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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第72話:絵の価値は買う側が決めるべきじゃね?

 
前書き
リュカ伝その1と話数だけは並びました。
だから今日が最終回です。



な~んてね! うそぴょ~ん。 

 
(芸術高等学校)
ウルフSIDE

将来有望な本物の画家の卵達と和気藹々と絵画教室を開いていると、大量の絵を抱えたリュカさん等が戻ってきた。
随行した兵士等も持ちきれるギリギリまで絵を持たされ、かなり大変そうにしている。
台車くらい借りろよ……と思ったけど、最後尾から学長が台車に乗せた大量の絵を運び込んできた為、口に出して批難するのは止めたよ。

沢山買い込む必要があるとは思ってたけど、これ程大量に選んでくるとは驚きだ。
お金足りるかな? 3億(ゴールド)持ってきたけども、大丈夫かな?
それともリュカさんの事だから、格安で買い叩くつもりなのかなぁ?

リュカさんは俺の側まで来て抱えてる大量の絵を一旦下ろすと、中から1枚の絵を選んで頭上に掲げ……
「これ、誰の絵?」
と生徒達に質問した。

つられるように俺もリュカさんが掲げた絵を見ると、その絵はピクトルさんの描いたグランバニア城の絵だった!
そう……俺と初めて出会った時に描いてたグランバニア城の絵。
完成して見せてもらった時に、本物の画家の実力を思い知った絵だ。

「わ、私です陛下!」
自分の絵を一番に尋ねられ、雷に打たれたように立ち上がり、震えた声で答えるピクトルさん。
俺の立場上、彼女とは初対面である事を装わなければならない。

「良いねぇこの絵。沢山持ってきた中で一番気に入った絵なんだよ。良ければ1万(ゴールド)で売ってくんない?」
「い、いちまんごーるど!!??」
おいおい、その絵が1万なわけねーだろ……安くても50万はするぞボケ!

「だめ? これが僕の限度なんだけど……」
「い、い、い、1万どころか……1000(ゴールド)だって十分すぎて……」
えぇぇぇ……ピクトルさん。自分の絵を安く見積もりすぎだよ!

「じゃ、決定(けってー)。おいウルフ、1万支払って差し上げろ」
「……了解」
納得いかないのだが、彼女との仲を暴露する訳にもいかず、渋々ながら椅子代わりにしてたジェラルミンケースから1万(ゴールド)を取り出しピクトルさんに手渡す。

「因みに君の描いたソロの絵を見せてよ」
「は、はいぃ……こちらになります!」
俺の価値観より大分安いが、彼女からは高額の泡銭を手に入れ感極まってるピクトルさんは、上擦った声のままリュカさんに先程から描いている絵を見てた。

「……………ソロを描けって言ってんのに、何で台座を先に描いてるんだよ? メインのソロはちょっとしか描いてないじゃん!」
つーかヤバい。愛を感じる……ピクトルさん、俺の事を超格好良く描いてくれてるぅ♥

「ご、ごめんなさい……ウルフさんが格好良かったから……つい……」
「まぁ良いけど……でも上手いなぁ君。 是非ともソロも描き上げて、完成した絵を見てみたいよ」
俺の事は完璧に格好良く描かれてるし、これが完成形でも良くね?

「どう、グランバニアの宮廷画家になってみない? 学生のうちは学業に専念してもらわないと困るけど、片手間で宮廷画家として働いてみない?」
マジでかリュカさん!? ピクトルさんを雇ってくれるの?

「い、良いんですか私で!?」
「うん、良いんだよ君で。でも給料は安いよ。基本給が1500(ゴールド)……画材道具等は経費で請求して構わないけど、僕が描いて欲しくなった絵は、最優先で描き上げてもらう。勿論、描き上げた絵はその都度買い取るから、良い絵を描き続ければお金は貯まると思うんだ」

「それと……宮廷画家には専用の創作部屋を与えるよ」
リュカさんが如何いうつもりでピクトルさんを雇ってくれるのかは不明だけど、これを機会に逢い引き出来る場所(それも近場)を確保しておきたかったので、勝手に部屋を与える事を決定する。

「い、い、い、良いんですか、そんなにまでしてもらって!?」
「良いよ。いっぱい部屋が余ってるから」
マジでか!? 勝手に言っちゃった事なのに、リュカさんも簡単に了承してくれた!

