Three Roses
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第二十三話 野心その四
「あの方は孤独な方なので」
「その孤独を癒してくれるからこそ」
「太子はです」
「有り難い方なのね」
「おそらく太子は情も持っておられます」
ただ道具として見てはいないというのだ。
「夫婦として」
「そのこともあり」
「はい、太子をです」
「道具と思われていようとも」
「頼りにされています」
「そうなのか」
「特に」
この側近はマリアにさらに話した。
「太子は側室のお子であられようともです」
「そうね、ロートリンゲン家ではそうした生まれであっても」
「分けられません」
嫡子とだ。
「正統な帝室の方とみなされますので」
「太子自身そうした弟君、妹君がおられるわね」
「そしてそれぞれ婚姻を結ばれています」
皇帝、太子の父が側室達との間にもうけた彼等もというのだ。
「そうした事情がありますので」
「あの方はマイラ姉様の生まれを卑下していない」
「全くです」
それこそというのだ。
「ですから」
「それでなのね」
「はい、ですから」
それ故にというのだ。
「マイラ様は太子を否定しません」
「そうね」
「そう、絶対に」
それこそという言葉だった。
「だからこそです」
「マイラ姉様は太子を頼りにされていて」
「あの方のお話を聞かれるのです」
「そういうことね」
「ですから」
「危ういわね」
マリアはここまで聞いてだった、顔をさらに曇らせた。
そしてだ、側近達に言った。
「私はマリー姉様が女王になられるべきだと思うわ」
「マイラ様よりも」
「あの方よりも」
「あの国はエヴァンズ家の国だから」
それ故にというのだ。
「絶対に」
「マリー様ですね」
「あの方が女王になられるべきですね」
「必ず」
「そうあるべきですね」
「ええ、表立って言うことは出来ないけれど」
彼女が今いる島国と祖国の関係に問題が起こるからだ、今の彼女の立場で言うと。
「マリー姉様であるべきよ」
「ではあの方を」
「支えられますか」
「私の立場で」
そうするというのだ。
「それでいいわね」
「わかりました、私達もです」
「そうあるべきと考えます」
「では」
「その様に動きましょう」
側近達も話す、そしてだった。
マリアはマリーを助けることをあらためて決意した、それはむしろセーラよりも強いものであった。そのうえで。
セーラに文を送った、するとセーラも彼女にすぐに文を返した。
そのやり取りを行いだ、二人共だった。
今彼女達がいる国においてだ、三色の薔薇を見るのだった。
マリーも三色の薔薇を見た、そして。
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