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Track 2 受け取るキモチ 繋げるミライ
活動日誌8 ゆめのとびら! 1
前書き
今回のみ亜里沙視点の活動日誌になります。
「ただいまー。…………」
「……おかえり、亜里沙」
「――お姉ちゃん、帰ってたの!?」
私、絢瀬 亜里沙は雪穂と涼風ちゃんと別れて帰宅をした。
練習のあとにファストフード店で色々話し合っていた時に、飲み物で喉を潤しながら話をしていたんだけど。
帰り道もずっと話をしながら歩いてきたからかな?
ちょっと喉が渇いていたの。だからキッチンで水を飲もうと思って――キッチンに通じるリビングの扉を開けて中に入ったんだけど、リビングで座っているお姉ちゃんが出迎えてくれたのだった。
まぁ? 玄関が開いていたから、いるのは知っていたんだけどね。
私はビックリして思わず聞き返してしまっていた。
どうやら高校と違って大学の入学式はまだみたい。だから元々家にいたのかな?
とは言え私は昼間にいなかったんだから、わからないんだけど。
私がお姉ちゃんの近くまで歩いて行くと、リビングでノートPCを開いて何か作業をしていたのだった。
すると――
「……おやぁ? ありちやん……お邪魔しとるよ?」
キッチンから、お盆にカップを乗せて運ぶ希さんが戻ってきた。
「あっ、希さん……いらっしゃいませ」
「――と言うより、希……その、ありちって何よ?」
「えー? 亜里沙ちゃんやから、ありちで良いやん」
「よくないわよっ!」
「なんでぇ? えりちにありち……ピッタリやない?」
「…………」
「……はいはい、亜里沙ちゃんにしとくわ」
私が挨拶を交わすと、即座にお姉ちゃんから希さんへ疑問が投げかけられていた。
どうやら、ありちと言うのは私のことだったらしい。
まぁ、お姉ちゃんのことをえりちと呼んでいるのは知っていたし――私に声をかけていたから、そうなんだろうな? って思って挨拶しただけなんだよね。
と言うよりも、私は別に何でも良かったし、お姉ちゃんと似ているのは嬉しかったのに、ね?
お姉ちゃんは一刀両断に否定をするのだった。
それでも希さんは意見を通そうと努力していたんだけど、お姉ちゃんの無言の圧力に苦笑いを浮かべて、あえなく白旗をあげたのだった。
「亜里沙? うがいと着替えを済ませたらリビングに戻ってきてくれるかしら?」
「……う、うん、そのつもりだけど?」
「…………」
「……? そう……なら、良いわ」
お姉ちゃんは私に微笑みながら伝える。私も元々そのつもりだったから、その言葉に肯定をしておいた。
――少し焦った気持ちを抑えて必死で表情に出さないようにしながら。
そんな私の答えを聞いていた希さんは少し含みのある笑顔で私のことを見つめている。その表情で余計に縮こまりそうになる私。
そんな2人の表情を眺めて不思議そうに眺めていたお姉ちゃんだったけど、特に追及しないでくれていた。
私は、お姉ちゃんの返答を聞いてから、慌てて洗面所へ向かうのだった。
うん。本当に水を飲む前に言われて良かった。だって、うがいの前に水を飲んじゃっていたら――お姉ちゃんに怒られちゃっているからね?
「……それじゃあ、ソコに座って?」
「う、うん……」
私はうがいと手洗いを終えて、自分の部屋で着替えを済ませてリビングに戻ってきた。そして、お姉ちゃんに促されるままにお姉ちゃんの前に座ったのだった。
すると――
「はい、コレ……」
「……何?」
お姉ちゃんは、私に4つの包みを差し出したのだった。
驚いた私にお姉ちゃんは微笑みを浮かべて――
「コレは、お祖母様から……コレが、両親から……そして、私から……」
「……あとウチからやね?」
「――えっ!?」
順に包みを押し出しながら説明を始める。そして、お姉ちゃんが3つの包みを私の前に差し出した直後――お姉ちゃんの隣に座っている希さんの手が包みを押し出した。
私は思わず驚きの声をあげる。
そんな私を見て笑いながら――
「入学おめでとう、亜里沙……遅くなってしまったけど、入学祝いよ?」
「おめでとう、亜里沙ちゃん」
お姉ちゃん達が言葉を紡いだのだった。どうやら、私の入学祝いだったらしい。
とは言え、お姉ちゃんと両親の分は一昨日の時点で用意されていたらしいけど――お祖母様の分が今日届いたから、それに合わせたんだって。
まぁ、3つの贈り物に関しては納得がいくんだけど? 身内だしね?
だけど希さんが用意していたのには驚きを隠せなかった。
そんな表情で希さんを見つめていると――
「えりちの妹ならウチにとっても妹やから!」
満面の笑みを浮かべて、凄く嬉しい答えを伝えてくれていた。
私は2人に微笑んで――
「ありがとう」
それだけを伝える。
お姉ちゃんは私の言葉に微笑むと――
「ちゃんと、お祖母様と――お父さんとお母さんにもお礼を言うのよ?」
「はーい」
そんなことを優しく伝えるのだった。
♪♪♪
私は包みを開けながら、お姉ちゃんのことを眺めていた。
お姉ちゃんはノートPCで作業を再開している。その隣で希さんはカップに入れてきたコーヒーに砂糖とミルクを入れて、お姉ちゃんと私――
私が着替えに行っている間に温め直して私の分も用意して持ってきていたみたい。
そして自分の分を各自の前に差し出した。
まぁ、ココは私達の家で希さんはお客様のはずなんだけど?
