ピンクのサウスポー
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十章
「有り難うな!」
「今までよお投げた!」
「最高のストッパーやったわ!」
「結婚しても幸せにな!」
「ええ家庭築けや!」
頭を下げて引退に涙を流す水原に暖かい声をかけた。球場を去った時既にチームを去っていたコーチに声をかけられた。
「今までよくやったな」
「ルーキーの時は有り難うございます」
ユニフォームではなくフレアースカートの服装でコーチに頭を下げた、お互いに私服だ。
「お陰で今まで投げられました」
「いや、御前の実力だ」
コーチはその水原に笑顔で言った。
「ここまで投げられたのはな」
「私のですか」
「そうだ」
まさにというのだ。
「ここまで投げられたのはな」
「そうですか」
「これまでよく最後を守ってくれた」
ストッパーとして、というのだ。
「後はだ」
「はい、結婚してそして」
「家庭でも頑張れ」
「家庭でもですね」
「そうだ、マウンドでそうだったみたいにな」
強気でかつコントロールを活かして、というのだ。
「やっていけ、いいな」
「わかりました」
笑顔で応えた水原だった、そして。
彼女は家庭に入った、家庭では優しく穏やかな妻であり母であったがだ。ファン達は彼女を素晴らしく阪神の選手だと記憶していた。ピンクのサウスポートして何時までも。
ピンクのサウスポー 完
2016・9・22
ページ上へ戻る