「良いなぁ~ピクちゃん。私も宮廷画家になりた~い♥」
ピクトルさんの隣では人一倍俺に馴れ馴れしく話しかけてきたサビーネことエウカリス・クラッシーヴィが、甘えた声で羨ましがる。……つーかコイツ、ピクトルさんの事を『ピクちゃん』って呼んでるのか? 羨ましいなぁ……

「あれぇ? 何処かで見た事ある女の子だねぇ、君……何処でベッドインした仲だっけ?」
「ベッドインは未だで~すぅ。未来は分からないけど♥」
「お前じゃ無理だ、貧乳キャバ嬢。このオッサンは巨乳好きだ!」

「ああ、キャバ嬢だ! そうだそうだ、前にキャバクラで会ったんだった」
まるで今思い出したように振る舞うリュカさん。
一度出会った女性の事は死んでも忘れない男なのに……如何いう事だ?

「あれぇ? 私の事を憶えててくれたから、この部屋で写生会を始めたんじゃないんですか?」
「ううん、違う。隣の()のオッパイ大きかったから、この部屋に吸い込まれちゃっただけ。……そう言えば名前は何だっけ? 宮廷画家になってもらうのに、名前を聞き忘れてたよ」

あ、拙い……このオッサン、ピクトルさん目当てでこの部屋を選び、彼女の事を宮廷画家にする為に、彼女のサイン入りの絵を選んできやがった。
火縄銃騒動の仕返しに、隠し愛人(※通常愛人は隠す)を近場に置いて、ラブコメ祭りで大炎上させようと画策してやがる!

ヤヴァい……それなのに創作部屋を与えるなんて言い出して、飛んで火に入る夏の虫状態な事をしてしまった!!
しまったぁぁぁ……
城内で安易に合い挽きしようなんて愚かな考えだった!

くっそ~……土曜日以外にもイチャりたいのなら、城下に二人だけの秘密のアパートを借りるしかない!
彼女も城勤めになる事だし、学校と城……あるいは彼女の自宅と城の中間くらいに、格安物件なアパートを探し出さなくては……

「わ、私はピクトル・クントスです。よ、宜しくお願い致します!」
自分のミスと欲望に翻弄されていると、以前に自己紹介した仲なのに忘れられてると勘違いしているピクトルさんが、再度の自己紹介を終えていた。

「あ、私はエウカリス・クラッシーヴィです! 陛下ぁ、宜しくお願いしま~す♥」
「お前は名乗らなくて良いんだよ貧乳キャバ嬢! 宮廷画家に選ばれた者だけが陛下に名乗れるシステムなんだからな!」
何だ、そのシステム? 可愛らしくて図々しいから、思わず虐めたくなる女だなぁ……

「エウカリスかぁ……君の絵は僕が持ってきた物の中にあるの?」
俺の気持ちが解ったのか、クスクスと笑うリュカさんは持ってきた大量の絵を見直しだした。
すると、すかさず学長が「陛下、この絵が彼女の絵です」と、一枚の絵を台車から取り出してリュカさんに手渡す。

「ふーん……この絵かぁ……まぁまぁ良いんじゃね?」
夕日に照らし出されたグランバニア港の絵……
まぁまぁどころか、俺にしてみれば神かと思える上手さだ。

「2000(ゴールド)で売ってくれるんなら、考えても良いよ」
このオッサンふざけやがって……
この絵が2000な訳ねーっての! 俺だったら少なく見積もっても5万……10万じゃ無いと売らないと言われたら、即答で支払う価値がある!

「問題ないでぇ~す」
「じゃぁ決まりぃ~! サビーネちゃんも宮廷画家ね」
おいおい……先刻(さっき)までキャバクラで出会ってた事を忘れてたのに、何で源氏名だけは憶えているんだよ!?

