提督はBarにいる。
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アニヲタ比叡の優雅な?休日・1
午前5時ーー……。鎮守府の朝は早い。提督は今頃店仕舞いに勤しんでいる頃だが、早朝からの遠征に出発する隊、出撃に備えて身支度を整えたり朝食を摂る者、夜を徹しての任務から帰投する者ーー…。金剛型姉妹の部屋の中でも、動く気配が2つ。
「あ、おはよう霧島。」
「おはよう榛名。……で、毎度のごとく比叡姉様は夢の中、ですか。」
朝の紅茶を楽しみながら、会話を交わす榛名と霧島。長女の金剛は結婚してから鎮守府内で夫である提督と同棲を始めた為、4人用の部屋に3人で住んでいる。そして次女である比叡は未だ起きてこない。……まぁ、総員起こしは06:00なので咎められる事も無いのだが。
そして、06:00。総員起こしのラッパが鳴り響くと同時に、比叡の部屋からけたたましい目覚ましの音が。数秒後、ガン!という何かを粉砕する音が響く。
「あらあら、またですか。」
「比叡姉様の寝起きの悪さは筋金入りだからね。」
その音を聞いて朝の風物詩だ、とでも言うように笑顔を交わす二人。
「さて榛名、私達は朝ごはん食べに行きましょうか。」
「そうね。比叡姉様は……今日はお休みだし、寝かせておいてあげましょうか。」
そう言って姉妹の部屋から繋がる談話室を後にする妹二人を夢の中で見送りながら、
「ひえぇ~……おねぇさまぁ…♪むにゅ。」
金剛型の次女・比叡は未だ、微睡みの中にいた。
そんな寝坊の常習犯が目を覚ましたのは、09:00の事だった。
「ん~…よく寝たぁ。」
ベッドの上で体を起こし、まだ完全に覚醒しきっていない頭で辺りを見回す。
「今何時だろ……あ、また目覚まし壊しちゃってる…トホホ。」
比叡は寝付きが『良すぎる』のだ。夜更かしするのが好きなせいもあるのか、一度寝始めると自分が満足するまで起きない。その眠りを妨げようものならば、ケッコン艦のハイパワーをその身を持って味わう事になる。……まぁ、その一番の被害者が艦娘ではなく目覚まし時計で済んでいるのが幸いといった所か。そして壁掛け時計の時刻を見た瞬間、
「ひえええぇぇぇぇぇぇ!!ねねね、寝過ごしたぁ!」
火の点いたような絶叫を上げて部屋を飛び出す比叡。
「あ、おはようございます比叡姉様。」
「今日は随分と気持ち良さそうに寝てらっしゃいましたね。」
平然としている榛名と霧島。
「……あるぇ?」
寝坊の常習犯である比叡は普段、妹達に起こしてもらっていた。しかし今日は放っておかれた。この状況が示す物は……
「全く……騒々しいですネー、比叡。折角のティータイムですから、be quietよ?」
「お、お姉さま!?どどど、どうしてここに……。」
比叡の目の前にはこの鎮守府の提督と結婚した最高錬度の姉、金剛が優雅に紅茶を啜っていた。
「フゥ……大分腕を上げましたネー、榛名。これならdarlingに出しても喜ばれるネ。」
「ほ、本当ですかっ!?」
嬉しそうに笑う榛名。背後にはお花畑のエフェクトが見えそうだ。
「あ、あの~…?」
すっかり忘れ去られている比叡である。
「Oh!比叡の疑問は何故私がここにいるか?でしたネ。今日は榛名とショートランドまでタンカーの護衛任務なのデース。」
思い出したかのように比叡の疑問に答える金剛。ここブルネイはアジアでは数少ない産油国だ。海軍と協力関係にあるブルネイ政府からの要請で、他の泊地や鎮守府への油槽船団の護衛はよく頼まれる仕事だ。特にも高速戦艦である金剛型は喜ばれる。
「比叡姉様と私は長期遠征から帰ってきたばかりですから、今日は非番です。」
いつもの制服ではなく私服に身を包んだ霧島がフォローするように答える。
「あー、そっかぁ。私今日やすみだったっけぇ。あ~ん、それならもう少し寝てるんだったぁ~!」
……これである。
「比叡、とりあえず身嗜みは整えた方が良いヨー?榛名、私達もそろそろ行きましょうか。」
「はい、お姉さま。では、行ってきます。」
「「いってらっしゃ~い。」」
そう言って霧島と共に姉妹を見送る比叡の服は、寝返りやら何やらのせいで乱れてはだけて、色々なモノが見え隠れしていた。それを霧島に指摘されて再び悲鳴を上げるのだが、それはまた別の話。
「ではそろそろ、私もデートなので出ますね。」
霧島の私服に気合いが入っていたのはその為だったのか、と改めて思い返す比叡。今現在、霧島は憲兵さんとお付き合いしている。随分と順調なようで、最近はのろけ話を聞かされる事すらある。
「うん、楽しんで来なよ霧島。私は大丈夫だから。」
「では、行ってまいります。」
そう言って出ていった霧島を見送りながら、さて自分はどうしようかとぼんやり思案する比叡。
「やっぱり積みアニメ消化しないとなぁ。……よし、今日は一日アニメの鑑賞会にしよっと。」
何を隠そうこの鎮守府の比叡、アニヲタである。普段からアニメやドラマ、映画等を夜遅くまで鑑賞しており、それが原因で寝坊したりしているのだが。しかしそんなダメそうな休日の予定が決定したはいいものの、それに反抗するかのように腹の虫がグウゥ……と怨めしそうに鳴いた。
「とっ、とりあえず腹拵えと買い出しが先かな?ウン。」
一人きりの部屋で真っ赤になりながら、比叡は身支度を整えに戻った。
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