ラブライブ! コネクション!!
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Track 2 受け取るキモチ 繋げるミライ
活動日誌10 ぼくらは・いまのなかで! 2
私達は別に、お姉ちゃん達の妹分として活動をするつもりはない。だって、自分達のスクールアイドルを目指しているのだから。
自分達を見に来てくれるお客さんは、自分達の力で集めたかった。
とは言え、たぶん誰も来ないだろう――アイドル研究部に入部した日の職員室から部室へ向かった廊下。そしてアイドル研究部に入ってからも、私達は誰からも注目をされることはなかった。
まぁ、クラスの子達は応援してくれるし? 別の方向では注目されているようなんだけどね?
ランキングとかってヤツで? なんてね。
だから仮に、私達だけのライブを開始しても誰も来ない確率の方が高い。
きっと自分達がそうだったから、その事態を見越してお姉ちゃんは声をかけようとしたのだろう。
だけどね? 残念ながら私はお姉ちゃんの妹なのだ。
お姉ちゃん達だってファーストライブの時は――
メンバーになった6人と、友人で手伝いをしてくれた先輩3人しかライブを見に来ていなかった。
希さんは完敗のスタートって言っていたんだよね。
だけど私はあえて――完敗のスタートになるかも知れないライブを開きたいって思っていた。
それは、お姉ちゃん達だって通ってきた道。そんな光景を見ても諦めず、いつか満員のお客さんの前でライブをする!
そんな決意があったから頑張ってこれたんだろうし、実現出来たんだと思っている。
きっと現実を叩きつけられたから、どんな困難にも立ち向かえていたんだとも思っている。
そして――
そんな光景を見てきたから、今のお姉ちゃん達のライブで目の前に広がる光景の素晴らしさに気づいているんじゃないか?
そんな両方の光景の意味と儚さを知っているから、努力を怠らないのではないか?
そんな風に感じていたから、今の私達にも必要なことだと思っていた。
ずっと今まで、私はお姉ちゃん達のライブを見せられ続けてきた。そして相反するような、現実を叩きつけられたファーストライブの話を、最近になって詳しく知ることになった。
その時に私は、その――
現実を叩きつけられたことに、今のお姉ちゃん達の原動力を感じていたのだった。
だから正直な話をすると、完敗することを望んでいたのかも知れない。
そこから飛び立たないといけないんだって思える――ううん、飛び立ちたいと思っているから。
私達は別に、お姉ちゃん達の妹分として活動をするつもりはない。自分達のスクールアイドルを目指しているのだ。
そもそも、常に私達の後ろにお姉ちゃん達がいてくれる訳ではないんだ。
自分達の足でステージを踏みしめて、自分達の目で現実を受け止めて――自分達の手で明るい未来を掴んでいかなくてはいけないんだ。
それが出来ないようなら音ノ木坂学院スクールアイドルなんて務まらないんだと思っている。
それが出来ないようなら私達の存在理由なんんてないのだと思う。だって――
お姉ちゃん達は何もないところから自分達の力で頂点に輝いたのだから!
私達だって何もないところから自分達の力だけで輝かなければ、決して私達の活動にはならない。
スクールアイドル μ's の恩恵を受けられるのは、頑張ってきたお姉ちゃん達だけ――私達が受けて良い訳はないんだ。
それに、スクールアイドル μ's の意思を受け継いでいきたいって思っているのに、最初から頼っていたんじゃ意味ないじゃん!
だから、私はお姉ちゃん達とライブの時間をずらしたかったのだった。
海未さんに聞かれて、私は迷うことなく真っ直ぐに見つめて返事をした。だけど、これは私1人のライブじゃないから――亜里沙と涼風と一緒にライブをするのだから。
勝手に決めてしまってはいけない――こんな偏った考えなんて普通しないだろうしね?
だから2人の顔を見つめたんだけど――何故か2人とも笑顔で頷いていたのだった。
――えっ!? いや、私が言うのも何だけどさ?
もう少し考えた方が良いんじゃない?
だって、誰も来ないかも知れないんだよ?
お姉ちゃん達とライブをすれば大勢の人に見てもらえるんだよ?
どっちが得かなんて一目瞭然じゃん!
と言うことを現在の私は――あの時の私達に伝えたかった。
まさに、覆水盆に返らずと言う言葉がピッタリだよね。
受験で一生懸命覚えたのに、全然使うことのなかった言葉――まさか、こんなところで使うことになるなんてね?
まぁ? 私としては自分から溢したような水だから、特に後悔はしていないんだけど。なんてね。
たぶん、亜里沙と涼風は私のことを信頼してくれていたのだろう。そして自分達だけのライブを2人とも望んでくれていたんだと思う。
私と同じように、お姉ちゃん達を見続けてきた者同士なんだから、感じてきたものは同じなんだと――目指す場所は同じなんだと、2人の瞳が語りかけている気がしたのだった。
そんな2人の語りかけた瞳と笑顔に感謝の意味で笑顔を返すと――再び海未さんの方を見つめてお願いをするのだった。
海未さんはジッと私達を見つめると、一瞬だけ瞳を閉じて微笑みながら頷き――瞳を開くと、優しい笑顔を浮かべながらお姉ちゃん達に了承を仰いだ。お姉ちゃん達は微笑みを浮かべて頷いていた。
こうして、私達は自分達だけのライブをすることを、全員が無事に認めてくれたのだった。
♪♪♪
私の問いを聞いた直後に、心配そうに声をかけようとしたお姉ちゃんは――もう何も言ってこなかった。
ううん、それどころか満面の笑みを浮かべて――
「雪穂、亜里沙ちゃん、涼風ちゃん……ファイトだよ! ……うん、ファイトだよ!」
そんな、いつもの口癖で私達を励ましてくれた。と言うか、何で2回言ったの? 大事だから? まぁ、良いんだけどね?
