魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年
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第三十八話 テスト勉強 そして悪意
前書き
今回はちょっとした日常回……最後がちょっとあれだが。
「うぅぅぅ……うにゃー!わかんないよぅ……」
クラスになのはの叫び声が響き渡る。
しかし、誰もそれを気に留める事はしなかった。というのも今の時期が近付けば誰しもが気にする時間などないからだ。
そう、今の時期。期末テストが待っているのだ。
冬のこの時期、冬休みに入る前に期末テストがあり、それで赤点を取ってしまった場合、補習が待っているのだ。
皆、それを回避する為にいつにもまして勉強しているのだ。
それはなのは達も例外ではなく、管理局組で集まり即席勉強会を教室で開いている。
「なのはちゃん、あまり叫ばないで。集中できなくなっちゃうから……」
「ただでさえ、私たち現国がピンチなんだから……」
「フェイトちゃん達は現国だけやないか。うちは数学と英語なんやで?」
「みんな、いいじゃない!私、現国も英語も歴史も苦手なのにー!」
と、この通りみんな苦手科目を互いに補い合って勉強し合っている。
ちなみにるいと聖もこの中にいるのだが、二人とも前世の頃は社会人になっていたからか、今でも何とかついていけている。
しかし、聖の方は若干危ないのか食い入るように教科書を見つめている。
るいの方は食い入るようにとは言わないが、必死な様子で教科書とノートを交互に見続けている。
しかし、そんな中でいつもと変わらない様子な人物が三人ほどいる。
「全、勉強しなくてもいいの?」
「うん、休み時間とかもずっと本とか読んでばっかりだけど……」
まず二人。アリサとすずかだ。この二人は普段から成績も良く、今回のテストも赤点回避は余裕な為、というか二人とも各教科で百点を狙っている為、少しだけだが勉強している。
「問題はない。家に帰ってから予習復習はきちんとしている。それに本を読む事によって漢字の読解力なども向上する。これも立派な勉強の一つだ」
もう一人は全だ。全の言うとおり、全は家に帰宅してから夕食の支度を終えてからは少々手持無沙汰になるため、少しだけ復習。その後、夕食を食べた後は翌日の朝食並びに弁当の仕込み。
それらを終えてもまだ9時。寝るには時間が余る為、1、2時間程予習をしてから眠りにつく。
その為、切羽詰まって勉強するなどという事は全にとってはありえない事なのだ。
「でも、全君だってなのはちゃん達と一緒に管理局の仕事とかやってるんじゃないの?」
「俺は別に管理局に所属している訳じゃない。あくまで嘱託だからな。仕事をやるか否かは俺の自由だ」
「そうなのね。にしても……あれは本当に……」
アリサは呆れたようにある一角を見つめる。
そこは、なのは達の集まっている場所なのだが、るいを除いた全員が机に顔を突っ伏しているのだ。
「アリサにすずか。お前らはあそこに加わらなくてもいいのか?友人達の危機だぞ?」
「いいのよ。あまり甘やかすとずっとそんな感じになっちゃうし」
「まあ、それもそうか」
全はそう言った後、再び読書に戻る。
「うぅ、どないしよ……」
と、はやては突っ伏していた顔を上げて辺りを見渡し……全を視線に捉えた所で止まる。
「そうや!」
はやてはそう言うと、教科書とノートを持って全達のいる場所にやってきた。
「全君、勉強教えて!!」
そして、勉強を教えてほしいと言ってきたのだ。
「……は?」
むろん、これには全も訝し気な表情をする。そしてそんな光景を見ている全員がだ。
それもその筈。はやてだって全を。いや、より正確に言えば神楽院を毛嫌いしていた。
だからこそ、あんな風に気軽な感じで全に勉強を教えてと言うとは思えなかったのだ。
「この問題がわからんねん。全君、わかる?」
「ちょちょちょ、はやて。自分で問題解こうとか思わないの?」
「思っとるけど、わからんから聞きにきたんや!お願いや全君!このままやと、うち冬休み全部補習になってまう!!」
「そこまでなのか………………はぁ、ペン貸せ」
