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提督はBarにいる。

作者:ごません
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出撃・礼号作戦!~作戦会議その2~

「大淀~。作戦海域の海図と、ウチの艦娘の錬度表をくれ。」

「は、はいただ今。……えぇと、此方になります。」

 俺の先程の久し振りの剣幕にビビったのか、少し動きがぎこちない大淀。別にそんなに畏まらんでも良いだろうに。

「さて……と。ここからの作戦展開だが、まずはここだ。」

 俺は海図を開きながらとある小島を指差した。

「ここに物資を運び込んで取り敢えずの橋頭堡を築く。……索敵班からの報告は?」

「こちらです、司令。」

 流石は『艦隊の頭脳』、求められると思って準備してたか。

「ふむ、真っ直ぐ直進は岩礁が多過ぎて難しい……か。となると、北から回り込むルートか南を回るルートか。」

 索敵班からの報告によれば、北は水深が浅い為か水雷戦隊と潜水艦の残党を中心とした警戒網、逆に水深の深い南側の海域は空母や戦艦のflagship級を中心とした精強な艦隊が厚い防御線を張っている。更に、湾内の浅い水深の所には厄介な小鬼共が群れを成して壁を作っているらしい。

 PT小鬼群。嘗ての大戦期にアメリカ海軍が用いていた哨戒魚雷艇(Patrol Torpedo boat)を真似たらしい、超小型の新型深海棲艦。その名の通り、奴等は魚雷以外の攻撃手段をほぼ持たず、耐久力も副砲弾1発で沈んでしまう程度。だが、その小型の体こそが厄介極まりない。そもそも攻撃が当たらないのだ。戦艦の主砲のような大口径砲などかすりもせず、辛うじて小回りの利く駆逐・軽巡の小口径砲が比較的効果的、という程度。そして何より、奴等は『群れ』で襲って来るのだ。1匹2匹の損害などおくびにも止めず、正に童話に出てくるゴブリン……小鬼のように群れで襲いかかり、多い時には10本以上の魚雷を纏めて叩き込んでくる。そんな飽和攻撃を喰らえば、さしもの大和・武蔵でも大破は免れない。そんな奴等が海面を埋め尽くさん勢いで群れているのだ。なら、採るべき道は決まった。

「湾内突入部隊は礼号作戦組を基に編成。霞を旗艦に、足柄、大淀、清霜、阿武隈、更に重巡か航巡を1名加えた6名で行く。……霞、引き続きの旗艦で大変だとは思うが任せたぞ。」

「フン、さっきから任せなさいって言ってたでしょ。」

 まだ生意気な口が聞けるなら大丈夫だな。その向かい側では金剛がむくれている。

「テートク~!また出番はナシですか~!?」

 落ち着けバカ野郎。編成はまだ終わってねぇ。

「この作戦は短時間での攻略がキモだ。よって、支援艦隊も出していくぞ。まずは道中支援……こいつらには突入部隊の後方に控えて艦載機による直掩護衛と、支援砲撃を任せる。編成は重巡2、軽空母2、駆逐艦2の編成だ。」

 再びBOO、と不満を漏らすような音を立てる金剛。

「支援艦隊はもう1つ。こっちは棲姫に突入部隊が取り付いた時に支援砲撃と爆撃を行う決戦支援部隊だ。編成は……金剛、比叡、赤城、加賀。この4人を軸に護衛の駆逐艦2隻を加えて1編成とする。南からの敵のいないルートを使っての大回りになるが……出来るな?」

「of courseネー!嫁艦の実力、見せてやるヨー!」

 先程までの不機嫌はどこへやら。金剛は鼻息荒くやるき満々といった様子だ。全く、現金な奴め。

「榛名と霧島は手の空いている駆逐・軽巡を指揮してポイントへの物資の運び込みの陣頭指揮を任せる。徹夜仕事だが、宜しく頼む。翔鶴・瑞鶴は、ニ航戦及び鳳翔さんと合流、現場海域では大型の爆撃機の目撃情報がある。運搬部隊の護衛に当たれ。」

「了解!」

 榛名・霧島・翔鶴・瑞鶴は敬礼すると忙しなく執務室を出ていった。

「他の者は編成の名前に挙がった者に伝達。以後、明日明朝からの出撃に備えて休息を取るように。以上!」

 室内にいた全員が、一糸乱れぬ敬礼。よくぞここまで……と自画自賛したくなったが、慢心はいかんな。止めておこう。

「俺は少し休む。緊急の場合のみ取り次げ。」

 俺はそう言って執務室の横に備え付けてある仮眠室に、極々自然に金剛の手を引いて入った。




 俺に指図されるまでもなく、金剛は膝枕の体勢を取った。俺もそれに甘えるように、頭をその柔らかな太股に預ける。

「済まなかったな、金剛。」

「ンー?何がデスか?」

 わざとらしく小首を傾げる金剛。……こいつめ、解ってるクセに。

「本当なら嫁であるお前を活躍させてやりたいと思う気持ちもあるんだ。だがな……」

 俺の言葉を遮るように、クスクスと笑い出す金剛。

「解ってますよ、提督。」

「提督は、一軍を率いる将です。私情を挟んで負ける訳には行きませんよ……。敵の戦力を見て、ベストな判断をしたと、私は思いますよ?」

 そう言いながら俺の頭を撫でてくる金剛。いつものハイテンションな片言はなりを潜め、あくまでも優しく、子供に語りかけるような口調だ。

「なら、何であんなに突っかかった?お前だって解ってたハズだろうに……」

「あ、あれは……何と言うか、私のワガママですよ。提督。」

 下から顔を見上げると、苦笑いを浮かべる金剛の顔がそこにあった。

「提督の妻として、一番役に立ちたいと思う、そんな嫉妬深い私のワガママですよ……」

「んな心配するんじゃねぇよ。お前は俺にとってのナンバーワンであり、オンリーワンなんだからよ。」

 そう言って、金剛の頭を引き寄せて口付けを交わす。仮眠室の外の廊下では、バタバタという足音が響いている。忙しくさせてしまった駆逐・軽巡達には悪いと思いつつ、俺達二人は微睡みの中に落ちていった。
 
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