提督はBarにいる。
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艦娘とスイーツと提督と・5
~春雨:クレームブリュレ~
「司令官さん、ではお願いします!」
真剣な眼差しでリクエストされたスイーツの仕上げを見つめる春雨。最後の仕上げはバーナーを使うので危険だから、出来れば間近でまじまじと見るのはやめてもらいたいのだが。
「いいけどマジで気を付けろよ?春雨は折角髪が長くて綺麗なんだからよ、バーナーの火に巻き込まれて焦げたりしたら勿体無いからな。」
「大丈夫です、ゴムで縛ったので万全です……ハイっ!」
「んじゃ……行くぞ~!」
懐に入れてあったライターの火を近付け、ガスを出していた調理用バーナーの火口に近付けると瞬間的に点火。シュゴオオオオオ、と青い火炎が凄い勢いで噴出している(ように見える)。それをクレームブリュレの表面に近付け、火で炙っていく。
「バーナーの火でクリームの表面が焦げていって……き、綺麗~!」
クリームに含まれる脂肪分と糖分、更に上にまぶした粉砂糖とグラニュー糖がバーナーの熱でキャラメリゼされて香ばしい香りと美しい焦げ目を作り出していく。
「……よし、こんなモンか。」
「で、出来立てのクレームブリュレ……感激ですっ!」
「う~ん、表面サクサクで中からクリームがトロッと出てきて最高です!」
「まぁ確かにな。砂糖のあの焦げた香ばしさは間近でないと感じられんわなぁ。……にしても、今日も春雨はメイド服か。気に入ったのか?それ。」
今日の春雨の服装はまたバレンタインの時のメイド服だった。改めて思うが、桜色のツインテールと相まってとても可愛い。
「お、お礼っていうのも変なんですが……司令官に褒めていただいたので今日も着てきたら喜んで貰えるかと思いまして……そのぅ……」
なんというか、こういう一途な思いをぶつけられるのは男としてはとても嬉しい物だ。…だが、流石に駆逐艦に『お手付き』するのは流石に無理があると思う。ケンペイ=サンにケジメを取らされないとも限らないし。
「うん、とても可愛いと思うよ。ありがとうな。」
そう言いながら頭を撫でてやる。娘のようなつもりで父親気分で接してやれば問題ないだろう。春雨は俯き加減で赤面している。
「し、司令官っ!出来れば春雨も作ってみたいのですが、よければ作り方を教えて頂けませんか?」
ふむ、その位なら材料も余っているし教えてやるか。
「別に構わんぞ。春雨も丁度よくメイド服だしなw」
《焦げ目サクサク!クレームブリュレ》※200ml容量のココットで4つ分
・卵黄:4つ
・グラニュー糖:60g
・生クリーム:400cc
・牛乳:120cc
・無塩バター(型塗り用):適量
・粉砂糖:適量
・バニラエッセンス:適量
「まずはメインの材料のカスタードクリームだな。卵黄全部とグラニュー糖を半分入れて、もったりとしてくるまでかき混ぜる。」
「りょ、了解です!」
手際よくカシャカシャと泡立て器でかき混ぜていく春雨。成る程、普段からよく料理をするだけあって手際がいい。俺はその間に鍋に生クリームと牛乳を入れて温める。沸騰直前まで温めたら、春雨が混ぜた卵黄とグラニュー糖を少しずつ加えながら混ぜ、全て混ざりあったら濾してやり、バニラエッセンスを適量加える。
お次はもう焼きに入るぞ。
「春雨、ココット皿の内側にバター塗ってくれ。」
「は、はいっ!」
バターを塗ったら生地を型に流し込んで、天板にお湯を張り、100℃に余熱したオーブンで30分、焦がさないようにじっくりと火を通す。
「け、結構手間がかかるんですね。」
「まぁな。食感が命のお菓子だから火加減が重要なんだ。」
焼けたら取り出して冷蔵庫に入れてしっかりと冷やし、その間に上にまぶす粉砂糖とグラニュー糖の残りを混ぜておく。
「さぁ、大事な仕上げだ。しっかりと冷えた生地の上に砂糖をまぶして、バーナーで炙る……ってのは、さっき見せたよな?」
それ以外にはオーブンを高温に上げて再びオーブンに入れ、ムラなくカラメル色に焦がしてやる。慣れない内はオーブンでやった方が失敗も少ないぞ。
「バーナーでやる時のコツはあるんですか?」
「そうさなぁ……こればっかりは場数を踏んで慣れないとなぁ。…あ、艦娘ならではの方法があるぞ。」
「な、何ですかそれは?」
「バーナーで炙る時に雪風か時雨に側にいてもらえ。最悪やってもらうのもアリじゃないか?」
「……えっと、それってコツって言うんですかね?」
「コツというか、験担ぎというか……けど、悪い結果にはならないと思わないか?」
「確かに、そうですねw」
そこで作ったクレームブリュレはお土産として春雨に持たせてやり、後日白露や夕立にお礼を言われた。……なんだか本当に父親の気分だ。
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