| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

剣聖がダンジョンに挑むのは間違っているだろうか

作者:沙羅双樹
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第4話・改訂版

 
前書き
今話内で登場する【鮮血のブート・ジョロキア】の元ネタは【赤き血潮のハバネロ】です。(笑)

あと、ミアさん特性料理は全部「食戟のソーマ」に登場する料理だったりします。(笑)

あと、現時点で決定済みのヘスティア・ファミリアの眷属二つ名を後書きに書いておきます。 

 



【視点:テレシア】



現在、私の目の前で迷宮(ダンジョン)探索から帰って来たベル君がヘスティア様にステイタス更新をして貰っています。

ちなみに目の前のベル君は上半身が裸な訳ですが、私は男性の半裸姿を見て狼狽える様な箱入り娘ではないので、ベル君のステイタス更新に立ち会わせて貰っている訳です。

えっと、ベル君のステイタスは―――


ベル=クラネル
LV.1
力……I82→H135
耐久…I13→I57
器用…I96→H154
敏捷…H172→G240
魔力…I0

【魔法】
≪   ≫

【スキル】
憧憬一途(リアリス・フレーゼ)


「……………」


発現したスキルが原作通りといえば原作通りだけど、アイズちゃんと接触してないことを考えると、懸想相手は私になるんですよね?というか、ヘスティア様。無言で私を睨まないで下さい。


「…………ベル君。これが新しい君のステイタスだ」


ヘスティア様がベル君の背中から退いて、更新ステイタスを書き記した羊皮紙をベル君に渡しながらそう告げると―――


「………ファッ!!?」


ステイタスの基本アビリティの出鱈目な成長率にベル君が驚きの声を上げた。まぁ、熟練度上昇率がトータル220オーバーなら驚きの声も上げるかな?

あっ、憧憬一途(リアリス・フレーゼ)は原作通り羊皮紙に書かれてないですね。憧憬一途(リアリス・フレーゼ)は私のスキル及びスキル数と同様に秘匿すべきことでしょうから、隠し事が苦手そうなベル君には当然の措置でしょう。


「あ、あの神様?これ、書き写し間違いだったりしてませんか?」
「ベル君、君はボクのことを読み書きもできない駄女神だと思っているのかい?」
「い、いや!そんなことは無いです!!ただ―――」


ヘスティア様が嘘を言っているとは思っていないみたいだけど、羊皮紙に書かれている熟練度上昇率を信じられずいるベル君は言葉を詰まらせる。

そして、手に持つ羊皮紙を色んな角度から何度も見直したベル君は―――


「神様!やっぱり何かおかしいですよ、この熟練度上昇率!?これが本当なら僕のこれまでの半月は一体何だったんですか!!?」
「………」


再度ヘスティア様に尋ねたけど、ヘスティア様は何も答えません。まぁ、ヘスティア様も今は心中穏やかではないんでしょう。


「か、神様?」
「……成長期か何かなんじゃないか?というか、ボクに聞けば何でも分かると思ってないかい?神が何でも知ってると思ったら大間違いだ」


ヘスティア様は膨れっ面でそう言うや否や部屋の奥にあるクローゼットへと向かい、私が仕舞った外套(コート)を取り出して羽織ると、玄関に当たる扉へと向かった。


「ボクはこれからバイト先の打ち上げに行ってくる!君達も偶には羽を伸ばして、寂しく豪華な食事をしてくればいいさっ!!」


ヘスティア様はそう言い終えると扉を勢いよく開き、これまた勢いよく閉めて本拠地(ホーム)から出て行った。


「………あの、テレシアさん」
「何ですか?」
「僕、何か神様を不機嫌にする様なことを言いましたか?」
「いいえ。別に言ってませんよ。あれはヘスティア様が精神的に子供なだけです。数日経てば機嫌も直りますよ」
「そうなんですか?」
「はい。それよりも今日の晩御飯についてなんですが―――」
「あっ!そのことなんですが、テレシアさんさえ良ければ―――」


この後、ベル君の提案で私達は外食することが決まりました。外食先が酒場という話だったので、冒険者が利用していることと酔っ払った冒険者に絡まれることも考慮して、私は念の為『氷輪丸』と『流刃若火』を持って行くことにしました。



【視点:ベル】



元々、テレシアさんだけでなく神様や他の皆さんも誘ってシルさんの働いている酒場に行く予定だったけど、神様がバイト先の打ち上げに行ってしまって、他の皆さんも帰省などで居なかった為、テレシアさんと2人だけで酒場に行くことになった。


(………これって、もしかしなくてもデート?)