たぶん、お姉ちゃんが何も言わなかったのは――
それが、私達の望んだことだって理解してくれたから。自分が何かを言える訳がない! そう言うことなんだろう。
以前、お姉ちゃん達がローカルアイドルを始めようとしていた時――最初に話を聞いた時点で私は良い顔をしなかった。
だけど話を全て聞き終えた時に――ローカルアイドルの活動がお姉ちゃん達の望んだこと。
自分達で決めたことだって理解出来たから、私に何も言える訳がないと伝えた。そして応援することにしたのだった。
今のお姉ちゃんは、あの時の私――そんな感じでいてくれているんだと思っていた。
自分達で考えて、考えて、考え抜いて、納得した答え――まぁ、今回は私の独断の考えなんだけどね?
それでも亜里沙と涼風は賛同してくれた――いや、否定されていないんだし大丈夫だよね?
だから私達3人の納得した答えと言っても良いのだろう。
そんな私達の納得した答えを、お姉ちゃん達が何かを言う権利はない――だって私達のステージにはお姉ちゃん達は立たないのだから!
ううん、私達のステージとは私達のアイドル活動を指している言葉――だから立たないのではなくて立てないのだった。
そのステージで何かを得られるのは私達だけなんだから。
例え、それが辛いことでも苦しいでも――その先にある楽しみや喜びは、辛いことや苦しいことを越えないと得られないのだから。
あくまでも、お姉ちゃん達はステージの袖で見守っていることしか出来ないのだ。
だから全力で応援をしている――お姉ちゃんの口癖と満面の笑顔に、私達の進む道を見守ってくれているんだと思えたのだった。
♪♪♪
私の心意は不器用なのかも知れない。もっと器用に立ち回れば上手くいくのかも知れない。
だけど本気なんだもん――ぶつかり合うのは私の真っ直ぐな想いがみんなを結んだ証拠。
それでも見たいんだもん、大きな夢は――今、目の前の亜里沙と涼風と一緒にあるんだ。始まったばかりなんだ!
わかっている。
このライブはきっと楽しいだけじゃない――私達のこれからを試されるだろう。
わかっている。
だって、その辛さや苦しさもミライへ繋がるんだから。
明るいミライを目指して走っていくんだよ――きっと1人だったら、こんな気持ちになっていないかも知れない。
亜里沙と涼風が集まってくれたから強い自分になっていくんだね?
きっとね? これから変わり続けて動き出すんだよね?
私と亜里沙と涼風。それぞれが同じ目標、同じ場所――同じ好きなことで頑張れるから、これから迎えるライブのステージ。
新しい場所が、それまでの私達のゴールだね?
そして、それぞれが好きなことを信じていれば――いつまでも、ときめきを抱いて進められるんだ!
だから、ファーストライブだからって怖がる癖は捨てちゃえ!
とびきりの笑顔を見せれば良いんだ!
そしてファーストライブだからって萎縮する必要もないんだ!
跳んで跳んで誰よりも高く跳んでみれば良かったんだ!
だって、私達は今の――この音ノ木坂学院アイドル研究部、スクールアイドル。
お姉ちゃん達のいるこの空間の中にいるのだから。
♪♪♪
精一杯楽しんで、精一杯輝いて――精一杯自分達らしいスクールアイドルを披露すれば良かったんだ。
きっと出来る、自分達らしいライブ。
完敗からのスタートでもかまわない!
自分達らしいライブを精一杯披露するんだ!
やっとライブが出来ることになっただけなのに――私達にはお姉ちゃん達の今の中に入れた気分でいたのだろう。
隣を見て、亜里沙と涼風も私と同じように希望に満ちた表情を浮かべていたから――同じ気持ちでいてくれているのだろうと思えた。
まだライブは終わってはいない。それでも、私達にはお姉ちゃん達と同じステージに立つ権利が、正式な形で芽生えたのだ。
いつかは同じステージに立てるようになりたい!
その憧れは今でもあるんだけど――でも、権利が芽生えたことにより今までのように、ただ見守るだけの存在ではなくなったのだ。
さっきまでの私達は、アイドル研究部の一員としてお姉ちゃん達の話し合いに参加していたのだけど、今は同じスクールアイドルの仲間として――
音ノ木坂学院を、スクールアイドルの素晴らしさを、みんなに伝える仲間として話し合いに参加をするんだ。
私は心の中でアノ曲を口ずさみながら、この今の中にいられる喜びを深く刻み、今の中にいることの意味を深く受け止めていた。
そんな気持ちで真剣な表情を浮かべながら、私達は花陽さんの次の話を待っていたのだった。
後書き
Comments 穂乃果
ライブ……いきなり、あんなこと言うんだもん!
ビックリしちゃったじゃん!
だって、泣きそうになるんだよ?
凄く悲しくなるんだよ?
世の中、そんなに甘くないんだよ?
だから、止めようって思ったんだけど――
そんな風に考えていたんだね?
精一杯応援しているから、精一杯頑張ってね?
ファイトだよ! ……うん、ファイトだよ!
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