とある科学の裏側世界(リバースワールド)
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second contact
ep.024 殺人鬼は静かに迫る
例の死体を見てから数日後。
仁は佳奈にその事件を隠し、独自に行動を始めていた。
とは言っても、頼れる宛は"桐崎"か"向子さん"以外に存在しない。
『佳奈を巻き込むなんてできない.....他に何か手を打たないとマズイ.....よな。』
仁はグッと考えこんだ。
しかし、佳奈はそんな仁の思考すら分かってしまう。
「仁、何か考えてるんでしょ?」
「なんでだよ?」
「いつも悩んだり、難しいこと考えてると眉間のところを摘む癖があるもの。」
仁はつくづく幼馴染であることを思い知らされた。
そして、話すことを拒もうとする自分が嫌になり、そっぽを向いてしまった。
「ねぇ、仁。」
「ん?」
佳奈の呼び掛けに応じようと振り向くと、佳奈は抱きついてきた。
「な!?.....なにしてんだよ....おい!..佳奈!?」
頬を赤くする仁に対して、佳奈は仁の耳元に口を近付けボソボソと呟くように仁に語り掛ける。
「仁のくせに...私のこと気遣うなんて生意気。」
「はぁ?」
「私は、あなたを支えるのが役目だと思ってる。 だから同じ組織で一緒に居るの。 あなたが私を気遣うなんてしなくていいの。」
「でも......。」
佳奈からすれば、仁という人間はつくづく素直で、隠し事が苦手で、そのくせ他人に迷惑を掛けないように振舞っている。
いわば、強がり屋さんなわけなのだ。
「むしろ、幼馴染なら巻き込んで欲しいの。 じゃないとあなたを助けてあげられないもの。」
佳奈は子どもに囁くように優しく言い聞かせる。
仁も佳奈に優しく言い寄られ、口を開く。
しかし、あと一歩のところで躊躇した。
仁は佳奈に見えないように顔を伏せ、静かに言った。
「いや、なんでもない....ホントに...なんでもねぇよ。」
仁は罪悪感に押し潰されそうになり、それが怖くなって"気分転換"と言って外を出た。
外の天気はまるで仁の心の中を表すように雨だった。
その頃ー
叶瀬 叶は例のGPSをもとに仁の居場所を特定し、先ほど出て行くのを確認した。
『この天気に俺と出会うなんざ、野郎も運がねぇってもんだよな。』
叶瀬はレインコートを深く被り、仁を追跡し始めた。
メラメラと湧き上がる殺意や殺気を押し殺しながら、ただ目と鼻の先にある獲物を仕留める。
「ねぇ、叶。」
「どうしたんだ比屋定。」
こんな時に叶瀬に気さくに話し掛けるのは比屋定 時雨という少女だ。
殺人鬼の集まりのような組織の中で、彼女はいわゆる"頭脳"担当で、叶瀬の性格も彼女というセーブが付いて幾らかはマシになっている。
「すぐに殺っちゃだめだよ。 せっかく生きてる人なんだから殺る前に情報を吐かせなきゃ。」
「分かってるよ。 適当に半殺しにしてから情報を吐かせて、その後に始末する。」
つまり、どうであれ初めから生かすつもりなどないということだ。
しかし、これ以上の情報漏洩を防ぐには、それが最善の手だった。
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