IS~夢を追い求める者~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第2章:異分子の排除
第39話「臨海学校」
前書き
ようやく臨海学校です。
...さて、銀の福音をどうしよう...。普通にやってもあっさり終わってしまう...。
=out side=
「お、見えてきた。」
「ホントですか?」
目的地である旅館にバスで向かう中、その目的地が見えてくる。
それに気づいた桜がそういうと、秋十は少し身を乗り出して窓から確認する。
「久しぶりなんですよね、こういうの。」
「ああ、そういや秋十君は中学に途中から行ってないもんな。」
秋十は誘拐事件以来、中学には行っていないため、校外学習は久しぶりなのだ。
「...それを言ったら、俺の場合は小学校から行ってないけどな。」
「あ...。」
だがしかし、桜の場合はさらに長い期間行っていなかったりする。
尤も、ずっと眠っていたため、その実感は薄いのだが。
「ま、せっかくの臨海学校だ。遊べる時はきっちり遊ばなきゃな。」
「そうですね。」
近づいていく臨海学校の舞台である場所を眺めながら、二人はそういう。
「小学校からで思い出しましたけど、桜さんって泳げるんですか?」
「あっはっは。秋十君、俺がどんな人物か忘れたか?」
「あ、泳げるんですね。」
桜は束と同じく身体能力も人外スペックである。
なので、義務教育で水泳を習っていなくても泳げるのだ。
「まぁ、束の依頼で何度か泳ぐ機会があったからな。」
「泳ぎ方の理屈さえわかれば泳げるって事ですか...。」
“相変わらずだなぁ”と、秋十は苦笑いした。
「っ.....!」
その二人の様子を、横目に見ながら、一夏は歯ぎしりする。
本来なら何か一言でも言う所だが、隣に座る千冬が目を光らせてそれは叶わない。
「(くそが...!あいつらのせいで...!)」
一夏は謹慎処分になった事を未だに桜たちのせいだと思い込んでいた。
また、桜と秋十が転生者だとも思っていた。
「(まぁいい...。あいつらじゃ、福音戦の時に対して活躍できない。そこで俺が活躍すれば...!)」
再びハーレムができると一夏の口角が吊り上がる。
...桜たちに散々妨害されてきたため、本性が垣間見れるようになっていた。
「(洗脳が使えなくったって俺は“一夏”だ!主人公なんだから、簡単にヒロインを堕としてやるぜ!)」
にやけそうになる顔を必死に抑えながら、一夏は思い描く未来にほくそ笑む。
「織斑?」
「...なんでもないです。」
訝しむ千冬に、何でもないように一夏は返事をする。
...だが、一夏は気づいていない。
既に千冬は一夏の事をほぼ信用していない事を。
桜たちがいる限り、一夏の思い通りにはならない事を。
...そしてなにより、一夏の言う“福音戦”が“原作”通りに終わるはずがない事を。
「今、11時でーす!夕方までは自由行動なので、夕食に間に合うようにしてくださいねー!」
山田先生の声を一応聞き入れながら、水着に着替えた生徒たちは海へと駆けていく。
「おー、さすが海だな。皆はしゃいでる。」
「学園だと海に面していても、遊べませんからね。」
同じく水着に着替えた桜と秋十は、それらを眺めながらそう呟く。
「それにしても...。」
「...?なんだ?」
「さすがにその姿なら一目で男性だと分かりますね。」
今の桜の姿は水着なので、上は裸である。
さすがに骨格などが男性なので、裸であれば桜も男性にしか見えなかった。
「むしろそうまでしないと見えないのがおかしいと思うんだけど。」
「...まぁ、別に俺は“まさに男”って感じの容姿は望んでないから別にいいんだけどな。」
「...そうは言っても、後ろ姿なら初見だと見間違えますよ?」
鈴の言葉に桜がそう答え、秋十が突っ込む。
「...もういっその事工夫を凝らして女物の水着にしようかな?」
「やめなさい。」
普通に似合いそうだと、鈴は不覚にも思ってしまう。
「....それはそれとして、のほほんさん...その恰好は?」
「えへへー、似合う?」
「いや、似合うけど...。」
秋十が本音の恰好を見て戸惑う。
