| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

英雄伝説 絆の軌跡

作者:フェルト
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第6話 クロスベル

「クロスベルに行ってきますね」

「じー」

「気になるのでしたら一緒に行きますか?」

「別に気になってなんかいないわ。レンにはパテル=マテルがいるんだから」

「まだ何も言ってませんよ」

グランセルでの実験終了後、結社の拠点に居たメルトだがいきなりクロスベルに行くと言い出した。
レンにとってクロスベルはとある理由ありの地だ。そんなレンの様子を見てメルトは声をかけたがあっけなく拒否された。
さて、何故クロスベルへ行くなど言い出したかというと単なるお出かけである。それ以外の理由は一切無い。

「私が一緒にいきましょうか?」

「……その格好でですか?」

そんな様子を影から見ていたアリアンロード。その格好というのは当然鎧である。

「いえ、勿論着替えます」

そう言うと女子更衣室に入るや否や一瞬で出て来た。早着替えではあるがその速度が尋常ではなかった。
メルトとレンが呆気にとられ、アリアンロードは頭上に?マークを浮かべている。

「どうしましたか?」

「着替えるの早すぎるわよ」

「これがデフォルトです」

因みにアリアンロードの格好は白をベースにしたワンピースである。普段の姿からは想像もつかないのは言うまでも無い。
それはともかくクロスベルへ向かったメルトとアリアンロードはいつもなら結社の飛行艇で秘密裏に来るが今回は鉄道で来た。
クロスベルでは身元不明でも怪しまれずに来ることが出来る。それは犯罪歴をもつものでも例外ではない。その為主にマフィアによるミラロンダリング、武器の密輸等が日常茶飯事的におきている。

「さて、まずは何処へ向かうのですか?」

「クロスベル百貨店、その次は面白そうな所を色々と行こうと思ってます」

「ついでにマイスターの所に行くのもいいかもしれませんね」

クロスベル百貨店では1階が日用品売り場、2階が服や宝石等を取り扱っている。メルトは見た目通り菓子作りが趣味である。その腕は天下一品で料理本も出版していたりする。本のタイトルは「フォールドのパティシエへの道」1,200ミラ。売れ行きは好調である。
一通り買い揃え、2階では服屋、宝飾店、靴屋を回ったが特に気にするものは無かったため店を出た。

「また何か作るのですか?」

「そうですね…最近クッキーが多かったので今度はメルト風プリンでも作ろうと思います。リアンさんは食べたこと無かったんですか?」

「残念ながらまだですね。デュバリィから聞いた話では見た目、味共にこの世のものとは思えない味だと聞いたことがあります」

「おだてすぎですよ。ちょっとお試しで出してみたら大好評だっただけです」

メルト風プリンは大きさ以外は普通のプリンである。
メルトが作るプリンの大きさは一般的なプリンの10倍である。
何故その大きさかというとプリンの中に多種多様の果物が入っている。しかもただ入っている訳ではなく果物ごとに味を変えて甘すぎず苦すぎずを保っている。

次に向かったのは歓楽街。ここは建物が目当てではなく屋台である。
隠れた名物と言われるアイス専門店に向かいメルトは3段、アリアンロードはなんと7段乗せた。

「……何ですか。その常識外れな高さは」

「普通ですよ?そんなに珍しいものでもないでしょう」

そう言うアリアンロードは当たり前の様に食べている。一切溶かすことなく食べきりその様子を見ていた周りの人からは惜しみない拍手が贈られた。
アイスを食べ終わり行政区のベンチで少し休憩することにした。まぁアイスを食べてる時点で休憩みたいなものだが。

「ふう…」

「どうしましたか?」

ため息をつくメルト。その顔はどこか心配そうな様子だ。

「レンちゃんの事について少し考えてしまいまして」

「成る程…彼女にとって故郷ですからね」

「個人的に調べているんですけどね」

「何か分かったことでも?」

「実は……」

メルトはレンの両親について一気に話し始めた。
全て聞き終わったアリアンロードはただ一言「全ては彼女次第です」そう話した。
メルトもそう返すことは予想しておりそのまま静かな時が流れた。
時間が流れ夜に差し掛かろうとしたとき、2人は異変に気付いた。

「…リアンさん」

「勿論気付いています」

そう言い終わると2人は示し合わせたかの様に旧市街へ向かった。

「そろそろ出て来たらどうですか?尾行なら気付いています」

「ふん…やはりか」

「行政区から私達を見ていましたね?クロスベル警察捜査一課のアレックス捜査官」

本名アレックス・ダドリー。クロスベルでは名の知れた警察官である。
メルトとアリアンロードは途中で監視、尾行に気付き万が一戦闘がおきても他の区に比べ被害が出にくい様にここまで来た。

「結社の構成員が何をしに来た?返答次第では実力行使も辞さない」

「ただ休暇で来ただけですよ。それとも私達を結社の構成員という理由で拘束しますか?」

「………」

ダドリーは最初から気付いていた。自分では絶対に敵わない事を。それでも警察官として彼は悠然に振る舞う。
暫く話し合いが続きダドリーは今回に限ってはクロスベルで違法行為(身元の改竄はクロスベルでは罪にならない)がないことを確認しこの場を去った。

「意外とあっさり退きましたね」

「我々相手では分が悪いと判断したのでしょう」

「私は兎も角リアンさんにはまず勝てませんからね。私1人だったら危ういです」

「風の剣聖を始めとする遊撃士が複数人いれば分かりません。さて、そろそろ戻るとしましょう」

「ええ」

こうしてメルトとアリアンロードの旅行は終わり帰路についたのだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