聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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690部分:第九十九話 宮殿の中へその四
第九十九話 宮殿の中へその四
「惜しいことをした」
「あの者達ですか」
「むざむざ忠義の者達を死なせてしまった」
その言葉には明らかに悔恨の情が入っていた。
「悔やんでも悔やみきれぬ」
「ですがアーレス様」
エリスがその悔やむアーレスに対して告げた。
「あの者達もそれで本望です」
「そうだというのか」
「はい、我等は皆アーレス様のその命を捧げています」
だからだというのである。
「ですから」
「そう言ってくれるのか」
「はい、それにです」
エリスは主であり兄である彼に対してさらに話すのだった。
「あの者達、いえ我等はアーレス様さえおられれば何度でも蘇ることができるではありませんか」
「それは確かにな」
彼が最もよくわかっていることである。アーレスは己に仕える者達を幾度でも蘇らせることができるのだ。それは既に降臨した時に見せていた。
「だが。少し時間がかかる」
「しかし復活させることができるのは事実です」
エリスはそれはそうだというのであった。
「ですから。案じられることはありません」
「そう言ってくれるのだな」
「私は事実を申し上げただけです」
エリスにとっては謙遜ではなかった。ただ事実を述べただけであった。
「ですから。御気を落とされることのないよう」
「そうだな。確かにな」
アーレスも彼女の言葉を受けてその気を取り戻したのであった。
そうしてだ。そのうえで再び顔をあげた。妹にまた言ってきた。
「そしてだ」
「はい、そして」
「来たな」
話を変えてきたのである。
「あの者達が」
「はい、再び」
ここでエリスは再び、と言った。今がはじめてではないというのだ。
「この宮殿の奥に」
「守りは既に固めているな」
「御安心下さい。既に四闘神及び八大公達がそれぞれ守りについています」
「そうか」
「十二の門の守りは万全です」
それはだというのだ。
「そして正門はです」
「御前がだな」
「御安心下さい。誰一人としてアーレス様の下へ辿り着くことはできません」
エリスの言葉には絶対の自信があった。
「我等がいますので」
「そうか。私としてはだ」
「アーレス様としては?」
「既に私の戦衣は用意してある」
言葉に笑みが宿っていた。そのうえでの言葉であった。
「あれを久し振りにこの身にまとってもみたいのだが」
「それは後で存分にお楽しみ下さい」
「後でだというのだな」
「はい、後でです」
エリスは静かに主に述べるのであった。
「後でお楽しみ下さい」
「わかった。では聖域との戦いが終わりだ」
「我等の永遠に続く戦いの中で」
「あの戦衣をまとうことにしょう」
アーレスは妹の言葉を容れてこう述べるのであった。
「私はこの世界だけでなくだ」
「全てを治められる為に」
「私は何だ」
アーレスはエリスに対して問うてみせた。
「答えるのだ。私は何だ?」
「天帝ゼウスとその妃ヘラの御子でございます」
「そうだ。私こそ天帝とその妃の嫡子」
彼にはその自負が確かにあった。
「アテナは何だ。父上が他の女に産ませた者でしかない」
「そして他の神々も」
「そうだ。だが、だ」
ここでアーレスの言葉に苦々しいものが宿ったのであった。
「多くの者が私を認めようとしなかった」
「人間達の多くも。オリンポスの神々でさえも」
「私を野蛮だの獰猛だのと蔑んでくれた」
「その通りです。戦いのことを何一つとして知らずに」
「私を蔑み。認めようとはしなかった」
言葉に明らかに怨念が宿っていた。
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