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提督はBarにいる。

作者:ごません
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深酒イクナイ。

 突然だが、読者諸兄は『深酒し過ぎた女子』を見て、どう思うだろうか?オイシイ、と思う人もいるかも知れんが、そんな奴はケンペイ=サンのケジメ案件まっしぐらだ。可愛く寝息をたてたりしていればまだマシな方だろう。大概はそう、目の前にいるーー、

「提督ぅ~、達磨お代わりぃ~。」

 そう、目の前にいるこの『那智』のように、

『めんどくせぇ……』

 と思うだろう。一応本人の名誉の為に言っておくが、那智はそこまで酒に飲まれるタイプではない。寧ろ、鎮守府内でも強い部類に入る艦娘だ。だが、普段から武人然として四六時中気張っているせいか、時たま本人も気付かない内に酒を過ごしすぎる。そうすると普段とは正反対のフニャフニャになった那智が出てきて、これまた普段からは考えられない位に甘えてくる。まぁ、俺の店で二人きりの時位にしか出てこないので、それもまた意地らしく、可愛らしいのだが。

「はぁ。飲みすぎだぞ?今日はもう止めとけ。」

「や~だ~、飲~む~。」

 もう大きな駄々っ子状態。こうなってくると話題は、いつも姉妹達の事だ。

「私は戦う事しか能がない脳筋重巡なんだ。そんな私がMVPを取った時位は飲ませて貰ったって良いじゃないかっ。」

「いや、お前何かと理由つけて毎晩飲んでるからな?それ毎日理由つけて宿題やらない夏休みの小学生レベルの思考だからな?」

 む~、と唸る那智。普段の飲み癖は全く問題ないと言える。寧ろ妹の足柄もメンバーである『残念系美人四天王』の方が毎晩酷い。ただ、たまに出てくるこれを除けば、の話だが。



「だってだって、男は妙高姉さんや羽黒みたいな清楚系美人か、足柄みたいな残念系美人が良いんだろ?私なんて、私なんて……。」

「いや、何気なく妹ディスんなや。てか、今度は泣き上戸かよ。ホントにめんどくせぇな……。」

 と、その時不意に店のドアの扉が開く。そこに見えるのは小さな影。今日始めてこの店に来たその娘を、俺は朗らかに出迎えた。



「こ、こんばんは……。」

「どうした?子供はもう寝る時間だぞ?」

 掴みというか、定番というか。その娘をからかうには一番効果的であろう“子供扱い”をしてみる。

「ちょっと!子供扱いしないでよっ‼暁はレディーなんだからっ‼」

 おぉう、予想通りの反応。ホントにもう、暁はチョロかわだわ。

「それで?今夜はレディーが何用で?」

「あ、あのね?その……明日お休みだから、響達と一緒に夕張さんから借りたアニメ見てたの。」

 オイ、夕張とアニメって単語から物凄ぇフラグ臭がしてると感じるのは俺だけか?

「そそそ、それでね?その内容が……ちょっと…ホントにちょっとよ?恐くて…。だから、気を紛らわす為にお酒飲みに来たの。」

「……因みにだが、何を見た?」

「………学校の怪談。」

 よし、明日夕張はシメておこう。心の中で静かにそう決意する俺。

「仕方無ぇなぁ。んじゃ、お前ら二人にはとびきりのカクテルをご馳走してやる。」 
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