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クローンといえど

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第二章

「わかりました」
「反対なら協力せんでいい」
「はっきりと申し上げますが」
 実際に山村は博士に言った。
「反対ですので、私は」
「協力はせんか」
「マザー=テレサやシュバイツァーのクローンなら賛成していました」
 こうした偉人達の場合はというのだ。
「ですが」
「ヒトラーやスターリンならだな」
「協力しないというか出来ないです」
 絶対にという言葉だった。
「正直何を考えておられるのか」
「わからないというか」
「そうです、そんなことを考え実行されるから」
「マッドサイエンティストと呼ばれる」
「そうなってるんです」 
 博士に忠告めいて言った言葉だった。
「しかもそれを楽しんでますし」
「安心せよ、わしの閃きは神の啓示だ」
「悪魔の囁きでなくて」
「これでもわしは信仰心はある」
 敬虔なプロテスタントの信者でもある、ルター派である。
「悪魔の囁きは見破れる」
「ヒトラーやスターリンという時点で」
「まあ見ておれ、わかる」
 博士は山村に絶対の自信を見せていた、そして実際にだった。
 ヒトラーやスターリンのクローンを造った、服装まで歴史にある通りで山村は二人の口髭が特徴な顔を見て言った。
「もう見るからにです」
「独裁政治をしそうか」
「はい、そして」
「粛清、虐殺か」
「侵略戦争しますよ」
 生存権の確立だの共産主義の拡大だの言ってというのだ。
「それで何千万と殺しますよ」
「政権に就けばそうなるか」
「それこそちょっとでも政治に関わりますと」
 もうその時点でというのだ。
「二人共二十年とかからないうちにその国の独裁者になりますよ」
「ヒトラーもスターリンもそうだったな」
「残念ながら政治家として必要な能力は全部ありましたから」
 ヒトラーにもスターリンにもだ、勿論ムッソリーニにもだ。だから独裁者になれたのだ。
「もう」
「ではこれからな」
「これから?」
「ムッソリーニも生み出し」
 もう一人の独裁者の彼もというのだ。
「そして教育をはじめよう」
「教育、ですか」
「そうだ、教育だ」
 それをというのだ。
「していこう」
「ヒトラーやスターリンにですか?」
 怪訝な顔になってだ、山村は博士に問うた。
「教育ですか」
「うむ、聖職者になる様なな」
「あの、ヒトラーやスターリンですが」 
 博士に怪訝な顔のまま再び言った。
「とても」
「彼等は生まれたばかりだ」
 服は着ているが、というのだ。
「ならば何も知らない」
「クローンでも、ですか」
「そうだ、彼等は生まれたばかりだよ」
 ヒトラーもスターリンもというのだ、博士は山村に平然として答えた。
「では何も知らなくて当然ではないか」
「それは」
「私は彼等に何の記憶も与えていない」
「真っ白ですか」
「そう、タブラ=ラサだよ」
 サルトルの哲学に出て来る言葉も出した、博士は哲学は専門外であるがそれでも彼の著作を読んでいて知っているのだ。 
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