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機動戦士ガンダム0091宇宙の念

作者:むらたく
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宇宙編
月決戦編
  第39話 宵闇

 
前書き
はじめに

ここ四ヶ月、まったく更新ができなかったことをお詫びいたします。
これからは少しずつ更新ペースを速める予定ですので何卒よろしくお願い申し上げます。 

 
「あぶなかった…」
ルシオンの駆るヘッジホッグは、目立った損傷もなく星の海を飛翔していた。

先刻ー
「墜ちろ‼︎」
ハイザックのライフルから放たれた粒子砲が高速で宇宙を切り裂いていく。
「‼︎」
光軸はヘッジホッグの軌跡を貫き、小さな火球を作った。
「…やられた…‼︎」
メアリーは小さく呟いた。
モニターには、プロペラントタンクをパージしたヘッジホッグのスラスター光が小さく映っていた。
もう次弾をチャージする時間も余裕もない。
覚悟を決めたその時…
ヘッジホッグは急に踵を返し、その宙域を離れた。
フランからの通信があったのだった。


「フラン…無事か…⁉︎」
プロペラントタンクをやられたことで、ヘッジホッグの作戦行動時間も余裕がなかった。
撤退する、という通信からフランからの応答はない。
ルシオンは推進剤に気を配りつつ、一刻も早く帰還することを考えていた。


宇宙を高速で流れるデブリ群。
暗礁宙域の中であるこの座標に、ルシオンらの母艦はあった。
「また、なんとか生き残ったか…」
焼け爛れた装甲と、剥き出しのフレーム。
もはやデルタの名を冠する機体の面影もない。
「ん、通信回線…」
MSハンガーに固定された二機のモビルスーツ。
「機付長か…すまねぇな。このザマだ」
「気にすんなよフラン。補修用の百式が丸々一機ある。機体は勿論大事だが、パイロットの替えはきかねぇからな。しっかり休んでおけ、首席!」
「へへ、あんがとよ…」
隣に鎮座する灰色のMS。背部のスラスターユニットを折り畳んだ試作機、ヘッジホッグ。
「フラン、大丈夫か?」
こちらの損傷は軽微で、シールドユニットを破損した程度だ。
「あぁ、出血は止まった。テーピングすりゃ自分でも出れる」
「そうか」
「あとは、ナナだけか」
「ん…あ、あぁ。そうだな…」
月面宙域ではロンド・ベル隊が到着。
同宙域にてジオン〝シャドウハウンド隊″数名が戦死。
月面裏側ではシャア率いるレウルーラ艦隊がサイド5に向け出航。アイラ、グランが収容された。
グラフィー、レーモ7と補給線を繋いだグラフィー軍最前線ではフーバー、メアリーがグワンバンに帰還した。
そしてその最前線から数ブロック離れた宙域。
ここでエンドラ級フィンドラはグワンバンへと進路をとっていた。
「終わらせる…この戦い」
「ご主人様、そろそろ?」
「いまは〝少佐″だ。まぁ、行くか。やるのは〝元凶″だけだ。無闇な殺しはしたくねぇ…」
「少佐は背負いすぎです。少佐の本心は…」
「ジゼル。それ以上無駄口を叩くな。俺は…これが正しいことだと思っているからやっているだけだ」
暗い宇宙を見つめたままのグレイブスを見て、ジゼルは光のない目を一点に留めた。
「少佐がどんな心境で今この状況にいるのか。せめて伝えるべきなのでは?」
「無駄口を叩くなと言ったはずだ。お前はいつも母親のようなことを言う。俺はもう戦いを見たくはない。馬鹿なことかもしれない、無謀で間抜けかもな。だが俺は、この命に代えても……ふっ、俺らしくもねぇな」
静かに乾いた微笑を浮かべた彼は、裏切りという大罪を犯した人間とは思えない優しい目だった。
「そんなことありません。少佐は一人ではありませんよ。私も、死ぬまで少佐について行きます」
「今度は恋人気取りか?」
「少佐のことを愛しているわけではありません。少佐の意思に賛同しているまでです」
「かわいくねぇな」
再び微笑を浮かべたグレイブスは、相変わらず光のない目を見つめた。
真空の宇宙に包まれた二人を、暖かな何かが包みこんだ。
「お前は死なないでくれ」
「あなたが死ぬまでは、ですけど」
片隅に煌く星の光。
人類を救う光には、あまりにも儚く脆い。
 
 

 
後書き
私事で更新が遅れてしまい申し訳ありません。
これから少しずつ更新ペースを速める予定です。
よろしくお願い申し上げます。
次回に続きます! 
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