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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第68話:人の口に戸は立てられない……となれば人その物を封じるしか無い。

(グランバニア城・武器開発室)
レクルトSIDE

「もう良い、分かった! 貴様の考えは理解した! 全てウィンチェストの所為なんだろ!?」
「“所為”と言う言い方は語弊がありますが、彼の才能の賜である事は変わりありません」
辟易した陛下と満面の笑みなウルフ君。そして解ってるのか解ってないのか、嬉しそうにしてるウィンチェスト……

「ウィンチェスト以外の二人は、この武器の製造に携わったのか?」
「い、いいえ……私達は全く」
「は、はい……全てウィンチェスト部長がお一人で」

「そうか……では喜べ。お前達は全員昇給だ。次月の給与分から20%アップ! 1年以内に更に10%アップ……そして5年内には現状より50%はアップさせよう! 宰相・軍務大臣……その様に実行しなさい!」
「了解ッス」「解りました陛下」

良いのかなぁ?
あんなに陛下は怒ってたのに……
給料アップを約束しちゃって……喜んでるみたいに見える。

「ウィンチェスト、解るな。これは口止め料だ……その武器は現時刻をもって封印する。存在も情報も……お前が持ってる記憶もだ。その試作品も即刻破壊する」
「封印? 破壊!? な、何を仰ってるのですか陛下!? このガンツァーは偉大なる発明品ですぞ! それを封印するなど……気でも狂ったのですか?」
気が狂ってるのはお前だ……陛下に何て事言ってるんだよ!

先刻(さっき)までの話を聞いてなかったのか馬鹿! この武器は危険すぎるんだ……今後発展していけば、力無き人々を苦しめるだけの悪魔に替わる可能性を秘めてるんだ」
「何を仰いますか陛下? 武器とは大なり小なり、そういった代物でしょう。それにこれ以上の発展なんて有り得ません! 私の発明したガンツァーこそが最高にして究極の兵器です!」

開いた口が塞がらないとは、こんな状況の事を言うのだろう。
実際、僕もピピン閣下も顎が外れたかと思うほど、開いた口が塞がらない。
だけどウルフ君だけがウィンチェストの台詞を予見したかの様に笑っている。

「ウルフ……お前はここまで予想してたのか?」
「はて、何のことやら?」
絶対ウソだ!

「ウィンチェスト、もう一度だけ聞くぞ。この発明品は俺に作り方を聞いた訳じゃ無く、自分で考え付いた……そして自らの功績を世界中に知らしめたい。そういう事だな?」
「そうです、その通りですよウルフ宰相閣下」

「はい、陛下。そういう事です(笑)」
「……………はぁぁぁ」
満面の笑みのウルフ君とは対照的に、深い溜息を吐く陛下。二人の間では如何なる遣り取りが繰り広げられているのだろうか?

「見て見ぬフリをしますか陛下? それとも自らの権限をキッチリ行使しますか?」
「……行使するよ! 流石に見て見ぬ振り出来ねーよ! 嫌なんだよなぁ……権力を振りかざして人を排除するの」
排除?

「あ、あの……排除とは?」
「ガント・ウィンチェスト。貴様を逮捕する。罪状は国家反逆罪だ……」
こ、国家反逆罪!!??

「な、何故そんな事に!?」
「解んねーのかバーカ! 国王が封印すると言った兵器なのに、それに反対して世間に広めようという意思を表明したからだよ。だから再三確認しただろが! なのにアンタは自分の欲望を突き通した……だから逮捕だよバ~カぁ」

「キ、キサマ……謀ったな!?」
「はぁ? つまりこのガンツァーは俺の発明品って事で良いのか? そう世間に発表して問題ないのか!?」
多分真実はそうなんだろう。でもウィンチェストは認めまい。

「ふざけるな! このガンツァーは私の発明品だ!」
「じゃぁ謀ってねーよ、俺は!」
「うぐっ……お、おのれ……」
「あはははは~ん(笑)」

「邪魔な男を排除する為だけに、お前はここまでするのかウルフ?」
「はぁ? 『能力も無いのに威張りチラしてるから、王様として排除しろ』と何度もお願いしてたのに、『放って置けよ。才能無いのなら無害でもあるだろ?』と放置した者に落ち度は無いとでも言うのですかぁ?」

そ、そうか……
ウルフ君は僕等が何度もウィンチェストを何とかしてほしいと嘆願した事に対して手を打ってくれたのか!
し、しかし……やり過ぎでは無いだろうか?

