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聖闘士星矢 黄金の若き戦士達

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410部分:第五十六話 ミロ出陣その七


第五十六話 ミロ出陣その七

「ニンフ達までもな」
「天界にあっても海界にあっても人界であっても」
「アーレス様は愚弄されてきました」
「アーレス様の御考えがわからぬ故にじゃ」
 エリスの言葉がさらに忌々しげなものを語るものになっていた。
「それ故にじゃ」
「オリンポスでも他の神々に愚弄され続け」
「そして天闘士からアーレス様の下へ入った我等も」
 ここで狂闘士達の由来も語られた。彼等は元は天界の闘士達だったのである。しかしアーレスの下に参じたことにより狂闘士となったのである。
「また愚弄され続けました」
「愚か者達によって」
「しかし」
 ここでエリスの言葉がさらに鋭くなった。
「それも終わりじゃ」
「その通りです」
「今から」
 八大公達もそれに続く。エリスと彼等の考えは見事なまでに一致していた。
「破壊され尽くしそのうえで創り出される世界こそが我等の世界です」
「新たな世界こそが」
「まずは聖域を滅ぼす」
 エリスの言葉はまさにトラキアの戦略目的そのものだった。
「そのうえであらたな世界をじゃ」
「はい」
「それでは」
「頼むぞ」 
 一言であった。
「まずはサリアよ」
「はい、私はこのまま行かせて頂きます」
 サリアはすっと立ち上がった。エリスはその彼を見て他の者にも告げた。
「それではこれで話を終わる」
「はい、わかりました」
「では」
「それぞれこの城を護るがいい」
「それについてですが」
 ここでサリアが言ってきたのであった。その出陣する彼がである。
「エリス様」
「どうしたのじゃ?」
「一つお伺いしたいことがあります」
 サリアが問うのはこのことであった。
「これまでトラキアには狂闘士達が全て揃っていましたが」
「うむ」
「ですが今はです」
 サリアの言葉が警告する類のものになっていた。それはエリスに対する忠告としての意味だけでなく八大公の同志達にも告げた言葉であった。
「聖闘士達との戦いで多くの者が倒れております」
「そのことか」
「それにより護りがかなり減っていますが」
「確かに」
「それは」
 他の八大公達も既に立ち上がっていた。そうしてそのうえで彼の言葉に応えるのだった。
「このままではやがて護りは我等だけになります」
「流石に八人だけでは」
「それもじゃ」
 しかしここでエリスは落ち着いた声で彼等に告げるのだった。
「心配することはない」
「心配することはないのですか」
「それでは」
「ハーデス様のことを思い出すのじゃ」
 エリスが名前を出したのは彼であった。その冥府の世界の支配者である。
「あの方は死した冥闘士達を蘇らせることができたが」
「それですか」
「それではまさかアーレス様もまた」
「左様、おそらく戻られた時にはじゃ」
 言葉が笑っていた。それだけでなく顔もだ。
「これまで倒れた者達も蘇らせることができる」
「そうですか、それでは」
「あの者達が再び」
 彼等はそれぞれ笑顔になった。それはこれからのことを思い期待に胸を動かしている笑顔であった。
「現れたとなると」
「我々にとっても願ってもないことです」
「そうであろう。それは我にとってもじゃ」
 それが期待すべきことであるのはエリスも同じであった。彼女にとっても狂闘士達は自らの手足でありかけがえのない存在であるからである。
「願ってもないことじゃ」
「ですから。是非共アーレス様を」
「そしてそのうえで決戦ですね」
「如何にも。まずはアーレス様じゃ」
 何につけてもであった。アーレスの復活こそだった。
「そうすれば我等の願いは思うがままじゃ」
「では。私はその為に」
 ここでサリアはその口元を楽しそうに笑わせていた。
「これからアンデスに向かいます」
「うむ、それではな」
「はい」
 こうしてサリアは何の不安も気兼ねもなく意気揚々とアンデスに向かうことができた。戦いは古き世界においても行われようとしていた。


第五十六話   完


                 2009・9・25
 
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