着ぐるみのような服に身を包んだ本音は、どう見ても泳ぐ姿ではない。
「これで海には入らないからいいんだよー。」
「入らないのか...。」
ちなみに、一応下にちゃんと水着を着ているので、もし入るならば上の服は脱ぐらしい。
「ねぇねぇ!篠咲君、一緒に遊ばない?」
「ん?いいけど...ちょっと後にしてくれるか?」
静寐の言葉に秋十はそう答える。
「まだ何人か来ていないみたいでな...。」
「まだ...って、あー、ローランさんとボーデヴィッヒさんが...。」
シャルロットとラウラだけでなく、ユーリとマドカも来ていない。
他にも、シグナムやなのは、簪もいない。おそらくユーリ達に付き添っているのだろうと、秋十は予想する。
「お待たせー...。」
「お、シャル...ってなんだそれ!?」
ようやく来たシャルロット。
その傍らには、タオルに包まれてどんな姿かわからない人物がいた。
「...あぁ、ラウラか。」
「あ、ホントだ。...ってそれにしてもどうしてこんな事に...。」
身長や少し見える銀髪などから桜が誰か判断し、秋十はシャルロットに訳を聞く。
「あー、なんでも、クラリッサっていう人にどういう水着を選べばいいか電話で聞いたらしいんだけど、思いの外恥ずかしいみたいで...。」
「そ、そうではなくてだな...変ではないかと思って...。」
説明するシャルロットに、ラウラがタオルを少しどかして代わりに言う。
「...どうでもいいが、よくそれでここまでこれたな...。」
「見えないからボクが先導したけどね...。」
ラウラはタオルで顔まで隠してしまっているため、視界も極端に悪くなっている。
そんなラウラを連れてくるため、シャルロットも少し遅れたのだ。
「とりあえず、外すぞ。」
「ま、待ってくれ...!」
「断る。ラウラは素材が良いんだから変って事はないだろうよ。」
「(おまけにあのクラリッサさんが選んだ奴だからな...。知識はともかく、こういう類は...大丈夫だよな?)」
無理矢理タオルを剥がす桜を見ながら、秋十は大丈夫だと思おうとして不安になる。
「なんだ、普通に似合ってるじゃん。」
「そ、そうか?」
「あ、確かに、かわいいと思うぞ?」
桜、秋十とラウラに言い、ラウラは恥ずかしそうにしながら顔を赤らめる。
「かわいい...かわいいか...。」
「普段のラウラとのギャップもあるしな。」
今のラウラは、水着に加えて髪をツインテールに結っている。
普段のキリッとした雰囲気と違い、可愛らしくなっていた。
「このツインテールはシャルが?」
「うん。せっかくだと思ったしね。」
ラウラは髪型に関してあまり気にしてないので、シャルロットがやったようだ。
「おーい、ラウラー?」
「かわいい....か...。」
「ダメだこりゃ。完全に呆けてる。」
あまり言われてない誉め言葉だったため、ラウラは何度も言われた事を反芻しながら呆けていた。
「...ま、放置しておけば治るだろう。いざとなればデコピンすればいいし。」
「誉めておいてなんかひどいですね...。あ、所でユーリやマドカは見なかったか?」
とりあえずラウラは一時放置する事にし、秋十はシャルロットにマドカ達の事を聞く。
「あー...ユーリが恥ずかしがってるみたいで...すっごい抵抗してたから、マドカとか体術が使える人が頑張って連れてこようとしてたよ。」
「ユーリちゃん...そこまで嫌なのか...。」
ユーリも桜たちに影響されて一般を逸脱した動きができる。
元々エーベルヴァイン家で護身術も習っていたので、並大抵では抑えられない。
だからマドカやなのはのような逸般人が連れてこようとしていた。
「人見知りも治ってないからなぁ...。水着姿ってそんなに恥ずかしいのか?」
「女性だと、色々気にするからね。仕方ないとは思うけど...。」
男性にはわからない事情に、桜と秋十は苦笑いする。
なお、例えそうだとしても、ユーリの抵抗は度を越えている。
「あ、来たみたいだよ。」
「だな。...さすがに秋十君レベルが相手だと逃げ回るのも無理だったか。」
「皆結構疲弊してますけどね。」
歩いてきたマドカ達は、皆少なからず疲弊していた。