「おい衛兵!」
僕だけでは無い……陛下を含めた全員が、同じ事を思っている中、ウルフ君は気にする素振りも見せずに扉から顔だけ出して衛兵を呼ぶ。

「その男を逮捕しろ。罪状は国家反逆罪だから、ちょっとでも抵抗したら大いに反撃して構わない。牢屋へは俺自らぶち込むから、しっかり連れてこい!」
大慌てで入ってきた衛兵に軽い口調で残酷な命令をすると、軽い足取りで部屋を出て行くウルフ君……勿論ウィンチェストは衛兵に両脇から掴まれて連れて行かれる。

「……………」「……………」「……………」
唯一上機嫌だったウルフ君が、逐一煩いウィンチェストと共に部屋から居なくなり、静寂だけが僕等の耳を突き刺す。
不機嫌なままの陛下は例の兵器を繁々と見詰め溜息を吐く。

誰か……僕以外の誰か、何か喋って場の空気を変えてください!
でも誰も口を開かない。
皆、僕と同じ事を思ってるに違いない。

「もう一度言っておく……この武器の事は忘れろ。この場に居た者同士でも、この武器の事を語るんじゃ無いぞ!」
「は、はい……僕は記憶力が悪いので、もう憶えてません」

「全部忘れる必要は無い……武器の事だけで、昇給の話は実行する。武器開発部の2人も、レクルトもな。 ……ピピンは別に良いよね?」
「はい構いません……その分も部下に回してください」

感謝ですピピン閣下!
僕は素直に口止め料をもらうタイプなので、本当に嬉しいです。
超怖かったけど昇給出来そうだし、邪魔な男も居なくなった……もう考えるのは止めた方が良いだろう。

そんな事を考えながら陛下に視線を移すと、例の武器をケースに仕舞い持ち帰る準備をしている。
バレルさんは手伝おうとしたのだが「これには関わるな」と陛下に優しく言われ手を出すのを止める。
何時もの優しい口調に戻ってたから良かったけど、先刻(さっき)までの怖い口調だったらバレルさん泣いちゃってただろうなぁ……

「……変だな?」
「な、何が変なのですか?」
突然陛下がポツリと呟く。流石に気になるのか、ピピン閣下が陛下の呟きに対して質問をした。

「ウルフは結構長い時間をかけて今回の件を画策していたと思うんだけど、だとしたら底が浅いなと思ったんだよ。まだ続きがあるんじゃ無いのかな? でも読めないんだ……困ったな」
えぇぇ……まだ何かあるの!?

「私には陛下のお考えは勿論の事、宰相閣下の考えですら高次元の事柄。先読みする事は出来ません」
「そうか……そうだよねぇ。ウルフは凄いモンねぇ」
武器や付属品をケースに仕舞い脇に抱えると陛下は何かを考える様に呟き帰って行った。

終わったのかな?
この長かったトラブルが終了したのかなぁ?

レクルトSIDE END



(グランバニア城・プライベートエリア:国王と王妃の寝室)
ビアンカSIDE

リュカの様子が変だ。
ドリスの所に行くと言って出て、帰ってきたと思ったらソファーに座り考え込んでいる。
何が入ってるのか解らないが、鎖でグルグル巻きにした細長い木箱を睨み、普段だったら飲まないブランデーをチビチビ飲みながら考え込んでいる。

もう夜も更け、夫婦の営みを始めたいのだけれども、リュカからはその気配が窺えない。
オジロンが大臣を辞めると言い出したのは知っている。
それに伴い、ウルフ君が大幅に出世した事も理解してる。
だが、リュカの悩みにそれらの事が関係してるかは判らない。

でも、このままじゃ私が困る。
私は妻なのだ。グランバニア国王の妻……そして大好きなリュカの妻なのだ!
妻にとっての大切な時間を、一人悩んで消費されるのは困りまくるのだ!
だから私は行動する……酒にではなく、()に逃げてもらうために。

「如何したのリュカぁ? もう夜も遅いし、ベッドに入りましょうよぉ」
私は甘えた声でリュカの首に腕を絡ませ、頬にキスをすると間近で瞳を覗き込む。
はぅ……何時見ても吸い込まれそうな美しい瞳だわ。

「今日は……ゴメン。如何しても、その気分になれないんだ」
マ、マジで!? リュカがエッチを拒否してきた!?
な、何? 何をそんなに悩んでるのよ!?

「ウルフが……何を企んでるのか読めないんだ。こんな危険な物を作らせておいて、邪魔な人物を大げさに排除したかっただけだとは思えない……でも、その先の企みが見えてこないんだ。どうしよう……とんでもなく大きな問題に発展したら?」

そんな心配は不要よ……そう言いたい。でも私には、今がどんな事態になってるのかも判らない。
安易な慰めは出来ないし、的確なアドバイスだって出来る訳ない。
あのガキ(ウルフ)……一体何をしでかしたんだ?

ここまでリュカを悩ませるなんて……許せないわ!
とっちめて償わせないと……
そうよ……罰を与えるのよ。

明日、職場に押し掛けて部下等が見てる目の前で圧力をかけてやる!
部下も精神的にとばっちりを受ける訳だし、ジワジワとプレッシャーに苛まれるだろう。

絶対許さない。
リュカを苦しめ、私の大切な時間を奪った小僧は!

ビアンカSIDE END



 
 

 
後書き
ゴメン。
ガチでゴメン。
更新するの忘れてた。
三連休で1話書いたのに、掲載忘れちゃってたよ。 
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