そんなことを考えながら酒場に向かっていると、いつの間にか目的地に着いていた。念の為店名を確認してみたけど、間違いはないみたいだ。


「テレシアさん、このお店ですよ」
「このお店って、豊穣の女主人ですか?」
「あれ?テレシアさん、もしかしてこの酒場知ってました?」
「はい。オラリオの酒場の中で1番御飯の美味しい所なので割と常連だったりします。アトゥイ達も昨日、本拠地(ホーム)への帰還前にここで食事をしていたみたいです」


あっ。この酒場、テレシアさん達の行きつけだったんですね。その酒場の店員と知り合うなんて、世間って結構狭いもんなんだ。というか―――


(酒場を利用するってことは、テレシアさんもお酒を飲むのかな?)
「ベル君、オラリオでは15歳からお酒が飲めますが、私は基本的に飲みませんよ」
「!!?」
「何で考えていることが分かったのか、って思ってますね?ベル君って、結構考えていることが顔に出やすいんですよ。まぁ、全く飲まない訳ではないんですけどね。でも、私が飲むのは大体が甘口の白ワイン位です。
っと、そんなことより早く中に入りましょう。ベル君も迷宮(ダンジョン)探索から帰って来てお腹が減ってるでしょう?」


そう言いながら僕の背中を押してくるテレシアさん。僕はテレシアさんのその行動に抵抗することなく、酒場の中へと入った。すると―――


「ベルさんっ!来てくれたんですね?」


入り口付近に偶然居たシルさんが入店早々に声を掛けてきてくれた。


「……はい。やって来ました」


酒場という所を初めて利用する僕は店内の雰囲気――給仕スタッフが全員女性という男の理想郷といえる空気に呑まれ、少しばかり間を開けてしまったものの、シルさんに返事を返した。


「3ヵ月振りです、シル」
「あっ、テレシアさん!何でテレシアさんがベルさんと一緒に?」
「私とベル君は同じ派閥(ファミリア)眷属(かぞく)なんです。で、今日はベル君に誘われて豊穣の女主人に来ました」
「そうなんですか。ということは、今日はお客様ですね?」
「はい」
「えっ?今日はお客様って、一体どういう―――?」
「ベルさん、知らないんですか?テレシアさんは偶にうちの酒場で歌sy―――」
「その話はまた今度にしましょう。ベル君もこの酒場を利用していれば、いずれ知ることができることなんですから」
「……それもそうですね。テレシアさんの秘密を知る為にベルさんが通ってくれれば、私のお給金も増えますし」


どうやらテレシアさんには色々と秘密があるみたいだ。気にはなるけど、テレシアさんもシルさんも今は話す気が無いみたいだから、無理に聞き出すような真似は止めておこう。


「お給金といえば、今日はアトゥイさん達が居ませんね」
「アトゥイ達は今、実家に帰省してたりしていて居ないんです。というか、シルは私達のことを金蔓と思っていませんか?」
「そんなことありませんよ。それじゃあ、お席まで案内しますね。お客様2名入りまーす!」