逃げに徹した抵抗だったため、無駄に体力を消費したようだ。
「うぅう...。」
「...ユーリ、別に似合ってない訳じゃないんだから...。」
「そ、そうですけど...。」
「(...なんかデジャヴ。)」
観念したらしいユーリが、簪に連れられてやってくる。
ただし、バスタオルに身を包んで。ラウラと似たような状態である。
「ふぅ...もう、人前での水着だなんて今更だよ?学校だと指定のISスーツを着たりしてるんだし。あれも水着みたいな...あ、もしかして...。」
ユーリを捕まえるために奮闘していたマドカが気づく。
ちなみに、マドカの水着は千冬の水着の白いバージョンだ。(偶然同じだったらしい)
「桜さんがいるから....とか?」
「っ~~......はい....。」
その訳を聞いた皆は、秋十を除いて納得した。ちなみに桜もその中の一人だ。
「はぁ...なのは!」
「了解っと。」
一つ溜め息を吐いたマドカは、なのはに指示を出す。
するとなのはは、がしりとユーリが逃げられないように肩を掴む。
「え、えっ...?」
「そー、れっ!」
「ひゃあああっ!?」
そして、マドカがユーリを包んでいるバスタオルに手を掛け、一気に引っぺがした。
さながら独楽のようである。
「あうぅ....。」
「...なかなか強引だな。」
勢いよく回ったユーリは目を回し、それを見てシグナムがそう呟く。
「...かわいいよ、ユーリちゃん。」
「っ!?....はぅ....。」
恥ずかしがっているユーリを桜が誉めると、ユーリは顔を赤くして気絶した。
...恥ずかしさやら嬉しさやらが限界を超えたのだろう。
「...桜さん、態とやってる?」
「あっはっは。」
「誤魔化さないでください。」
笑って誤魔化す桜に、秋十の鋭い突っ込みが入る。
「それにしても、随分時間がかかってたんだな。ユーリちゃんは弱い訳じゃないけど、争い事は苦手だからそこまで時間がかからないと思うんだが...。」
「いやぁ、逃げに徹されたら私たちでもなかなか...。」
ユーリは生身であればマドカやなのははおろか、シグナムにも劣る。
それなのに時間がかかったのは...それほどまで恥ずかしかったのだろう。
「とりあえず、皆来た事だし遊ぶか。」
「お~!かんちゃん、行こー!」
「あ、本音...!」
桜がそういうと、まず本音が簪を連れて先に行ってしまう。
「よし、俺も泳いでみるか。」
「そうですね。何気に久しぶりです。」
桜と秋十も海の方へ歩き出し、他の皆もついて行く。
「.....きゅぅ....。」
「かわいい...かわいいか...。」
「....ユーリ...はともかく、ラウラー?皆行っちゃうよ?」
未だに気絶しているユーリと、同じく未だに照れているラウラは日陰に連れていかれた後、放置されていた...。シャルロットが一応声を掛けたが、復帰までにはまだ時間がかかるだろう。
「ふむ....。」
「どうしたました?桜さん。」
ひとしきり泳いだ後、桜は海を眺めて何かを考えていた。
「...いや、水面、走れるかなって。」
「...........はい?」
至極真面目そうな顔でふざけた事を言う桜に、思わず秋十も聞き返す。
「いやぁ、常識から逸脱してる俺だし、出来るかなって思ってな。」
「...完全に否定できないのが怖いんですけど。」
“冗談だ”と言って笑う桜。さすがに無理なようだ。
「....ん....?」
「...今度はなんですか?」
何かに気づく桜に、秋十は呆れたように尋ねる。
「...いや、ちょっと用事を思い出してな。行ってくる。」
「はぁ...。まぁ、どうせ気にしたところで変わりませんし...。」
「随分ひどいな。」
“用事”というだけで警戒される桜。...自業自得である。
「...っと、確かこの辺りに...。」
皆から離れた所にある岩陰に、桜は辿り着く。
感じ取った気配と、“予定では来ている”存在に。
「...いたいた。」
「さー君!」
桜を見つけると、すぐさま抱き着くように飛び込んでくる。
不思議の国のアリスのような恰好をした人物...束だ。
「思ったんだが、ちょっと来るの早すぎないか?」
