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ソードアートオンライン 孤独者と闇裂く対剣

作者:香月
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第一部
第一章
  悪魔の手紙 魔王からの贈り物

「椿~!宅配便~!」
「さんきゅー!ちょっと待っててくれー!」

木綿季と藍子と出会い、かれこれ二年ほど経過した。
小さかった背丈もぐんと伸び、男女の見分けもハッキリ着くようになり、互いに異性を意識するであろう年頃の筈なのだが、未だに兄弟のような生活を続けていた。
この二年で二人の両親のことを知り、僕は自らの境遇を話した。
多少は驚いていた、しかし、態度は変わらなかった。
俺も同じだ。
木綿季たちの親は出張診療所を営んでいるらしく、二人をここに置いているらしい。
たまに帰ってきては二人にお土産やらお出掛けをしていた。が、俺は二人の親に気に入られたらしく、一年ほど前から家族の時間にご一緒している。二人からは物理的にも精神的にも沢山の物を貰った。
家族の温もりや、誕生日に誰かといる喜び。皆でクリスマスや年末年始を過ごす楽しみ。
他にもあるけど、言葉じゃ言えねぇや。

「ほいほいっと。なんですかー?」

「お届け物っす~、アーガスの社長さんからっすね~。あぁ、代金はいいっすよ。もうもらってるんで~。」

「は、はぁ。」
俺はサインと判子を押して荷物を受け取り、宅配便の兄さんを見送った。
「ねぇ、椿~!なにが届いたの~?」
「ちっと待ってろ。すぐ開けるから。」
ビリリ、とカッターナイフで段ボールを切り開けていく。
無駄にでかいと思っていた段ボールからは三台のヘッドギアとカセット、手紙が入っていた。
不意に、「ああっ!これ、ソードアートオンラインだ!」
木綿季の声、
「すごい...」
と藍子の声が響いた。
「多分、僕たち三人ぶんをくれたんだな。持っていって良いぞ。」

「わーい!」と木綿季は走り出し、自室へ入っていった。藍子も木綿季を追い掛けて行った。

「さて、と。」
ビリリ、と封筒を破る。すると、手紙がついていた。
このご時世に鉛筆書きの手紙かよ、と、アイツにも律儀な所があるんだなぁ、と思う。
「えっと、...」

拝啓、篝火椿様。
突然手紙を出してすまない。
最初は電子メールで済ませようとしたのだが、鉛筆書きにしてみた。
お前がお前の母親と縁を切ってもう三年以上経ったな。
うちの親父の女遊びのせいで、お前にも迷惑を掛けてしまった。
本当にすまない。
御詫びと言ってはなんだが、ナーヴギアをお前の友達三人ぶんと、カセットも同封しておいた。
やりたいと思うのであればプレイをしてくれ。

最後にひとつ、これはゲームであっても、遊びではない。
これだけは心に留めておいて欲しい。

茅場昌彦



稼働日は今日か。じゃあ早速...っと、返事しとかないとな。

ありがとう。早速やらせてもらうよ。
昌彦兄さんもやるんだったら一緒にやろうな。

送信っと。よし、それでは...

そそくさと自身のベッドに駆け込み、取り扱い説明書を読む。
すると、どたどたと足音が近づいて来た。木綿季たちだ。
「ねぇ!プレイヤーネームどうするの?」
なるほど、用事はそれか。
「お前らなぁ、ノックくらいしろよ。俺が何かしてたらどうするんだよ。」

「な、なにかって...」
急に俯いて頬を紅く染める藍子。成る程、最近の中1はませているっと。メモメモ。
「ん?なにかってなぁに?」
おぅ、やっぱりこいつは鈍感さの塊。やっぱりコイツら正反対だよなぁ。
「なんでもねぇよ。それより、プレイヤーネームだっけか?」
「うん。なんかはぐらかされた気がするけど、良いや。」
「椿くんが...この部屋で...ナニを...」
「おい、藍子。妄想から戻ってこい。」
カセットのケースでコツン、と頭を小突いてやる。するとこいつは、あう!と言ってうずくまる。
俺はこいつのこんな仕草が小動物っぽくて可愛いと思う。
「で、お前らはどうするんだ?完璧な思いつきでやるのか?それともリアルネームにするのか?」
「んー?ボクは普通にリアルネームかなぁ。楽だし、聞き慣れてるしねぇ…。姉ちゃんは?」
「私は本名かえるだけかな?藍子の藍の読みを変えてラン。」
「俺は普通にツバキかな?」
「よっし!じゃあ、最初の町の近くの武器屋に集合ってことで!またねー!」
ダッシュで自分の部屋へかけ戻って行く木綿季。その姿を見て藍子がため息をつく。
「かわんねぇな、ホンットに。」
「ホント..迷惑かけてごめんね?」
「良いって。もう妹みたいなもんだしな。」
「そう、じゃあ私はお姉さんかな?」
「ああ、手のかかるドジッ娘の、だけどな。」
「ふふ、そうかもね。じゃあ、またあとで。」
微笑みながら駆けていく藍子を見送り、ナーヴギアを頭に嵌めた。
「リンクスタート」
呟く様に口に出し、目をつぶった。
ふわり、と体が浮くような感覚と同時に、世界が暗転する。
これから、物語が始まるのだ。
 
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