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提督はBarにいる。

作者:ごません
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日本のビールの底力!~アサヒ編~


「さてさて、日本のビールが『料理に合うビール』だって説明はしたよな?なのでこっからは料理も一緒に提供させて貰うぞ。」

「待ってましたって!」

 ろーちゃん、はしゃぎすぎだから。この間の服装の話以来、潜水艦の娘達も服を着てくれるようになった。ろーちゃんはレーベやマックスとお揃いのセーラー服を着ているが、よく似合っている。

「んじゃまずは日本の4大ビールメーカーの代表的なビールを味わって貰おうか。」

 そう言って俺は冷凍庫から凍らせたジョッキを取り出す。

「こ、凍らせたジョッキに注ぐのか!?」

 初めて見たであろうグラーフは驚きを隠せないようだ。まぁ、世界的に見てもピルスナーやラガーの適温は6~7℃位の(日本的には)やや冷え位だからなぁ。日本の居酒屋等のように0℃近くまでビールを冷やして飲む文化は殆んどない、と言っても過言ではない。

「初見だとビックリするよな?でもこのくらいの方が、コイツの良さは伝わるハズだ。」

 そう言って俺はサーバーからジョッキに注ぐ。ジョッキを軽く斜めにして、最初は泡が立たないように。そして全体の7割程入ったらジョッキを立て、泡立てるように注ぐ。こうすると綺麗な7:3の比率が作りやすい。

「まずはアサヒビールの代名詞、『スーパードライ』だ。飲んでみな?」

 恐る恐る口を付けるグラーフ。途端に目がカッと見開かれる。

「な、なんだこれは!ホップの苦味なんだが、凄くクリアでシャープな苦味だ。」

 そう、それがスーパードライのウリであり特徴だ。辛口とさえ評されるシャープな苦味、だが舌の上にいつまでも残らないクリアな飲み口。そして外国のラガーやエールにはない、水のようにするすると飲める喉ごし。この独特な辛口感は凍るか凍らないかのキンキンに冷やしてやる事でより強く感じられる。

「でもこの突き刺さって来るような苦味、私はあんまり得意じゃないんですよねぇ~……」

 そう言ったのはプリンツだ。確かにこのシャープな苦味こそ、アサヒの特徴でありネックの部分だ。このキレの良い苦味が苦手で、アサヒを嫌う人も多い。最近だとこの苦味を抑えて飲みやすさを追求した「クリアアサヒ」なんてのもあるが、それでも苦手意識が強い人は多い。ならどうするか?

「その苦味とシャープなキレを活かせる料理をチョイスしてやればいいのさ。」




「んじゃ、今から作るからちっと待っててな。これでも摘まんでてくれ。」

 そう言って俺は茄子と胡瓜のからし漬けをスライスして出してやる。

「ん~、これこれ!提督のからし漬けって美味しいのよねぇ♪」

 ビス子は夢中でポリポリやっている。お前ホントにドイツ人か?と突っ込みたくなるくらい馴染んでいる。レーベやマックスも楽しんでいるようだ。グラーフはおっかなびっくり、一口かじって鼻を押さえている。

「は、鼻が痛い……!」

 ちょっとコミカルで可愛いと思った。……なんて考えないで、調理を進めよう。今回作るのは……チヂミだ。それも、小麦粉を使わずにモチモチの生地に仕上げていくぞ。

《モチモチ!じゃがいもチヂミ》※分量4人分

・ジャガイモ:300g

・豚小間切れ肉:100g

・長ネギ(青い部分も使う):1/2本

・白菜キムチ:100g

・片栗粉:大さじ1/2

・コチュジャン:お好みで

・塩:ひとつまみ

・ごま油:適量

(つけダレ)

・酢:大さじ1.5

・醤油:大さじ1

・砂糖:大さじ1/2

・白ごま:大さじ1

・おろしにんにく:少々

 まずは生地作り。本来のチヂミは小麦粉に米粉、卵、水を合わせて作るんだが、今回はジャガイモをすりおろして生地にするぞ。豚肉は1cm幅に刻み、ネギは3mm幅位の輪切りに。キムチも大きければ1cm幅に刻んでおく。

