提督はBarにいる。
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実りある宴・2
さて、お次はどうしたモンか。コース料理ならここいらでパスタやご飯物、パン等の主食になる料理を出して空腹感を満たすのだが……。そういえば、懇意にしている肉屋の親父から牛の切り落とし肉を貰ってたっけな。こいつでハヤシライスでも作るとするかな。確か熊野は1時間かけてじっくり煮込みすぎで失敗していたからな、俺は10~15分で仕上がるスピード調理のハヤシライスを作ろうか。
《最短10分!?激速ハヤシライス》※分量2人前
・牛切り落とし肉(薄切りでも可):150g
・にんにく:1かけ
・玉ねぎ:1/2個
・トマト:1個
・マッシュルーム(缶詰小):1缶
・ご飯:茶碗2杯分
・塩:適量
・黒胡椒:適量
・バター:適量
・小麦粉:適量
・パセリ:適量
・サラダ油:適量
『なんちゃってデミグラスソース』
・トマトケチャップ:大さじ2
・生クリーム:大さじ2
・お好み焼き用ソース:大さじ2
・オイスターソース:大さじ2
・赤ワイン:大さじ2
まずは牛肉。食べやすい大きさにカットして塩、黒胡椒をふって下味を付けたら、おろしにんにく1かけと小麦粉、サラダ油を各大さじ1ずつ揉み込んでおく。
お次は野菜。玉ねぎは繊切り、トマトはヘタを取ってざく切り、マッシュルームの缶詰は開けて汁を切っておく。なんちゃってデミグラスソースの材料を全て合わせて混ぜておけば下拵えは完了だ。
さぁハヤシソースを仕上げるぞ。フライパンにサラダ油大さじ1を引いて熱し、牛肉を炒める。8割位の火の通り加減になったら玉ねぎ、マッシュルーム、トマトの順に加えて炒める。玉ねぎがしんなりしたらなんちゃってデミグラスソースを加えて混ぜ、サッと煮る。
「那智、ボウルにご飯入れてバターと黒胡椒振って混ぜておいてくれ。胡椒は軽くな」
「解った。……まさかそれはハヤシライス、なのか?」
「そうだ。何か変か?」
「いや、随分と変わった物で味付けしていたからな。忘れてくれ」
市販されているケチャップやソースは、多くの材料が使われている味の塊だからな。上手く使えばデミグラスっぽくする、なんてのは朝飯前だ。
那智に作ってもらったバターライス風ご飯を盛り付け、そこにハヤシソースをかけてやれば完成だ。所要時間は……12分、まぁまぁだな。
「ハイお待ち、『ハヤシライス』だよ」
盛り付けて出してやるが、誰一人手を付けようとしない。
「おいおいどうした、冷めちまうぞ?」
「いやぁ、さっきの料理している手順を見ていると……」
「どうにもハヤシライスとは思えなくて…」
「こ、これは流石の青葉も手を付けるのが怖いです」
成る程な、所謂『普通』のハヤシライスじゃあ使わない物で味付けしていたからな。本当は不味いんじゃないのか?と怖じ気付いてる訳か。
「まぁ、騙されたと思って食べてみな。もし不味かったら戻してくれていいし、新しく何か作るからよ」
別にもう一品作り直すのは手間ではない。…ただ、思い込みや決め付けで不味いとされるのは気に食わない。一口食べて批判される方がまだマシだ。
「そ、そこまで言うなら……」
俺に促されておずおずとスプーンで救い上げ、口に運ぶ霧島。一噛み、二噛みと味わっていく内に不信の表情が驚きに変わっていく。
「お、美味しい……!本当にハヤシライスです!」
だから言ったろうが。俺の料理のモットーは出来る限り家庭にある材料で、手間をかけずに、美味い物を作るって事だからな。よほど変わった材料が必要な料理でなければ、なるだけ家庭的な材料で作るのだ。
「本当だ……美味い!」
「あの材料で何でこの味に!?」
食べた奴等は口々に驚きの声を上げていく。だから、その辺が俺の試行錯誤の結果なんだっての。
「いや~ビックリしました。まさかあの短時間であんな本格的なハヤシライスが出来るとは……」
橘君は感心しっ放しだ。さて、お次はメインの料理で驚いて頂こうか。お次も牛肉料理だが、今度は和風に『牛肉のたたき』に仕上げよう。
《焼きにコツあり!牛のたたき》※分量2人前
・牛モモ肉ブロック:300g程
・水菜:適量
・玉ねぎ:適量
※付け合わせなので、野菜はなくてもOK
・醤油:大さじ3
・酒:大さじ3
・おろし生姜:1かけ(チューブの生姜なら5cm位)
・にんにく:1かけ(チューブなら1cm)
まずは牛肉を焼いていく。フライパンを強火で熱し、油を引かずに焼いていく。たたきだからな、火の通り過ぎないように焼き時間は5分以内を厳守。焼き色を見ながら全面に焼き色を付ける。表面がしっかりと焼き色が付いたらOKだ。
肉が焼けたら冷蔵庫等には入れず、常温で冷ます。これによって調度良い具合の火の通りになるぞ。お次はタレ作りだ。肉を焼いたフライパンにおろし生姜、おろしにんにく、醤油、酒を入れて火にかける。軽く泡立ったら火を止め、粗熱を取ってビニール袋に移し、そこに牛肉を入れて30分漬け込み。後は下に敷く野菜を刻み、肉をスライスして野菜の上に載せてタレを回しかければ完成なのだが、漬け込みにしばらく時間がかかる。
「司令官、蜂蜜酒って自作出来るんですよね!?」
「……まぁ、一応な」
「出来ればその方法を教えて頂きたいんですが……どうでしょう?」
日本の法律では許可なく酒を作るのは犯罪なのだが……まぁ、少量であれば黙認されている所もあるから特別だぞ?
