Three Roses
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第二十一話 地位と力その七
「絶対にだ、しかしだ」
「旧教徒達の力もですね」
「バランスよく配していかないとならない」
「しかも旧教優位にはさせない」
「それが為に」
「そうだ、何としてもだ」
絶対に、というのだ。
「新教と旧教のバランスを守る」
「では宮廷は、ですね」
「侍従長は、ですか」
「旧教から出しますか」
「そうされますか」
「そうしよう、太子は隙があれば両方を手に入れにかかる」
太子の考えを読んでいた、王はそこからも考えているのだ。
「二つの席をな、しかしだ」
「一つですね」
「宮廷を渡して」
「そして、ですね」
「予算は渡さない」
「そうされますか」
「絶対にな、そうしよう」
王は先に手を打つつもりだった、そして実際にだった。
宰相と内外の大臣にそれぞれロドネイ公とグラッドソン大司教、デューダー卿を任じてだった。財務の大臣にキャスリング卿を任じてだった。宮廷は。
「私が侍従長兼任で、です」
「宮廷のだな」
「大臣になりました」
司教は太子に話した。
「そうなりました」
「そうだな、私としてはだ」
「予算もですね」
「手に入れたかったが」
「若し予算も手に入れておきますと」
司教も話す。
「それだけです」
「大きかったな」
「はい、軍と宮廷と」
「予算もとなるとな」
「我々が新教徒達を凌駕していましたが」
「妃を玉座に就けるにもな」
「強い力を持てましたが」
それがというのだ。
「王もです」
「それは読まれているな」
「はい、お流石です」
「王はわかっておられる」
太子はにこりともせず言った。
「我々の考えもな」
「既に」
「そうだ、だからだ」
「先に手を打たれましたね」
「そしてだ」
「予算は新教徒達のものですか」
「キャスリング卿とはな」
太子は彼の名前を出してだった、そのうえで。
険しい顔になってだった、司教に言った。
「まさかだ」
「あの方を大蔵卿とは」
「それで調べたが」
「はい、あの方は生粋の軍人ですが」
「財政についてもだな」
「非常に優れた方です」
「そうだな、自身の領土の財政を即座に立て直した」
太子はこれまでキャスリング卿を純粋な軍人と考えていた、だが実はそれだけの人物ではないことを知ったのだ。
「優れた財政家だ」
「そうなのです」
「迂闊だった、彼はそうした人物とは」
「この国でも気付いている方は少ないです」
「しかしだな」
「はい、財政家でもあられるので」
「その彼に財政を握られた」
即ち国庫をだ。
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