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ラブライブ! コネクション!! Neutral Season

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Unseal Operation (グランドプロローグ)
  活動日誌- み・はミュージックの・み! 5

「……意見はそれで終わりなのね?」
「「……はい!」」
「そう……わかりました」
「「…………」」
「……そうねぇ? とりあえず学院の運営に関わる話だから――理事会と……次の職員会議にでも私からの議題として取り上げておくことにします」
「「――えっ?」」
「その為の議案を提出してちょうだい? そこで理事会と先生方からの了承が得られたら、生徒会としての臨時総会を開くこと。そして全校生徒の信任投票によって正式に決定と言う形で良いですね?」
「は、はいっ! お願いします……」
「…………」
「「――ありがとうございます!」」
「まだ決定した訳ではありませんよ? どうなるかは、あなた達次第ですからね?」
「「――はい」」

 南女史は彼女達を見つめて、追加で提示する意見の有無を訊ねる。
 穂乃果と絵里は互いを見つめて頷くと、その言葉に肯定する。そんな彼女達を見つめて了承すると――
 2人の意見による回答を話し始めた。その言葉に驚きの声をあげる2人。
 とは言え、理事長権限で即採用されると思っていた訳ではない。むしろ2人は逆のことを考えていたのだった。
 
 確かに今回、ご褒美としてリボンのことを提示した。それは採用してもらう為――懸念を解消する為に提案したことだ。
 しかし2人とも『1回で事が足りる』などとは思っていなかった。何故ならば『世の中がそんなに甘くない』と言う現実を経験して知っているのだから。
 だから今回はあくまでも『自分達の意見や想いを知ってもらう為』に提案をしたこと。
 反対されても何度でも立ち上がって自分達の信念を押し通す――そんな風に考えていたのだった。
 しかし南女史の口から出てきた回答は、言わば肯定の意味を含ませた正式な手順である。
 もちろん理事にしろ職員にしろ生徒にしろ、了承が得られなければ却下をされる。
 だが少なくとも南女史は肯定の意を唱えているのだった。

 自分の名前で議題をあげると言うこと。それは決して悪い意味ではない。
 南女史はこの学院の理事長である。その彼女が自分の名前で理事会と職員会議に取り上げると言うこと。
 それは自らが矢面に立って全ての責任を被ろうとする意志と、彼女達の意見を通したいと言う想いの表れ。
 そして、強大な影響力と発言力を持つ彼女が導き出した最善策なのである。
 確かに絵里も穂乃果も生徒会長として影響力は高いだろう。スクールアイドルとして人望も厚いだろう。しかしそれは生徒としての影響力や人望だ。
 彼女達には申し訳ないが、南女史と彼女達では圧倒的な差が生じるのは紛れもない事実なのだと思う。
 それに、如何に学院の為に行う改革だとしても快く思わない人物もいるかも知れない。そんな火の粉を生徒達へ向けさせる訳にはいかない。
 すなわち2人の意見に賛同した上で、彼女達へのマイナスイメージを持たせない為。
 そして少しでも優位に事を運べる様に考えての提案なのであった。
 
 当然、穂乃果と絵里には南女史の心意は伝わっているだろう。
 元より断られることを前提に考えていたところへ突然差し出された救いの手なのだ。
 穂乃果は彼女の言葉に頭を下げながらお願いをした。そして頭を下げた状態で隣の絵里に視線を向ける。
 すると、同じ目の高さで自分を見つめる絵里の顔が映るのだった。
 2人は同時に微笑みを交わして頭を上げる。そして南女史の顔を見つめて満面の笑みを浮かべて口を揃えて感謝の言葉を伝えるのだった。
 そんな2人を眺めながら一瞬だけ優しい微笑みを浮かべる南女史であったが、すぐに苦笑いの表情に変えて決定ではないことを念押しする。
 その言葉にやる気と希望に満ち溢れた表情で返事をする穂乃果と絵里なのであった。

「……では、私からの話は以上です。もう退出しても構いませんよ?」
「……それでは失礼します……」
「失礼します……」
「――そうそう、高坂さん?」
「――はい」

 正式な議題として提出する案件についての説明を始めた南女史。穂乃果と絵里は、それを真剣な表情で聞きながら1歩進めている実感に心が暖かくなっていたのだった。 
 説明を終えた南女史は退出しても良いと彼女達に促した。
 穂乃果は絵里に目配せをして一緒に理事長室を出ようと踵を返す。
 しかし突然、思い出したかの様に穂乃果を呼び止めた南女史の声に彼女達が振り向くと――

「さっきの発言……あんな風に生徒会長挨拶でも発言できていれば良かったわね?」
「あははははぁ……すみませんでした!」
「……今年の生徒会も前年同様に安泰なのかも知れないわね? 前生徒会長さんも、しっかりフォローお願いね?」
「はい、任せてください!」