「箒ちゃんを驚かすために色々仕込むからねー。...ちーちゃんにはばれそうだけど。」
「ばれるだろうな。」
明日は箒の誕生日という事もあって、束は箒を驚かすつもりである。
ついでに桜と束の関係もばれるが、そこはご愛敬となっている。
「...それと、アメリカでちょっと不穏な動きがあるよ。」
「...アメリカか...。」
真剣な顔になった束に、桜も真面目に対応する。
「正しくはアメリカというより亡国企業...だけどね。」
「ちょっかいを出されるって所か。...ターゲットはおそらく...。」
「“銀の福音”...だろうね。」
銀の福音はアメリカとイスラエルの共同開発した軍用ISである。
第3世代なため性能も高く、何かしてくるとしたらターゲットになり得るだろう。
「第3世代の軍用ISなら、俺たちで十分対処可能だが?」
「...ちょっと、ね。嫌な予感がするんだよ。」
歯切れの悪い束。桜もそれを見て“確かに”と頷く。
「...以前に話した“原作”にもある事件だろう。...だけど、俺も嫌な予感がする。...ただ“原作”通りとは行かないのは確実だろうな...。」
「第一に、さー君がいる時点でその通りにはいかないけどね。」
「違いない。」
束の言葉に、桜は短く笑う。
「ま、あいつに現実を知らせるいい機会になるだろうな。」
「だね。」
「それじゃあ、俺は戻る。また明日な。」
「うん。」
そういって桜は秋十達がいる所へ戻っていった。
=桜side=
「....で、ビーチバレーになったのはいいが...。」
俺は自分と相手のチームを見てそういう。。
俺の方には、秋十君と山田先生、なのは(名前で呼ぶようになった)が。
相手には千冬とマドカちゃん、本音とシグナム(なのはと同上)が入っていた。
直前までシャルや気絶から回復したユーリちゃんなどもやっていたが、や千冬が入る事になった辺りで疲れて観戦に移ったみたいだ。
...実際は俺たちが参戦した試合を避けたんだろうな。
「(...荒れそうだな。)」
主に俺と千冬辺りでなるなと、俺は嘆息する。
でも、楽しみでもあるのでとりあえず始める事にした。
「それじゃあ、行きますよー。」
山田先生の掛け声と共に、サーブが相手コートに飛ぶ。
「はいっ、と。」
「ふっ!」
マドカがそれを難なく受け止め、シグナムが叩き込んでくる。
「っ!」
「ナイス!先生!」
「はいっ!」
それをなのはが受け止め、秋十君の声に応じて先生が高く上げる。
「.....!」
「......ふっ。」
その時、俺と千冬の目が合った。...交わす言葉はない。やる事は決めた。
「はぁっ!」
「げぇっ!?桜さん!?」
高く上がったボールを、俺が思いっきり叩き込む。
マドカちゃんが女子にあるまじき声で驚いているが、まぁ仕方ないだろう。
俺が打ったボールは、常人では捉えられないスピードと威力を伴っているからな。
...だが、それを受け止める奴もいる。
「っ、は、ぁっ!!」
「おお~、高い~!」
気合の入った掛け声とともに、千冬は受け止め、高く上げる。
本音の気の抜けるような声が聞こえるが、周りの歓声で掻き消える。
「チャンスか...!」
「私が行くよ!」
こちらのコートギリギリの場所にボールが落ちてくる。
チャンスボールであるそれをマドカちゃんが思いっきり打ち、先生に向かう。
「えっ?へぷっ!?」
「が、顔面で受けた!?」
「先生!?」
先生はそれに反応しきれず、顔面で受けてしまう。
なのはが心配して駆け寄るが、どうやらそこまで大した事はなかったみたいだ。
「っと、チャンスだぞ秋十君!」
「はぁっ!」
一応、試合自体はまだ続いていたため、俺が高く上げて秋十君が打つ。
鋭く放たれたそのボールは、本音の方へ向かい...。
「あわわ...っ!!....あれ?」
「そこだっ!」
慌てながらも偶然きっちりと高く上げられ、千冬の反撃が来る。
「しまっ...!」
「く、ぐぅ...!」
俺から離れた場所を狙われ、秋十君がフォローに行ったが間に合わなかった。
「...これで一点だ。」
「くっ....!」
先手を取られた。俺に対してあからさまに言ってくるのにイラっと来る。
...やり返してやろうじゃねぇか...!
