普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
174 〝決闘クラブ〟
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
俺、アニー、ハーマイオニーの三人で行動する事がおなじみとなっている三人は、朝食の為に玄関ホールへ向かう。すると何やら騒々しい人だかりを見付ける。
人だかりの原因である掲示に目を向けて数秒、アニーが苦笑しながら口を開いた。
「……いや、確かにああ──「マルフォイに蛇をけしかけられるタイミングが有ればいいね」…なんて言ったけど流石に早すぎない?」
「そ、そうね」
そう呟いたアニーにハーマイオニーは短く返す事しか出来ていない。……そう。アニーの言ったように、マルフォイに蛇をけしかけるチャンスが訪れたのだと、俺達三人も釘付けになっている掲示にはあった。
(教師陣も漸く重い腰を上げたか…)
掲示には要約すれば〝〝決闘クラブ〟を始めます〟──とな旨が記されていて、十中八九クェィサー・ジムシーが襲撃されたことも無関係じゃない事も何となくだが判る。
ちなみに、俺達がバジリスクについてのレポートを教師陣に出したのはマクゴナガル先生に内緒にしてもらっているので、俺、アニー、ハーマイオニーは悪目立ちはしていない。
……しかしそのお陰(?)で、人の功績を奪う時だけ盛んになる話術でロックハートがバジリスクについて解き明かしたことになっていて、スリザリン女子──とハーマイオニー、アニー以外の女子勢のロックハート評はうなぎ登りになっていたり。……ロックハートには詳しい話は行き渡っていないのだろう。
閑話休題。
「……さ、今はそんな事より朝食だ」
「そうね」
取り敢えずは腹が減っては戦は出来ぬと云う事で、最近口にしていない白米に焦がれながらアニー、ハーマイオニーと今日の授業について語り合いつつ朝食の席に向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
掲示が貼り出されていたその日の晩、俺、アニー、ハーマイオニー──だけではなく、掲示を見たであろう、ほとんどの生徒──人数から察するに、ホグワーツの全生徒は、大広間に姿を顔を揃えていた。
いつもなら食事を摂るその場所からは長い机が取っ払われていて、おそらくだがそこに上がって魔法を撃ち合うのだろう──金色の舞台が現れている。
「……ついに来たね」
人数が人数なので五月蝿いホール内な辟易していると、手持ちぶさただったらしい隣のアニーはそう呟く。その声音と口調は、今回開催されるのが良くも悪くも〝クラブ〟だと理解しているようで。変に気負ったりはしてなくて、絶妙なリラックス具合だ。
……また、ハーマイオニーも気負ったりはしてないが、そわそわとしたテンションを隠しきれていない。地味に乗り気だったか。
「……誰が教えるんだろう?」
「きっとフリットウィック先生よ。だってフリットウィック先生って学生の頃は決闘チャンピオンと呼ばれていたらしいもの」
「……案外スネイプ先生かもな」
「スネイプ先生? ……ちょっとあり得ないかも──」
〝決闘クラブ〟の教師について予想を馳せているアニーとハーマイオニーにそう──〝知識〟込みの茶々をいれてやれば、ハーマイオニーに比べてスネイプ先生に隔意をいだいていないであろうアニーは苦笑しながら俺の予想を否定しようとした時、その言葉尻が周囲の生徒のどよめきによって掻き消される。
どよめきの原因は直ぐに判明する。壇上にギルデロイ・ロックハートが登ったのだ。そして軽くどよめきが収まると、ロックハートは大仰な身振り手振りをしながら口を開く。
「静粛に。……皆さん集まって。さぁ、集まって。皆さん私がよく見えますか? 私の声が聞こえますか? ……よろしい! この度ダンブルドア校長先生から私がこの〝決闘クラブ〟を催す許可をいただきました。暗雲が立ち込めはじめた昨今です。万が一に場合に備え自らの身を護る事が出来るように、皆さんをしっかりと鍛えあげる為にです」
ロックハートはやはり大仰な身振り手振り──加えて口振りで、「詳しくは私の著書を読んで下さい」と更に付け足し更に…
「〝決闘クラブ〟。……それはその名の通り、〝決闘〟に関する礼儀や作法を教える集まり。……そして〝決闘〟とは二人で行われるものです。……しかし私の身は残念ながら一つしか在りません。……なので、助手を用意しました──スネイプ先生、壇上へどうぞ」
どよめきが大きくなる。……ロックハート続いて壇上に登った、憮然とした鉤鼻の教師──セブルス・スネイプ先生こそが、そのどよめきの大きくした原因である。
「……どうやらスネイプ先生は、私のレベルまでは達していないようですが、決闘について詳しいご様子なので、助手に抜擢させていただきました。……まぁ、とは云っても皆さんの〝魔法薬学〟の先生をうっかり消し飛ばして──なんて事態には決してならないのでご安心下さい」
「……おおぅ、実に〝イイエガオ〟だ」
「……大丈夫かな」
そんな風にアニーの口から溢れてきた呟きは、ロックハートに向けられていた。……今のスネイプ先生の──檻から解き放たれた虎の様な表情を見れば誰だってロックハートを心配するだろう。
