提督はBarにいる。
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■冷めても美味しいお弁当講座・メインのおかず編②
さてさて、鶏肉のおかずだけだと飽きが来てしまう。お次は豚肉、しかも冷めても脂が浮いてこないように豚挽き肉を使ったハンバーグを教えよう。
《冷めても美味い!弁当用ハンバーグ》※分量5~6個分
・豚挽き肉:100g
・鶏挽き肉:100g
・玉ねぎ(小):1個
・麩(ふ):10g
・牛乳:大さじ2
・塩:2g
・溶き卵:1個分
・酢:小さじ1
・胡椒:少々
「普通のハンバーグと違って豚と鶏の合い挽きなんですね、このハンバーグ」
「まぁな。冷めてもジューシーにするにゃ牛・豚よりも豚・鶏の方が相性がいいのさ」
前回話した通り、牛肉や豚肉は脂の融点が高く、固まりやすい。特にも牛肉は融点が高く、常温では脂が溶ける事は殆んどない。冷めてもジューシーなハンバーグを作るには、牛豚の合挽きよりも鶏豚の合挽きの方が向いているのだ。
「豚と鶏の挽き肉がよく混ざったら生の刻み玉ねぎ、溶き卵、塩、胡椒、酢それと予めおろし金で荒く下ろしておいて、牛乳を含ませた麩を混ぜ込む」
「随分と普通のハンバーグとは中身が違うんですね」
「まぁほとんどは冷めても美味しく仕上げる為のモンだがな」
玉ねぎを炒めずに加えるのは、中の水分を逃がしたくない為だ。生のままタネに混ぜる事によって焼いた時にタネの中に水分が溢れ出して肉汁UPに繋がる。
麩はパン粉よりも吸水性が高く、牛乳を含ませた後でも余力があるので、焼いている間に染み出してしまう肉汁を中に閉じ込めてくれる。
そして最大のポイントが酢だ。昔から肉を柔らかくする効果も知られてはいるが、油分を凝固させ辛くする効果で、冷めても豚の脂身をベタベタのラードに変化させにくくしてくれる。その上、味には殆んど影響しない。
「はぁ~、すごい工夫ですねぇ」
「あとはコイツを弁当用に成型して、焼くだけだ」
ちなみにだが、ハンバーグは焼く前でも焼いた後でも冷凍が利く。大体2週間は保ってくれるので有効活用すると良いだろう。さて次だ、お次は魚の練り物を使った揚げ物を一品ご紹介しようと思う。
《衣にコツあり!ちくわ納豆の磯辺揚げ》
・ちくわ:4本
・ひきわり納豆:1パック
・天ぷら粉:25g
・冷水:40cc
・青のり:小さじ1
・白いりごま:適量(お好みで)
・マヨネーズ:適量
まずは納豆。パックに入っているタレや辛子を入れてよく練る。粘りが出てきたらちくわの中に詰める。ビニール袋を絞り袋代わりにしてやると、手も汚れないし簡単だぞ。
お次が最重要ポイント、衣作り。天ぷら粉に冷水を少しずつ加えて、ダマが出来ないように混ぜる。そこに青のり、白いりごま、マヨネーズを少々加えてよく混ざったら完成。……解ってるとは思うが、グルテンが出来ないように混ぜ過ぎは禁物だ。
「そういえば、何で衣にマヨネーズを?」
「衣の味付け、って意味もあるんだが……何より衣に少量の油分を含ませるってのが重要なんだ」
揚げ物というのは、熱された油の中で衣の水分が抜ける事であのサクサクとした食感が生まれる。しかし中の具材にも火が過剰に入ってしまい、具材本来の美味しさを損なってしまう場合もある。そこで衣に油分を含ませる事により、更に衣の水分が抜けやすくなって揚げ時間を短縮出来るのだ。
「じゃあサラダ油でよくね?って話になりそうだが、サラダ油だと水に反応して上手く馴染まなくてな。そこで思い付いたのがマヨネーズだった、ってワケよ」
「成る程~。……あ、そろそろ揚がりそうですね。揚げ網を準備します」
