提督はBarにいる。
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艦娘とスイーツと提督と・4
~皐月:アップルパイ~
「ホイお待たせ、焼きたてアツアツだから気を付けろよ~?」
「わぁ、ありがとう司令官!いっただっきま~す♪」
4人目のチケット当選者、皐月のリクエストはアップルパイ。折角だからと焼きたてアツアツのを出してやった。まだ湯気の立っているパイの真ん中にフォークを突き刺し、無邪気に大口を開けてかぶりついた。サクリ、とパリパリサクサクのパイ生地の砕ける音と共に、
「~~~~~~っ!」
皐月が声にならない悲鳴を上げた。そりゃ当然、焼きたてアツアツだからな、パイの中身の林檎のコンポートもアツアツなワケで。あんな大口でかぶりついたら火傷しかねない。
「ほ~れ言わんこっちゃない。ほれ、牛乳だ。取り敢えずそれ飲んで口の中冷やせ。」
涙目で顔を真っ赤にしながら、コップの牛乳を一気に飲み干す皐月。
「ふへええぇ~、ボク、マジで沈むかと思ったぁ~……」
「轟沈理由:アップルパイなんて報告書に書けねぇからそれは勘弁してくれ。」
思わず苦笑いしながら、茶化すようにそう言った。
「でもホント、司令官ってお料理上手だよね。」
「そうか?間宮や鳳翔には敵わねぇぞ?流石に。」
「そんな事ないよ、間宮さんなんかこの前、『提督に負けたら私の立場が……』って、お店でブツブツ呟いてたよ?」
おいおい、穏やかじゃねぇなぁ。あくまで俺の料理は趣味の延長線であって、カロリー計算とか栄養バランスなんて物はハナから計算したことすらねぇ。
「あっちはプロだからなぁ。アマチュアが幾ら褒められてもプロには勝てんさ。」
「そうかなぁ、このアップルパイだって生地はサクサクだし、中の林檎も甘過ぎないし酸っぱすぎないし、とってもいいバランスで美味しいと思うんだけどなぁ。」
「お~?何だ何だ~?改ニになった途端に随分一丁前なコメント言うようになったな~?」
そう言いながらクシャクシャと頭を撫でてやる。そう、皐月はこの間改二の改装計画が持ち上がり、艤装と制服、装備一式を新調したばかりだった。
「や、止めてよ司令官~!頭ぐしゃぐしゃになっちゃうだろ~!?」
まぁ、中身はあんまり変わっていない様だがw
「さて、と。一切れ食べ終わったが、お代わりは?」
「もっちろん!お代わりしないワケにはいかないよ、こんなに美味しいんだもん!」
「ハイハイ、少々お待ちをお転婆姫。」
俺は苦笑いしながらお代わりのパイを取りに行く。
「ホラよ、お代わりのパイと……パイに使ったのと同じ林檎で淹れたアップルティーだ。飲むか?」
「は~い!いただきまーす!」
程よく冷めたパイにかじりつき、身震いする皐月。そこに淹れたばかりの温かいアップルティーを一口。合わないワケがねぇよな、ウン。
「やっぱりスーパーとかコンビニで買うアップルパイとは違うなぁ。」
「そりゃあな。ありゃアップルパイというよりアップルデニッシュだからな、別物だ。」
「へぇ~……あれ?この中身の林檎、随分赤いね?何で?」
お、そこに目を付けたか。やはり改二になって少しは成長したのだろうか。
「あぁ、その中身のコンポートは俺特製でな。林檎を煮詰めるのに赤ワイン使ったんだ。少しワインの酸味と香りが付いて、ただのコンポートよりも酒に合うように作ってある。」
「やっぱりお酒なんだね司令官の料理の中心は。」
「当たり前だ、BarだぞBar。酒飲まないでどうするよ。」
「そりゃそうだねwねぇ司令官、アイス無いかな?パイに載せて食べたいんだけど。」
まだ温かいアップルパイの上にアイス。間違いなく美味いだろう。美味いだろうが……
「いいのか皐月ぃ。アイスはあるにはあるが、カロリーとんでもない事になるぞ~?」
「えっ……?」
「この間採寸したばかりの改二の制服、入らなくなっても知らんぞ~?w」
と、ちょっと悪戯心が芽生えたので言ってみた。
「し、司令官がこんなに美味しく作るのがいけないんじゃないかぁ~っ!」
と、よくわからん責任転嫁をされつつも、結局皐月はパイを1ホール全てペロリと平らげ(内3/4はアイス載せ)、しばらく島風に付き合ってランニングする姿が見られたというのはまた別の話。
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