夏の傘
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第一章
夏の傘
一学期の終業式の日だった、しかしこの日その地域は雨だった。それで小学校でも終業式の後クラスに戻ってこんな話をしていた。
「折角今から夏休みなのにね」
「雨なんて」
「がっかりよね」
「早速遊びに行こうって思ったのに」
「プール行こうって思ってたのに」
こんなことをぼやきながら話すのだった。それは可愛凛音も一緒だった。少し垂れ目で細い眉を持っている。髪は黒く肩を覆う位まで伸ばしていて右耳のすぐ近くのところにヘアピンを付けている。小柄でチェックの柄の膝までのスカートが似合っている。四年生である。
凛音は困った顔でだ、クラスメイト達に言った。
「今日何も出来ないわね」
「そうよね、お外では」
「雨だからね」
「遊ぶにしても」
「何しようかしら」
「折角今日から夏休みなのに」
学校が終わればとだ、凛音はまた言った。
「これじゃあね」
「それじゃあね」
女子のクラスメイトの一人がこんなことを言った。
「バスケする?」
「バスケ?」
「バスケなの」
「それする?」
こう凛音達に提案した。
「お外で遊べないなら」
「体育館でなので」
「バスケしようっていうのね」
「どう?」
提案したクラスメイトはあらためてだ、周りに言った。
「お外で遊べないし」
「そうね」
少し考えてからだ、凛音はそのクラスメイトに応え
た。
「それじゃあね」
「いいでしょ」
「うん、お昼までね」
「学校の体育館を借りてね」
それでというのだ。
「そうしよう」
「そうね、じゃあね」
凛音はそのクラスメイトにまた応えた、それも笑顔で。
「私行くわ」
「私も」
「私もよ」
「私もそうするわ」
他の女の子達も乗る、だが男子は。
「どうする?」
「バスケか」
「嫌いじゃないけれどな」
「ドッヂボールの方がよくないか?」
「そうだよな」
「じゃあ両方したらいいじゃない」
凛音は男子達の微妙な顔での言葉にこう言った。
「そうしたらね、バスケの後でしたらどう?」
「ああ、そうするか」
「じゃあな」
「バスケとドッヂ両方やろうぜ」
「そうしような」
「じゃあね、先生のお話が終わったら」
そうしたらとだ、凛音はにこりと笑って応えた。
「皆で一緒に行きましょう」
「体育館に」
「そうするか」
「それでお昼まで遊びましょう」
こう笑顔で言ってだ、そしてだった。
凛音のクラスは先生のホームルームでの注意が終わると体育館の鍵を借りてその中でバスケとドッヂを楽しもうとした、だが。
凛音はここでだ、ふと女子達に言った。
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