「あ~待て待て、揚げ網じゃなくキッチンペーパーを支度してくれ」
これも弁当用にする為のポイントだな。油を切る時はキッチンペーパーで。揚げ網だと衣が吸ってしまった余分な油が衣の中に残り、時間経過で染み出してきた具材の水分と混じってベチャッとした揚げ物になりやすくなる。その点キッチンペーパーはしっかりと油を吸い取ってくれるので、冷めてもベチャッとなりにくい。これは天ぷらに限らず揚げ物全般に使えるテクニックだな。
「じゃあ早速ちくわの味見を……熱っ!」
揚げ立てでまだジュウジュウ言ってる磯辺揚げを摘まみ上げようとして熱がる五月。まったく、そそっかしいのはでかくなっても変わらねぇなぁオイ。
「気を付けろよ?……しっかし、昔からおっちょこちょいが治らねぇなぁお前はw」
「なっ、そんな恥ずかしい事言わないで下さいよ~っ!」
顔を真っ赤にして反論してくる五月。そんな会話をしている間に、磯辺揚げも程好く冷めただろう。
「お先っ!」
「あ、ずるい!」
機先を制して磯辺揚げを一口。衣から香る青のりの風味に納豆の味がよくマッチする。そこに魚肉の練り物独特の旨味が追いかけてやってくる。これがまた納豆に合う。そして衣のマヨネーズの仄かな風味もまた絶妙なバランスで合う。そして間違いなく、ご飯に合う味だこれは。
「ん~!美味しいですねぇこれ、衣にカレー粉を入れても美味しそうです」
「おぉ、カレー磯辺揚げか。それもいいかもなぁ」
カレー磯辺揚げか、後で試してみよう。……さて、お次はどうしたものか。
「あの……提督」
「あん?どうした」
おずおずと口を開く五月。少し喋りにくそうに口を開いた彼女の口から出たのは、
「出来たら冷めても美味しく食べられる卵焼きを教えてもらいたいんですが…」
さぁ来たぞ、お弁当の定番にして難しい卵焼き。水分の塊で汁が染み出しやすく、またパサパサになりやすい。弁当に入れやすくて人気も高いおかずだが、美味しく仕上げるのは難しい。しかしこれを解決する手段が、俺にはある。
「よし、任せろ」
《冷めてもジューシー!弁当用の卵焼き》
・卵:2個
・砂糖や塩等の調味料:お好みの量で(ご家庭の味にしましょう)
・水溶き片栗粉:大さじ1
なんと言っても最重要は水溶き片栗粉。こいつが卵の水分を保水してくれるのでふっくらジューシーに焼き上げやすくなる。焼き方にもコツはあるが、これが入るか入らないかで大きく違う。分量は卵2つに大さじ1、この分量は絶対だ。
「さて、焼き方のコツだが、熱した卵焼き器に卵を流し込んだら、半熟の状態である程度の形を整える。少し型崩れしても構わん」
卵が完全に焼けるのを待っていると、いくら水溶き片栗粉を入れていてもパサパサの卵になってしまう。半熟の状態で形が整っていれば、片栗粉が結び付きを強くして型崩れしにくくしてくれるので、しっかりと身の詰まった卵焼きになる。残りの卵を注いで手早く焼き上げると、まな板の上に移して少し冷ます。
「……そろそろいいかな。五月、卵焼きを切ってみな?」
「?……あ、隙間が無いです!」
そう、隙間のない卵焼きというのが、汁気が漏れずにパサパサにならないコツだ。断面が空気に触れる面積が少なくなるので乾燥しにくいのだ。
「さぁ、食ってみな」
「はい……ん!すごいです!だし巻きじゃないのにジュースが溢れてきます~♪」
そうそう、びっくりする位卵の水分が多いんだよなこの卵焼き。俺も初めて作った時にはびっくりしたっけな。
「さて、メインのおかずはこんなモンかな。次からは野菜とかの副菜に移ろうか」
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