シルさんは澄んだ声を張り上げると、僕とテレシアさんをカウンター席へと案内してくれる。その途中、冒険者と思しき人達の会話が聞こえてきた。


「おっ!今日は【剣聖】アストレアがやって来たな。ん?【鎮守】や【陽炎】、【狂姫】達は一緒じゃねぇのか?」
「えっ!?【剣聖】アストレア?あのLV.10の最強の冒険者?どいつだ?」
「てめぇ、冒険者の癖に【剣聖】アストレアの顔を知らねぇとか、モグリかよ?」
「いやいや。【剣聖】の顔を知ってるのなんて、ギルド職員とここの常連位じゃね?第二級冒険者でも知らない奴がいたんだからよ」
「ああ、1年前のアレな?」
「1年前のアレ?アレって何だ?」
「いや、1年前に私服姿の【剣聖】にちょっかい掛けて、伸された馬鹿がいたんだよ。しかも、そいつは第二級冒険者」
「確か、アポロン・ファミリアのヒュアキントスだったか?」
「そうそう。嫉妬か何か分からんが、当時LV.9――しかも、私服でここに来ていた【剣聖】の前で【剣聖】とその主神の悪口を言って半殺しにされたんだよな。
しかも、自分を殴った相手が【剣聖】だと殴られるまで気付かなかったっていう間抜けっぷりで、そのことは今でもここの常連冒険者には語り継がれてるんだぜ」
「あの時の光景は正に地獄絵図だった。LV.2以上の冒険者15人が1分位で血染めになってたからな。その場を目撃した神々が【鮮血のブート・ジョロキア】って即席の二つ名を【剣聖】に与えた位の地獄絵図だったんだ」
「………で、結局誰が【剣聖】なんだ?」
「今、ウエイトレスに案内されてる―――」
「白髪のガキが【剣聖】なのか?」
「アホか!黄緑色の服を着た町娘っぽい赤髪の娘の方だよ」
「………は?」
「1年前は15歳って言ってたから、今は16歳か?たった4年でLV.9に登り詰めたのが小娘ってこともあって、それが気に入らなかったからヒュアキントスも喧嘩を売る様なことを言ったんじゃないか?
まぁ、『鮮血のブート・ジョロキア事件』以降は見た目で侮って、【剣聖】に喧嘩売る様な馬鹿はこの酒場の利用者から居なくなったけどな。
ちなみに【鮮血のブート・ジョロキア】ってのは、怒り狂って振り乱された彼女の赤髪が唐辛子のブート・ジョロキアを彷彿させたからだそうだ」
「……それじゃあ、【剣聖】と一緒にいる白髪のガキは何者だ?」
「さぁな。【剣聖】のサポーターとかじゃねぇか?」


……ギルド本部でもそうだったけど、やっぱりテレシアさんのことを知らない人って、このオラリオには居ないんだな。顔は余り知られてないみたいだけど。

というか、サポーターと間違えられるのは軽く凹む。いや、自分が無銘の駆け出し冒険者って言うのは理解してるんだけどね。


「……ベル君、周りの雑音なんて気にしないで下さい。ベル君は僅か半月で敏捷値がGに到達した特別な子なんです。だから、もっと自分に自信を持って」


僕が軽く凹んでいると、テレシアさんが僕の手を引きながらカウンター席まで誘導し、慰めの言葉を掛けてきた。冒険者なのにサポーター扱いされるのも情けないけど、これもこれで情けない気が……。

僕がそんな負の思考連鎖に囚われそうになっていると、目の前に冷えた水の入った木製コップがドンッと置かれた。


「3ヵ月振りだね、テレシア嬢ちゃん!余りに来ないから、迷宮(ダンジョン)でくたばったのかと思ってたよ!!」
「アハハハ!3ヵ月振りです、ミアお母さん!今、私が踏破しようとしてるのは61階層ですよ。そんな所で私がくたばったら、それ以降の階層はどこの派閥(ファミリア)も踏破できなくなっちゃいますよ?」
「はっはっはっ!そりゃ、そうだ。で、そっちの兎みたいな坊主はシルの客かい?」
「はい。あと、私の後輩でもあります」
「へぇ~。ってことは、ヘスティア・ファミリアの団員か。今日はその坊主の歓迎会も兼ねてるのかい?」
「ん~、今日はそんなつもりではなかったんですが、どうせなら歓迎会をしましょうか。ベル君、今日のお勘定は私が持つので好きなだけ注文して下さい」
「えっ?ええっ!?」
「流石、深層に単独(ソロ)で挑んでる特級冒険者様は言うことが違うね!そういうことだから坊主、じゃんじゃん注文してくれよぉ!シルからももの凄い大食漢だって聞いてるよ!!」
「え゛っ!!?」


大食漢など言った記憶が無かった僕が、度肝を抜かれながらもシルさんの方に視線を向けると、当のシルさんは僕からさっと目を逸らした。


「ちょっ、僕は大食漢なんかじゃないですよ!?」
「えへへ」
「か、可愛いですけど、「えへへ」じゃないです!?」


くっ!初めて出会った時は良質街娘とか思っていたけど、その実態が魔女だったとは!!