ごく自然に振舞われたから、私も普通にお礼を述べて受け取っていた。
こう言うのを――
「何……カードのお告げやから気にしないで?」
と言うのだそうだ、ハラショー!
目を見開いて驚いている私を見た希さんは、バツの悪そうな苦笑いを浮かべると――
「いや……いつもの癖で言うたけど、正確には……勝手知ったる何とやら? と言うヤツやから」
そんな風に訂正するのだった。
要は、私達の家のキッチンの配置を知っている。だから普通に応対できたから、特に気にしないで良いと言うことらしいんだけど?
確かにお姉ちゃんと希さんは親友だ。だけど実は家に招き入れたことは少ないはず。
そもそもお姉ちゃんの性格的に、希さんを招いておいて希さんにやらせるとは思えない。今日はお姉ちゃんが忙しいから、手の空いている希さんが率先してコーヒーを入れてくれたんだろう。
だからキッチンの配置を知っているとは思えない。
そして、お姉ちゃんの好みは知っていたとしても――私のコーヒーに入れた砂糖とミルクが、自分で入れたり、お姉ちゃんやお母さんが入れてくれるコーヒーの味。
そう、いつもの味がしていたんだよ。
そもそも、私は受け取ったことに対してお礼を述べただけだ。それなのに希さんは普通にそう返してきていた。
希さんは言い直したけど、やっぱりカードのお告げだったんだろうなって思っていた。
まぁ、お客様に振舞ってもらっていることには変わりないんだけどね?
そんなことを考えながら、コーヒーを飲みながらお姉ちゃんを眺めている希さんを見ていたのだった。
♪♪♪
「ところで、お姉ちゃんは何やっているの?」
「ん? ……あぁ、学院に頼まれたアンケート用紙を作成しているのよ?」
コーヒーを飲みながら、私はお姉ちゃんに何をしているのか訊ねる。
お姉ちゃんはPC画面を見て作業をしたまま、私に答えてくれた。
そう、これはお姉ちゃんが始めたアルバイトなの。
ラブライブ! で頂点に輝いて、卒業後もスクールアイドルとして活動していたお姉ちゃん。そんな中、お姉ちゃんの元へ学院側から連絡が入った。
それが、理事長先生の提案による学院の臨時アルバイトをしてくれないか? と言う話だったのだ。
今年度は新入生が去年よりも増加した。
それはお姉ちゃん達の功績だし、学院としても嬉しい限りなんだけど、その反面――運営面では嬉しい悲鳴が上がっていたのだった。
去年のお姉ちゃん達の頃の生徒会は、お姉ちゃんと希さんを含めて5人在籍していた。
しかし今の生徒会は穂乃果さん達3人だけしかいない。
それは、お姉ちゃん達の頃の3人は穂乃果さん達と同じ3年生だから。部活動の部長ないし役職に就いてしまったから――
それに生徒会長及び副会長のサポートは下級生が補佐をする方が良いんだって。
まぁ、今年の生徒会にはことりさんもいるんだけどね?
それでも本来は、下級生が補佐をする方が良いらしいよ。
――何でなのかは良く知らないんだけどね。
だけど下級生――花陽さん達2年生は1クラスしかないから生徒数が少ない。大半の人達は部活動に入っている。
そして、何よりも――
今の穂乃果さん達では応募が殺到してしまうから――選考するのが困難になるから応募出来ないみたいなんだよね。
そんな中、新年度が始まった。学院側としても生徒会の負担を減らすべく――生徒会補佐の臨時アルバイトを雇う算段に出たらしい。
とは言え、歴とした音ノ木坂学院の生徒会のアルバイト。誰でも良いと言う訳にもいかないのだろう。
当然、外部の人間には頼めない。だけど卒業生なら体裁的にも問題はない。
さらに、事務全般を――生徒会の内部事情を知り雑務仕事をこなせる人間。まぁ、そんな限られた人を私は1人しか知らないけどね?
そんな理由から、お姉ちゃんに白羽の矢が立ったのだと言う。
これは推測なんだけど――
理事長先生はお姉ちゃんがいたから臨時アルバイトの件を持ち出したんじゃないのかな?
去年の春先、まだお姉ちゃんが音ノ木坂の生徒会長をしていた頃。
廃校の危機に瀕していた時に、お姉ちゃんは何とか学院を存続させようと必死で理事長先生に生徒会での活動をお願いしていた。
だけど理事長先生は首を縦に振ることはなかったそうだ。
それでも何とかしようと必死に抵抗していた。そんな時に穂乃果さん達がスクールアイドルを始めた。
自分が必死に学院を存続させようとしている時に目の前に現れた穂乃果さん達――正直な話、お姉ちゃんは腹が立っていたそうだ。
それまでスクールアイドルになる為に何か行動を起こしていた訳ではない。廃校を阻止する為に始めたと言うスクールアイドル。
突発的すぎてブームに乗っかっているだけのように思えて――自分の2年ちょっとを否定されたように思えて腹が立ったのだと言う。
お姉ちゃんは音ノ木坂を愛している。お祖母様の愛した音ノ木坂を、自分の力でより良い学院にする為に頑張ってきた。
だからスクールアイドルになれば生徒が集められる――そんな気持ちで始める穂乃果さん達に八つ当たりじみた怒りを覚えていたんだって。
そんなお姉ちゃんは何かあるごとに穂乃果さん達に反発をして、否定的な態度と言葉を投げかけていたのだった。
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