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聖闘士星矢 黄金の若き戦士達

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409部分:第五十六話 ミロ出陣その六


第五十六話 ミロ出陣その六

「御前達の戦いをな」
「そしてそれが激しければ激しい程」
「アーレス様の御気に召されれば」
「アーレス様の御力となる」
 こうも彼等に対して告げてみせたのであった。
「既に封印を解く用意もしてある」
「それもですね」
「あの方々の封印も」
「その通りじゃ。あの者達が戻ればじゃ」
 エリスは声を笑わせてきた。まるで血を飲みその味を楽しんでいるかのような。そうした不気味な笑みを浮かべての言葉を出すのであった。
「我等はまた一つ大きな力を得る」
「そのうえでアーレス様が戻られれば」
「我等の勝利は決まったも同じ」
「天皇ゼウス」
 まずエリスが名前を出した神は彼であった。オリンポス、そして天界を治める至高の神の一人であす。
「そして海皇ポセイドン」
「はい」
「あの神もまた」
「そして我等が盟友でもある冥皇ハーデス様」
「その方々にも比肩する御力を」
「アーレス様こそが」
「アテナなぞ」
 アテナに対しては忌々しげな口調であった。アーレスの父であるゼウスや叔父であり海を治めるポセイドンに向けたある程度の敬意は彼女には見せないエリスであった。
「何程のことがあろうか」
「全くです」
「戦いとは攻めそして破壊し尽くすもの」
 何処までもそれを追い求める彼等であった。
「そのうえで新たな創造があるものです」
「創造、調和、そして破壊」
 ヒンドゥーにもある三つのサイクルであった。インドではこの三つが循環してそれにより世界が成り立っていると考えられているのである。
「我等はその破壊を司るのですから」
「それにです」
 彼等のその言葉は続く。
「それから行われる創造こそが至高のものだというのに」
「我等による世界、即ち」
 彼等の口元が一斉に笑った。そうして出される言葉は。
「力により治められる世界」
「それこそが至高だというのに」
「アテナには所詮わからぬことなのであろう」
 エリスの言葉はここでもアテナを否定しそのうえで嘲笑したものであった。
「調和だけを重んじるあの女神にはのう」
「調和は何も生み出さぬもの」
「そこからは何も生まれ出ることはありません」
 彼等はこう考えているのであった。このことに対して他に思うことはなかった。
「ですから」
「我等はここで」
「この世界を一度全て破壊する」
 エリスは高らかに八大公達に告げた。
「そのうえでじゃ」
「我等の至高の世界を築きましょう」
「力が支配する世界を」
「即ちアーレス様が治める世界」
 とどのつまりはそうなのであった。彼等が崇める絶対の対象はアーレスを置いて他にないからだ。彼等にとってはまさにアーレスこそが至高神なのである。
「その世界が生まれるのじゃ」
「アーレス様が正義であり」
「そして秩序であられる世界が」
「思えば」
 ここでふとその目を遠くさせるエリスであった。そこに映っているものは栄誉ではなかった。むしろ過去の屈辱と恥辱であった。
「我等は長きに渡って愚弄されてきた」
「その通りです」
「忌々しいことに」
 八大公達の言葉がここで苦いものになったのだった。
「アーレス様は天皇ゼウスとその正妻へラの子」
「嫡子と言ってもよいというのに」
「しかし多くの者はアーレス様を愚弄した」
 それは神々だけではなかった。人間達もだったのだ。人間達はアーレスのその血生臭く殺伐として直情的な気質を忌み嫌いそのうえ愚弄してきたのである。
 
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