「どれだけ可愛い仕草をされても、僕は大食いなんてできませんからね!?」
「アアッ、朝ゴ飯ヲ食ベナカッタセイデ(チカラ)ガ出ナイー……」
「ちょっ、棒読み!超棒読みですから!!しかも、超汚い!!」


この人、魔女を通り越して悪女だよ。誰だよ、良質街娘なんて言った奴。バカだろ?言った奴、絶対バカだろ!……おっと、それ言ったの僕でした!!


「ふふっ。安心して下さい、ベルさん。大食いして欲しいというのは冗談です。ミア母さんはお残しを許さない人なんで、食べられる範囲で奮発してくれたら十分です」
「た、食べられる範囲で、ですか?」
「はい。食べられる範囲で、です。あっ、メニューはこちらになります。お決まりになったら声を掛けて下さい。それではごゆっくりどうぞ」


シルさんは僕とテレシアさんにメニュー表を渡すと、他のお客さんの所に行ってしまった。店内の利用客の数や忙しなく動いているウエイトレスさん達を見る限り、この酒場がかなり人気の店っぽいので仕方がない。

……さて、それじゃあメニューを決めようか。本拠地(ホーム)で作れば50ヴァリスでお腹を満たせるけど――って、パスタが1皿300ヴァリス!?

高ッ!大衆食堂の定食でも100ヴァリス位なのに、パスタ1皿で定食3食分相当って、どんだけだよ!?


(こんな高いもの注文してもいいのかな?)


そんなことを考えながら、テレシアさんの方を見てみると―――


「特製カルパッチョと特製カルトッチョ、特製ビーフシチューとデザートに特製セミフレッドでお願いします。あ、あと神酒(ソーマ)も」
「はいよ!神酒(ソーマ)1つに特製カルパッチョ1つ、特製カルトッチョ1つ、特製ビーフシチュー1つ、デザートに特製セミフレッドだね!!」


テレシアさんがそう言うと、女将さんと思しきミア母さん(?)がカウンターの奥――厨房と思しき場所へと言ってしまった。


(特製って何が特製なんだろう?)


そんなことを考えながら、メニュー表でテレシアさんが注文した商品を確認してみると―――


「!!?」


≪前菜≫
ミア母さん特製カルパッチョ―――4,000ヴァリス
≪魚料理≫
ミア母さん特製カルトッチョ―――3,800ヴァリス
≪肉料理≫
ミア母さん特製ビーフシチュー―――4,400ヴァリス
≪デザート≫
ミア母さん特製セミフレッド―――3,200ヴァリス
≪酒≫
神酒《ソーマ》―――1杯6,000ヴァリス


(ご、合計21,400ヴァリスーーーーーーッ!!?て、テレシアさん!1回の食事にこの金額は使い過ぎじゃないでしょうか!?)


そんなことを思いながらテレシアさんに顔を向けると――――


「ん?……ああ!シル~、追加注文お願いします!!」


何かに納得したかと思えば、シルさんを呼んで追加注文を始めた!?


「ベル君の注文なんだけど、私と同じで特製カルパッチョと特製カルトッチョ、特製ビーフシチュー、デザートに特製セミフレッドでお願いします。あと、未成年なのでお酒の代わりに雲菓子(ハニークラウド)のジュースも」
雲菓子(ハニークラウド)のジュースお1つに特製カルパッチョお1つ、特製カルトッチョお1つ、特製ビーフシチューお1つ、デザートに特製セミフレッドお1つですね?畏まりました~!!」


シルさんは注文を聞くと、僕が止める間もなく厨房の方へ行ってしまった。は、雲菓子(ハニークラウド)のジュースっていくらするんだ?


≪ジュース≫
雲菓子(ハニークラウド)―――1,000ヴァリス


…………合計37,400ヴァリス。すみません、神様。その気は無かったんですが、神様の言う通り僕はテレシアさんと2人だけで豪華な夕食をすることになってしまいました

この後、僕は一時的な金銭感覚の崩壊によって料理が出て来るまで間の呆然と過ごすことになった。


 
 

 
後書き
ヘスティア・ファミリア二つ名一覧(未完)

テレシア=【剣聖】
アトゥイ=【狂姫】
ムネチカ=【鎮守】
ヤクトワルト=【陽炎】
オウギ=【瞬炎】 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