「あ、やば....。」
「なのは!」
「はいっ!」
相手からのサーブを秋十君が受け、なのはが高く上げる。
マドカちゃんが何か感付いたようだが、もう遅い!!
「は、ぁっ!!」
「っ!」
俺がやられたのと同じように、千冬から離れた所に打ち込む。
シグナムならカバーできる位置だが...まぁ、悪いなシグナム。
「速い....!」
「...やられたらやり返すぜ?」
「ほう....。」
これで同点。...さて、仕切りなおしだ...!
「くくく....!」
「ははは....!」
「これもう桜さんと千冬姉の戦いなんじゃ...。」
「私たち、割り込めるかなぁ...?」
秋十君となのはが何か言っているが知らん。勝負はここからだ...!
「.....っつぅ....!」
「...織斑君大丈夫?」
...ちなみに、織斑は千冬が最初に入った時に千冬のボールをまともに受けたらしく、陰で倒れ込んでいて一部の女子に心配されていたらしい。
「....疲れた....。」
「はぁーっ!...勝った...!」
しばらくして、秋十君は疲れ果てたように近くに敷いたシートの上に寝転ぶ。
ちなみに、接戦だったが何とか勝てた。
「...観戦に回ってよかった...。」
「た、確かにです...。」
秋十君に海の家で買ったかき氷を渡しながらシャルが言う。
ユーリちゃんも俺にかき氷を渡しながら同じ事を言っていた。
「浜辺が一部抉れた時はどうしようかと思ったぜ...。」
「いやぁ、後を考えない強烈なスマッシュはやばかったな。」
体勢やその後の動きを一切考えずに、ただ叩き込む意識で打てば、さしもの千冬も取る事はできなかったようだ。...逆の場合も無理だったけどな。
「というか後半には割れたよね?」
「あっはっは。」
「あれ、借り物でしたよね?」
そう、ボールは途中で割れてしまったのだ。...あそこまで耐えた方が凄いが。
ちなみに、持ち主の女子には千冬が代表して弁償する事になった。俺も金は出した。
「もう、あまり動かないのにしてください...。」
「さすがに疲れたからなぁ。大人しい遊びがあればいいが...。」
さすがに過激すぎて秋十君も動きたくないようだ。
...ある程度回復すれば、一般レベルの動きなら楽しめるだろうけど。
「あ、ならスイカ割りって言うのやってみたいな。」
「海の家にありましたね。スイカ。」
日本の文化にあまり詳しくないシャルがリクエストする。
ユーリちゃん曰く、海の家ではスイカも売っていたようだ。
「なら、それにするか。」
「そうですね。ついでにスイカも振舞えますし。」
色々とやってしまったからお詫びの意も兼ねるか。
という訳で、スイカをいくつか買う事にする。
俺の場合、普通に一発でスイカを割ってしまうからな。
「じゃあ、やるぞ。誰からやる?」
「...ボクたち、やり方をあまり知らないんだけど...。後、他に人を呼んだりしないの?」
「やってたら興味持った奴がやってくるだろう。ほら、簡単なやり方を教えるぞ。」
そう言って俺はシャルとユーリちゃんに軽くやり方を教える。
こういうのは楽しんだ方がいいからな。細かいルールは別にいいだろう。
「あ、叩くための棒は...。」
「ほら。」
「なんで持って...あぁ、それですか...。」
取り出した木刀を秋十君に渡す。
入れていたのはISの拡張領域...の機能だけを取った所謂四〇元ポケットだ。
「じゃあまずは...ユーリちゃんからやってみるか?」
「が、頑張ります...!」
目隠しをして、いざスタート。
その場で少し回転させて、目を回した状態で開始だ。
「わ、わ、感覚が....。」
「回っておかないと、ユーリちゃんでもあっさりスイカに辿り着いてしまうしな。」
「...目隠ししても真っすぐ進めたら意味がないもんね。」