今回、ロックハートが地雷を踏み抜いていなかったら、俺も多分ロックハートを心配していたかもしれない。……それだけ今のスネイプ先生の表情は凄惨なのだ。
「……良いですか? こうやって杖を構え──一礼します」
アニーと歓談していると、壇上ではいつの間にやら物事は進んでいた様で、ロックハートは得意気にスネイプ先生は喜悦に染まった〝イイエガオ〟でお互いに杖を胸のところで構えながら一礼している様子が見てとれる。
「……それから互いに背を向け合い、三歩のところで止まり──そして向き合い、杖を構える」
ロックハートの談義通り、ロックハートとスネイプ先生は互いに大股で三歩歩いたところで反転──つまりは向かい合い、杖を向けあう。
「そして1…2の…3で魔法を放つこういう風に、1…2…3──」
ロックハートは杖をぐねぐねと回し、スネイプ先生に魔法を放とうとするが、スネイプの方が何枚も上手だった。
「“武器よ去れ(エクスペリアームス)”!!」
スネイプ先生の杖先から先に放たれた紅の閃光。……〝武装解除〟の魔法をもろに食らったロックハートは何メートルも後ろへと吹っ飛び、壁に打ち付けられずるずると地面に落ちて、まるで潰れたカエルみたいな様相となる。
(……まぁ、そうなるわな)
スネイプ先生は──もとい、〝セブルス・スネイプ〟は、≪死喰い人(デス・イーター)≫で──それも云うところの幹部クラスだったのだから、戦闘ではロックハートの相手なんて〝役不足〟だったのだ。
「……生徒にあの呪文を見せますか…。……しかしご忠言申し上げますがスネイプ先生、スネイプ先生がその魔法を使うのはあまりに見えすいていた。だから実演をと、愚考して魔法を受けたまでですよ」
ロックハートは立ち上がりつつ塵埃を払いながら、そう宣ってみせるが、どこからどうみて強がっているようにしか思えなかった。特にスリザリン生男子から失笑が多く聞こえる。
その後はロックハートがスネイプ先生との模範演技を断り、今度はロックハートとスネイプ先生が互いに指導しつつの──〝生徒同士〟の模範演技をやることとなった。
「……アニー、君に決めた」
「マルフォイ」
ロックハートから指名されるのをどこかしら感じていたのか、アニーは肩を落としながら壇上に上がり、ロックハートのそばに寄る。……そしてスネイプ先生に指名されたのはマルフォイで、マルフォイはスネイプ先生と並び立つ。
マルフォイとアニーの模擬戦が始まる。
SIDE END
SIDE アニー・リリー・ポッター
壇上でマルフォイと近くで向き合うと、マルフォイがいきなり話し掛けてきた。
「ポッター、一つ賭けをしようじゃないか」
「……一応聞いとくね、どんな?」
「僕が勝ったら言うよ」
「話しにならないね」
前提条件がめちゃめちゃなので、そんな無茶な賭けにはのらない。……マルフォイはそんなボクの態度気に入らなかったのか、鼻を鳴らす。
「……どうなっても知らないからな」
「ボクの科白を態々言ってくれるなんて、どーも」
「杖を構え、一礼──そう、その調子。互いに後ろを向いて大体三歩のところで立ち止まる。それから1…2の…3で合図しますので、〝3〟で相手に〝武装解除〟の魔法を放つ。……良いですか?」
ロックハートの指示通り、いくらか離れたところでマルフォイと杖を向けあう。
「1、2──」
「“宙に舞え(エヴァーテ・スタティム)”!」
マルフォイはフライングして魔法を掛けてくるが…
「“護れ(プロテゴ)”」
しかしそこは日々の訓練の賜物と云うべきで、マルフォイが杖を構えた時から何時でも対処出来る様になっていたので、ボクはマルフォイからフライングで放たれた魔法を落ち着いて防御する。
「杖を奪うだけです!」
ロックハートからそう注意が入るが、それには聞こえないふりをしながらボク、ロン、ハーマイオニーでかねてより決めていた呪文を唱える。
「“ヘビ出でよ(サーペンソーティア)”! “肥大せよ(エンゴージオ)”!」
(……さて、マルフォイはどう捌くか…)
呼び出した蛇をすかさずニシキヘビくらいな大きさまでに〝肥大化〟させ、マルフォイの様子を見る。
(……違うか)
そして、すぐにマルフォイが〝スリザリンの継承者〟なんかではないことが判った。
……マルフォイが〝蛇語〟でボクが呼び出した蛇を巧みに操るかと思ったが、マルフォイは恐怖に怯えているだけだったからだ。
「……はぁ、“消えよ(エバネスコ)”──“武器よ去れ(エクスペリアームス)”」
ロックハートが何やら動き出しそうだったので、それより先にボク自ら蛇を消しその流れのまま、マルフォイに〝武装解除〟をかける。
……そして、いつの間にやら始まっていたロンやハーマイオニーの決闘を見やれば、ロンはネビルに──ハーマイオニーはスリザリン女子のミリセント・ブルストロードに無事勝利を収めていた。
(……まぁ、そうなるだろうね)
そうこうしている内に時間がきて、〝決闘クラブ〟は盛況と云っていい結果のうちに終了した。
SIDE END
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