 優しい微笑みと共に、先ほどの発言への感想を生徒会長挨拶を踏まえて述べた。
 その言葉に乾いた笑いを奏でて、再び頭を下げて謝罪をする穂乃果。
 そんな彼女を微笑みながら見つめ、新旧生徒会長の力量を高く評価していることを遠まわしに口にして、絵里を見つめながらサポートをお願いする。その言葉に新しい責務を感じた絵里は希望に満ちた表情で南女史へと返事をするのだった。

♪♪♪

 こうして無事に理事長への提案を済ませ、正式に学院の議題として通ることとなった――
 絵里の抱いていた懸念。絵里と穂乃果の提案した『制服のリボン』と言う問題。
 絵里達が南女史へと提案した日から数日後。南女史は理事会と職員会議にて、自分の議題として取り上げた。
 彼女の提案として打ち出された案件に理事会と職員――誰も異を唱える者はいなかった。こうして運営面での憂いは取り除かれたのである。

 その朗報を南女史の口より聞かされた数日後、正式に開かれることとなった臨時総会。
 全校生徒の前で穂乃果と絵里は『この学院における学年固定のリボンの意味』と『世代別に変える意味』――
 そして『託した想いと繋いでいくことの意味』について発表したのだった。
 元々、生徒達の人望も厚く影響力も高い彼女達。
 リボンについて薄々懸念を抱いていたが口に出せずにいた生徒がいたのかも知れない。彼女達に言われて初めて考えた生徒もいたのかも知れない。中には彼女達が提案したからと言う理由もあったのかも知れない。
 しかし、ほとんどの生徒の心には彼女達の伝えたい想いが届いていたのだろう。
 彼女達の議案は信任投票の末、規定を大幅に超える得票数により、正式に来年度からの実施へと繋がったのだった。

「――やったよ、穂乃果! 議案が正式に通ったよ! おめでとう、穂乃果……そして、絵里先輩!」

 開票結果をアイドル研究部の部室で不安を抱えながら待っている穂乃果と絵里。
 そんな彼女達の周りには海未とことりを除くメンバーが寄り添っていた。
 臨時総会を終えて、投票を済ませた時点で放課後に切り替わった本日。
 既に部活や下校を始める生徒達により弱冠静けさを感じる校舎であった。
 そんな彼女達の集まる部室へ駆け込んできたヒデコが、嬉しそうに穂乃果と絵里に声をかけた。
 そう、今回は穂乃果と絵里が発案をしているので、穂乃果は生徒会として開票には携われない。
 その為、副会長の海未が先頭に立ちことりと――お願いをしてヒデコとフミコとミカに手伝ってもらっていたのだ。

「…………」
「…………。――ッ! …………」
「――絵里ちゃんっ!? ――?」
「そっとしておいてあげて?」
「……う、うん……」

 嬉しい知らせを聞いて穂乃果と絵里は顔を見合わせて微笑みを交わす。
 しかし即座に絵里は顔を背けて足早に部室を出て行ってしまうのだった。
 驚いて声をかけて追いかけようとした穂乃果の肩を優しく掴む手の温もり。
 そっと後ろを振り向くと、希が少し涙ぐんではいたが優しい微笑みを浮かべて、1人にしてあげてほしいとお願いしてきた。
 その言葉を聞いて瞬時に理解した穂乃果は追うことをやめ、優しい微笑みを浮かべて扉を眺めているのだった。

 きっと彼女は人知れず――
 ずっと抱いていた懸念への解放。祖母の愛した、自分の愛した学院に残せるモノのできた喜び。
 愛する学院への繋がりを持てた事と次の世代へと託すことのできる嬉しさ。
 そう言った様々な暖かい感情が集まって芽生えた新たな感情。心に作られた雨雲から――
 溢れ出して降り注がれる、暖かな恵みの雨に頬を濡らしていることだろう。
 それでも彼女にはまだ学院生活が残されている。
 明日から――今日まで以上に学院の為。生徒達の為。仲間の為。そして自分の為。
 より良い学院生活を過ごせる様に精一杯頑張ることを決意した彼女。だけど今日だけは――
 この暖かい雨に心を委ねていたいと感じていた絵里なのであった。

♪♪♪

 この様な経緯のもと、雪穂が入学をした年度から制服のリボンは世代固定へと切り替わった。
 その世代固定のリボンも3度目の春を迎える。
 つまり当時の3年生だった絵里達のリボン――緑のリボンを引き継いだ雪穂達も3年生になったのだ。
 そう、学年固定と同じ色分けになっていると言うこと。
 だから、絵里達以前の卒業生には普通に見える光景なのかも知れない。
 しかし穂乃果達以降の生徒は知っている。 
 そして、穂乃果と絵里の妹である雪穂と亜里沙には姉達の――
 穂乃果と絵里の残した、様々な想いが詰まった『リボンの色分け』だと感じているのであろう。
 同時に、運営ですら変えていった姉達の影響力と絶大な人気による人望。
 学院に残していった威光と伝説の名前と功績。もう誰も残っていない現在――
 受け継いだ者として姉達の栄光を絶やさぬように、新たな光を照らし続けていける様に。
 花陽達の想いを託された新入生の水色のリボンを眺め、自分の絵里達から託された緑のリボンを見つめて決意を新たにしているのだった。 
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