「ありがとう、全君!」
はやては教科書とノートを置き、シャーペンを全に貸す。全はそれを受け取ると教科書の問題を数秒ほど見つめてから、ノートに式を書き込んでいく。
式を書いた後、少しだけ文を書き加えた後、はやてに渡す。
「ほら、これでいいか?」
「うん、ありがとう!これを元に頑張ってみるわ!」
そう言って笑顔を見せた後、はやてはなのは達のいる場所に戻っていった。
「全、最後になんて書いたの?」
アリサは疑問に思っていた事を聞く。そう、全は最後に何か書いていたのだがそれがよく見えなかったのだ。
「いや何……今回の全教科の出題問題の例を少しな」
「「……え?」」
全の言った言葉に二人は思わず頬を引き攣らせる。
「ち、ちなみにそれはどのくらいの割合で当たってるの……?」
「そうだな……一応だが、今までの奴も合わせて……75%程といった所か。俺としては100%を目指しているんだが」
すずかの言葉に全はそう答える。今まで神楽院が受けてきたテストを神楽院はきちんと保管していた。恐らく全の為を思ってしていたのだろう。その甲斐もあって全はこのような事が出来る。
つまり、テストで出題される問題を予想してそれに合わせた勉強をする。という事だ。
「い、いやいや!普通そんな事出来ないから!!」
アリサの言葉に全は首を傾げながら
「そうか?教師が念を押すところは大概問題に出るし、後は普段の授業をきちんと聞いてさえいれば赤点を取る事はまずないと思うが」
そう答える。
「「「「「うっ……」」」」」
全の言葉に5名ほど、息を詰まらせる。言わずもがな、なのは達だ。
ちなみになぜ全がこのような事が出来るのかについてだが……前世で東吾からある漫画を強制的に読まされたからだ。
その中で主人公は「テストにおける教師の出題問題の傾向を読み取り、テストに臨む」という方法をやっており、それで毎回100点を取っていた。
その人物と同じ事をやっているのだが、いかんせんまだ慣れない為か正解率は先ほど全も言った通り、75%程。
いづれは100%にしたいと全は思っている。
「まあ、そこまで難しい事でもないし、気が向いたらチャレンジしてみたらどうだ?」
「うぅん……結構難しそうなのよね……」
普通、難しいで済む問題ではないのだが、それを難しいで済ませるアリサは凄いなと改めて全は思った。
「くそっ、なにがどうなってるんだ……アリサにすずか、フェイトやアリシア、るいだけじゃなくはやてまで……やっぱりあいつは洗脳してるんじゃないのか?」
ある一室。少年は机に向かいあい、頭を抱えていた。
「そうだ、そうに違いない。神楽院め、髪の色を変えて印象を変えた後に洗脳したんだ!そんな卑怯な事をするなんて……あいつは男の風上にもおけない奴だ!!」
『その通りよ、聖』
と、少年しかいない筈の部屋に女の人の声が響く。
「なんだ、僕を転生させてくれた神様じゃないか。というか、その通りって事は……」
少年は部屋に置いてある姿見に近寄る。と、少年の背後に女性が立っていた。しかし、現実にはいない。この神様はこの姿見の中にだけ存在しているのだ。
『ええ、その通り。あいつは洗脳をしているわ。そうでなければあんな奴が好かれるなんてありえないもの』
「やっぱりそうだったのか……フェイト達をあいつの毒牙から解き放ってやらないと!!」
少年はそう決意する。
『いい方法があるわ。洗脳を解いてなおかつ、あの邪魔な男を消し去る方法が』
「それは?」
『それはね…………』
少年が寝静まったころ、女性は再び姿見の中に姿を現す。
『ああ、私の愛しい聖……貴方は世界に愛される存在。それを邪魔する存在……橘全。その存在を私は許さないわ。この運命の神が貴方の運命を滅茶苦茶にしてあげる……』
そんな狂気にも似た声色で女性はそう言った後、姿見の中から姿を消した。
後書き
これは波乱の序章に過ぎません。
次回辺りから完全にヤバい事になります。そしてそのラストは……皆さん、何とかそこまでは書き上げますので。頑張ってついてきてください!
後、誹謗中傷の感想以外の感想待ってます!!
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