聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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425部分:第五十八話 高山にてその七
第五十八話 高山にてその七
「しかしだ」
「しかし!?」
「そこで何かあるのですか」
「その通りだ。それも後でわかる」
ここでも最後まで言おうとしないミロだった。
「後でな」
「左様ですか」
「後で、ですか」
「そうだ。少なくとも今ではない」
こう言ってそれをよしとするミロだった。
「囲ませるのだ」
「はい」
「わかりました」
黄金聖闘士の言葉は絶対である。それ以上のものは聖域においては教皇の言葉以外にはない。アテナを除いては、であるが。
そしてだった。彼等はそれ以上にミロを信頼していたのだ。黄金聖闘士として以上に彼を聖闘士として、そして人間として。だから頷いたのである。
「それではここは」
「囲ませましょう」
「どうやらインプ達だけではないな」
近付いて来る小宇宙からそのことも察するミロだった。
「四人いるな」
「四人!?」
「といいますとまさか」
「そうだ、そのまさかだ」
ミロの言葉は鋭くなる一方だった。それは明らかに戦う者の言葉であった。
「狂闘士達もいる」
「その七十二柱の魔神達がですか」
「あの連中も一緒に来てるってわけですか」
「来るのも当然だ」
だからといって驚くことのないミロだった。
「それもな」
「ですがミロ様」
「連中の強さもまた」
「敵がどれだけ強大であろうとも」
だがミロはここでもあえて言うのだった。
「聖闘士は退くことはないな」
「では」
「その者達も共に」
「倒す」
今度は一言であった。
「共にな。そのつもりだ」
「そうですね」
「来るからには」
彼等もミロのその言葉を受けてであった。完全にその意になった。
「やりましょう」
「その四人の狂闘士達もまた」
「そういうことだ。さて」
ミロの言葉の緊張が最高潮になった。するとだった。
周りの岩山のあらゆる場所に彼等が姿を現わしてきたのだった。禍々しい赤い戦衣をその身にまとった彼等が。遂にミロ達の前に出て来たのであった。
「スコーピオンのミロだな」
「如何にも」
その中にいる一人の殊更に禍々しい形状の戦衣の男の言葉に応えた。
「俺がそうだが」
「そして他に六人か」
「数は合っているな」
「確かに」
男の横にいる三人も続いてきた。彼等は今その山のところからミロ達を見下ろしている。そのうえでの言葉だった。
「七人の聖闘士」
「そして中心にいるのはスコーピオンのミロ。情報通りだ」
「ただの偵察というわけではないだろう」
ミロはその四人を見上げながら彼等に問うた。それは他の聖闘士達も同じである。
「このミロの首を取りに来た。そうだな」
「ふふふ、そうだ」
その男が不敵な笑みと共に彼に応えてみせてきた。
「その通りだ、スコーピオンよ。しかしだ」
「しかし。何だ?」
「それだけではない」
彼はこうも言うのだった。
「それだけではな」
「どういうことだ、それは」
「スコーピオン、貴様だけではないということだ」
彼はミロ以外の六人も見ているのだった。
「貴様だけではな。つまりはだ」
「俺達もか」
「そういうことかよ」
「その通りだ。貴様等全て討ち取る」
彼は今度は悠然と笑っていた。下からもそれははっきりとわかった。
「それを今告げておこう」
「貴様の言いたいことはわかった」
ミロは一応それは受けた。
「それではだ。今度は俺が貴様等に問う番だ」
「ほう。何を問うというのだ?」
「貴様等の名を聞いておこう」
名前を聞くというのだ。彼等を見上げたうえで。
「その名は。何というのだ」
「我が名か。では名乗ろう」
狂闘士達の中心にいるその男はここで答えてきた。
「我が名はフォルス」
「フォルスというのか」
「そうだ。侯爵、アガレスのフォルス」
今度はその爵位と司る魔神の名も告げてきたのであった。
「その名、よく覚えておくことだ!」
赤い髪に黒い目をした濃い眉の男だった。その男が今ミロに対して答えた。これがこの盆地での戦いのはじまりの合図となった。
第五十八話 完
2009・10・4
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