 すりおろしたジャガイモに塩と片栗粉、刻んだ材料を加えて混ぜる。この時、辛いのが良いならコチュジャンを適量。よく混ぜたら後は焼くだけ。

 フライパンにごま油を少々垂らして弱火~中火で熱し、生地大さじ1強を1枚として広げて焼く。(大体直径8cm位が食べやすいぞ)しばらく弄らないでじっくりと焼き、裏面が香ばしく焼けたらひっくり返してもう片面も焼く。大体今回の分量で12枚くらい出来るぞ。全て焼けたら更に取り、つけダレを別皿に盛り付けて完成。

「ハイお待ち、『じゃがいもチヂミ』だ。熱いから気を付けろよ。」

 グラーフ以外のドイツ艦達は器用に箸を使って食べている。

「結構辛いわね、臭いもキツいし……。」

「そこにスーパードライを流し込んでみな?驚きが待ってるぞ?」

 俺に促されるままにチヂミを頬張って飲み込み、味が残っている所にスーパードライ。

「く、口の中がスッキリしたわ!なんで!?」

 そう。スーパードライのキレの良さを活かすには、辛い物や酸味の強い物、苦味のある肴等がピッタリだ。更に辛味がホップの苦味を打ち消し、スーパードライの隠された旨味を引き出してくる。なんなら、キムチを一かじりしてスーパードライを飲むと、スーパードライ本来の『味』が理解できる。

「どうだ?『料理に合うビール』の意味が伝わったか?グラーフ。」

 俺の問いかけに黙り込んだままのグラーフ。口に合わなかったのだろうか?

「これは……出会いだ。私は今まで、ドイツのラガーよりも美味いビールは無いと思っていた。けれど、料理と共に味わえるビール…こんなビールがあったなんて。ありがとう、アトミラール。」

「いや、そこまで畏まられるとむず痒い物があるんだがよぉ。」

 少し照れ臭い。しかし日本のビールの本質は伝わったらしい。口の中の味をリセットしつつ、余韻を引き立て、もっと食べたいと食欲を刺激する。日本のビールの楽しみ方はこれだ。

「さぁて、それじゃあスーパードライに合わせてもう一品。」

 今度は日本を代表する料理、天ぷらだ。だが、ビールに合うように変わり種のかき揚げをご紹介。

《ゴーヤのスタミナかき揚げ》※材料5人分

・ゴーヤ:1本

・豚バラスライス肉:100g

・紅しょうが:40g

・小麦粉:大さじ2

(天ぷらの衣)
・溶き卵:1/2個分

・小麦粉:1カップ

・水:溶き卵と合わせて1カップ

揚げ油:適量

(香味塩)

・ガラムマサラ(無ければカレー粉):1g

・塩:2g

 では作っていこう。ゴーヤは両端を切り落とし、半分に割って種とワタを取り出して2mm幅の薄切りに。豚肉は1cm幅にカット。

 ボウルに汁気を切った紅しょうがとゴーヤ、豚肉を入れたら、全体に小麦粉をまぶしておく。こうする事で後々衣が具材に絡みやすくなる。

 別のボウルに天ぷら衣の材料を入れて軽く混ぜ合わせ、衣を作る。粉をまぶした具材の入ったボウルに衣を入れて、ザックリと混ぜ合わせる。

 後は170℃に熱した油に大きめのスプーンで入れてやり、カラッと揚げる。油を切ったら香味塩を準備して完成だ。

「さぁ、『ゴーヤのスタミナかき揚げ』の完成だ。熱い内に食ってくれよ。」

 サクリ、シャクシャクと良い歯触りの音が聞こえる。少し苦味のあるゴーヤを豚の脂の旨味が包み込む。そこに紅しょうがの酸味と辛味のアクセント。これはたまらんぞ。

「うん、天ぷらってちょっと油っぽいけど、このビールを飲むとサッパリするね!」

 美味しそうに頬張るレーベ。その隣ではマックスがかき揚げ、ビール、かき揚げ、ビール、かき揚げ、かき揚げ、またビールと夢中でがっついている。普段おとなしい印象の娘がこういう姿を見せてくれると、皆に上手く溶け込んでいるんだな、と安心する。……と、俺の視線に気付いたのか、マックスが赤面してそっぽを向いた。可愛い奴め。

「さぁさぁ、ビールはまだあるぞ~!」

 さて、お次はどれにしようかな? 
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