。味付けは黒胡椒でガリガリと。

　ご飯に炒めたアボカドを載せ、その上に卵。青ネギ、刻み海苔を散らして醤油をかけたら完成。


「バター醤油はご飯に合いすぎるよねぇ！」

「確かになぁ。ステーキ食べた時のガーリックライスとか堪らんよな」



《マグロユッケTKG》

・マグロぶつ切り:150g

・めんつゆ:大さじ2

・醤油:大さじ1

・コチュジャン:小さじ2

・ごま油:小さじ2

・卵:1個

・刻み海苔、青じそ:お好みで



　お次は酒の〆でも欲しくなる一杯。マグロのぶつ切りをめんつゆ、醤油、コチュジャン、ごま油を合わせたタレでユッケ風の味付けで漬け込んでおく。

　ご飯にマグロユッケを載せ、その上に卵。お好みで海苔と青じそを散らし、漬けダレをかけたら完成。


「……てかさ、これマグロのユッケ丼じゃないの？」

「あ？細けぇこたぁいいんだよ」

　ちゃんと卵載ってるだろ？それに美味けりゃいいんだよ、美味けりゃ。




「あ～……生き返るわぁ♪」

　アサリの味噌汁を啜りながら、ぷはぁと息を吐く秋雲。よほど辛かったらしいな。

「だってさぁ、3日間ユ〇ケルとか眠〇打破とかウィ〇ーとかばっかでさぁ。まともなご飯食べてなかったからねぇ」

「そうまでして原稿仕上げにゃならんのか？」

「そりゃねぇ、全国にアタシの本のファンがいるから。その期待には応えないとさ。……て言うか提督、次のTKGマダー！？」

　へいへい、急かされちゃあ仕方ねぇ。次をさっさと作りますかね。


《明太バターTKG》

・明太子:1/2本

・バター:10g

・卵:1個

　この間ドラマ『深夜食堂』の再放送やっててな。それ見て思い付いた。ご飯の中心にバターとほぐした明太子を埋めて、30秒位蒸す。そこに卵を落として醤油をかけ、混ぜて食べる。

「明太子とバターも鉄板だよねぇ」

「パスタにも合うからな、同じ炭水化物のご飯にも合うんだろ」



《焼き鳥缶で親子TKG》

・焼き鳥缶詰(ホテイの奴オススメ):1/2缶

・卵:1個

・七味唐辛子:適量。たっぷりかけると美味い

・マヨネーズ、大葉:お好みで少々


缶詰大好き秋雲の好みに合わせた一杯。ご飯に卵を落として、焼き鳥缶を載せる。好みの量の七味をドバッと。お好みでマヨネーズが大葉の刻んだ奴を添えて。

「あ～、やっぱ甘辛味ってご飯のお供だわ」

「それはわかる」



《ネギラー油TKG》

・青ネギ:適量

・食べるラー油:適量

・卵:1個


　これもお手軽なTKG。ご飯を盛り、刻んだ青ネギを散らし、食べるラー油をかけ、卵を落とす。仕上げに醤油を垂らして混ぜる。掻っ込む。美味い。

「ラー油とネギが合いすぎ」

「卵がマイルドにするからより美味い」


《豚玉TKG(塩)》

・豚バラ:50g

・塩:少々

・黒胡椒:少々

・卵:1個

　もはや卵がメインなのか、豚肉がメインなのか解らないが美味いからOK。豚バラ肉をカリカリになるまで焼きながら、塩と黒胡椒で味付け。醤油をかけないので強めの味付けで。

　飯を盛って豚肉を載せ、その上に卵。ガッツリ混ぜて食べましょう。お好みでレモン汁、ユズスコ等を。

「まぁ合うよね」

「ほぼ焼き肉丼だしな」



《豚玉TKG(醤油)》

・豚バラ:50g

・醤油:大さじ1

・酒:大さじ1/2

・みりん:大さじ1/2

・大葉:5枚くらい

・卵:1個

　塩の次は醤油。豚バラをこれまたカリカリに焼きつつ、醤油、酒、みりんを絡める。仕上げに半分位に切った大葉を一緒に炒め、しんなりしたらご飯の上に。卵を落として混ぜて食べましょう。

「男飯、って感じだね」

「でも嫌いじゃないだろ？」

「割りと」


《豚玉TKG(味噌)》

・豚バラ:50g

・味噌:大さじ1

・酒:大さじ1

・めんつゆ:小さじ1

・にんにく、生姜:少々

・卵:1個

　塩、醤油と来たから味噌もやらなきゃ……(使命感)。にんにくと生姜を先に炒めている所に、豚バラ投入。ある程度火が通ったら味噌、酒、めんつゆを合わせた合わせ調味料を入れて絡める。味見をしてしょっぱかったらみりんか酒を追加で。ご飯に載っけて卵ドーン。よく混ぜて食べましょう。

「味噌味も( ﾟДﾟ)ｳﾏｰ。豚骨味はないの？」

「ラーメンじゃねぇよ」

「わかってるよ提督、冗談だってば」

　割と手間がかかるのが多かったな。次回はもう少しシンプルなTKGを紹介しよう。