「サビーネじゃありませ~ん。それはお店だけでの名前ですよぉ。画家としてはエウカリスって呼んで下さい♥」
だがしかし、誰もそんな事に気が付いた雰囲気は無い。国王陛下との直接対面に緊張してる所為なのか、はたまた唯の馬鹿共なのか……

「何か女の子を2人も採用しちゃったから、男の子も採用しないと不公平っぽくね?」
「別に良いんじゃね、(やろう)は?」
「「「ブーブー! 宰相閣下の性差別だ!!」」」

リュカさんの珍しい男採用案に思わず否定的意見を述べると、室内の男子生徒らから一斉にブーイングが巻き起こる。
「黙れ童貞共! 俺様の愛人候補に成り得ない者は不要なんだよ!」
男子達も冗談だと理解して笑っているので、俺も悪のりしてしまう。

「あれ? そういう事を決める集まりだったけ……これ?」
「え……違ったんですか? 俺はてっきり、その巨乳美女を選んだ時から、新しい愛人を探してるんだなぁと思ってましたけども」
あぁどうしよう。(すげ)ー楽しくなってきた。生徒達が俺とリュカさんの冗談合戦を楽しそうに見ているよ。

「私も陛下の愛人選考会だと思ってたー♥」
「そうだよな、エウカリス。だから序手でに俺の愛人も選ぼうと思ってたんだよ。なるかエウカリス……俺の愛人に?」

「誰がお前の愛人になんてなるか!」
「グランバニア王国の宰相閣下の愛人だぞぅ」
「黙れ平宰相!」
「何だよ『平宰相』って!? 新しい言葉だな」

「閣下ぁ、俺は平宰相の愛人でも良いっすよ」
俺とエウカリスの遣り取りが白熱してきた所で、男子生徒の数人から馬鹿丸出しの発言が飛び込む。
「何だお前ぇ~、ソッチの趣味があったのか?」
そして当然の如く、同級生からのツッコミ。

「ねーけど楽した人生歩めるのなら、ソッチの趣味に目覚めるね!」
「バカヤロー! 俺の愛人が楽な訳ねーだろ! ちょー扱き使ってやる……ってゆーか、愛人になるのなら、まず玉取れ! 竿もな!」

「え、ダメっす! そんな事したら俺の彼女が悲しむっす!」
「はぁ? 彼女って右手か? それとも左利きかお前は?」
ゲラゲラ笑って男子学生を指差すと、リュカさんが俺だけに聞こえる小声で話しかけてきた。

「アイツ彼女居るよ。お前の浮気相手の隣人さん……」
笑いが引き攣ったね。
だって、それってばリューナ嬢の事だもの!

「お前面白いな。お前の描いた絵は、この中に在るのかな?」
俺の思考が停止してると、ストックしてある絵を探り始める。
そして程良く学長が3枚の絵をリュカさんに手渡した。

「うわっ、(すげ)ー……これ、君が描いたのかい?」
「は、はい。3枚とも俺の作品です」
並べられた3枚の絵は、どれも幻想的で美しい。

俺が見たまましか描けないのと反対に、彼の絵は完全に想像だけで描かれている。
星空煌めく海面からイルカが3匹飛び跳ねている絵……
沈みきる直前の夕日をバックに、浅い水辺を駆ける白馬の絵……
森の中に存在する滝を背景に、雄々しいホワイトライガーが描かれてる絵……

「何かラッセンみたいな絵だなぁ……」
「は? 俺の名はラッセルです。ラッセル・クリステンセンっす!」
ラッセンって何だ? またリュカさんの前世の情報か?

「よし決めた。おいラッセン」
「ラッセルです」
「うん、それ。兎も角お前の絵を3枚1万(ゴールド)で買い取ろう。どうだ?」
「異論はありません陛下!」

「それと性格が気に入ったから、ラッセンも宮廷画家にする」
「陛下、俺の名前はラッセルです」
「あれ? ラッセンを宮廷画家にしたいんだけど……」
「はい。僕は今日からラッセンです!」

ラッセル改めラッセンも宮廷画家に仲間入り……
コイツは今後リュカさんからラッセンとしか呼ばれないんだろうなぁ……

ウルフSIDE END



 
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