特に俺たちは普通じゃないからな。
平衡感覚をきっちり崩しておかないとあまりにも味気なく終わってしまう。
「あ、ユーリ!もう少し右だよ!」
「あ、はーい!」
「ユーリちゃん、行き過ぎ!左に5度だ!」
「はい!...って、細かいですよ!?」
具体的過ぎて細かすぎたようだ。...ま、態とだけどな。
「スイカ割り?いいわねー。あたし次やっていい?」
「鈴か。いいぞー。」
「...っと、ユーリちゃん、その辺だ!」
後ろで鈴と秋十君の会話を聞きながら、ユーリちゃんに最後の指示を出す。
...目の前まで来たら指示をやめないと確実に当ててしまうからな。
「っ、やぁっ!」
「あ、惜しい!」
だが、振り下ろされた木刀はスイカのすぐ横に当たった。
「あぅ...外してしまいましたぁ...。」
「じゃ、次あたしね!」
勢いよく鈴がバトンタッチして、始める。
そうしてしばらく続けている内に、本音やなのは、シグナムも集まり、それなりの人数で楽しくスイカ割りができた。
もちろん、割ったスイカは皿に分け、皆に振舞った。
「...はっ!」
「お、ドンピシャだな。」
秋十君が振り下ろした木刀が、きっちりとスイカを捉える。
...これで残りのスイカは一つ。集まった皆も一度は挑戦したようだ。
「...じゃ、最後は俺だな。」
「挑戦というかパフォーマンスになりません?」
秋十君...それ、俺が割るの確定してるじゃないか。その通りだけど。
「じゃあ、俺が回します。桜さん自身が回っても意味なさそうなので。」
「そうだな。」
自分で回った所で俺は目が回らない。他の人に回してもらわないとな。
「...よし、オーケーです。」
「....っし...。」
静かに木刀を構え、スイカを目指して歩き出す。
もちろん、ちゃんと目隠しをしているから場所は分からない。
だけどな...。
「....こっち、だな。」
「.......。」
見えていなくても、気配がなくても、探し当てる術はあるんだよな。
「.....シッ!」
“ここだ”と思った場所に木刀を振り下ろす。
...手応えあり。
「...木刀でなんでそんな真っ二つにできるんですか。」
「剣速を速めた。」
「それでできたら苦労しません。」
まぁ、“水”の応用だな。
「...で、敢えて途中では聞きませんでしたけど、どうして場所がわかったんですか?人間とかが相手じゃないから、気配とかもないはずですけど。」
「ん?それはな...。」
手順は簡単。まず、地形をしっかりと記憶する。
そして、実際に歩く際に足から伝わる感覚と覚えた地形を照らし合わせる。
そうすれば、今どの辺りを歩いているかわかるのだ。(超理論)
...とまぁ、そんなのは常人には不可能で、もちろんそれを伝えれば...。
「やっぱ人外ですね。桜さん。」
「あっはっは。」
呆れられる...と。
最近じゃ、驚いてくれなくなったよなぁ...。
「秋十君もあまり驚かなくなったよなぁ...。」
「桜さんが常人の範疇に収まったら驚きますよ。」
「なら無理だな。」
「なぜそこで諦めるんですか...。」
俺が常人の範疇に収まると思うか?
「...ところで箒ちゃんを見ないが...。」
「あ...そういえば...。」
...皆楽しんでいて忘れていたな?
まぁ、箒ちゃんはこういう賑やかなのは苦手としているからな...。
「ま、人気のない所にでもいるだろう。」
「そうですね。」
案外、明日誕生日だから束が来ると分かって悩んでいるかもな。
後書き
ユーリの水着は想像にお任せします。(おい
innocentに水着姿があればなぁ...。(個人的には明るいマゼンタ色のパレオとか似合いそう)
中途半端な終わり方ですがこの後普通に夕食になります。
箒も原作(というよりアニメ)通りです。
ページ上へ戻る