提督はBarにいる。
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EX回18 鎮守府の秋祭り~エンディング~
前書き
祭りと戦争には共通点がある。それは、どちらも永遠には続かない事だ。
あの秋祭りから一夜明けた翌朝早朝、俺達は港湾部に居た。新米君達の乗ってきた二式大挺の発進準備が整った為に早朝ではあるが急遽出発する事になったのだ。
「こんな朝早くなモンでな。本来なら鎮守府総出で見送るべきなんだろうが……」
「いえいえ、そんな事されたら逆に気を使いますから。このくらいがちょうどいいです。」
見送りに出ていたのは、俺に大淀、昨日の演習メンバー、そして不服そうな顔をした青葉と、若干眠そうな川内。
「では、突然の来客で申し訳なかったです。」
「いや、いいさ。俺としても貴重な体験だったしな。」
そう言いながら俺達はガッチリと握手を交わす。
「それに、また飯が食いたくなったら遊びにくりゃいい。」
「アハハ……、かなり遠いと思いますけどね。」
その新米君の隣には、憮然とした表情の白衣を着た女性が。なんでも、「病人」として担ぎ込まれた技術将校らしいが、随分と鎮守府の中を見学していたらしい。なんともまぁ、元気な病人もいたもんだ。
「そろそろ出まぁす!」
大挺のパイロットがハッチを開けて叫んでいる。内火挺の準備も整っている。後は乗り込むだけ。
「では。総員、乗り込め‼」
新米君の号令で艦娘達が内火挺に一斉に乗り込む。内火挺のエンジンが掛かった瞬間、
「総員、敬礼!」
金剛だろうか、誰かの号令と共に鎮守府の宿舎の扉が全て開け放たれ、中にいた200を超える艦娘達が駆け出してくる。そして整列して一斉に敬礼。俺を含めて総員251名の敬礼だ。これは中々に壮観な景色だろう。
新米君達が大挺に乗り込む。発動機が回され、バルン、バルンとレシプロ機の独特な始動音が鳴り響く。やがてプロペラが高速回転を始めると、大挺は滑らかに水面を滑り出した。
「総員、帽振れ~‼」
昔ながらの航空機を送り出す時のしきたりだ。だが、艦娘には帽子を被っている者は少ない。それ以外の者達は、
「さようならなのです~‼」
「また来てね~‼」
「今度はうーちゃんとも遊ぶっぴょん!」
などと、思い思いに別れの言葉を投げ掛けながら手を降っている。まぁ、こんな騒がしい見送りもアリだろうさ。
大挺が水面を離れ、しっかりと上昇して視界に映らなくなった後、青葉が口を開いた。
「司令。」
「あん?何だよ急に。」
「司令はどこまで知ってたんです?」
「だから何が。」
瞬間、青葉が声を荒げようとしていたのを、川内が後ろから押さえ付けた。
「ハイハイ、無用な混乱を起こそうとしな~い。」
俺も晩飯の辺りには薄々は勘付いていた。新米だと思っていた彼らは、『過去』の美保鎮守府の面子である事に。
その挙動、言動、全てが違和感だらけ。そしてあの新米君の顔。忘れようもない、艦娘の運用を学ぼうと読み耽った美保鎮守府の戦闘記録に載っていた、若かりし頃の提督その人の顔だ。だからこそ、大挺の認識コードも一致しなかったし、装備も錬度も数段過去の物だったのだ。(まぁ、それをフルボッコにしたのは我ながら大人げないとは思うが)だからこそ、「病人」として潜り込んできた女将校を川内に尾行させたし、余計なちょっかいを出そうとした青葉を川内に気絶させるように指示したのも俺だ。
「まぁ、軍艦の魂が人の形して生きてる時代だ。タイムスリップ位起きても今更驚かねぇさ。」
誰に言うでもない、俺はそう呟いた。さ~てと、後片付けと大本営に出す報告書、書かねぇとな~。
「それと……川内。」
「ん?どしたの提督。」
「青葉を離してやれ。もうオチてるから。」
「へっ?」
見ると、青葉は白目を剥いて顔面蒼白になっている。
「やっばい、救護班、救護班~‼」
はぁ。朝から騒がしいなぁ、この鎮守府は。
《報告書》
先頃、当鎮守府で行われた秋祭りに於いては、多少のトラブルは発生した物の、その進行を大きく妨げるような大きな問題は起こらずに滞りなくその日程を終了。
尚、秋祭り開催中に所属不明の遊軍機(二式大挺)の乗員を救助し、一泊させるも然したる問題は見受けられず。翌朝早くに当鎮守府の領海を離脱。つきましては、その所属不明機の目的地・所属・任務目的を軍令部に開示願う物である。遊軍に扮したスパイ活動の可能性も否定できない為、切に願う物である。
以上
「まぁ、こんなモンか?ひっひっひ、軍令部の奴等泡食った騒ぎになるぞコイツぁ。」
そんな意地の悪い笑みを浮かべていると、横から冷たい視線が刺さる。
「提督、悪ふざけはやめてください。鎮守府の不利益になります。」
「硬っ苦しいなぁ加賀は。これは俺の当然の権利なの。解る?」
実際最初はスパイ活動も本気で疑ったのだ。幾ら遊軍とはいえ所属不明機が着陸を求めてくれば怪しむのが当然だ。まぁ、同期の奴をからかう意味合いの方が強いがなw
まぁ、こんなバカな事が出来る位には平和って事さ。それもこれも、過去からの積み重ねがあってこそ。
「期待してるぜ?『美保の回り道太郎提督』さんよ。」
俺は窓の外の青空を眺めながら、そう、呟いた。
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