《良い子はマネしちゃダメ!自宅で作れる蜂蜜酒》
・蜂蜜:125g
・水:375g
・ドライイースト:2g
《使う道具》
・蓋付きの瓶(発酵用)※広口の瓶が作業しやすいのでオススメ
・マドラー
・計量カップ(あれば便利)
・量り(デジタル推奨)
蜂蜜は他に混ぜ物がされていない、100%蜂蜜だけのものを使用。そうでないと腐敗して終わりだからな。ドライイーストも発酵すれば何でもいいから、パン用の物で構わないぞ。分量は蜂蜜が1、水が3。これが基本であり、計算上アルコール度数が10度位の蜂蜜酒が出来上がる計算だ。量を増減するときも、この目安は変えないように。
まずは蜂蜜を量り取る。面倒であれば発酵用の瓶に直接125gを取ってもいい。次に水を別の容器に量り取り、少しずつ蜂蜜に加えながら混ぜて希釈する。最後にドライイーストを蜂蜜水に加えて軽く混ぜ、蓋を被せる位で軽くしておく。
きっちり閉めると発酵の段階で発生する炭酸ガスで瓶が破裂する恐れがあり、逆に蓋をしないと埃が入ったり二酸化炭素に吸い寄せられた小バエが入ったりする恐れがある。
発酵させる時は冷暗所で。放置しておくと発酵が始まり、小さな泡が立ち始める。翌日位には水面が泡だらけになり、シュワシュワと発泡する音も聞こえ始める。この泡も音も消えれば発酵は完了。後は底に溜まった沈澱物を澱引き(おりびき。瓶の中の蜂蜜酒を別の容器に移し替え、底に溜まった沈澱物を除去する作業)をしてやれば完成だ。ちなみにだが、除去したオリ(白い沈澱物)は雑菌などではなくイーストの塊だからな?捨てずにパンや新しい蜂蜜酒を仕込むのにそのまま転用できる。後は失われた甘味を足すのに蜂蜜を追加で加えたり、爽やかさをプラスする為にレモン汁を加えたり……シンプルだからこそ改良の余地は広い。
「……とまぁ、こんな感じで手軽に作れる。それに蜂蜜酒は身体にいいんだよ」
蜂蜜に含まれる多数のビタミンやミネラルは、発酵させる事によってその効果を高める事が証明されており、滋養強壮や疲労回復の効果が高い。
「それに、結婚して1ヶ月の夫婦を蜜月なんて言うだろ?あれは蜂蜜酒が語源だという説もある」
ヨーロッパの方では結婚して1ヶ月は毎晩蜂蜜酒を飲み、子孫繁栄の為にその滋養強壮効果に助けて貰いながら、せっせと子作りに励んだ、なんて記述も残っている。また新婚旅行のハネムーンも元を正せばハニームーンが変化した物で、環境を変えて性的興奮を高める為の旅行だった、と騙る歴史学者もいたりする。
「な、なんか下世話な話ですね……」
「まぁ、今はどうだか知らんがな。案外霧島も蜂蜜酒効果でデキたりしてな?ハッハッハ!」
なんて、冗談で言ったのに夫婦揃って盛大に噎せ返ってやがる。本気にすんなっての、艦娘は妊娠しないように出来てるからな……今の所は。
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